セブン、サントリー新しん浪なみ社長しゃちょう就任しゅうにんで取引とりひき見直みなおし検討けんとうか　他たビールが営業えいぎょう攻勢こうせい、業績ぎょうせきに悪影響あくえいきょうも

　前まえローソン会長かいちょうの新しん浪なみ剛史たけし氏しが10月1日にち付づけでサントリーホールディングス（HD）次期じき社長しゃちょうに就任しゅうにんする人事じんじをめぐり、コンビニエンスストアチェーン最大手さいおおてのセブン-イレブンが不穏ふおんな動うごきを示しめしているという。

　セブン社内しゃないは「昨日きのうまでの商売敵しょうばいがたき（ローソン）がトップを務つとめる企業きぎょうと急きゅうに仲良なかよく商売しょうばいしろといわれても無理むり」（同社どうしゃ幹部かんぶ）との気分きぶんが強つよく、大口おおぐち仕入しいれ先さきであるサントリーとの契約けいやく見直みなおしを求もとめる声こえすら上あがっているという。新しん浪なみ氏しは、さっそく難むずかしい立場たちばに立たたされそうだ。

　新しん浪なみ氏しはサントリー創業そうぎょう一族いちぞくの佐治さじ信忠のぶただ社長しゃちょう兼けん会長かいちょうの誘さそいを受うけ、10月にサントリーHDの社長しゃちょうに正式せいしき就任しゅうにんする。経済同友会けいざいどうゆうかい副ふく代表だいひょう幹事かんじも務つとめ、財界ざいかいの論客ろんかくとして知しられる新しん浪なみ氏しのスカウト人事じんじは、経済けいざい界かいで大おおきな反響はんきょうを呼よんだ。

「他社たしゃのトップ人事じんじに関かんするコメントは差さし控ひかえたい」。今回こんかいの人事じんじについて、セブンは報道ほうどう各社かくしゃの取材しゅざいに沈黙ちんもくを守まもっている。だが関係かんけい者しゃによると、セブンやイトいとーヨよーカ堂かどうを傘下さんかに収おさめるセブン＆アイ・ホールディングスを率ひきいる鈴木すずき敏文としふみ会長かいちょうは「世間せけん受うけを狙ねらったサプライズ人事じんじには我慢がまんがならない」と強つよい不満ふまんを周囲しゅういに漏もらしているという。セブン関係かんけい者しゃが説明せつめいする。

「これまでコンビニ業界ぎょうかい首位しゅいのセブンと2位いのローソンは、激はげしい競争きょうそうを繰くり広ひろげてきた。新しん浪なみ氏しはセブンについて『経営けいえいが独善どくぜん的てき』などと強つよい表現ひょうげんを使つかい、鈴木すずき会長かいちょうの経営けいえい姿勢しせいを厳きびしく批判ひはんしてきた。セブンや鈴木すずき会長かいちょう側がわにすれば、新しん浪なみ氏しの批判ひはんをマスコミ向むけに自分じぶんが目立めだつために相手あいてを批判ひはんするというパフォーマンスと受うけ止とめ、苦々にがにがしく思おもってきた。その新しん浪なみ氏しがトップを務つとめることになるサントリーが『従来じゅうらいと変かわらぬ取引とりひきをよろしく』と言いってきても、やはりセブン側がわは面白おもしろくないというのが本音ほんねで、不信ふしん感かんを募つのらせている」

　セブン側がわのこうした気分きぶんを裏付うらづけるエピソードは少すくなくない。業界ぎょうかい関係かんけい者しゃの証言しょうげんによると、「新しん浪なみ氏しはサントリー社長しゃちょうに内定ないていした直後ちょくごに『御ご挨拶あいさつにうかがいたい』とセブンの鈴木すずき会長かいちょうに面会めんかいを申もうし入いれてきたが、断ことわられた」という。セブン幹部かんぶは「昨日きのうまで戦たたかってきた相手あいて、しかもわれわれを批判ひはんしてきた相手あいてから握手あくしゅを求もとめられても、そういう気きにはなれない」と本音ほんねを漏もらしている。

　ビールなど酒類しゅるいの約やく4割わりはコンビニ経由けいゆで販売はんばいされており、メーカーにとってコンビニ陳列ちんれつ棚だなの確保かくほは業績ぎょうせきに直結ちょっけつする至上しじょう命題めいだい。特とくに最大手さいおおてのセブンは、アサヒビールやキリンビールと並ならんでサントリー製品せいひんを積極せっきょく的てきに扱あつかってきた経緯けいいがあるが、セブン内部ないぶでは「サントリーは信用しんようできない」と同社どうしゃ製品せいひんの扱あつかいの見直みなおしを求もとめる声こえが数多かずおおく出でているという。こうした地殻ちかく変動へんどうをみて、アサヒは「サントリーのシェアを奪うばう絶好ぜっこうの機会きかい」と営業えいぎょう攻勢こうせいをかける準備じゅんびに入はいった。キリンも追撃ついげきする構かまえで、販売はんばいの大おおきな砦とりで・コンビニ最大手さいおおてのセブンをめぐり、サントリーは思おもわぬ困難こんなんに迫せまられている。
（文ぶん＝編集へんしゅう部ぶ）