『機動 きどう 戦士 せんし ガンダム 閃光 せんこう のハサウェイ』 © 創 そう 通 どおり ・サンライズ
2021年 ねん 6月 がつ 11日 にち より全国 ぜんこく 公開 こうかい され、興行 こうぎょう 収入 しゅうにゅう 22.1億 おく 円 えん 、観客 かんきゃく 動員 どういん 108万 まん 人 にん 超 ちょう (※2021年 ねん 11月14日 にち 時点 じてん )を超 こ える大 だい ヒットを記録 きろく した『機動 きどう 戦士 せんし ガンダム 閃光 せんこう のハサウェイ』。本 ほん 作 さく は『機動 きどう 戦士 せんし ガンダム』の生 う みの親 おや 、富野 とみの 由 ゆかり 悠 ゆう 季 き さんが1989~1990年 ねん に執筆 しっぴつ した小説 しょうせつ 『機動 きどう 戦士 せんし ガンダム 閃光 せんこう のハサウェイ』全 ぜん 3巻 かん (上 うえ ・中 なか ・下 した )を映像 えいぞう 化 か した作品 さくひん だ。本 ほん 作 さく の主人公 しゅじんこう はガンダムシリーズで活躍 かつやく してきたかつての英雄 えいゆう ブライト・ノアの息子 むすこ 、ハサウェイ・ノア。彼 かれ はマフティー・ナビーユ・エリンと名乗 なの り、反 はん 地球 ちきゅう 連邦 れんぽう 政府 せいふ 運動 うんどう に身 み を投 とう じている。なぜ彼 かれ はマフティーを名乗 なの るようになったのか。そのドラマが緻密 ちみつ に描 えが かれている。
本 ほん 作 さく の3DCGのディレクターを担当 たんとう しているのは、増尾 ますお 隆幸 たかゆき と藤江 ふじえ 智洋 ともひろ の両氏 りょうし 。増尾 ますお 氏 し は長 なが いガンダムシリーズの中 なか で度々 たびたび 関 かか わってきたCGクリエイター、藤江 ふじえ 氏 し はサンライズ第 だい 1スタジオに席 せき を置 お くCGスタッフだ。ふたりは『閃光 せんこう のハサウェイ』で、最新 さいしん の3DCG技術 ぎじゅつ を駆使 くし してガンダムシリーズの映像 えいぞう をアップデートした。
今回 こんかい は増尾 ますお 氏 し に、ガンダムシリーズとの関係 かんけい と『閃光 せんこう のハサウェイ』で行 おこな った3DCGのクリエイションについて伺 うかが った。美術 びじゅつ を支 ささ え、より臨場 りんじょう 感 かん あふれる画 が を作 つく り上 あ げる。本 ほん 作 さく で発揮 はっき された3DCGの可能 かのう 性 せい とは?
