ホント？　ウソ？　徳川とくがわ家康いえやすにまつわる逸話いつわの真偽しんぎとは？

　2023年ねんのNHK大河たいがドラマ『どうする家康いえやす』の主人公しゅじんこうは、そのタイトル通どおり、江戸えど幕府ばくふを開ひらいた徳川とくがわ家康いえやすだ。

　革新かくしん者しゃだった織田おだ信長のぶながや、天下てんか統一とういつを果はたした豊臣とよとみ秀吉ひでよしとともに、三さん英傑えいけつの一人ひとりに並ならぶ家康いえやすだが、信長のぶながや秀吉ひでよしの華はなやかさと比くらべると、比較的ひかくてき地味じみな人物じんぶつに見みえるかもしれない。

　しかし、家康いえやすの天下取てんかとりへの道みちのりは厳きびしい。幼おさない頃ころに駿河するがの大名だいみょう・今川いまがわ義元よしもとの人質ひとじちとなり、苦労くろうして育そだつ。父ちちと祖父そふは殺ころされ、生おい立たちから波乱はらんに富とんでいた。その後ごは信長のぶなが、秀吉ひでよしに従したがい、多おおくの合戦かっせんに出陣しゅつじん。1600年ねんに関ケ原せきがはらの戦たたかいで西にし軍ぐんを破やぶり、天下てんかを手中しゅちゅうに収おさめた。

　そんな徳川とくがわ家康いえやすの生涯しょうがいをたどり、家康いえやすのさまざまな俗説ぞくせつを詳くわしく検証けんしょうし、それが誤あやまりであること、また疑問ぎもん視しされることを指摘してきし、真実しんじつを解明かいめいするのが『誤解ごかいだらけの徳川とくがわ家康いえやす』（渡邊わたなべ大門だいもん著ちょ、幻冬舎げんとうしゃ刊かん）だ。

大敗たいはいの後のちに描えがかせたといわれる「しかみ像ぞう」の正体しょうたいとは？

　そんな家康いえやすには実じつは現在げんざいの研究けんきゅうでは従来じゅうらい説せつの誤あやまりがかなり正ただされてきているという。そのエピソードの一ひとつが三さん方ぽうヶ原ばらの戦たたかいについての逸話いつわだ。

　1572年ねん、三方みかたヶ原ばらの戦たたかいで家康いえやすは武田たけだ方かたを相手あいてにして大敗たいはいを喫きっした。その時ときの逸話いつわの一ひとつとして敗北はいぼく後ご、のちの戒いましめとして自画像じがぞうを描えがかせたというものがある。

　家康いえやすが顔かおをしかめ、憔悴しょうすいしきった様子ようすが描えがかれており、見みたことがある人ひとも多おおいだろう。そして、家康いえやすは自身じしんの慢心まんしんを戒いましめるため、生涯しょうがいにわたってこの画像がぞうを座右ざゆうに置おいたという。その絵えの正式せいしき名称めいしょうは「徳川とくがわ家康いえやす三方みかたヶ原げん戦役せんえき画像がぞう」といい、「しかみ像ぞう」と呼よばれている。

　実じつはこの「しかみ像ぞう」だが、明治めいじ後期こうきには三さん方ぽうヶ原ばらの戦たたかいではなく、長篠ながしのの戦たたかいのものであり、当時とうじの苦くるしさを忘わすれないよう、尾張おわり藩はん祖その徳川とくがわ義直よしなおが描えがかせたと紹介しょうかいされているという。

　さらに、1936年ねんになると、徳川とくがわ義直よしなおが父ちち・家康いえやすの苦難くなんを忘わすれないために狩野かの探さがせ幽かそけに描えがかせたと紹介しょうかいされる。この頃ころから三さん方ぽうヶ原ばらの戦たたかいの情報じょうほうが加くわわる。

　現在げんざいの逸話いつわは、1972年ねんに刊行かんこうされた『徳川とくがわ美術館びじゅつかん名品めいひん図録ずろく』の中なかで解説かいせつされているもの。これ以降いこう、この解説かいせつが世間せけんに広ひろく定着ていちゃくしたと渡邊わたなべ氏しは述のべている。

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　本書ほんしょではこの他ほかにも有名ゆうめいな三さん方ぽうヶ原ばらの戦たたかいでの「脱糞だっぷん」エピソードの真偽しんぎや、「松平まつだいら信康のぶやすの切腹せっぷくは信長のぶながの命令めいれいだったのか」「秀忠ひでただの関ケ原せきがはら遅参ちさんは本当ほんとうに大だい失態しったいか」など、よく知しられる逸話いつわについて切きり込こんでいる。

　本書ほんしょを通とおしてさまざまな逸話いつわにまつわる疑問ぎもんを紐解ひもといていくと、今いままでの家康いえやすのイメージが変かわるかもしれない。（新刊しんかんJP編集へんしゅう部ぶ）
※本ほん記事きじは、「新刊しんかんJP」より提供ていきょうされたものです。