成人のFreeman-Sheldon症候群患者の歯科治療経験

髙野 知子, 新倉 啓太, 杉山 郁子, 鈴木 杏奈, 高瀬 幸子, 小松 知子, 池田 正一

doi:10.14958/jjsdh.44.248

Freeman-Sheldon症候群しょうこうぐん（FSS）は口笛くちぶえ顔貌かおかたち，鼻翼びよく低てい形成けいせい，手指しゅしの尺しゃく側がわ偏へん位いを主おも徴しるしとする症候群しょうこうぐんで，口腔こうくう顔面がんめん領域りょういきにおいてさまざまな症状しょうじょうを呈ていする．なかでも小口こぐち症しょうは必発症状しょうじょうであり，それによる食物しょくもつ摂取せっしゅ困難こんなん，発音はつおん障害しょうがい，口腔こうくう清掃せいそう状態じょうたいの不良ふりょう，歯科しか治療ちりょう困難こんなんなど，歯科しか領域りょういきとの関連かんれんが深ふかい．今回こんかい，成人せいじん期きで初診しょしん来院らいいんしたFSS患者かんじゃの歯科しか治療ちりょうを経験けいけんしたので報告ほうこくする．身体しんたい所見しょけんは両りょう手指しゅし屈曲くっきょく拘かかわ縮ちぢみと両側りょうがわ先さき天性てんせい内ない反はん足あしを認みとめ，顔貌かおかたち所見しょけんと口腔こうくう内ない所見しょけんは一般いっぱん的てきなFSSの所見しょけんにほぼ一致いっちした．口くち裂きれは小ちいさく，口くち裂きれ幅はば32.4mmで，口腔こうくう周囲しゅういの緊張きんちょうと拘かかわ縮ちぢみが著いちじるしく，最大さいだい開口かいこう量りょうは上下じょうか中切なかぎり歯ぱ間あいだで21.5mmであった．摂食せっしょくについては現状げんじょうで本人ほんにんの満足まんぞく度どは高たかく，発音はつおん障害しょうがいも認みとめられなかった．その他たに全ぜん顎あご的てきに歯は頸部にプラーク付着ふちゃくと歯石しせき沈着ちんちゃく，軽度けいどの歯肉はにく腫脹しゅちょうを認みとめ，上下じょうげ大だい臼歯きゅうし部ぶ咬合面めんにう蝕症第だい1～2度どを認みとめた．患者かんじゃに知的ちてき能力のうりょく障害しょうがいは認みとめられず，歯科しか治療ちりょうに対たいし協力きょうりょく的てきであったが，口唇こうしんの伸展しんてんが乏とぼしく，頰粘膜ねんまくを拡ひろげようとすると緊張きんちょうが強つよく閉口へいこうしてしまうため，治療ちりょうに難渋なんじゅうした．しかし，継続けいぞくした歯科しか受診じゅしんを行おこない，初診しょしん時じから2年ねん後ごには，わずかではあるが口腔こうくう周囲しゅういの緊張きんちょうは軽減けいげんし，開口かいこう量りょうも1mm増加ぞうかしていた．FSS患者かんじゃに対たいし，歯科しか受診じゅしんを重かさねることは口腔こうくう周囲しゅういの緊張きんちょうを軽減けいげんし，小口こぐち症しょうによる開口かいこう障害しょうがいの改善かいぜんに繋つながると考かんがえられ，良好りょうこうな口腔こうくう内ない環境かんきょう，口腔こうくう機能きのうの確立かくりつ，維持いじのために，早期そうきからの積極せっきょく的てき，継続けいぞくした歯科しかの介入かいにゅうが重要じゅうようであると考かんがえられた．

成人せいじんのFreeman-Sheldon症候群しょうこうぐん患者かんじゃの歯科しか治療ちりょう経験けいけん

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