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佐藤公彦さん『駐米大使　胡適の「真珠湾への道」』インタビュー　「容忍」の中国知識人に光｜好書好日
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佐藤さとう公彦きみひこさん『駐米ちゅうべい大使たいし　胡えびす適てきの「真珠湾しんじゅわんへの道みち」』インタビュー　「容よう忍にん」の中国ちゅうごく知識ちしき人じんに光ひかり

佐藤さとう公彦きみひこさん

　２０世紀せいき前半ぜんはんの中国ちゅうごくで、口語文こうごぶん学がくの提唱ていしょうなど新しん文化ぶんか運動うんどうを主導しゅどうした自由じゆう主義しゅぎ知識ちしき人じん・胡えびす適てき（１８９１～１９６２）には、日米にちべい開戦かいせん前後ぜんこうの駐米ちゅうべい大使たいしというもう一ひとつの顔かおがある。そこに本書ほんしょは焦点しょうてんを当あてた。

　深ふかい教養きょうようを武器ぶきに胡えびす適てきは米国べいこく各地かくちで講演こうえんし、中国ちゅうごくが文明ぶんめい化かされた国くにであることを示しめし、対たい日にち戦せんの苦境くきょうへの同情どうじょうを得えて、米国べいこくの参戦さんせんの実現じつげんを促うながした。この史実しじつが日本にっぽんではさほど知しられていない。胡えびす適てきの働はたらきかけで中国ちゅうごくの地位ちいが上あがり、国連こくれん常任じょうにん理事りじ国こく入いりを導みちびいたとも言いえる。「まさに歴史れきしにおける個人こじんの役割やくわりはあるということです」。だがその反動はんどうで、蒋介石しょうかいせき率ひきいる国民党こくみんとう政権せいけんの堕落だらくぶりに米国べいこくはやがて失望しつぼうし、国民党こくみんとうの敗北はいぼく、共産党きょうさんとうの勝利しょうりにつながる。そんな因果いんがも本書ほんしょから読よみ取とれる。

　当初とうしょは義和よしかず団だんなどの民衆みんしゅう運動うんどうに着目ちゃくもくした。東京外国語大とうきょうがいこくごだいで教おしえながら関心かんしんを広ひろげ、胡えびす適てきの存在そんざいの大おおきさに改あらためて気付きづいた。「彼かれがすごいのは、自由じゆうと民主みんしゅを掲かかげることで一貫いっかんしていたところ。中国ちゅうごくの知識ちしき人じんは専制せんせい権力けんりょくに吸収きゅうしゅうされがちなんですが」。父親ちちおやが軍人ぐんじんとして中国ちゅうごく各地かくちを転々てんてんとした。それも研究けんきゅうの道みちに入はいるきっかけだったかと振ふり返かえる。

　胡えびす適てきの晩年ばんねんの文章ぶんしょうに、自由じゆうに必要ひつようなのは「寛容かんよう」だ、とするものがある。それを本書ほんしょは中国語ちゅうごくごのまま「容よう忍にん」と書かく。異ことなる意見いけんは不快ふかいだが我慢がまんする。そんな語感ごかんを残のこしたかったという。「今いまの日本にっぽんでどこまで異論いろんが受うけ入いれられているでしょうか。改あらためて読よむに値あたいします」。ここ数すう年ねんで米国べいこくの研究けんきゅう者しゃグリーダーによる胡えびす適てきの評伝ひょうでんを翻訳ほんやく、また胡えびす適てきの論文ろんぶん集しゅうを『胡えびす適てき文選ぶんせん１・２』、『胡えびす適てき　政治せいじ・学問がくもん論集ろんしゅう』にまとめた。

　中国共産党ちゅうごくきょうさんとうが徹底的てっていてきに批判ひはんしたため、胡えびす適てきは戦後せんごの日本にっぽんで無視むしに近ちかい扱あつかいを受うけてきた。パズルの欠かけたピースがようやく埋うめられた。（文ぶん・写真しゃしん　村上むらかみ太ふとし輝夫てるお）＝朝日新聞あさひしんぶん2023年ねん1月がつ7日にち掲載けいさい

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