「深海魚しんかいぎょってどんな魚さかな」書評しょひょう　大人おとなの世界せかい観かん、揺ゆさぶる図鑑ずかん

評者ひょうしゃ：荒俣あらまた宏ひろし／朝あさ⽇新聞しんぶん掲載けいさい：2013年ねん07月がつ21日にち

深海魚しんかいぎょってどんな魚さかな驚おどろきの形態けいたいから生態せいたい、利用りよう著者ちょしゃ：尼あま岡おか邦夫くにお出版しゅっぱん社しゃ：ブックマン社しゃジャンル：自然しぜん科学かがく・環境かんきょう

ISBN: 9784893088000
発売はつばい⽇：
サイズ: ２６ｃｍせんちめーとる／２３２ｐ

深海魚しんかいぎょってどんな魚さかな―驚おどろきの形態けいたいから生態せいたい、利用りよう　[著ちょ]尼あま岡おか邦夫くにお

　ただの子こども向むけ学習がくしゅう図鑑ずかんと思おもってはいけない。これは大人おとなも驚おどろかす本ほんである。
　これまでの深海魚しんかいぎょ本ほんはピンボケ写真しゃしんと干物ひもののような標本ひょうほん写真しゃしんに失望しつぼうさせられたが、博物はくぶつ画がに似にせた白地しろじの背景はいけいに実物じつぶつ標本ひょうほんが見苦みぐるしくなく切きり抜ぬかれたビジュアルがようやく実現じつげんした。透明とうめいな頭部とうぶと球状きゅうじょうの眼め（め）を持もつ奇き魚ぎょデメニギスの鮮明せんめいな写真しゃしんは、見みるだけで世界せかい観かんが変かわる。
　最新さいしんの写真しゃしんを駆使くしし、これだけ細こまかに形態けいたいの仕組しくみや種類しゅるい識別しきべつの手てがかりを説明せつめいしてもらうと、異い次元じげんの形態けいたいをした生物せいぶつの心しんまで読よめるような気分きぶんになる。
　たとえばチョウチンアンコウの類るい。極小きょくしょうのオスが巨大きょだいなメスに寄生きせいするのは有名ゆうめいだが、眼めも鰭ひれ（ひれ）も失うしないイボ同然どうぜんの姿すがたで一生いっしょうお世話せわになる「真性しんせい」型がたもいれば、繁殖はんしょく期きだけ寄生きせいする「一時いちじ付着ふちゃく」型がた、自立じりつが可能かのうな「任意にんい」型がたもいる。
　発光はっこうする種類しゅるいは、真まっ暗くらな深海しんかいで発光はっこう器きの数かずや配列はいれつを鍵かぎに、異性いせいや仲間なかまと出会であう。
　彼かれらは生物せいぶつの鑑かん（かがみ）である。
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　ブックマン社しゃ・３７８０円えん