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「シェフ」書評 仏料理界の歴史辿れるリアルさ|好書好日
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「シェフ」書評しょひょう ふつ料理りょうりかい歴史れきし辿たどれるリアルさ

評者ひょうしゃ藤田ふじた結子ゆうこあさ新聞しんぶん掲載けいさい:2024ねん03がつ02にち
シェフ 著者ちょしゃ:ゴーティエ・バティステッラ 出版しゅっぱんしゃ東京とうきょうそうもとしゃ ジャンル:欧米おうべい小説しょうせつ文学ぶんがく

ISBN: 9784488011338
発売はつばい⽇: 2023/11/30
サイズ: 19cmせんちめーとる/316p

「シェフ」 [ちょ]ゴーティエ・バティステッラ

 フランス料理りょうりあつか作品さくひんは、つじ静雄しずお半生はんせいえがいた『美味びみれいさん(らいさん)』など傑作けっさくすくなくない。わざぜい(ぜい)をきわめる料理りょうり文化ぶんかが、人々ひとびと欲望よくぼうを掻(か)きりつて、情熱じょうねつほのおあふ(あお)り、しんまどわせるからだろう。
 本書ほんしょもと「ミシュランガイド」編集へんしゅう部員ぶいん著者ちょしゃによる、事実じじつとフィクションをぜた小説しょうせつである。主人公しゅじんこうのポールはみっぼしレストランのシェフ。ある突然とつぜん猟銃りょうじゅう自殺じさつげる。すうしょうではポールがみずからの生涯しょうがいかたり、偶数ぐうすうしょうではかれ死後しご出来事できごとえがかれ、あきらすすむにつれこと真相しんそうがわかる仕掛しかけだ。そのモデルは20ねんほどまえみせへの評価ひょうか重圧じゅうあつ猟銃りょうじゅう自殺じさつしたとうわさ(うわさ)される有名ゆうめいシェフであろう。
 本書ほんしょ一番いちばんのうまは、ふつ料理りょうりかい歴史れきし辿たど(たど)る描写びょうしゃだ。20世紀せいき前半ぜんはんには女性じょせい料理人りょうりにん活躍かつやくしたという。ふつ南西なんせいむらそだったポールの祖母そぼは、料理りょうり野心やしんいだきレストランを開業かいぎょう。シェフとして必死ひっし料理りょうりするうちにみせひとぼし獲得かくとく彼女かのじょ晩年ばんねんまごのポールをれてはじめてパリをおとずれ、名店めいてんトゥールダルジャンで人生じんせいもっとうれし(うれ)しそうに食事しょくじをする場面ばめんからは、料理人りょうりにんにとってもパリの名店めいてんでの食事しょくじ特別とくべつ体験たいけんであることがつたわってくる。
 作中さくちゅうには日本人にっぽんじん登場とうじょうする。実際じっさいに「ミシュランガイドフランス2023」にはパリのみっぼしレストランが9けん掲載けいさいされているが、うちすうけん料理りょうりちょう日本人にっぽんじんだとく。だから、主人公しゅじんこうみせのシェフパティシエールが大阪おおさか出身しゅっしんのユミという設定せっていはリアルだ。しかしユミが、日本にっぽん女性じょせい性的せいてき対象たいしょうとしてる「芸者げいしゃガール」のステレオタイプでえがかれているのは残念ざんねんだ。そのお色気いろけシーンはくどいとかんじた。
 とはいえ、「くろトリュフりVGEスープ」とう有名ゆうめい料理りょうりからグラタン、ぐりとカシスのデザートまで、魅惑みわくてき料理りょうり続々ぞくぞくてきておなか(なか)がそら(す)いてしまう。巨匠きょしょうポール・ボキューズが冗談じょうだんをいったり、アラン・デュカスが食事しょくじをしにたりする場面ばめんも。いしんぼうならきっと満足まんぞくするはずだ。
    ◇
Gautier Battistella 1976ねんまれ。新華社通信しんかしゃつうしん、ミシュランガイドの編集へんしゅう部員ぶいん小説しょうせつ転身てんしん