面接の精度が低いのならハックすればよい
解決策は限られています。面接より精度の高い手法(パーソナリティテスト等)を利用するか、トレーニングを行って面接の精度を高めるか。しかし、現実的には面接をなくすことはできないでしょうし、ある程度の場数を踏まないと面接スキルは上がりませんから、面接精度を即座に引き上げることはできません。
そうなると残る解決策は一つです。不完全な選考手法である面接を研究し、面接官の印象を操作することです。これを私は「面接ハッキング」と呼んでいます。もちろん諸手を上げて賞賛されるような方法とは思いません。しかし、面接する側の能力が低いことで、本来見出されるべき才能が埋もれてしまうぐらいであれば、やるしかない「必要悪」ではないかと思うのです。
「面接ハッキング」とは何か
私の言う「面接ハッキング」とは、よくある「こういう時にはこう文句を言えばよい」といった固定的な「面接テクニック」ではなく、考え方であり、その本質は人間が人間を評価するというメカニズムを理解することです。面接評価が多くの心理バイアス(偏見)から成り立っているのであれば、それを逆手に取ればよいのです。
それをあまり話のうまくない「コミュ障」の人でもできるような簡単なポイントにフォーカスして、シンプルな推奨手法を整理してみました。詳細は近著『コミュ障のための面接戦略』(星海社新書)に書かせていただきましたので、関心を持っていただいた方はそちらをぜひご覧いただければと思います。
ただし、無闇に使うのは大変危険
人の評価のメカニズムを理解して、それを体現した応対をきちんと行えば、面接の合格率は驚くほど上がることでしょう。しかし、やはり「必要悪」は「必要悪」ですので、無闇に使うことはお勧めしません。なぜならば、当たり前のことですが、就職や転職における目標は受かることではなく、入社後に成果を出し、幸せになることだからです。
就職や転職でもっともやってはいけないことは、自分と合わない会社に入ってしまうことです。どんな人気企業でも早期退職する人や精神を患ってしまう人はいます。そうなってはいけません。「面接ハッキング」は無闇に使うとこの「最悪」のケースにつながる可能性があります。ですから、まずは自分を理解し、会社をきちんと選ぶ。この基本を踏まえた上で、自分に合うと感じた会社に対してだけ、「面接ハッキング」を行うことを強くお勧めします。
(文=曽和利光/株式会社人材研究所代表)