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「連帯の政治社会学」書評　同時代の「現実」 歴史的な記録｜好書好日
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「連帯れんたいの政治せいじ社会しゃかい学がく」書評しょひょう　同どう時代じだいの「現実げんじつ」 歴史れきし的てきな記録きろく

評者ひょうしゃ： 隠岐おきさや香か ／ 朝あさ⽇新聞しんぶん掲載けいさい：2024年ねん09月がつ14日にち
連帯れんたいの政治せいじ社会しゃかい学がく――3.11後ごの反はん原発げんぱつ運動うんどうと市民しみん社会しゃかい 著者ちょしゃ：ベアタ・ボホロディッチ 出版しゅっぱん社しゃ：明石書店あかししょてん ジャンル：社会しゃかい・政治せいじ

ISBN: 9784750357553
発売はつばい⽇： 2024/05/20
サイズ: 19.5×2.8cm／376p

「連帯れんたいの政治せいじ社会しゃかい学がく」　［著ちょ］ベアタ・ボホロディッチ

　2011年ねん以後いごの日本にっぽんにおける反はん原発げんぱつ運動うんどうは海外かいがいの研究けんきゅう者しゃからも関心かんしんを集あつめてきた。本書ほんしょはポーランドの研究けんきゅう者しゃによる英えい書しょの和訳わやくである。「今更いまさらこの話題わだい？」と思おもった人ひとにこそ、この本ほんを届とどけたい。
　内容ないようは非常ひじょうに手堅てがたい社会しゃかい運動うんどう研究けんきゅうであり、実際じっさいに存在そんざいした運動うんどう団体だんたいの分類ぶんるいや起おきた出来事できごとの描写びょうしゃに本書ほんしょの大半たいはんが費ついやされている。読よむのは少すこし大変たいへんだが、その視野しやの広ひろさと観察かんさつ力りょくに圧倒あっとうされる。
　著者ちょしゃは1950年代ねんだいからの原子力げんしりょく反対はんたい運動うんどうの歴史れきしとその関連かんれん団体だんたいを把握はあくし分析ぶんせきする一方いっぽうで、福島ふくしま原発げんぱつ事故じこ以後いごにSNS等とうも駆使くしして運動うんどうを盛もり上あげた団体だんたいを多数たすう突つき止とめ、幅広はばひろい層そうの関係かんけい者しゃにインタビューしている。その年齢ねんれいは若者わかものから高齢こうれい者しゃまで、政治せいじ的てき傾向けいこうも左翼さよくから右翼うよくまで含ふくまれる。また、都会とかいでのデモ活動かつどうのみならず、地域ちいきでの放射線ほうしゃせん測定そくてい、政策せいさく提言ていげん活動かつどう、訴訟そしょう、NPO法人ほうじんの啓発けいはつ活動かつどうや企業きぎょうによる支援しえん事業じぎょうに至いたるまで、いわば運動うんどうの生態せいたい系けいとでもいえる広ひろがりを記述きじゅつしつくしている。歴史れきし的てきな記録きろくとしても意義いぎ深ふかい。
　読よみ終おえて、私わたしは反はん原発げんぱつ運動うんどうに対たいする「思おもい込こみ」について自問自答じもんじとうさせられた。一般いっぱんに、反はん原発げんぱつ運動うんどうは一時いちじ的てきに盛もり上あがり、政権せいけん交代こうたいが起おきたために思おもうような成果せいかを上あげられず表おもて舞台ぶたいから消きえたかのような印象いんしょうを持もたれがちである。だが、実際じっさいにはそれが司法しほうの実践じっせんや市民しみんの政治せいじとの関かかわりにおいて深ふかいレベルでの変化へんかを促うながしていたことを本書ほんしょは物語ものがたる。
　3・11後ごの反はん原発げんぱつ運動うんどうは熟練じゅくれんの活動かつどう団体だんたいネットワークに新あたらしい世代せだいを呼よび込こみ、市民しみん運動うんどうを新あたらしい形かたちで活性かっせい化かさせたようだ。事実じじつ、それ以来いらい、何なにかあるたびに官邸かんてい前まえ等とうに人々ひとびとが集あつまるようになったのを私わたしも見みている。
　社会しゃかい運動うんどうに冷笑れいしょう的てきな人ひとほど「現実げんじつは変かえられない」といった表現ひょうげんを使つかいたがる。だが、そもそも同どう時代じだいの「現実げんじつ」について我々われわれはどの程度ていど知しっているのか。もう一度いちど疑うたがうところから始はじめたい。
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Beata Bochorodycz　1968年ねん、ポーランド生うまれ。同国どうこくのアダム・ミツキエビチ大だい教授きょうじゅ。日本にっぽん研究けんきゅう・政治せいじ学者がくしゃ。

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