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米国、「国防権限法」発動で中国ファーウェイを叩き潰す…日本企業、緊急で対策策定の必要 | ビジネスジャーナル
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うえたかし電機でんき半導体はんどうたい業界ぎょうかいこぼればなし

米国べいこく、「国防こくぼう権限けんげんほう発動はつどう中国ちゅうごくファーウェイをたたつぶす…日本にっぽん企業きぎょう緊急きんきゅう対策たいさく策定さくてい必要ひつよう

ぶんうえたかし微細びさい加工かこう研究所けんきゅうじょ所長しょちょう
米国、「国防権限法」発動で中国ファーウェイを叩き潰す…日本企業、緊急で対策策定の必要の画像1ファーウェイふく会長かいちょうけんCFOのはじめばんぶね写真しゃしん:AP/アフロ)

米国べいこく本気ほんきでファーウェイをたたつぶ

 5月になって、米国べいこく政府せいふによる中国ちゅうごくファーウェイへの攻撃こうげきはげしくなってきた。国内外こくないがいのすべての企業きぎょうは、国籍こくせきわず、業種ぎょうしゅ関係かんけいなく、以下いかの3けん対策たいさくこうじる必要ひつようがある。

(1)べいちゅう関税かんぜい合戦かっせんとく米国べいこくだい4だんたいちゅう関税かんぜい措置そち
(2)米国べいこくがファーウェイをエンティティー・リスト(EL)に追加ついか
(3)米国べいこくが8がつ13にちから2段階だんかい日程にってい実施じっしする「国防こくぼう権限けんげんほう

 これらはすべて、米国べいこくによる従来じゅうらいとはまったくことなる枠組わくぐみのたいちゅう制裁せいさいである。したがって、企業きぎょう上記じょうき内容ないようただしく理解りかいしたうえで、自社じしゃへのインパクトを調査ちょうさし、対策たいさくおこなわなくてはならない。もし、適切てきせつ対策たいさくおこなわない場合ばあい、その企業きぎょう窮地きゅうちおちいるだろう。

 しかし、これらにかんする記事きじいたり、講演こうえんおこなっても、どうも日本にっぽん企業きぎょう事態じたい深刻しんこくさをわかっていないようにかんじられる。筆者ひっしゃは、社長しゃちょう直轄ちょっかつ対策たいさく本部ほんぶ設置せっちするくらいの措置そち必要ひつよう不可欠ふかけつだとおもっているが、たして、そこまでっている企業きぎょうがどれだけあるか。

 本稿ほんこうでは、上記じょうき(1)~(3)にかんする概要がいよう説明せつめいするとともに、どのような対策たいさくおこな必要ひつようがあるかをろんじる。対策たいさく方法ほうほうわるじゅんつぎのようになる。さて、あなたの会社かいしゃは、どうするのか。

1.えず様子ようする(つまりなにもしない)
2.事実じじつ関係かんけい調査ちょうさし、被害ひがい最小限さいしょうげんめるように対策たいさくこうじる
3.対策たいさくおこなうとともに、このをビジネスチャンスととらえ、果敢かかんめる

だい4だんべいちゅう関税かんぜい合戦かっせん

 米国べいこくは5がつ10日とおか、「だい3だん」として発動はつどうした2000おくドル(やく22ちょうえんぶん)のたい中国ちゅうごく制裁せいさい関税かんぜいを、6月1にちから従来じゅうらいの10%から25%にげると発表はっぴょうした。これにつづき、米国べいこくは5月13にちに、現在げんざい対象たいしょうがいとなっているやく3000おくドルぶん中国ちゅうごく製品せいひんへの「だい4だん」となる制裁せいさい関税かんぜい詳細しょうさい公表こうひょうした。だい4だん追加ついか関税かんぜい対象たいしょう製品せいひんには、アップルのiPhoneやパソコン、玩具おもちゃ衣服いふくなど消費しょうひざいおおふくまれる。2かげつあたりに実施じっしされる見込みこみである。これにたいする報復ほうふく措置そちとして、中国ちゅうごく国務こくむいんは5月13にち、2018ねん9がつに5~10%の追加ついか関税かんぜいをかけた600おくドルぶん米国べいこく製品せいひんについて、関税かんぜいりつを5~25%にげ、これを6がつ1にちから実施じっしすると発表はっぴょうした。ようするに、べいちゅう関税かんぜい合戦かっせん最終さいしゅう段階だんかい突入とつにゅうした。もはや、べいちゅうりょう首脳しゅのう直接ちょくせつ会談かいだんでしか、解決かいけつみちはないようにおもう。

