心しんの書しょをサステナブル経営けいえいの指針ししんに　ブリヂストン取締役とりしまりやく 代表だいひょう執行しっこう役やく Global CEO 石橋いしばし秀一ひでかずさんの本棚ほんだな

文明ぶんめいの類似るいじや差異さいをアメリカで実感じっかんし、学まなんだ

　小学生しょうがくせいの頃ころから本ほんの虫むしで、誕生たんじょう日びのプレゼントは本ほんか図書としょ券けんを親おやにお願ねがいしていました。『ドリトル先生せんせい』や『ファーブル昆虫こんちゅう記き』などの定番ていばんシリーズは図書館としょかんで借かり、小遣こづかいは古本ふるほん購入こうにゅうにあてました。小学しょうがく４年ねん時じには宮沢みやざわ賢治けんじの作品さくひんをほぼ網羅もうら。好すきな人ひとの著作ちょさくを片かたっ端ぱしから読よむ癖くせはこの頃ころからで、青年せいねん期きは小田おだ実みのるや五木いつき寛之ひろゆき氏しなどの著作ちょさくに親したしみました。アメリカに駐在ちゅうざいしていた90年代ねんだいは、ネイティブ・アメリカンの教おしえを記しるしたカルロス・カスタネダの著作ちょさくや、それに関かんする真木まき悠ゆう介かい氏しの論考ろんこうに出合であい、ネイティブ・アメリカンのシャーマニズムと日本にっぽんの自然しぜん信仰しんこうの類似るいじを知しりました。一方いっぽうで、駐在ちゅうざい地ちのナッシュビルはプロテスタント信者しんじゃの入植にゅうしょく地ち、いわゆるバイブル・ベルトのど真まん中なかで、文化ぶんか背景はいけいが日本にっぽんと大おおきく異ことなりました。考かんがえ方かたも違ちがい、現地げんち社員しゃいんと衝突しょうとつすることも。アメリカ生活せいかつが続つづく中なかでサミュエル・ハンチントンの『文明ぶんめいの衝突しょうとつ』が出版しゅっぱんされ、これに多おおくを学まなびました。文明ぶんめい論ろんへの興味きょうみは今日きょうまで尽つきず、ジャレド・ダイアモンドの『銃じゅう・病原菌びょうげんきん・鉄てつ』に目めを開ひらかされたり、最近さいきんはユヴァル・ノア・ハラリの著書ちょしょを読よみ耽ふけ（ふけ）ったり。また世界せかいを知しるほど日本にっぽんの歴史れきしの表裏ひょうりを知しりたくなり、司馬しば遼りょう太郎たろう、山本やまもと七なな平ひらめ、網野あみの善彦よしひこなどの著書ちょしょに触ふれていきました。日本にっぽんと密接みっせつなアジアについては、『全ぜん東洋とうよう街道かいどう』など藤原ふじわら新也しんや氏しの著書ちょしょ群ぐんや、田村たむら隆一りゅういちの『インド酔よい夢ゆめ行ぎょう』を読よんで興味きょうみを募つのらせました。この他ほか、趣味しゅみの絵画かいがや器うつわ、建築けんちくや演劇えんげきの関連かんれん本ほんも入いれると好すきな著者ちょしゃや書籍しょせきは数かぞえきれません。

　心しんに残のこった本ほんを挙あげると、まず、出口いでぐち治おさむ明あきら氏しの『哲学てつがくと宗教しゅうきょう全ぜん史し』。古今ここん東西とうざいの哲学てつがく者しゃや宗教しゅうきょう家かの思索しさくの足跡あしあとをたどり、時代じだい背景はいけいを含ふくめて分わかりやすく俯瞰ふかん（ふかん）しています。同氏どうしの『人類じんるい5000年ねん史し』シリーズと併あわせて面白おもしろく読よみました。

　『スパイス、爆薬ばくやく、医薬品いやくひん─世界せかい史しを変かえた17の化学かがく物質ぶっしつ』は、化学かがく物質ぶっしつが文明ぶんめいを押おし上あげたという視点してんで様々さまざまな歴史れきし的てきエピソードに迫せまっています。当社とうしゃはメーカーなので、哲学てつがくや宗教しゅうきょうに匹敵ひってきするインパクトを「モノ」が文明ぶんめいに与あたえてきた事実じじつに励はげまされました。化学かがく物質ぶっしつの扱あつかいは明あかるい歴史れきしばかりではありませんが、それを乗のり越こえた創意そうい工夫くふうが人ひとや環境かんきょうを救すくってきたのも確かくか。事業じぎょうを通つうじた社会しゃかい貢献こうけんについて改あらためて考かんがえさせられました。

