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藤巻亮太の旅是好日 藤巻亮太×高橋久美子 同世代音楽家対談【前編】 音楽を作る作業は農作業と同じ|好書好日
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藤巻ふじまき亮太りょうたたび好日こうじつ 藤巻ふじまき亮太りょうた×高橋たかはし久美子くみこ どう世代せだい音楽家おんがくか対談たいだん前編ぜんぺん】 音楽おんがくつく作業さぎょう農作業のうさぎょうおな

藤巻ふじまき亮太りょうたさん(ひだり)と高橋たかはし久美子くみこさん

 シャインマスカットと温州うんしゅうみかん

藤巻ふじまき亮太りょうた以下いか藤巻ふじまき):おそらくフェスでおいしたことはあるとおもいますが、きちんとおはなしするのははじめてですよね。バンドによってはなかのいいバンドとつるんだりするひともいますが、ぼくたちはそうでもなかったから。

高橋たかはし久美子くみこ以下いか高橋たかはし):そうですね、はじめてだとおもいます。わたし、レミオロメンの5きょくくらいはいったアルバムがきで、大学だいがく時代じだいよくいていたんです。

藤巻ふじまき:『フェスタ』ですね。ちょうど大学だいがく卒業そつぎょうしたくらいで、そのころは、山梨やまなし実家じっかかえって、フリーターをしながら音楽おんがくをやっていこうとはらめたときでした。近所きんじょ神社じんじゃ母屋もやだったのでしてもらって、改装かいそうしてスタジオとして使つかっていました。自分じぶんたちでは“神社じんじゃ時代じだい”ってんでるんです。ジャケットにうつっているのは、そのスタジオからった神社じんじゃ屋根やねなんです(笑)。

高橋たかはし:わあ、神社じんじゃのそばでまれた音楽おんがくかせてもらっていたんですね。じつわたしも、チャットモンチーにはいってすぐのころはフリーターをしていました。車中しゃちゅうはくをしながら、名古屋なごやくらいまでって。友達ともだちいえ転々てんてんとしているときもありました。車中しゃちゅうはく時代じだいに、「サラバ青春せいしゅん」「シャングリラ」「ハナノユメ」なんかの歌詞かしきましたね。

藤巻ふじまき今日きょうは、音楽おんがくはなしはもちろんですが、ませていただいた著書ちょしょ『その農地のうちわたしいます 高橋たかはしさん次女じじょらん』(ミシマしゃ)、『一生いっしょうのおねがい』(筑摩書房ちくましょぼう)についてきたいとおもっていて。いまは、東京とうきょう愛媛えひめの2拠点きょてん生活せいかつで、愛媛えひめでは農業のうぎょうをされてるんですよね。

高橋たかはし:はい、東京とうきょう1ヶ月かげつ愛媛えひめ1ヶ月かげつ交互こうごしています。11月は愛媛えひめもどってみかんの収穫しゅうかくです。9月はおべい収穫しゅうかくをしました。

藤巻ふじまき:うちも実家じっかもも・ぶどう農家のうかをしていて、シャインマスカットなどをそだてています。えだ剪定せんてい受粉じゅふん収穫しゅうかくとそれぞれしゅがかかる時期じきがあるんです。みかんは11月が収穫しゅうかくなんですね。

高橋たかはし:はい、うちは温州うんしゅうみかんをそだてています。

藤巻ふじまき:そもそも、どうして2拠点きょてん生活せいかつをしようと?  農業のうぎょうは、最初さいしょからやろうとおもっていたんですか。

高橋たかはし農業のうぎょうはじめたのは、実家じっか農家のうかだったことがおおきいとおもいます。祖父母そふぼはみかん農家のうかで、農繁期のうはんき父母ちちははわたしたちも一緒いっしょ手伝てつだいをしました。東京とうきょうてからも収穫しゅうかく時期じきだけはかえっていたんですよ。ははつきに1かいかなら野菜やさいおくってくれて、それをえっちゃんとあっこちゃん(チャットモンチーの橋本はしもと絵莉えりさんと福岡ふくおか晃子あきこさん)にわたしたりもしていました。東京とうきょうらしはじめてから、そんな経験けいけんがとても貴重きちょうで、なににもがた時間じかんだとかんじるようになったんです。

藤巻ふじまき:そのおもいは、20だいころはありました?

高橋たかはしいまほどはないですね。

藤巻ふじまき:チャットモンチーで活動かつどうしていたころは、ほぼ20だいですよね。ぼくもレミオロメンで活動かつどうしていた時期じきがほぼ20だいなんです。音楽おんがくはなれたのは、もともとやりたいことがあったから?