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40年来 ねんらい の付 つ き合 あ いとなるガンダムシリーズとの深 ふか い関係 かんけい
――増尾 ますお さんはこれまでもガンダムシリーズ作品 さくひん に関 かか わられています。増尾 ますお さんにとってガンダムシリーズの魅力 みりょく とはどんなものだとお考 かんが えでしょうか。
増尾 ますお 隆幸 たかゆき (以下 いか 、増尾 ますお ) :そもそも、40年 ねん 程 ほど 前 まえ の「MSV」(モビルスーツバリエーション/『機動 きどう 戦士 せんし ガンダム』放送 ほうそう 後 ご に始 はじ まったメカニックデザイン企画 きかく )からガンダムシリーズに関 かか わってきました。当時 とうじ はデザインやカラーリング、メカニカルマーキングなどを担当 たんとう しましたが、そもそもMSVの仕掛 しか け人 じん とも言 い える編集 へんしゅう さんに色々 いろいろ お世話 せわ になっていて彼 かれ との繋 つな がりで参加 さんか させて貰 もら いました。最初 さいしょ は講談社 こうだんしゃ さんの雑誌 ざっし から始 はじ まって、それからバンダイさんの『模型 もけい 情報 じょうほう 』や『B-CLUB』でお世話 せわ になって、プラモデルのパッケージを描 えが かせていただいたこともあります。ただ、そのころはサンライズさんと直接 ちょくせつ やり取 と りはありませんでした。
その後 ご 暫 しばら くして、実写 じっしゃ 系 けい CGに仕事 しごと をシフトしたので「ガンダム」関連 かんれん の仕事 しごと は20年 ねん くらいブランクがありました。だから、私 わたし は宇宙 うちゅう 世紀 せいき ものしか知 し らないんですが、「MSV」に関 かか わっていたときは「今 いま までとは違 ちが うものがやりたい」という気持 きも ちや、「リアリティを追求 ついきゅう しようぜ」みたいな仲間 なかま 内 ない での盛 も り上 あ がりがあり、その思 おも いが社会 しゃかい に受 う け入 い れられて、さらに大 おお きな人気 にんき になった。それがガンダムシリーズの面白 おもしろ さであり、懐 ふところ の広 ひろ さだったような気 き がします。
――「MSV」からお時間 じかん が経 た って、『GUNDAM THE RIDE ‐宇宙 うちゅう 要塞 ようさい A BAOA QU‐』(2000年 ねん 稼働 かどう )、『GUNDAM EVOLVE』シリーズ(2001年 ねん )、ガンダムフロント東京 とうきょう のCGムービー(2013年 ねん )など、ガンダムの作品 さくひん に関 かか わるようになったのはどんな経緯 けいい だったのでしょうか。
増尾 ますお :CG業界 ぎょうかい での昔 むかし からの知 し り合 あ いにプロデューサーの松野 まつの 美 よし 茂 しげる さん(『GUNDAM THE RIDE』『SDガンダムフォース』プロデューサー)がいまして、彼 かれ から当時 とうじ サンライズの堀口 ほりぐち (滋 しげる )さん(プロデューサー)を紹介 しょうかい して頂 いただ き、その流 なが れで『GUNDAM THE RIDE』の仕事 しごと をさせてもらうことになりました。サンライズさんとの直接 ちょくせつ の付 つ き合 あ いはそこからですね。『GUNDAM THE RIDE』のあとに、『GUNDAM EVOLVE』シリーズの中 なか で監督 かんとく を、ちょっと時間 じかん が空 あ いてからガンダムフロント東京 とうきょう の「DOME-G」のドーム映像 えいぞう をやらせてもらい、それで今回 こんかい という流 なが れになります。気 き が付 つ けば、サンライズさんとの付 つ き合 あ いも長 なが くなりました。
――『GUNDAM THE RIDE』や『GUNDAM EVOLVE』シリーズなどを手掛 てが けるときに富野 とみの 由 ゆかり 悠 ゆう 季 き 監督 かんとく とやり取 と りはあったのでしょうか。