とくにiPhoneへのインパクトがおおきい

 2016ねん時点じてん米国べいこくは、中国ちゅうごくからスマホをやく300おくドル相当そうとう輸入ゆにゅうしている。そのほとんどが、べいアップル設計せっけいし、ホンハイが製造せいぞうしたiPhoneである。中国ちゅうごくしゅとしておおとりうみ精密せいみつ工業こうぎょう<ホンハイ>)への部品ぶひん供給きょうきゅうがくは、韓国かんこくが244おくドル(80.3%)、日本にっぽん92おくドル(41.1%)、台湾たいわん46おくドル(87.2%)もある。

 中国ちゅうごく商務省しょうむしょう報告ほうこくしょによると、やく650ドルのiPhoneを1だいっても中国ちゅうごくにはけい8.5ドルしかちない。利益りえき大半たいはん設計せっけい販売はんばいになうアップルがにし、付加ふか価値かちたか部品ぶひん供給きょうきゅうするにちかんだい一定いってい収益しゅうえき模様もようだ。

 アップルが25%の関税かんぜいコストを価格かかく上乗うわのせした場合ばあい、999ドルのiPhoneXSは160ドル値上ねあがりしてどう1159ドルになるという。この関税かんぜいによる値上ねあがりに、アップルがどう対処たいしょするかが問題もんだいだ。もし、販売はんばい価格かかく値上ねあげしたら、ただでさえ高価こうかなことが問題もんだいになっているiPhoneは、いっそう販売はんばい不振ふしんおちいるかもしれない。すると、その直撃ちょくげきをホンハイがらう。さらに、iPhoneへの部品ぶひんサプライヤーのビジネスが毀損きそんされる。

 一方いっぽう、アップルが販売はんばい価格かかくげず、関税かんぜい増加ぞうかぶんを、部品ぶひんサプライヤーとうけてくるかもしれない。つまり、部品ぶひん価格かかく強引ごういんげる可能かのうせいがある。その場合ばあいも、部品ぶひんサプライヤーは、おおきなダメージをこうむるだろう。

ピンチはチャンスかもしれない

 つまり、アップルがiPhoneの価格かかくげようとげまいと、いずれの場合ばあいも、部品ぶひんサプライヤーにしわせがくる。それは、1、2、3サプライヤーへと、ドミノだおてき被害ひがい拡大かくだいする。したがって、自分じぶん会社かいしゃがどのポジションにいて、だい4だん関税かんぜいにより、どのような被害ひがい想定そうていされるか、それを回避かいひするにはどうしたらいかに知恵ちえしぼり、対策たいさくこうじる必要ひつようがある。

 なお、このような関税かんぜいによる影響えいきょうは、iPhoneだけにかぎらない。だい4だんまでの制裁せいさい関税かんぜいにより、自分じぶん会社かいしゃのあらゆるビジネスが、どのような影響えいきょうけるかを調査ちょうさし、被害ひがい最小限さいしょうげんめる努力どりょく必要ひつようだ。さらにいえば、この関税かんぜいによって、競合きょうごう他社たしゃ方法ほうほういだすことができれば、ベストである。ようするに、ピンチはチャンスでもあるわけだ。

米国べいこくがファーウェイをELリストにせた

 べい商務省しょうむしょうは5月15にち、ファーウェイを米国べいこく製品せいひん輸出ゆしゅつ禁止きんしするエンティティー・リスト(EL)に追加ついかすると発表はっぴょうした。ELとは米国べいこくにとってのブラックリストで、これにってしまうと、米国べいこく製品せいひん輸出ゆしゅつきんじられる。

