「柴しば咲さきコウさんは相当そうとうな努力どりょくをされた」26年ねん前まえに哀川あいかわ翔しょうが演えんじた役やくをフランス語ふらんすごで…黒沢くろさわ清きよし監督かんとくが語かたる“主人公しゅじんこうを女性じょせいにした理由りゆう”

　殺ころされた娘むすめの復讐ふくしゅうに燃もえる男おとこと、それを手助てだすけする謎なぞの人物じんぶつ。二人ふたりは犯人はんにんと思おもわれる者しゃ達たちを次々つぎつぎに誘拐ゆうかいし、拷問ごうもんするが、やがて驚おどろくべき秘密ひみつが明あかされる。『ダゲレオタイプの女おんな』（16）に続つづくオールフランスロケ作品さくひんとなった黒沢くろさわ清きよし監督かんとくの新作しんさく『蛇へびの道みち』は、1998年ねん製作せいさくの同名どうめい作品さくひんを監督かんとく自みずからリメイクした異色いしょく作さく。

　オリジナルでは、娘むすめの復讐ふくしゅうをする男おとこを香川かがわ照之てるゆきが、彼かれの協力きょうりょく者しゃとなる謎なぞの塾じゅく講師こうしを哀川あいかわ翔しょうが演えんじた。本ほん作さくでは、フランスの俳優はいゆうダミアン・ボナールが、8歳さいの娘むすめを殺ころされたジャーナリストのアルベール・バシュレ役やくを、彼かれと偶然ぐうぜん出会であい復讐ふくしゅうに手てを貸かすパリ在住ざいじゅうの心療内科しんりょうないか医い・新島にいじま小夜子さよこ役やくを柴しば咲さきコウが演えんじ、事件じけんの鍵かぎを握にぎるある財団ざいだんの存在そんざいを追及ついきゅうしていく。

　90年代ねんだいの日本にっぽんを舞台ぶたいにした不気味ぶきみな復讐ふくしゅう譚たんは、現代げんだいのパリを舞台ぶたいに新あらたな物語ものがたりとしてどのように蘇よみがえったのか。オリジナル版ばんとの相違そうい点てんから、主人公しゅじんこうの性別せいべつの変化へんかがもたらしたものなど、黒沢くろさわ監督かんとくにお話はなしをうかがった。

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それなら『蛇へびの道みち』をやりたいと即答そくとうしました

――『蛇へびの道みち』のセルフリメイクという企画きかくは、どのような経緯けいいで進すすんでいったのでしょうか？

黒沢くろさわ　フランスのプロダクションから、僕ぼくの過去かこ作さくで何なにかリメイクしたいものはないかと言いわれ、それなら『蛇へびの道みち』をやりたいと即答そくとうしました。おそらく映画えいが監督かんとくの多おおくは、もし自作じさくでもう一度いちど撮とるならこれだという一本いっぽんを持もっているはず。自分じぶんにとってはそれが『蛇へびの道みち』だったんですね。強つよい欲望よくぼうとして「絶対ぜったいにいつかリメイクしたい」と思おもっていたわけではありませんが、高橋たかはし洋ひろしが書かいた脚本きゃくほんは、実じつはとても普遍ふへん性せいのある物語ものがたりで、あの構造こうぞうのままいろんな別べつのものに変化へんかできるんだよな、ということは常々つねづね思おもっていました。

――前半ぜんはん部分ぶぶんは、ちょっとしたセリフのやりとりまで、かなりオリジナルの脚本きゃくほんに忠実ちゅうじつですよね。

黒沢くろさわ　後半こうはんになり謎なぞが段々だんだん解とけていくにしたがって、違ちがう要素ようそがいろいろ入はいってきますが、基本きほん的てきな部分ぶぶんはほとんどそのままやっています。オリジナルに忠実ちゅうじつにやろうと意識いしきしたわけではないんですが、まあ揺ゆるぎなかったですね。

――あえて変かえる必要ひつようがない、ということだったんでしょうか？

黒沢くろさわ　日本にっぽんで撮とっていたらもっと変かえていたかもしれませんね。フランスを舞台ぶたいにフランス語ふらんすごで撮とるなら、オリジナルのままの構造こうぞうでもまったく同おなじものには見みえないだろう、という安心あんしん感かんがどこかであったのだと思おもいます。

実じつはとても具体ぐたい的てきな要素ようそから偶然ぐうぜん生うまれたにすぎない

――おっしゃるように、後半こうはんになるにつれてオリジナル版ばんとの大おおきな違ちがいが出でてきます。なかでも興味深きょうみぶかく感かんじたのは、今回こんかい主人公しゅじんこうの性別せいべつを女性じょせいに変かえたことで、母親ははおやの存在そんざいや夫婦ふうふ関係かんけいという新あらたなテーマが登場とうじょうしたことです。前回ぜんかい描えがかれなかった存在そんざいを組くみ込こもうという意識いしきがあったんでしょうか。