増尾 ますお :『GUNDAM THE RIDE』のときは、残念 ざんねん ながら富野 とみの 監督 かんとく と直接 ちょくせつ やり取 と りしたことは有 あ りませんでしたね。EVOLVE の際 さい に『GUNDAM EVOLVE 5 RX-93 ν にゅー GUNDAM』のストーリーが富野 とみの さんでしたのでご挨拶 あいさつ をしたくらいです。スタジオでは何 なん 度 ど もお見掛 みか けしているのですが。
映像 えいぞう 化 か 不可能 ふかのう と言 い われた作品 さくひん に挑 いど む
――今回 こんかい 『閃光 せんこう のハサウェイ』に参加 さんか することになるには、どんな流 なが れがあったのでしょうか。
増尾 ますお :『閃光 せんこう のハサウェイ』は村瀬 むらせ (修 おさむ 功 こう )さん(『閃光 せんこう のハサウェイ』監督 かんとく )が、小形 おがた (尚弘 なおひろ )さん(『閃光 せんこう のハサウェイ』エグゼクティブプロデューサー)に私 わたし のことを紹介 しょうかい してくださったんです。
――村瀬 むらせ 監督 かんとく とは『虐殺 ぎゃくさつ 器官 きかん 』『ブレードランナー ブラックアウト2022』(渡辺 わたなべ 信一郎 しんいちろう 監督 かんとく 作品 さくひん )でもごいっしょされていますよね。村瀬 むらせ 監督 かんとく とのお仕事 しごと はどんな特徴 とくちょう がありますか。
増尾 ますお :村瀬 むらせ さんの作品 さくひん は、精緻 せいち で緻密 ちみつ ですよね。昔 むかし 、大友 おおとも (克洋 かつひろ )監督 かんとく の映画 えいが 『STEAMBOY』に参加 さんか させていただいた際 さい に、大友 おおとも さんの絵 え コンテを見 み て「なんてすごいんだろう」と思 おも ったんですが、それに匹敵 ひってき する感動 かんどう が村瀬 むらせ さんの絵 え コンテにはありました。『虐殺 ぎゃくさつ 器官 きかん 』のときに感服 かんぷく しましたね。ただ絵 え が上手 うま いだけでなく、あらゆるところにこだわっていて。よく精神 せいしん 力 りょく が続 つづ くな、と思 おも っていました。感心 かんしん します。それだけの画 が を作 つく れる人 ひと ですから、アニメとしてスクリーンに映 うつ る画 が の最終 さいしゅう 形態 けいたい は当然 とうぜん 頭 あたま の中 なか にあるわけで、こちらとしては村瀬 むらせ さんがどんな画 が を望 のぞ んでいるのかを想像 そうぞう しつつそれを上回 うわまわ るものを作 つく らなければならないので大変 たいへん です。
――宇宙 うちゅう 世紀 せいき のシリーズであり、新 あたら しいモビルスーツたちが飛 と び交 か う、『閃光 せんこう のハサウェイ』という作品 さくひん にどんな印象 いんしょう をお持 も ちでしたか。
増尾 ますお :映像 えいぞう 化 か 不可能 ふかのう とか、いろいろと噂 うわさ だけは聞 き いていて、小説 しょうせつ を読 よ んでみたら「ああ、こういうことなのか」と。登場 とうじょう 人物 じんぶつ が多 おお いし、物語 ものがたり が暗 くら いですよね。村瀬 むらせ さんがそれをどう料理 りょうり するのか楽 たの しみでした。
――今回 こんかい は藤江 ふじえ 智洋 ともひろ CGディレクターと共同 きょうどう でディレクションをされています。作業 さぎょう の分担 ぶんたん はどのようにされていたのでしょうか。