 過去かこには、中国ちゅうごく国営こくえいのスマホメーカーZTEやDRAMメーカーのJHICCがELにった。ZTEは、インテルやクアルコムの半導体はんどうたい調達ちょうたつできなくなり、操業そうぎょう停止ていしまれた。JHICCは、米国べいこくせい製造せいぞう装置そうち導入どうにゅうできなくなり、DRAM開発かいはつ生産せいさん頓挫とんざした。ファーウェイがELにったことにより、インテル、クアルコム、ブロードコムなどの半導体はんどうたい調達ちょうたつできなくなり、グーグル、マイクロソフト、オラクルなどのソフトウエアを使つかうこともできなくなる。

 ファーウェイの主要しゅよう取引とりひきさきは92しゃにのぼり、年間ねんかんやく670憶ドル(やく7ちょうえん)の部品ぶひん購入こうにゅうしている。米国べいこくは33しゃやく100おくドル)、日本にっぽんは11しゃ(66憶ドル)、台湾たいわんは10しゃ中国ちゅうごくは25しゃ取引とりひきしている。これらの取引とりひきさきには、甚大じんだい影響えいきょうる。

Googleがアンドロイドの提供ていきょう一部いちぶ停止ていし

 べいロイターが5月19にち、グーグルはファーウェイけのソフトウエアの出荷しゅっか停止ていしし、今後こんごファーウェイ製品せいひんではGoogle PlayとうほとんどのアプリやGmailなどが利用りようできなくなる見込みこみだと報道ほうどうした。そのかお認証にんしょうべいルメンタム、サーバーけプロセッサのべいインテル、スマホ半導体はんどうたいべいクアルコム、通信つうしん基地きちきょく半導体はんどうたいべいザイリンクスやべいブロードコムも、ファーウェイとの取引とりひき見直みなおすという。

 これにたいして、ファーウェイの幹部かんぶは、2019ねんあきから20ねんはるにかけて、アンドロイドにわる自前じまえOSを実用じつようするとあきらかにした。また、ファーウェイのにんただしCEOは、「米国べいこくせい同様どうよう半導体はんどうたいチップを製造せいぞうする能力のうりょくはある」と反論はんろんしている。

 しかし、この反論はんろん正確せいかくではない。事実じじつは、「ファーウェイ傘下さんか設計せっけいせんもんのファブレス企業きぎょう、ハイシリコンには、アップルとどう水準すいじゅんのスマホようプロセッサを設計せっけいする能力のうりょくがある」ということであり、製造せいぞう台湾たいわんのファンドリーのTSMCに委託いたくしている。したがって、ファーウェイには、半導体はんどうたい製造せいぞうする能力のうりょくはない。そして、以下いか出来事できごとにより、設計せっけいすらも困難こんなんになった。

ARMが設計せっけい情報じょうほう提供ていきょう停止ていし

 5月22にちえい国営こくえいメディアBBCが入手にゅうしゅした社内しゃない文書ぶんしょによると、ソフトバンク傘下さんかのARMは、ファーウェイとその子会社こがいしゃとの「すべての有効ゆうこう契約けいやくやサポートおよび保留ほりゅうちゅう契約けいやく」を停止ていしするよう従業じゅうぎょういん通達つうたつしていることがほうじられた。べい商務省しょうむしょうは「市場いちば価格かかくもとづき米国べいこく由来ゆらい部品ぶひんやソフトウエアが25%をえれば海外かいがい製品せいひん禁輸きんゆ対象たいしょうになる」としている。そのさい米国べいこくはつ知的ちてき財産ざいさん計算けいさんふくまれる。

 ARMは2004ねんべい半導体はんどうたい設計せっけいのアルチザン・コンポーネンツを買収ばいしゅうし、同社どうしゃ知的ちてき財産ざいさん使つかって設計せっけい情報じょうほう(IP)を構築こうちくしているため、ファーウェイとの取引とりひきができなくなった模様もようだ。

