息いき吹ふき返かえす「公安調査庁こうあんちょうさちょう」…勢力せいりょく増強ぞうきょうで活発かっぱつ化かの狙ねらい

公安調査庁こうあんちょうさちょうが置おかれている中央ちゅうおう合同庁舎ごうどうちょうしゃ第だい6号館ごうかんA棟とう（「Wikipedia」より／っ）

　情報じょうほう機関きかんが活気かっきづいている。特とくに、公安調査庁こうあんちょうさちょうが現場げんばへの人員じんいん配置はいちを増加ぞうかするなど、情報じょうほう収集しゅうしゅうの強化きょうかに乗のり出だしている。この背景はいけいには、2020年ねんの東京とうきょうオリンピック・パラリンピックの開催かいさいを控ひかえて、テロ防止ぼうしの強化きょうかがある。

　公安調査庁こうあんちょうさちょうは法務省ほうむしょうの下部かぶ組織そしきだが、警察けいさつ組織そしきではない。同庁どうちょうのホームページでは、その目的もくてきについて次つぎのように説明せつめいしている。

「破壊はかい活動かつどう防止ぼうし法ほう、無む差別さべつ大量たいりょう殺人さつじん行為こういを行おこなった団体だんたいの規制きせいに関かんする法律ほうりつに基もとづき、公共こうきょうの安全あんぜんの確保かくほを図はかることを任務にんむとして、オウム真理教おうむしんりきょうに対たいする観察かんさつ処分しょぶんを実施じっしするとともに、国内こくない諸しょ団体だんたい、国際こくさいテロリズム、北朝鮮きたちょうせん、中国ちゅうごく、ロシア等とうの周辺しゅうへん諸国しょこくを始はじめとする諸しょ外国がいこくの動向どうこうなど、公共こうきょうの安全あんぜんに影響えいきょうを及およぼす国内外こくないがいの諸しょ情勢じょうせいに関かんする情報じょうほうの収集しゅうしゅう及および分析ぶんせきに取とり組くみ、我わが国くに情報じょうほうコミュニティの一員いちいんとして、情報じょうほう（インテリジェンス）の提供ていきょうを通つうじた政策せいさく決定けっていへの貢献こうけんに努つとめています」

　警察けいさつ組織そしきの公安こうあん警察けいさつ、内閣ないかく官房かんぼうの内閣ないかく情報じょうほう調査ちょうさ室しつ（内うち調ちょう）とともに日本にっぽんの情報じょうほう機関きかんの中核ちゅうかくを担になっているものの、旧きゅう民主党みんしゅとう政権せいけんの事業じぎょう仕分しわけでは廃止はいしの候補こうほになったこともある。それだけに、「上層じょうそう部ぶは東京とうきょうオリンピックが我々われわれの実力じつりょくを発揮はっきする絶好ぜっこうの機会きかいと考かんがえているようだ」（同庁どうちょう関係かんけい者しゃ）という。

「来年らいねん2019年ねんは、4月がつに天皇陛下てんのうへいかの退位たいい、5月に皇太子こうたいし殿下でんかの即位そくいがある。政治せいじ思想しそうテロに関連かんれんするものでは、この天皇陛下てんのうへいかの退位たいい関連かんれんが焦点しょうてんになる。さらに、9月からはアジアでは初はじめて、ラグビーワールドカップが日本にっぽんで開催かいさいされる。これは、2020年ねんの東京とうきょうオリンピックの開催かいさいの前哨ぜんしょう戦せん、東京とうきょうオリンピックに向むけての実践じっせん練習れんしゅうになる」（別べつの同庁どうちょう関係かんけい者しゃ）

　ただ、同庁どうちょうの年次ねんじ報告ほうこく書しょ「内外ないがい情勢じょうせいの回顧かいこと展望てんぼう」でも明あきらかなように、この報告ほうこく書しょの項こう立だてとして取とり上あげられているのは、オウム真理教おうむしんりきょう、過激かげき派は、共産党きょうさんとう、右翼うよく団体だんたいなどといったもので、政府せいふ関係かんけい者しゃやマスコミからも、「今時いまどき、オウム真理教おうむしんりきょうや共産党きょうさんとうがテロ行為こういを行おこなうと考かんがえるのはナンセンス。ここを監視かんしするのに予算よさんを使つかっているのであれば、民主党みんしゅとうが廃止はいし候補こうほに挙あげたのもうなづける」との声こえが出でるほどだ。

試ためされる、日本にっぽんの情報じょうほう機関きかんの実力じつりょく

　当然とうぜん、同庁どうちょうでも同様どうようの危機きき感かんを持もっている。

「最近さいきん、会議かいぎで上司じょうしの口くちから出でるのは、新あらたな情報じょうほうソースの開拓かいたくという話はなし。これまでのオウム真理教おうむしんりきょうや共産党きょうさんとうではなく、たとえば中国ちゅうごくや韓国かんこく、北朝鮮きたちょうせんの人脈じんみゃくや不審ふしん者しゃに対たいする情報じょうほうソースの開拓かいたくという話はなしが多おおい」（同庁どうちょう関係かんけい者しゃ）

　もちろん、中国ちゅうごく、韓国かんこくあるいは北朝鮮きたちょうせんからのテロの可能かのう性せいが高たかいというわけではないが、「在日ざいにちという点てんで、この3カ国かこくの動向どうこう、特とくに不審ふしん人物じんぶつの動向どうこうを把握はあくしておく重要じゅうよう性せいがあると判断はんだんされている」（同どう）という。

　もっとも重要じゅうようなのは、2020年ねんの東京とうきょうオリンピックでのテロ防止ぼうしという点てんにあるが、一朝一夕いっちょういっせきに情報じょうほうソースの開拓かいたく、情報じょうほう網もうをつくることができるわけではない。

「上司じょうしからは、折おりに触ふれて、2020年ねんの東京とうきょうオリンピックを展望てんぼうして、情報じょうほう網もうづくりを進すすめるようにという話はなしが出でてくる」（前出ぜんしゅつと別べつの同庁どうちょう関係かんけい者しゃ）

　これが、日本にっぽんの情報じょうほう機関きかんが活気かっきづいている背景はいけいにあることは間違まちがいない。しかし、「もともとテロに対たいする意識いしきが薄うすい日本人にっぽんじんの国民こくみん性せいから考かんがえて、付つけ焼刃やきば的てきなテロ防止ぼうしのための情報じょうほう網もうづくりがうまく機能きのうするとは思おもえない」（政府せいふ関係かんけい者しゃ）と冷さめた声こえが聞きかれるのも事実じじつだ。

　東京とうきょうオリンピックは、まさに日本にっぽんの情報じょうほう機関きかんの実力じつりょくが試ためされることになりそうだ。
（文ぶん＝鷲尾わしお香こう一いち／ジャーナリスト）