高橋たかはしとくにやりたいことはなかったんですよ。バンドで「音楽おんがくはもう精一杯せいいっぱいやった」という気持きもちで、めて半年はんとしくらいはぼんやりしていました。そうしたら作詞さくし依頼いらいるようになり、作詞さくし作家さっかになっていたというながれで。それまでバンドでドラムをたたいていたから、からだうごかしながらきょくつくっていたのですが、作家さっかになってからはからだからくる刺激しげきがなくなったからかな、をいじりたいとおもって一軒家いっけんやして、にわ野菜やさいそだてるようになりました。コンポストになまゴミをれて肥料ひりょうつくったりもして。「東京とうきょうでも野菜やさいそだてられるぞ!」。でも物足ものたりないというのと、高齢こうれいれていく田畑たはたすこしでもなにとかしたいと、愛媛えひめでもはたけをやりはじめました。

藤巻ふじまき:なるほど。チャットモンチーの「サラバ青春せいしゅん」がきで、えがいているものがすごくフィジカルだなとおもって。学生がくせい時代じだいって、ひととの距離きょりかん恋愛れんあいをフィジカルにかんじるじゃないですか。そういった言葉ことばにしづらいことを言葉ことばにして、そのあいだをつなぐようながすごくいいなとおもっていました。

高橋たかはし:ありがとうございます。どちらかといえば、感情かんじょうちかですよね。れて農業のうぎょうをすることが、その感覚かんかくもどすことにちかいのかなとおもっています。そんな経験けいけんわかひとももっとしたらいいのにとおもい、共同きょうどうはたけをやるようになりました。きっかけは、愛媛えひめのカフェでったわかたちでした。そばにはたけやまがあるのに、れたことがほとんどなかったおおくて。もんもんとしたものをかかえてたりもして。「だったられたらいいんじゃない?」とおもったのがきっかけです。いまは7にんくらいでやっていて、初心者しょしんしゃばかりです。

れ、うごかす経験けいけんからまれる言葉ことば

藤巻ふじまき:みなさん、べつ仕事しごともされているんですか。

高橋たかはし:そうですね、専業せんぎょう農家のうか目指めざさず、やすみのにピクニックするかんじであそびにてよ、とこえをかけました。もちろん夏場なつば草刈くさかりはあせだくだし、大変たいへんなこともたくさんありますが、まずは気分きぶん転換てんかんがてらに、と。収穫しゅうかく時期じき一緒いっしょにおいしようよとか、たのしみながらおのおののペースでつづけてますね。おにぎりをつくってみんなではたけべたりもたのしい。東京とうきょうからているもいます。2ヶ月かげついち定期ていきてきてくれて手伝てつだってくれます。やしになっているんだろうなとおもうんですよね。

藤巻ふじまきれない生活せいかつって、現代げんだいではほとんどのひとがそうですよね。がなくても生活せいかつできるし、便利べんりだし効率こうりつよくごせる。損得そんとく便利べんりさだけをかんがえると、自然しぜんからとおくなるようながします。

高橋たかはし都会とかいとか田舎いなか関係かんけいないんですよね。らくらくじゃないか、それを優先ゆうせんしてかんがえるのは、どちらかというと田舎いなかほうつよいかもしれない。都会とかいへのあこがれをったまま20だい30だいになっていくわけで、身近みぢかに「素晴すばらしいものがあるよ」ということにづいてほしいなとおもいます。おいいま6年生ねんせいなんですけど、まわりにさんはたけがあってもゲームであそぶのが一番いちばんきそう。それもいいんですが、「一緒いっしょつくろう」とさそってみると、「面白おもしろい!」って夢中むちゅうになってくれる。将来しょうらい、もしづまったりしても、そんな経験けいけん自分じぶんすくってくれるんじゃないかとおもっています。

藤巻ふじまき農業のうぎょうをやることで、言葉ことば変化へんかはありましたか。

高橋たかはしわったがします。むしごえとりこえ自然しぜんおとちかくにあって、そういうところにゆだねていたら、カッコつけずに自然体しぜんたいけるようにはなったようにおもいます。

