ゆで卵たまごを生なまに戻もどすことはできるか？　イグノーベル賞しょうのユニークな研究けんきゅうの数々かずかず

「まずは人ひとを笑わらわせ、その後ご考かんがえさせる」研究けんきゅうに与あたえられる「イグノーベル賞しょう」。日本人にっぽんじんが受賞じゅしょうの常連じょうれんであるからか、なじみ深ふかい賞しょうでもある。どれほど日本人にっぽんじんが受賞じゅしょうしているかというと、2020年ねんを含ふくめてなんと14年ねん連続れんぞくというから驚おどろきだ。

　さて、このイグノーベル賞しょう。研究けんきゅうを見みていくと、日常にちじょうの役やくに立たったり、何なにかしらの大だい発見はっけんであったり、生いき物ものの不思議ふしぎな生態せいたいを突つき止とめたりと、とっきやすくて興味深きょうみぶかいものが並ならぶ。

　そんな数々かずかずのユニークな研究けんきゅうたちを軽かるい文体ぶんたいで説明せつめいしてくれる『ヘンな科学かがく』（五十嵐いがらし杏あんず南みなみ著ちょ、総合そうごう法令ほうれい出版しゅっぱん刊かん）から紹介しょうかいしよう。

■ゆで卵たまごを生なまに戻もどすことはできるか？

　卵たまごを茹ゆでると、元もとには戻もどらない。それが定説ていせつである。それに挑戦ちょうせんした研究けんきゅう者しゃがいる。カリフォルニア大学だいがくアーバイン校こうのグレゴリー・ワイス教授きょうじゅらだ。彼かれらは物理ぶつり用語ようごで言いうところの「熱ねつエネルギー」による変化へんかを「運動うんどうエネルギー」と「位置いちエネルギー」によってちょっとだけ元もとに戻もどすことに成功せいこうしているという。

　必要ひつようなのは少すこしの尿素にょうそと超ちょう高速こうそく回転かいてんする装置そうち。実際じっさいのやり方かたは本書ほんしょをぜひ読よんでいただきたいのだが、結構けっこう大変たいへんだったりする。一いち晩ばん寝ねかせたり、１分間ふんかんに5000回転かいてんのスピードで回まわしたり。ただ、この絡からまったタンパク質たんぱくしつをほどき、きれいに折おり直なおすこの技術ぎじゅつは、医薬品いやくひん開発かいはつにおいて、様々さまざまな場面ばめんで応用おうようが期待きたいされているという。ぜひともこれからさらに進すすんでほしい研究けんきゅうだ。

■ポテトチップスの美味おいしさは「音おと」にある？

　料理りょうりの楽たのしみといったら味あじや香かおり。そんな「美味おいしさ」をさらに際立きわだたせるものがあるという。「音おと」だ。2008年ねんにイグノーベル賞しょう栄養えいよう学がく賞しょうを受賞じゅしょうした研究けんきゅうは、「ポテトチップスを食たべている間あいだに美味おいしそうなパリパリ音おんを流ながすと、さらに美味おいしく感かんじることについて」がテーマだ。

　オックスフォおっくすふぉード大学どだいがくのチャールス・スペンス教授きょうじゅと、その共著きょうちょ者しゃであるマッシリミアーノ・ザンピーニ博士はかせによって行おこなわれたこの研究けんきゅうでは、ボランティア200人にんを集あつめ、1人ひとりずつ防音ぼうおん室しつでプリングルズのポテチを食たべてもらった。プリングルズにも理由りゆうがあり、ポテチ1枚まいが均一きんいつに作つくられていて、公正こうせいな比較ひかくがしやすいのだという。

　この実験じっけんは、自分じぶんがポテチをかじった音おとをマイクで拾ひろい、それをヘッドフォンで聴きくという形かたちで行おこなわれた。その結果けっか、同おなじポテチでも、ヘッドフォンから出でる音量おんりょうを大おおきくしたり、高こう音域おんいきを強つよく出だしたりしたときの方ほうが、15％程度ていどかみごたえが強つよく、新鮮しんせんに感かんじられるということが分わかったという。つまり、音おとが味あじわいを変かえたのだ。

　◇

　本書ほんしょには数々かずかずのユニークな研究けんきゅうが紹介しょうかいされている。「ジェットコースターで尿にょう路ろ結石けっせきが通とおる」「いびきを改善かいぜんする楽器がっき」「昇進しょうしんさせる従業じゅうぎょう員いんはランダムで選えらぶと良よい」「バッタは『スターウォーズ』を見みると興奮こうふんする」など、身近みぢかなものから驚おどろくべきものまで様々さまざまだ。

　読よんでいくと日常にちじょうのちょっとしたことからでも、研究けんきゅうを始はじめることができることが分わかる。毎日まいにちが退屈たいくつしている。刺激しげきがないという人ひとにとっては、笑わらって、知的ちてき好奇心こうきしんを高たかめることができる一いち冊さつだ。
（金きむ井元いもと貴たか／新刊しんかんJP編集へんしゅう部ぶ）

※本ほん記事きじは、「新刊しんかんJP」より提供ていきょうされたものです。