資本しほん主義しゅぎの再さい構築こうちく　カギは課題かだいの発見はっけんと「利他りた」

　当社とうしゃはサステナビリティを経営けいえいの中核ちゅうかくに据すえ、資源しげん循環じゅんかんやCO２排出はいしゅつ削減さくげんなどに取とり組くんでいます。「環境かんきょう宣言せんげん」として発信はっしんしたのはSDGsが国連こくれんで採択さいたくされる５年ねん前まえの2010年ねん。当時とうじ担当たんとう役員やくいんになりたてだった私わたしは、環境かんきょうに関かんする本ほんを何なん十じゅう冊さつと読よみました。その一いち冊さつ『持続じぞく可能かのうな未来みらいへ』は、経営けいえい観かんの基軸きじくとなりました。著者ちょしゃ代表だいひょうのピーター・センゲは学者がくしゃですが、その言説げんせつは環境かんきょう課題かだいの提示ていじのみならず、いかに組織そしき内ないの意識いしきを高たかめ、価値かち創造そうぞうにつなげるかという組織そしき論ろんに及およんでいます。私わたしはこれまで、ドラッカー、コトラー、ポーター、レビット、日本人にっぽんじんでは大前おおまえ研一けんいち氏しの著書ちょしょなどに学まなび、最近さいきんは「SDGs志向しこうのビジネスは多大ただいな利益りえきをもたらす」と唱となえるレベッカ・ヘンダーソンの『資本しほん主義しゅぎの再さい構築こうちく』に学まなびました。こうした流ながれの中なかでマイルストーンとなったのが本書ほんしょでした。

　近年きんねん続つづけて読よんでいるのが山口やまぐち周あまね氏しの著書ちょしょです。「論理ろんりや理性りせいに軸じく足あしを置おいた経営けいえいでは勝かてない。直感ちょっかんや感性かんせいや美意識びいしきを磨みがけ」と山口やまぐち氏しは説ときます。当社とうしゃの創業そうぎょう者しゃはブリヂストン美術館びじゅつかん（現げん・アーティゾン美術館びじゅつかん）を建たてるなど、アートとビジネスの両立りょうりつを実践じっせんしました。

私わたしもアート鑑賞かんしょうが趣味しゅみですし、論理ろんり重視じゅうしのグローバルビジネスにこそパッションや共感きょうかんを呼よぶ美意識びいしきが不可欠ふかけつと考かんがえてきました。山口やまぐち氏しは『ニュータイプの時代じだい─新しん時代じだいを生いき抜ぬく24の思考しこう・行動こうどう様式ようしき』で、問題もんだいの解決かいけつ能力のうりょくより、問題もんだいを発見はっけん・提起ていきする能力のうりょくが問とわれているとも書かいています。当社とうしゃは変化へんかに応おうじて課題かだいを発見はっけんし、事業じぎょうを構想こうそうする組織そしきづくりに注力ちゅうりょくしています。ですから非常ひじょうに納得なっとくできる内容ないようでした。

　日本にっぽんの美意識びいしきとして私わたしが関心かんしんを寄よせているのは、京都きょうとの寺社じしゃや、自然しぜんを愛あい（め）でる和歌わかの雅みやび（みやび）な世界せかい。空海くうかいが心しんと宇宙うちゅうのつながりを説といた真言しんごん密教みっきょうなどに関かんする本ほんも読よみます。どの文化ぶんかも心しんの有あり様さまを映うつすものだと感かんじます。自分じぶんの心しんを磨みがくうえで愛読あいどくしているのは、書名しょめいも『心しん。』。著者ちょしゃの稲いね盛もり和夫かずお氏しが最もっとも崇高すうこうな心しんの有あり様さまと語かたる「利他りた」は、持続じぞく可能かのうな未来みらいへ向むけた資本しほん主義しゅぎの再さい構築こうちくにおける根源こんげん的てきなコンセプトではないかと思おもっています。

　今いま読よんでいるのは、髙樹のぶ子こ氏しの『小説しょうせつ伊勢物語いせものがたり 業平なりひら』。これも面白おもしろいです。とにかく読書どくしょが好すきなので、我わが家やは本ほんだらけ。整理せいりしなさいとしょっちゅう妻つまとバトルです（笑）。 （談だん）

石橋いしばし秀一ひでかずさんの経営けいえい論ろん

　昨年さくねん、中長期ちゅうちょうき事業じぎょう戦略せんりゃく構想こうそうを発表はっぴょうしたブリヂストン。コア事業じぎょうであるタイヤ事業じぎょうの強化きょうかや成長せいちょう事業じぎょうであるソリューション事業じぎょうの価値かち増幅ぞうふくに邁進まいしんしています。

社会しゃかい価値かちと顧客こきゃく価値かちを持続じぞく的てきに提供ていきょうする

　ブリヂストンは昨年さくねん、サステナビリティを経営けいえいの中核ちゅうかくに据すえた中長期ちゅうちょうき事業じぎょう戦略せんりゃく構想こうそうを発表はっぴょう。1931年ねんの創業そうぎょう、1988年ねんの米べい・ファイアストン社しゃ買収ばいしゅうを契機けいきとした第だい二にの創業そうぎょうに続つづき、2020年ねんを「第だい三さんの創業そうぎょう」と位置いちづけ、「2050年ねん サステナブルなソリューションカンパニーとして社会しゃかい価値かち・顧客こきゃく価値かちを持続じぞく的てきに提供ていきょうしている会社かいしゃへ」というビジョンを掲かかげた。石橋いしばし秀一ひでかずGlobal CEOはこう語かたる。