藤巻ふじまきぼくは、毎年まいとし山梨やまなしで「Mt.FUJIMAKI」というフェスをやっているんですけど、なぜこのイベントをやるんだろうとふとおもったことがあったんです。これまでは、バンドのために音楽おんがくをしていた気持きもちがつよかったし、それがモチベーションになっていた。だけどソロになってから、それがよくからなくなっていてたときがあって。まよったとき原点げんてんもどろうとおもい、そのもどったさきにあるのが山梨やまなし自然しぜんだったりするんです。ふゆさむくてなつは40℃をえる、そんな寒暖かんだんなかで10代をごして、こいをして、いろいろな感情かんじょうさぶられて。地元じもとからいただいたものを恩返おんがえししたいというおもいからフェスを開催かいさいするようになったんだとあらためておもいました。実際じっさいうごかしながら地元じもとごす、大事だいじ時間じかんなんだとかんじました。

圧倒的あっとうてきに“けちょんけちょん”にされる場所ばしょ

高橋たかはしあたまかんがえることと実際じっさい行動こうどうこしてみると、ちがうことばかりですよね。さんはたけもそうで、実際じっさい農業のうぎょうをやってみると「こんなにむしがいるのか!」とおどろいてばかりです。バジルはほぼ全部ぜんぶむしべられましたから。

藤巻ふじまきむしって、すごいですよね(笑)。

高橋たかはし友達ともだちが「できた野菜やさいればいいじゃない」とうんですけど、そんなにできないから(笑)、と。るくらいあったら自分じぶんたちでべますから!って。自然しぜん相手あいてだとかんがえているほどうまくいかないんですよね。

藤巻ふじまき:それに気付きづくのは大事だいじですよね。なんでもおもどおりになる、あたまなか解決かいけつできるわけではない。自然しぜんは、それをおも場所ばしょなのかなとおもいます。

高橋たかはし:そうなんです。圧倒的あっとうてきに“けちょんけちょん”にされる場所ばしょって、いまはないんですよ。スマホで調しらべたら簡単かんたんこたえがてくる時代じだいに、毎回まいかい自然しぜんからフルボッコにされる。「わたしたちって、なになんだろう」と無力むりょくさをかんじます。だからこそ、できたときはすごくうれしいし、スーパーでっているものも「苦労くろうしてできたんだ」と、よりキラキラしてえる。農家のうかさんってすごい! とあらためておもうんですよ。農業のうぎょうをやることで視野しやひろがって、かんがえもふかまり、わたし一緒いっしょそだっているがします。

藤巻ふじまきぼくはふだんから農業のうぎょうをしているわけではないのですが、コロナでスケジュールが白紙はくしになってしまったときに、実家じっか農作業のうさぎょう手伝てつだいに1週間しゅうかんほどかえったんです。そのときに「こんなに手間てまがかかるのか」「時間じかんがかかるのか」とおどろきました。あと、ものを作業さぎょうは、農地のうち野菜やさい果物くだものそだてることにもているんじゃないかとおもったんです。ももやぶどうのそだつには必要ひつようで、成長せいちょう手伝てつだうことはできるけれど、果実かじつ成長せいちょうはコントロールできない。自分じぶんつくってやるんだという気持きもちこそが邪魔じゃまで、謙虚けんきょ姿勢しせい大事だいじなんじゃないかとおもって。つくろうとしてまれるものではないし、まれるときにはまれるべくしてまれるんだとかんじました。

高橋たかはしかるがします。藤巻ふじまきさんのきょくで、はたけやまからインスピレーションをまれたものはありますか。

藤巻ふじまき:「まほろば」というきょくは、「サントリー天然てんねんすい」のだい水源すいげんきたアルプス」のテーマソングとしてつくったきょくなんですけど、工場こうじょうのある長野ながのけん大町おおまちあしはこんで、その風土ふうどかんじてきました。いまって、1クリックでなんでも簡単かんたんえて、自分じぶんたちが自然しぜん一部いちぶだとかんじるひまがない。スマホをさわる、をいじる。それぞれしゅからはいってくる情報じょうほう全然ぜんぜんちがうじゃないですか。そだったものをべ、それがからだ一部いちぶになる。自分じぶん自然しぜん一部いちぶであることでづかされますよね。ぼくなかでは山梨やまなし風景ふうけい原点げんてんだとおもっていて、そのなかかんじたこと、れた経験けいけんが、いまきょくづくりにもつながっているのかなとおもいます。

高橋たかはしたしかに。はじめていたとき、これは本当ほんとうっているひと歌詞かしだとおもい、開口一番かいこういちばん藤巻ふじまきさんは農業のうぎょうされてたりしますか」といてしまいました。想像そうぞうだけじゃない、自然しぜん感触かんしょくつたわってくる歌詞かしだとおもいました。

後編こうへんはこちら28にち午前ごぜん10公開こうかいします。

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