増尾 ますお :モビルスーツを表現 ひょうげん する部分 ぶぶん に関 かん しては、3DCGモデルも含 ふく めて、サンライズさんに長 なが い技術 ぎじゅつ の蓄積 ちくせき があるので、そこは藤江 ふじえ さんにお任 まか せして、私 わたし はそれ以外 いがい のところを担当 たんとう するというかたちでした。村瀬 むらせ さんはリアリティを追求 ついきゅう される監督 かんとく ですから、昔 むかし ながらのアニメの制作 せいさく スタイルではもの足 た りない。アニメの世界 せかい にリアリティを持 も ち込 こ むために3DCGを上手 うま く使 つか おう、という考 かんが えが村瀬 むらせ さんにはありました。『虐殺 ぎゃくさつ 器官 きかん 』のときに堀口 ほりぐち さんからご紹介 しょうかい いただいて、村瀬 むらせ さんと初 はじ めてご一緒 いっしょ したのですが、アニメとは違 ちが う3DCGの使 つか い方 かた をしたいという考 かんが え方 かた をお持 も ちでした。私 わたし もアニメにおける3DCGの在 あ り方 かた を勉強 べんきょう しつつも、ステレオタイプではない、いままでと違 ちが うアプローチをしたいと思 おも っていました。村瀬 むらせ さんは明確 めいかく なビジョンをお持 も ちなので、私 わたし はそれを完成 かんせい させるという立場 たちば でしたね。
――今回 こんかい 、増尾 ますお さんは、村瀬 むらせ 監督 かんとく とどんな3DCGの作業 さぎょう を進 すす めていかれたのでしょうか。
増尾 ますお :今回 こんかい 、村瀬 むらせ さんが特 とく に重視 じゅうし していたのは「カメラマップ」をより効果 こうか 的 てき に使 つか う、ということです。「カメラマップ」とはシンプルな立体 りったい 構造 こうぞう に色々 いろいろ な方向 ほうこう から画像 がぞう を投影 とうえい して「動 うご く美術 びじゅつ 」を作 つく るというもの。『虐殺 ぎゃくさつ 器官 きかん 』のときも同様 どうよう のことをやっていたのですが、「カメラマップ」を使 つか うことでリアリティを担保 たんぽ しつつ、作業 さぎょう を省力 しょうりょく 化 か していくことができます。今回 こんかい もいろいろとチャレンジしなくてはいけないことがありました。
3DCGで作 つく りあげた「動 うご く美術 びじゅつ 」
――『閃光 せんこう のハサウェイ』で3DCGディレクターとして挑 いど んだチャレンジは、どんな部分 ぶぶん だったのでしょう。
増尾 ますお :サンライズさんはアナログベースのプロダクションだと思 おも います。アナログ的 てき な手法 しゅほう をされている美術 びじゅつ さんの作業 さぎょう を3DCGでサポートして、今 いま までの美術 びじゅつ ではできなかったことを実現 じつげん できるようにしていきました。たとえば、作品 さくひん 冒頭 ぼうとう に登場 とうじょう する往還 おうかん シャトルのハウンゼンの客席 きゃくせき 内 ない は、基本 きほん 的 てき に3Dのカメラマップベースで作 つく っています。最初 さいしょ にざっくりと3DCGで作 つく って、それを一度 いちど 描 えが き出 だ し、その描 えが き出 だ したものを美術 びじゅつ さんにレタッチをしてもらう。そのレタッチした画 が を様々 さまざま に投影 とうえい してカメラマップにしています。そうすることで美術 びじゅつ の中 なか をカメラが自由 じゆう に動 うご き回 まわ れるようになるわけです。
――増尾 ますお さんの3DCGと美術 びじゅつ が連動 れんどう することで「動 うご く美術 びじゅつ 」を作 つく っていたということですね。
増尾 ますお :ハウンゼンの中 なか は狭 せま いのですが、すごくゴージャスなんですよね。そのゴージャスさを表現 ひょうげん するためには、テクスチャをどんどん貼 は り付 づ けていく、という手法 しゅほう が考 かんが えられます。でも、その手法 しゅほう だと、1カットごとの作業 さぎょう コストが増 ふ えてしまう。でも、カメラマップを使 つか えば、その作業 さぎょう を省力 しょうりょく 化 か できるのです。そして省力 しょうりょく 化 か するだけでなく、美術 びじゅつ の立体 りったい 感 かん や動 うご きを表現 ひょうげん できます。
――ハウンゼン以外 いがい に、カメラマップを駆使 くし しているカットはどんなところがありましたか。