なぜARMのIPが使つかわれるのか

 半導体はんどうたい設計せっけいは、システム設計せっけい、アーキテクチャ設計せっけい論理ろんり設計せっけい回路かいろ設計せっけい、レイアウト設計せっけいと、5段階だんかいおこなわれる。ARMは、そのもっと上流じょうりゅう設計せっけい情報じょうほう(IP)を、垂直すいちょく統合とうごうがた半導体はんどうたいメーカーや設計せっけいせんもんのファブレスに提供ていきょうしている。

 ARMのIPが使つかわれる分野ぶんや非常ひじょうひろく、2016ねん時点じてんでスマホ(95%以上いじょう)、タブレット(90%以上いじょう)、ウエアラブル(90%以上いじょう)、ストレージ(90%以上いじょう)、クルマ(95%以上いじょう)、産業さんぎょう機器きき(30%以上いじょう)、通信つうしん設備せつび(60%以上いじょう)、家電かでん(60%)と圧倒的あっとうてきなシェアをほこる(1)。

米国、「国防権限法」発動で中国ファーウェイを叩き潰す…日本企業、緊急で対策策定の必要の画像2

 なぜこれほどARMのIPが使つかわれるかというと、だい1にそのシステムが確実かくじつ動作どうさすることが保証ほしょうされているからであり、だい2にその製造せいぞうプロセスはTSMCが構築こうちくみだからである。

 あらたなシステムをゼロから設計せっけい検証けんしょうするのは、途方とほうもない時間じかん人手ひとで必要ひつようである。また、その製造せいぞうプロセスを個別こべつ開発かいはつするには、莫大ばくだい投資とうし必要ひつようとなる。ところが、ARMのIPを使つかえば、この2つの問題もんだい一挙いっきょ解決かいけつできる。だから、世界中せかいじゅうがこぞって、ARMのIPを使つかうのである。

 ARMのIPを使つかった半導体はんどうたい個数こすうは2017ねんに213おくたっし、2020ねんには400~500おくになると予想よそうされている(2)。

米国、「国防権限法」発動で中国ファーウェイを叩き潰す…日本企業、緊急で対策策定の必要の画像3

ファーウェイは半導体はんどうたい設計せっけいできなくなる

 ファーウェイのさい新鋭しんえいスマホには、最先端さいせんたんの7nmのプロセスで製造せいぞうされたプロセッサ「Kirin」や通信つうしん半導体はんどうたい「Balong」が搭載とうさいされている。これらの半導体はんどうたいは、ARMのIPを使つかって設計せっけいされている。ところが、ARMは今後こんご、ファーウェイとの取引とりひき停止ていしする。その結果けっか、TSMCが5nmプロセスで製造せいぞうする次世代じせだいスマホようのプロセッサを、ファーウェイは設計せっけいすることができない。

 ARMのIPにわる設計せっけい情報じょうほうを、ファーウェイが独自どくじ構築こうちくすればいという意見いけんもあろう。理屈りくつでは、そうだ。しかし、それは現実げんじつてきでない。まず、前述ぜんじゅつしたように、確実かくじつ動作どうさするシステム設計せっけいおこなうには相当そうとう時間じかんがかかる。かりにその設計せっけい成功せいこうしたとしても、その製造せいぞうプロセスをだれ開発かいはつするのか。TSMCがARMのIPに対応たいおうする最先端さいせんたんプロセスを膨大ぼうだい投資とうしによりおこなうのは、そのIPを使つかった半導体はんどうたい需要じゅよう相当そうとうすう見込みこめるからである。TSMCが、になったファーウェイのためだけに、製造せいぞうプロセスを開発かいはつするとは筆者ひっしゃにはおもえない。

ファーウェイ対策たいさく急務きゅうむ

 ARMが取引とりひき停止ていししたことにより、ファーウェイは次世代じせだいスマホだけでなく、5G通信つうしん基地きちきょく開発かいはつ困難こんなんになるとおもわれる。スマホだけでなく、5Gよう通信つうしん基地きちきょくよう半導体はんどうたいにもARMのIPをもちいている可能かのうせいたかいからだ。

