MMT（現代げんだい貨幣かへい論ろん）信奉しんぽう者しゃ続出ぞくしゅつ!?　「借金しゃっきん大国たいこくの日本にっぽんを見習みならえ」という理論りろん

　新型しんがたコロナの蔓延まんえんにより先さきの見みえない時代じだいにあって、私わたしたちはどんな情報じょうほうを信しんじれば良よいのか。3月24日にちに発売はつばいした『今いまを生いき抜ぬくための池上いけがみ式しきファクト46』では、著者ちょしゃの池上いけがみ彰あきらさんが、この数すう年ねんで起おきた世界中せかいじゅうのあらゆる出来事できごとの中なかから46個この重要じゅうような事実じじつ=ファクトを厳選げんせんし、徹底てってい解説かいせつしている。この春はるに社会しゃかいに出でる人ひとや大学だいがくに進学しんがくする人ひとにとって役立やくだつ情報じょうほう満載まんさいの一いち冊さつだ。今回こんかいはその中なかから2項目こうもくを抜粋ばっすいして公開こうかいする。

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WSJのショッキングな指摘してき

　消費しょうひ税ぜいが10パーセントに引ひき上あげられたのは2019年ねん10月がつのことでした。

「安倍あべ首相しゅしょうは、今年ことし10月がつに消費しょうひ税率ぜいりつを現行げんこう8％から10％に引ひき上あげることで日本にっぽん経済けいざいに大だい打撃だげきをもたらそうとしている」

　こんなショッキングな指摘してきをしていたのはアメリカの経済けいざい紙し「ウォール・ストリート・ジャーナル」（WSJ）の同年どうねん4月がつ4日にち付づけの社説しゃせつです（引用いんようは日本にっぽん版ばん）。社説しゃせつは、次つぎのように指摘してきします。

「日本にっぽんは、経済けいざい成長せいちょうの鈍化どんかに直面ちょくめんする世界せかいの多おおくの国々くにぐにの仲間入なかまいりをしつつある。しかし、ある点てんにおいて日本にっぽんは異彩いさいを放はなつ。安倍晋三あべしんぞう首相しゅしょうは年内ねんないに消費しょうひ税率ぜいりつを引ひき上あげ、景気けいきを悪化あっかさせると固かたく心しんに決きめているように見みえるのだ」

　これは強烈きょうれつな批判ひはんでした。消費しょうひ税ぜいを上あげると景気けいきが悪わるくなるぞ。財政ざいせい状態じょうたいが悪化あっかしてもいいではないか、という批判ひはんなのです。

　当時とうじは、安倍あべ首相しゅしょうが本当ほんとうに消費しょうひ税ぜいを引ひき上あげるのか読よめない面めんもありました。土壇場どたんばになって、「実施じっしを延期えんきする」と言いい出だし、「この判断はんだんについて国民こくみんの信しんを問とう」と、衆議院しゅうぎいんを解散かいさん。衆参しゅうさん同時どうじ選挙せんきょに打うって出でるのではないかという憶測おくそくも出でていたくらいです。WSJの批判ひはんは、その判断はんだんを後押あとおししそうにも見みえました。

　しかし、このWSJの批判ひはんに対たいして、財務省ざいむしょうは反論はんろんしたいところだったでしょう。少子しょうし高齢こうれい化かへの対応たいおうとして社会しゃかい福祉ふくし財源ざいげんを確保かくほするために消費しょうひ税ぜいのアップはやむを得えない。野放図のほうずな国債こくさい発行はっこうに頼たよるわけにはいかないという反論はんろんです。

　ところがこの頃ころからアメリカでは、「日本にっぽんを見みよ。大量たいりょうの赤字あかじ国債こくさいを抱かかえていても、財政ざいせいが破綻はたんしていないではないか。金利きんりも低ひくいままでインフレになりそうもない。自国じこくで通貨つうかを発行はっこうしている国くには、借金しゃっきんを返済へんさいするためにいくらでも通貨つうかを発行はっこうできるのだから、財政ざいせい赤字あかじが拡大かくだいしても心配しんぱいない」という理論りろんが急激きゅうげきに影響えいきょう力りょくを拡大かくだいしました。