「悔くいがあるとすれば…」定年ていねんを迎むかえた高砂たかさご親方おやかたが振ふり返かえる“我わが42年ねんの相撲すもう人生じんせい”

　“大だいちゃん”の愛称あいしょうで親したしまれた元もと大関おおぜき朝あさ潮しおの七なな代目だいめ高砂たかさご親方おやかたが、12月9日にち、65歳さいの誕生たんじょう日びを区切くぎりに日本にっぽん相撲すもう協会きょうかいの停年ていねん退職たいしょくを迎むかえた。元もと関脇せきわけ朝あさ赤あか龍りゅうに高砂たかさごの名なのバトンを渡わたし、今後こんごは、錦にしき島とう親方おやかたの名前なまえを名乗なのり、参与さんよの役職やくしょくで協会きょうかいに残のこるという。

　停年ていねん退職たいしょくに向むけて、部屋へや所属しょぞくの呼出よびだし利り樹じゅ之の丞すすむが作詞さくしした相撲すもう甚句じんく「朝あさ潮うしお太郎たろう一代いちだい」に、42年ねんあまりのその相撲すもう人生じんせいが凝縮ぎょうしゅくされている。

♪　大関おおぜき朝あさ潮しお七なな代目だいめ高砂たかさごヨー
　　土佐とさの室戸むろとは大漁たいりょうか
　　海うみに大おおきく育はぐくまれ
　　近畿大きんきだいでの活躍かつやくは
　　学生がくせい　アマチュア横綱よこづなと
　　高砂たかさご部屋へやへといざ進すすみ
　　男おとこを磨みがくは　猛もう稽古けいこ
　　突つき押おし一気いっきとぶちかまし
　　出世しゅっせ街道かいどうまっしぐら
　　昭和しょうわ六ろく十じゅう年ねん春はるの
　　第だい二にの故郷こきょう　大阪おおさかで
　　朝あさ潮うしお太郎たろうは　ここにあり
　　抱いだくは天皇てんのう大だい賜たまもの盃さかずき
　　若松わかまつ　高砂たかさご　継承けいしょうし
　　相撲すもうに生いきる半はん世紀せいき
　　夢ゆめを託たくすは　弟子でしたちに
　　ここに揃そろいし　部屋へや一同いちどう
　　めでたく迎むかえる六ろく十じゅう五ご歳さい
　　挙あげておい　ヨーホホイ
　　ハー　申もうしますヨー

小学校しょうがっこう卒業そつぎょう時じには体重たいじゅう80キロ超ちょう

　元もと大関おおぜき朝あさ潮うしお太郎たろう――本名ほんみょう長岡ながおか末まつ弘ひろしは、昭和しょうわ30年ねん12月、高知こうち県けん室戸むろと市し佐喜浜さきはま町まちで生うまれる。父ちちは捕鯨ほげい船せんの砲手ほうしゅとして長ながい航海こうかいに出でる生活せいかつで、父ちちと邂逅かいこうするのは年としに2回かいだけだったという。そんな末すえ弘ひろし少年しょうねんの小学生しょうがくせい時代じだいは成績せいせき優秀ゆうしゅうで、いつも学年がくねんトップ。一方いっぽうで小学校しょうがっこう卒業そつぎょう時じには、すでに体重たいじゅうが80キロを超こえる“超ちょう健康けんこう優良ゆうりょう児じ”でもあった。

　当時とうじの佐喜浜さきはま町まちは人口じんこう3000人にんの小ちいさな町まち。「勉強べんきょうするなら大おおきな町まちで」と、中学ちゅうがく時代じだいから高知こうち市しに越境えっきょう入学にゅうがくをする。12歳さいにして下宿げしゅく生活せいかつを送おくり、中学ちゅうがく時じに体重たいじゅうは100キロを超こえたという。体からだが大おおきいことで無理矢理むりやりに相撲すもう部ぶに誘さそわれたのが、相撲すもうを始はじめるきっかけとなる。「お尻しりを出だすのが嫌いやでしょうがなかったんだ」と言いい、この頃ころから今いまなお愛称あいしょうとされる“大だいちゃん”と呼よばれるようになった。

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　高校こうこう時代じだいはアパートでの一人暮ひとりぐらしを経験けいけんし、相撲すもう部ぶに所属しょぞくをするものの、けして強豪きょうごう校こうではなく「気楽きらくな相撲すもう部ぶ時代じだいだった」と親方おやかた本人ほんにんが振ふり返かえる。それでも近畿大学きんきだいがく相撲すもう部ぶに「強つよかったヤツのオマケとしてスカウトされたんだよ」と笑わらいながら、当時とうじの想おもい出でを語かたる。

2年ねん連続れんぞくで学生がくせい横綱よこづなになるも「まだ相撲すもうを好すきにはなれなかった」

「私わたしがまだ1年生ねんせいだった頃ころです。同おなじ近きん大相撲おおずもう部ぶ出身しゅっしんで、力道山りきどうざんとタッグを組くんでいた元もとプロレスラーの吉村よしむら道明みちあきさんが、当時とうじは50歳さいくらいだったかな。相撲すもう部ぶのコーチをしていてね。『そこのポチャポチャした兄にいちゃん、来きなさい』と、吉村よしむらさんと相撲すもうを取とったんです。私わたしが勝かつと、吉村よしむらさんは『これからが真剣しんけん勝負しょうぶだ』と言いい、また私わたしが勝かつと、今度こんどは『もうまわしを締しめるのはやめた』と突然とつぜんい出いだし、それでコーチも辞やめてしまった。私わたしのようなひよっこに負まけて、先輩せんぱいもショックだったんだと思おもいます」

　のちに近大きんだいでは、その吉村よしむら道明みちあき以来いらい、27年ねんぶりの学生がくせい横綱よこづなとなったのが、親方おやかた――長岡ながおか末まつ弘ひろしだった。3年ねん次じ、4年ねん次じと連続れんぞくで学生がくせい横綱よこづな、アマチュア横綱よこづなに輝かがやくのだ。

「それでもまだ相撲すもうを好すきにはなれなかったんです。やらざるを得えないな、との思おもいだけでした。将来しょうらいは教師きょうしになろうと教職きょうしょく課程かていを取とっていたんですが、相撲すもう部ぶのスケジュールが忙いそがしくて最後さいごの教育きょういく実習じっしゅうに行いかせてもらえなかったんですよ」