作家の上橋菜穂子さん(62)が14日、東京都内で講演し、作家を志した経緯や創作の背景を語った。
上橋さんは「精霊の守(も)り人(びと)」など「守り人」シリーズや「獣(けもの)の奏者(そうじゃ)」シリーズなどを手がけ、2014年に国際アンデルセン賞の作家賞に輝いた。
小さい頃から本と格闘技が大好きだった。中学に入ると親に本を買ってもらえなくなり、弟の部屋にあったローズマリ・サトクリフ「太陽の戦士」を読んだのが「物語を書きたい」と明確に思ったきっかけになった。「襟首をつかまれたように、少年と森のにおいを嗅ぎながら人生を駆け抜けた気がした。本を閉じて、自分がどこにいるかわからなくなった」と振り返る。
大学では文化人類学と出会い、「人々は社会とどう触れ合い、自然とどう付き合うのか」と考えるように。作品にはそんな問題意識がにじんでいる。
また「私は物語のプロットを立てないし、地図も描かない」。執筆中に思い浮かぶのは断片的な場面で、全容は自分でもわからないため、書き終えるまで誰にも話さないという。「私から見えているのは風景。印刷して『これ誰が書いたんだろう』と思えたとき、物語を世に出していいと思うんです」
企画した日本国際児童図書評議会(JBBY)は、10月5日に角野栄子さんの講演会を、11月16日には国際シンポジウムを都内で開く。(伊藤宏樹)=朝日新聞2024年9月28日掲載