増尾 ますお :ハサウェイがクルーザーに乗 の って飛行 ひこう 艇 てい に向 む かい、飛行 ひこう 艇 てい が半島 はんとう の周 まわ りをぐるっと旋回 せんかい するシーンもカメラマップを使 つか っています。ここでは美術 びじゅつ さんの負担 ふたん を減 へ らして、いかに半島 はんとう を立体 りったい 的 てき に見 み せるか、という点 てん を追求 ついきゅう しています。あのカットはけっこう大変 たいへん だったんですよ(笑)。ベースになるものを一 いち 度 ど 3DCGで作 つく り、どれくらいの解像度 かいぞうど で、どれくらいの分割 ぶんかつ をして、美術 びじゅつ さんに背景 はいけい を描 えが いてもらえれば良 よ いのかシミュレーションしました。また、マップを貼 は る方向 ほうこう によって木々 きぎ が立体 りったい っぽく見 み えるので、そのあたりも踏 ふ まえて、美術 びじゅつ さんに背景 はいけい を複 ふく 数 すう 枚 まい 描 えが いていただき、それを組 く み合 あ わせています。
――3DCGというと、ロボットや乗 の り物 もの 、人工 じんこう 物 ぶつ によく使 つか われる印象 いんしょう がありますが、『閃光 せんこう のハサウェイ』では美術 びじゅつ を立体 りったい 的 てき に見 み せるために使 つか ったり、自然 しぜん 物 ぶつ を表現 ひょうげん したりするのに3DCGが使 つか われているんですね。
増尾 ますお :自然 しぜん 物 ぶつ という意味 いみ では、『閃光 せんこう のハサウェイ』では海 うみ がたくさん出 で てきます。海面 かいめん はもっぱら3DCGで作 つく っています。海面 かいめん の波 なみ 打 う ちを作画 さくが で描 えが こうとすると、かなり大変 たいへん なので。昨今 さっこん 3DCGのプラグインを使 つか って海面 かいめん をリアルに見 み せるのは簡単 かんたん です。でも、リアルな海面 かいめん にすると、作画 さくが のルックと合 あ わなくなってしまうので、3DCGだけど3DCGっぽさがないように、「画 が が動 うご いている」くらいのさじ加減 かげん で、海面 かいめん を作 つく っています。海 うみ のカットはたくさんあったので大変 たいへん でしたが、そこはこだわって作 つく っていきました。こういう部分 ぶぶん って、お客 きゃく さんが観 み ているときは、自然 しぜん と流 なが しちゃうところでもあると思 おも いますが、作 つく り手 しゅ としてはこだわっているところなんです。
――ただリアルを追求 ついきゅう するわけではなく、アニメから感 かん じられるリアリティを模索 もさく されていたわけですね。
増尾 ますお :アニメ作品 さくひん における「リアリティ志向 しこう 」とは何 なに だろうと。アニメの画 が 作 づく りにウソは付 つ き物 もの ですが、あからさまなウソはやりたくない。たとえウソであっても、見 み ている人 ひと が普通 ふつう に受 う け入 い れてしまうくらいまで、ウソをしっかりと手間暇 てまひま をかけて作 つく り込 こ む。そういうところは気 き を遣 や って、お手伝 てつだ いをしていたつもりです。
――ほかに3DCGの担当 たんとう されたカットで印象 いんしょう に残 のこ っているものはどんなものがありますか。
増尾 ますお :ハサウェイたちが乗 の ったリムジンが、ダバオの地下 ちか ハイウェイを走行 そうこう するカットがありますが、あれも時間 じかん をかけて作 つく っています。当初 とうしょ はカメラマップでやろうと思 おも っていたのですが、かなり長大 ちょうだい なカットだったので通常 つうじょう のマッピングベースでやっています。このカットでは光 ひかり を表現 ひょうげん しようとしていました。最初 さいしょ 、こちらでダバオの位置 いち と時間 じかん から計算 けいさん して太陽光 たいようこう の入射 にゅうしゃ 角 かく などを算出 さんしゅつ していたのですが、あとからその位置 いち が間違 まちが っていたことがわかりまして。あらためて全部 ぜんぶ 光 ひかり を計算 けいさん し直 なお したんです。太陽 たいよう の光 ひかり の角度 かくど によってハイウェイに落 お ちる影 かげ が変化 へんか します。そのカゲはどこまで伸 の びているのか。どこが明 あか るくて、どこが暗渠 あんきょ になるのか。そういった細 こま かな計算 けいさん も含 ふく めて、かなりこだわったカットです。