 ファーウェイの既存きそんのスマホと通信つうしん基地きちきょくは、れなくなっていくだろう。また、ファーウェイは、次世代じせだいのスマホと次世代じせだい通信つうしん基地きちきょく開発かいはつができなくなる。その結果けっか、ファーウェイの部品ぶひんサプライヤーには、きわめておおきな被害ひがいる。

 半導体はんどうたいでは、TSMCとうのファンドリー、メモリメーカー、CMOSセンサメーカーなどのファーウェイよう半導体はんどうたい出荷しゅっか激減げきげんするだろう。すると、これら半導体はんどうたいメーカーへ装置そうち材料ざいりょう納入のうにゅうする企業きぎょうのビジネスが毀損きそんされる。その被害ひがいは、1、2、3サプライヤーへと、ドミノだおしのように拡大かくだいしていく。関税かんぜい対策たいさく項目こうもくでも指摘してきしたが、自社じしゃがファーウェイを中心ちゅうしんとしたサプライチェーンのどこにいて、どのような被害ひがい想定そうていされるか、それを回避かいひするにはどうしたらいかについて対策たいさくこうじる必要ひつようがある。

 さらに、ピンチをチャンスにえる方法ほうほうかんがえることも必要ひつようだ。ファーウェイのスマホがれなくなった場合ばあい、サムスン電子でんし漁夫ぎょふるという想定そうていができる。また、ファーウェイの通信つうしん基地きちきょくれなくなれば、ノキアやエリクソンの基地きちきょくれるようになるだろう。そこには、あらたなビジネスチャンスがあるとおもわれる。

ELと「国防こくぼう権限けんげんほう」は別枠べつわく

 べいちゅうだい4だん関税かんぜい合戦かっせん展開てんかいしており、また米国べいこくがファーウェイをELに追加ついかしたことは、メデイアがおおきくほうじている。ところが、昨年さくねん8がつ13にち米国べいこく成立せいりつした法律ほうりつ国防こくぼう権限けんげんほう2019」については、なぜかメディアがほとんどげない。

 しかし、この国防こくぼう権限けんげんほうきわめて危険きけん法律ほうりつであり、対処たいしょしない企業きぎょう深刻しんこく窮地きゅうちおちい可能かのうせいがある。しかも、関税かんぜいやELは、べいちゅう首脳しゅのう会談かいだん解決かいけつされる可能かのうせいがあるが、法律ほうりつとして成立せいりつした国防こくぼう権限けんげんほう廃案はいあんにならないかぎり、なさ容赦ようしゃなく実行じっこうされるだろう。そして、あちこちで講演こうえんしてかんじるのは、ELと国防こくぼう権限けんげんほう混同こんどうしているひと多々たたいること、または国防こくぼう権限けんげんほうそのものをまったく認識にんしきしていないひとおおいことである。これは、メディアがきちんとほうじないことに原因げんいんがあるとおもわれる。

 では、国防こくぼう権限けんげんほうとはどのような法律ほうりつなのか。そして、どのような対策たいさくこうじる必要ひつようがあるのか。

国防こくぼう権限けんげんほうとは

 米国べいこくでは毎年まいとし上院じょういん下院かいん国防こくぼう予算よさん承認しょうにんするさいに、さまざまな条件じょうけん付加ふかされ、それが法律ほうりつになる。昨年さくねんは、79ちょうえん国防こくぼう予算よさん認可にんかされるさい国防こくぼう権限けんげんほう成立せいりつした。この法律ほうりつの889じょうには、べい政府せいふ機関きかんがファーウェイなど中国ちゅうごく企業きぎょう5しゃ製品せいひんやサービスを使つかってはならないことが明記めいきされている。そして、この法律ほうりつ運用うんようは、2段階だんかい日程にっていすすめられる。

