2021年6月、銀座コリドー街にグリルレストラン「スーパーグリルブラザーズ」がオープンした。運営は、タイ料理レストラン「マンゴツリー」などを手がけるミールワークス。同社は、とんかつ専門店「かつや」を展開するアークランドサービスホールディングスの子会社だ。
「仕事帰りに休日に、毎日を頑張る人たちのために、お腹も心もエナジーチャージできるグリルレストラン」というコンセプトで、コロナ禍にもひるまずスタートした新業態だが、果たして成功するのか。実際に店舗に行ってみた。
コロナ禍で活気のないコリドー街
店を訪ねたのは平日の夕方。最寄りのJR有楽町駅から店舗までは歩いて10分ほど。コロナ禍以前は、仕事帰りの男女で夜な夜な賑わうナンパスポットとして有名だったコリドー街だが、以前と比べて人通りが少なく、呼び込みに精を出す居酒屋店員の声がむなしく響いていた。
そんな中でも、光るロゴと真っ赤なテントがついている「スーパーグリルブラザーズ」の外観はひときわ目立っていて、すぐに見つけられた。店舗は2フロアあり、1階は97席、2階が69席と、かなりの大箱。にもかかわらず、入店時の先客はカップル、女性2人組、50代ぐらいの男性3人組だけだった。コロナ禍でも果敢に出店を果たしたとはいえ、なかなか苦戦を強いられているようだ。
店内はしっかりとした木製のテーブルが並び、アメリカンステーキハウスのような温かい雰囲気をイメージしているという。大画面のモニターが何台か設置されており、スポーツ観戦をしながら盛り上がるのにもぴったりな空間となっていた。
さっそく料理を注文。頼んだのは、看板メニューの「スーパーグリルコンボ」(税込4950円、以下同)で肉・シーフード・野菜が盛り合わせられており、総重量1.5kgオーバーというボリュームが売り。2~3人でシェアしながら堪能できるという。
待っている間に他のメニューも一通り眺めると、ラムチョップ(2178円)やオマール海老(2178円)といった単品のグリル料理も充実していた。さらに、ミートボールスパゲティ(1309円)やチリビーンズフライ(759円)、デザートにはティラミス(1012円)など、写真を見る限りではどれもボリュームたっぷりで、グリル以外の商品も豊富だ。
15分ほど待つと、肉や野菜が乗った銀色のトレーが運ばれてきた。待望の瞬間のはずが、アレッという戸惑いもこみ上げてくる。というのも、メニューの写真だとかなりボリューミーな見た目だったが、いざ実物を目の前にすると、普通にひとりで食べれきれそうなのだ。1.5kgというイメージを膨らませすぎてしまったのかもしれない。
系列の親会社なので筋違いかもしれないが、「かつや」が期間限定で販売する大盛りメニューはどれも目を疑うほどのボリュームなので、「スーパーグリルブラザーズ」でも同レベルの重量感を期待していたのだが、勝手ながら裏切られた感が大きい。
気を取り直して、各具材に目を向けてみよう。内容は、ハンギングテンダー(牛の横隔膜部分)、チキン、チョリソー、ベーコンの肉系4品、海老、帆立、ホンビノス貝のシーフード3品、そして野菜がポテト、オニオン、コーン、トマト、甘長唐辛子、パプリカの6品で、しめて全13品。そこにスパイシーライム、サワーソイビーン、ハーブの3種類のソースがついている。
まずは、最も存在感を放っていた塊肉のハンギングテンダーからいただいた。グリルならではの香ばしそうな焦げ目が食欲をそそり、口に運ぶと外側はウェルダンで内側はレアという、かなり噛みごたえのある食感。塊肉なので下味がつきづらそうだが、中までしっかりとスパイシーな味がついていて、ソースをつけなくても十分味わえた。
せっかくなので、3種類のソースもつけて試してみる。オイリーなハーブソースや、まろやかな風味を与えてくれるソイビーンソースもおいしかったが、個人的にはピリ辛で適度な酸味もあるスパイシーライムソースとの相性がバツグンだった。
肉と海鮮類には塩胡椒で濃いめに味付けがされていて、そのままでもおいしいが、それぞれの食材に合うソースを選ぶ楽しみがあるのはうれしいところだ。ちなみに、このソースはおかわりもできるそうなので、豪快にディップしてみてほしい。
塊肉と格闘後、他の食材に手を出してみたのだが、ここで異変に気づく。なんと、残りの肉もシーフードも野菜もすっかり冷めてしまっているのだ。銀のトレーが熱伝導率が高いせいなのか、料理が到着してからものの10分ほどで肉料理は硬くなり、海老からは弾力が消え、唐辛子やパプリカはシナシナに。せっかくの豪華な盛り合わせディナーでも、話が盛り上がっている間に味が落ちてしまっては意味がない。熱した鉄板でサーブするか、温め直しをお願いできるサービスでもつけてほしいというのが本音だ。
特にチキンは冷めてしまうと味も落ちる上、硬くなるのでナイフで切り分けるだけでも大変になり、最終的には手づかみで食いちぎるしかなくなってしまった。細かいことは気にせず豪快に食べるのがアメリカンスタイルの醍醐味かもしれないが、このご時世では手が触れたものを口に入れるのは衛生的にもよろしくないような気がしてくる。取り分け用のビニール手袋などがあれば、より食べやすかったかもしれない。
ノリのいいサラリーマンが集うイメージのあるコリドー街で、豪快にグリル料理に食らいつける場としては十分に楽しめそうなポテンシャルは感じるが、食材の冷めやすさやシェアのしづらさといった課題もいくつかみられた。コロナショックで現状は客足が少ないため、サービスのブラッシュアップもなかなか進められないという事情もあり、現状はまだ発展途上なのかもしれない。
ただ、店員に少し話を聞くと、冷めやすさについては以前もクレームがあったようで、できたての状態を長く楽しめる工夫を考えているとのことだった。
本格的に客足が増えるのはこれからになると思うが、その頃には、名実ともにスーパーでグリルなブラザーが集う、豪快でアツアツな店舗に進化しているだろう。
(文=清談社)