――太陽光 たいようこう の入射 にゅうしゃ 角度 かくど まで計算 けいさん してお作 つく りになっていた、と。まさにリアルな計算 けいさん をして、リアリティを作 つく っているということですね。
増尾 ますお :村瀬 むらせ さんの作品 さくひん だから、そこまでやらざるを得 え なかったというところもあると思 おも います(笑)。
他 た にモブカー(市街地 しがいち を行 い き来 き するクルマ)も私 わたし が担当 たんとう しました。そこで藤江 ふじえ さんたちがお作 つく りになっているメカの3DCGのこだわりを学 まな びながら、3DCGのセルシェーダーでルックを作 つく っています。藤江 ふじえ さんは、とくに線 せん (輪郭 りんかく 線 せん )の表現 ひょうげん を大事 だいじ にされていると感 かん じました。ラインを外 はず して塗 ぬ り分 わ けだけで見 み せた方 ほう が良 よ い場所 ばしょ 、ラインをしっかり入 い れる場所 ばしょ などをひとつひとつ確認 かくにん しながら、藤江 ふじえ さんといっしょに作 つく っています。あと、ハサウェイとギギが乗 の るリムジンの車内 しゃない も、キャラクターのサイズ感 かん をしっかりと調整 ちょうせい しながら作 つく りました。普通 ふつう の作品 さくひん なら背景 はいけい 画 が 一 いち 枚 まい で見 み せるだろうところも、しっかりと作 つく り込 こ んでいるのは、さすが村瀬 むらせ さんだなと思 おも いますね。
――ほかに増尾 ますお さんとルーデンスさんのチームで担当 たんとう された3DCGワークはありますか。
増尾 ますお :基本 きほん 的 てき にモビルスーツは藤江 ふじえ さんたちにお任 まか せして、ハウンゼン機内 きない や背景 はいけい 、海 うみ を我々 われわれ が担当 たんとう するという分担 ぶんたん になっていたのですが、最後 さいご のペーネロペーとΞ くしー (クスィー)ガンダムの対決 たいけつ シーンの一部 いちぶ もルーデンスが担当 たんとう しました。大量 たいりょう のミサイルがどんどん飛 と び交 か うカットだったのですが、最後 さいご の最後 さいご にそのカットをお手伝 てつだ いしたので、もうちょっとモビルスーツ戦 せん をやりたかったなと思 おも いました。
――今後 こんご 、第 だい 2部 ぶ 、第 だい 3部 ぶ の制作 せいさく がございますが、どんな思 おも いで臨 のぞ まれるおつもりでしょうか。抱負 ほうふ などあればお聞 き かせください。
増尾 ますお :第 だい 2部 ぶ はまだまだこれからですから、私 わたし もまだよくわからないところがあります。いまは、これからの作業 さぎょう を楽 たの しみにしています。村瀬 むらせ さんは常 つね に新 あたら しいことをやろうとする人 ひと なので、きっと山 やま のようなチャレンジをしなきゃいけないでしょうね。もちろん大変 たいへん ですが、それがないとつまらないですから。
取材 しゅざい ・文 ぶん =志田 しだ 英 えい 邦 くに
増尾 ますお 隆幸 たかゆき (ますお・りゅうこう)
イラストレーター、CGディレクター。1983年 ねん 、モビルスーツバリエーション(MSV)のメカデザイン、イラストなどで活躍 かつやく 。1990年 ねん 3月 がつ に、ルーデンス(現 げん TREE Digital Studio ルーデンス事業 じぎょう 部 ぶ )を設立 せつりつ 。CMや映画 えいが 、イベント映像 えいぞう を中心 ちゅうしん に数 すう 多 おお くの作品 さくひん のCG制作 せいさく とディレクションを手 て がけてきた。2020年 ねん 末 まつ でルーデンス代表 だいひょう を退任 たいにん し、現在 げんざい フリーのCGディレクター、アーティストとして活動 かつどう 中 ちゅう 。