国会議員秘書歴20年以上の神澤志万です。
10月24日の衆議院の本会議では、日米貿易協定など重要法案が審議入りしました。しかし、一部の委員会はいまだに森裕子参議院議員の質問通告問題が尾を引き、運営に支障が出ています。大型台風が迫っているなかで質問通告作業が遅れ、森議員に対する官僚の不満が爆発した件ですね。「家族が心配だし、家に帰れなくなるかも」という悲痛な叫びは記憶に新しいところです。森議員に対する「なんで嘘つくんですか?」「そんなに霞が関の役人が憎いですか?」というつぶやきも話題になりました。
現場に話を聞いたところ、天気予報で「台風のピーク」といわれていた10月12日の前日である「11日の16時半頃」に国会連絡室から各省庁に連絡があったそうです。このとき、すでに東京は雨が降っていましたよね。
このときは、質問項目を1行ずつまとめた簡単なペーパー(「一行つづり」といいます)だけで、秘書から「詳細は後ほど」と電話がきたので待機していたら、22時になって再度秘書から「あれ以上の詳細はないです」と連絡がきたそうです。
「えー? だったら最初から言ってよ!」
当然そうなりますが、怒りながらも省庁の職員たちは答弁準備の作業に取りかかったそうです。22時から作業を始めたのですから、それから関係各所でいろいろな決裁を受けて、答弁書をまとめる作業が終了した頃には終電はなくなり、外は大雨です。しかも、スーパーやコンビニの棚は空っぽで売り切れ状態。もう、涙も出ませんよね……。
そして、この台風を受けて、10月14日深夜には、関係部署に「明日(15日)の参議院予算委員会は、各党15分ずつ被災対応質疑してください。テレビ入り(NHKの中継)です!」と連絡がきました。電話を受けた質問担当の議員と秘書、そして職員たちは、それから準備でバッタバタだったそうです。
15日の予算委員会室の廊下で、目をこすりながら無事に答弁が終わるのを待っている職員たちがフラフラになっているように見えたのは、神澤だけではなかったはずです。
森議員の“質問漏洩”騒動の裏事情
森議員の問題は、もうひとつありましたね。情報漏洩の件です。
森議員の質問項目の内容について問い合わせを受けたことを、元財務官僚の高橋洋一氏が委員会前にインターネットの番組で発言したことで、森議員と所属の国民民主党から非難されたそうです。「質問通告を事前に公務員が漏らすと、公務員法違反になり、炎上したら議員が萎縮して質問できなくなる(から憲法違反)」ということですね。しかし、これは森議員の作業の遅れをごまかそうとしていただけにも見えますが、どうでしょうか。
ちなみに、質問項目をオープンにしている議員もいますが、これは、「職員(公務員)経由」でなく、自分でやっているからアリということだと思います。そもそも「一行つづり」では内容がわからず、よりよい質疑は行えません。野党なのですから、与党以上に質問の趣旨をしっかりと伝え、それに見合う答弁をもらうことが政策の実現に近づく手段だと思います。しかし、蓮舫参議院議員をはじめ野党議員の一部は、「詳細を伝えると情報が漏洩する」などと危惧し、ほとんど内容を教えないのです。