　「ブリヂストンは、創業そうぎょう者しゃが社是しゃぜとして掲かかげた『最高さいこうの品質ひんしつで社会しゃかいに貢献こうけん』を不変ふへんの使命しめいとしています。“最高さいこうの品質ひんしつ”は時代じだいのニーズやテクノロジーの進化しんかによって変かわります。主力しゅりょくのタイヤの現在げんざいで言いうと、売うって終おわりではなく、１次じ寿命じゅみょうが終了しゅうりょうしたタイヤの表面ひょうめんを新あたらしく張はり替かえてリユースするリトレッドタイヤの提案ていあんなどを行おこなっています」

　１本ほんの新品しんぴんタイヤを２度ど張はり替かえた場合ばあい、新品しんぴんを３本ほん使つかう場合ばあいに比くらべ、原材料げんざいりょうやCO2排出はいしゅつ量りょうをほぼ半減はんげんできるという。

　「こうした社会しゃかい価値かちと、安全あんぜん性せいや経済けいざい性せいといったお客様きゃくさまにとっての価値かちの両立りょうりつを目指めざしています。また“社会しゃかいに貢献こうけん”の形かたちも時代じだいとともに変かわります。創業そうぎょう者しゃの石橋いしばし正二郎しょうじろうは、寄付きふ活動かつどうなどを積極せっきょく的てきに行おこないました。私わたしはたまたま名字みょうじも出身しゅっしん地ちも創業そうぎょう者しゃと同おなじですが、地元じもと福岡ふくおかには創業そうぎょう者しゃの寄付きふで建たてられた施設しせつや美術館びじゅつかんが各所かくしょにあり、それらを⾒て育そだちました。創業そうぎょうから90年ねんの間あいだにグローバル化かが進すすんだ現在げんざいの当社とうしゃは、業界ぎょうかいのリーダーとして未来みらいに対たいする責任せきにんを果はたしていくための行動こうどう指針ししん「Our Way to Serve」を国内外こくないがいのグループで共有きょうゆうし、Mobility（モビリティの進化しんかに貢献こうけんする）、 People（一人ひとりひとりの生活せいかつと地域ちいき社会しゃかいを支ささえる）、 Environment（環境かんきょう負荷ふかを低減ていげんし、より良よい環境かんきょうを残のこす）という３領域りょういきを柱はしらに、SDGsを始はじめとする社会しゃかい課題かだいに取とり組くんでいます」

ソリューション事業じぎょうを成長せいちょう軌道きどうに

　具体ぐたい的てきな取とり組くみとしては、高こう付加ふか価値かちのタイヤ製品せいひんなどの開発かいはつ・提供ていきょうによるコア事業じぎょうの強化きょうか、さらに、タイヤデータやモビリティの運行うんこうデータなどを活用かつようして新あたらしい価値かちを創造そうぞうするソリューション事業じぎょうの強化きょうかを進すすめている。

　「ソリューション事業じぎょうをグローバルで成長せいちょう軌道きどうに乗のせ、さらに戦略せんりゃく的てき投資とうしも行おこなっていきます。拡大かくだいが見込みこまれるリサイクル事業じぎょうの他ほか、新あたらしい技術ぎじゅつでは人工じんこう筋肉きんにくの開発かいはつなどにもチャレンジしています。ゴムチューブを用もちいた人工じんこう筋肉きんにくは、産業さんぎょう用よう・家庭かてい用ようロボットへの展開てんかいが期待きたいされています」

　グローバル企業きぎょうのリーダーを務つとめるうえで糧かてになっている職務しょくむ経験けいけんについて尋たずねると、主おもに二ふたつあると言いう。

　「一ひとつは新入しんにゅう社員しゃいん時代じだい。勤務きんむ地ちは広島ひろしまでした。自主じしゅ的てきに販売はんばい会社かいしゃやガソリンスタンドの仕事しごとを手伝てつだい、課題かだいを見みつけて現場げんばや上司じょうしに伝つたえ、時ときには商品しょうひん戦略せんりゃくの担当たんとう者しゃに厳きびしい指摘してきをしました。それで『そんなに言いうなら本社ほんしゃでやれ』ということになって（笑）。もう一ひとつは、買収ばいしゅう先さきのファイアストン社しゃの赤字あかじやリコール問題もんだいの解決かいけつに奔走ほんそうした駐米ちゅうべい経験けいけん。修羅場しゅらばを耐たえ抜ぬいた経験けいけんが大おおきな糧かてになっています」

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