こうなると
人類は
後戻りができなくなる。
会議で
議論する、メールでやりとりする、
上司から
依頼を
受けた
知的なタスクを
処理するといった
仕事は、AIで
置き
換わるようになる。
要は、「
頭脳労働者は
機械に
置き
換えたほうが
安上がり」という
状況が
成立してしまうのだ。
多くの有力科学者が「この段階に到達する前に、人工知能の開発を止めたほうがいい」とアドバイスしている。にもかかわらず開発競争が止まらない事情は何か?
そう、1940年代の武器開発競争と状況はまったく符合している。グローバル企業同士の経済戦争が始まってしまったから、未来は止められないのだ。
しかし、もし発明がなされなければ仕事消滅は起きない。起きないという意見の多くは「汎用型のAIをあと20年ないしは30年で完成させることなどできない」という観測を論拠にしている。私は、その楽観論が心配である。
なぜなら、汎用型のAIを開発するために年間数千億円の投資を継続的に行っている会社のことをよく知っているからだ。それがグーグルである。グーグルの開発能力を知っているがゆえに、年間予算数百万円の大学の研究者が専門知識をベースに「そんなことは起きない」と言うことに、納得はできないのだ。
念のために、話をもとの議論に戻しておく。汎用型AIが20年以内に完成するか完成しないかは五分五分の議論かもしれない。しかし、仮にグーグルがそれを完成してしまったら? そうなると、頭脳労働のほうが先に消滅し、肉体労働の仕事だけが残る未来がやってくる。そのことに備えておいたほうがいいというのが『仕事消滅』に書かれている主張である。
さて、同書は現在発売中だ。自動運転車が登場し、AIトレーダーが全盛となり、人型ロボットが職場で活躍するようになる時代ももうすぐ来るとしたら。イノベーションで産業が発展することを喜べず失業が気になる人にとっては、必読の本である。
(文=鈴木貴博/百年コンサルティング代表取締役)