今年ことし8がつ13にち以降いこう禁止きんしとなる取引とりひき

 国防こくぼう権限けんげんほうにより、今年ことし8がつ13にち以降いこうべい政府せいふ機関きかんとファーウェイなど中国ちゅうごく企業きぎょう5しゃとの取引とりひき禁止きんしされる(3)。べい政府せいふ機関きかんといっても、すべての連邦れんぽう政府せいふ省庁しょうちょう陸海空りくかいくうのすべてのぐん、すべての独立どくりつ行政ぎょうせい組織そしき国家こっか情報じょうほうきょく、CIA、NASA、環境かんきょう保護ほごちょうとう多数たすう)、べい連邦れんぽう政府せいふが100%所有しょゆうする企業きぎょうやく20しゃと、非常ひじょうはばひろい。これら全体ぜんたい国防こくぼう予算よさん年間ねんかん79ちょうえんであり、そのインパクトはきわめておおきい。

米国、「国防権限法」発動で中国ファーウェイを叩き潰す…日本企業、緊急で対策策定の必要の画像4

 また、取引とりひき禁止きんし中国ちゅうごく企業きぎょうは、スマホ出荷しゅっか台数だいすうシェア2通信つうしん基地きちきょく売上うりあげだかシェア1のファーウェイ、スマホ出荷しゅっか台数だいすうシェア9通信つうしん基地きちきょく売上うりあげだかシェア4のZTE、警察けいさつとう特定とくていよう無線むせん世界せかいシェア1のHytera Communications、監視かんしカメラ業界ぎょうかい世界せかいシェア1のHangzhou Hikvision、監視かんしカメラ業界ぎょうかい世界せかいシェア2のDahua Technologyと、かく分野ぶんやでトップシェアの企業きぎょうばかりである。くわえて、国防こくぼう長官ちょうかん国家こっか情報じょうほう長官ちょうかんまたはFBI長官ちょうかん協議きょうぎうえ取引とりひき禁止きんしする中国ちゅうごく企業きぎょうをいくらでも追加ついかできることも明記めいきされている。

2020ねん8がつ13にち以降いこう禁止きんしとなる取引とりひき

 来年らいねん東京とうきょう五輪ごりん直後ちょくごである2020ねん8がつ13にち以降いこうだい2段階だんかい禁止きんしになる取引とりひきは、だい1段階だんかいより影響えいきょうおおきい。4にしめすとおり、Cしゃが、本社ほんしゃ支社ししゃ営業えいぎょうしょ研究所けんきゅうじょ工場こうじょうのどこかで、ファーウェイとう中国ちゅうごく企業きぎょう5しゃ製品せいひん、またはファーウェイとう中国ちゅうごく企業きぎょう5しゃ部品ぶひんまれたBしゃ製品せいひん使つかっていたとする。

米国、「国防権限法」発動で中国ファーウェイを叩き潰す…日本企業、緊急で対策策定の必要の画像5

 すると、ファーウェイとう中国ちゅうごく企業きぎょう5しゃとはまったく関係かんけいがないCしゃ製品せいひんまで、べい政府せいふ機関きかんとの取引とりひき禁止きんしされる。これは、Cしゃ業種ぎょうしゅによらない。電子でんし機器きき通信つうしん機器ききだけでなく、アパレルでも食品しょくひんでも医療いりょうひんでも、分野ぶんやわず禁止きんしされるのだ。

対象たいしょうはソフトウエアにもひろがる可能かのうせいがある

 さらに面倒めんどうなのは、国防こくぼう権限けんげんほう禁止きんしするものが、ハードウエアだけにかぎらないかもしれないということである。ファーウェイは、通信つうしん基地きちきょくとスマホ以外いがいに、クラウド、会社かいしゃ基幹きかんシステム、工場こうじょうのオートメーションなどの法人ほうじんけICTソリューションビジネスをおこなっている。

 そして、ファーウェイの2017ねんアニュアルレポートには、「“フォーチュングローバル500”にランクインする企業きぎょうのうち197しゃ上位じょうい100しゃのうち45しゃが、ファーウェイをデジタル変革へんかくのパートナーにえらんでいます」とかれているのである。もしこれが、国防こくぼう権限けんげんほう抵触ていしょくするなら、世界せかいだい混乱こんらんおちい危険きけんせいがある。

 そして、5がつ初旬しょじゅん以降いこう行動こうどうから、米国べいこくはどのような手段しゅだん使つかってもファーウェイをたたつぶすという意図いとかんじられる。したがって、ファーウェイの法人ほうじんけICTソリューションビジネスを使つかっている企業きぎょうのビジネスも、国防こくぼう権限けんげんほう抵触ていしょくする可能かのうせいたかいといえる。あなたの会社かいしゃのどこかで、またはサプライヤーやカスタマーのどこかが、ファーウェイなど中国ちゅうごく企業きぎょう製品せいひんやサービスを使つかっているかどうかを、早急そうきゅう調査ちょうさする必要ひつようがある。

根拠こんきょのない楽観らっかん禁物きんもつ

 2016ねん公開こうかいされた映画えいが『シン・ゴジラ』は、内閣ないかく官房かんぼうふく長官ちょうかん政務せいむ担当たんとうけん巨大きょだい不明ふめい生物せいぶつ特設とくせつ災害さいがい対策たいさく本部ほんぶきょわざわいたい事務じむ局長きょくちょう矢口やぐちらんどう長谷川はせがわ博己ひろみ)が主役しゅやくである。東京とうきょう蒲田かまた上陸じょうりくしたゴジラを、自衛隊じえいたい対戦たいせんヘリが攻撃こうげきすることになり、大臣だいじんたちが「これでころせ処分しょぶんできるだろう。ゴジラの死骸しがい使つかった復興ふっこうあんでもかんがえてみるか」とのう天気てんき発言はつげんをしたのにたいして、矢口やぐちらんどうつぎのようにべている。

大臣だいじんさき戦争せんそうではきゅう日本にっぽんぐん希望きぼうてき観測かんそく机上きじょう空論くうろん、こうあってほしいという発想はっそうなどにしがみついたために、国民こくみんに300まんにん以上いじょう犠牲ぎせいしゃています。根拠こんきょのない楽観らっかん禁物きんもつです」

 だい4だんべいちゅう関税かんぜい報復ほうふく合戦かっせん、EL、そして国防こくぼう権限けんげんほうによって、米国べいこく本気ほんき中国ちゅうごくを、そしてファーウェイをたたこうとしている。日本にっぽん企業きぎょう窮地きゅうちおちいろうと、倒産とうさんしようと、相手あいてたおれるまでなさ容赦ようしゃなく実行じっこうしてくるだろう。楽観らっかんはできない。対策たいさくこうじることをつよくおすすめする。
ぶんうえたかし微細びさい加工かこう研究所けんきゅうじょ所長しょちょう

湯之上隆/微細加工研究所所長

うえたかし微細びさい加工かこう研究所けんきゅうじょ所長しょちょう

1961ねんまれ。静岡しずおかけん出身しゅっしん。1987ねん京大きょうだい原子核げんしかく工学こうがく修士しゅうし課程かてい卒業そつぎょう日立製作所ひたちせいさくしょ、エルピーダメモリ、半導体はんどうたい先端せんたんテクノロジーズにて16ねんはん半導体はんどうたい微細びさい加工かこう技術ぎじゅつ開発かいはつ従事じゅうじ日立ひたち退職たいしょく長岡技術科学大学ながおかぎじゅつかがくだいがく客員きゃくいん教授きょうじゅ兼任けんにんしながら同志社大学どうししゃだいがく専任せんにんフェローとして、日本にっぽん半導体はんどうたい産業さんぎょう凋落ちょうらくした原因げんいんについて研究けんきゅうした。現在げんざいは、微細びさい加工かこう研究所けんきゅうじょ所長しょちょうとして、コンサルタントおよび新聞しんぶん雑誌ざっし記事きじ執筆しっぴつおこなっている。工学こうがく博士はかせ著書ちょしょに『日本にっぽん半導体はんどうたい敗戦はいせん』(光文社こうぶんしゃ)、『電機でんき半導体はんどうたいだい崩壊ほうかい教訓きょうくん』(日本文芸社にほんぶんげいしゃ)、『日本にっぽんがたモノづくりの敗北はいぼく』(文春ぶんしゅん新書しんしょ)。


公式こうしきHPは 微細びさい加工かこう研究所けんきゅうじょ

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