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『プリンセスコネクト!』Webノベル第1話を公開 「はじまりはいつも波乱万丈」 - 電撃オンライン
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2016ねん4がつ30にち

『プリンセスコネクト!』Webノベルだい1公開こうかい 「はじまりはいつも波乱万丈はらんばんじょう

ぶん電撃でんげきオンライン

 サイバーエージェントとCygamesが共同きょうどう制作せいさくする次世代じせだいガールズRPG『プリンセスコネクト!(プリコネ)』のオリジナルノベルだい1掲載けいさいする。

『プリンセスコネクト!』

 『プリコネ』は、現実げんじつ世界せかいとVRゲーム“レジェンド オブ アストルム”の仮想かそう世界せかいしながら、おんなたちとのコミュニケーション冒険ぼうけんたのしめるスマートフォン/ブラウザようゲーム。

 ほんさくのオリジナルノベル『プリンセスコネクト! ~プリンセスナイト争奪そうだつせん~』では、恋愛れんあいシミュレーションゲームのシナリオなどを手掛てがけてきた太田おおた先生せんせいが、現実げんじつ世界せかいでの恋愛れんあいコメディを4構成こうせいえがいていく。

『プリンセスコネクト!』
西洋せいようファンタジーけい仮想かそう世界せかい“アストルム”のなかでは、このみの職業しょくぎょうやアバターをえらんで冒険ぼうけんできる。

⇒『プリンセスコネクト! ~プリンセスナイト争奪そうだつせん~』の登場とうじょう人物じんぶつはこちら

プリンセスコネクト! ~プリンセスナイト争奪そうだつせん
ちょ太田おおた 監修かんしゅう:サイバーエージェント/Cygames

だい1 「はじまりはいつも波乱万丈はらんばんじょう

 放課後ほうかご椿つばきおかつばきがおか高校こうこう屋上おくじょうあかみがしはじめたそらしたぼくとおくからこえる部活ぶかつこえをBGMに、ベンチにすわってスマホの画面がめんながめていた。表示ひょうじされているのは――『新規しんき大型おおがたイベント開催かいさい決定けってい』の文字もじ。といっても、これは架空かくう世界せかいはなし

 レジェンドオブアストルム――
 いま、もっとも有名ゆうめい人気にんきのMMORPGってやつだ。

 現実げんじつ区別くべつがつかないくらいリアルに構築こうちくされたけん魔法まほう世界せかいに、『mimiミミ』というとおり、みみ装着そうちゃくする端末たんまつ使つかってダイブし、プレイヤーは分身ぶんしんとなるアバターとして冒険ぼうけんをする。そう、だれもが夢見ゆめみ世界せかいはつのVRゲームだ。

 しかも、このゲームには、ただの娯楽ごらくといえない特典とくてん用意よういされている。それはゲームをクリアすると、アストルムを管理かんり運営うんえいしている『ちょう高性能こうせいのうAIミネルヴァ』がプレイヤーのねがいをかのうかなえてくれるということだ。もちろん、そう簡単かんたんにはいかない。だれもが必死ひっしになる理由りゆうがそこにある。

 女性じょせいプレイヤーは定期ていきてき開催かいさいされる対人たいじんのバトルで勝利しょうりし、プリンセスとしての資格しかくなければならない。しかも、そのうえ世界中せかいじゅうらばるオーブをあつめ、とういただきおさめる必要ひつようがある。そして男性だんせいプレイヤーは、それに協力きょうりょくする騎士きしとして、彼女かのじょたちの冒険ぼうけんをサポートし、一緒いっしょにクリアを目指めざすというもの。どちらも相応そうおう困難こんなん、ということだ。

 ただ、男性だんせいプレイヤーのなかには、ごくまれに――

新規しんき大型おおがたイベント……だよね?」
「えっ? うわっ!」
 突然とつぜんこえかおげると、いきとどくほどの距離きょりに、ぼくのスマホをのぞきこんでいるかおがあった。

「ご、ごめんなさい。おどろかせちゃった?」
 あわいピンクの制服せいふくによく似合にあう、ひかえめない。その少女しょうじょ――草野くさの優衣ゆいくさのゆいは、かたちたかみをかきげながらった。

「その、すごく真剣しんけんになにかをてたから……」
 もじもじといいわけをする姿すがたが、ほほえましい。かくれファンがおおいってはなしにも、なるほど納得なっとくできる。

「あの……どうかした? きゅうだまっちゃって……」
「いや、べつに」
 かるくびってこたえる。

「それより……ぼくになにかようか?」
「よ、もちいって……メッセージてないの?」
 草野くさの困惑こんわくいろかべた。

「メッセージ?」
「あ、やっぱりてないんだ。ギルドのページにれいれいちゃんから連絡れんらくがあったのに」
「え? あ……」
 からみつく視線しせんぼくはそれからげるように、スマホに視線しせんとした。

【レイ】――みんな新規しんきイベント告知こくちた?
【ヒヨリ】――いまみてる~
【レイ】――これ、また厄介やっかいなことになるとおもわない?
【ユイ】――うん、そんながする
【レイ】――そこで対策たいさくっておきたいんだけど…放課後ほうかご時間じかんある?
【ユイ】――大丈夫だいじょうぶ
【レイ】――なら、わたしたちが優衣ゆい学校がっこうくから、かれつかまえておいて
【ユイ】――わたしが?
【レイ】――クラスメイトでしょ、おねが
【レイ】――反応はんのうがないところをみると、このメッセージにも気付きづいてないみたいだし
【ユイ】――そうだね、わかった
【レイ】――ひよりもそれでいい?
【ヒヨリ】――(´ωおめが` )b

 なるほど、そういうことか――

気付きづいたら教室きょうしつにいなかったから、もうかえっちゃったのかなって……」
「ごめん」
「ううん、いいの。こうしてえたから」
 夕焼ゆうやけのせいか、微笑ほほえんだ草野くさのすこ紅潮こうちょうこうちょうしてるようにえた。

「でも、すこおおげさじゃないか? 新規しんきイベントっていっても、内容ないようだって発表はっぴょうされてないのに――」
「ネットじょうではあたらしいバトルコンテンツだってうわさうわさされてるの」
「へ~っ、そうなんだ」

 あたらしいバトルコンテンツ、ね――

「もう、そんな他人事たにんごとみたいにってると、またれいちゃんにおこられるよ。『キミ、自分じぶんがどれだけ稀有けうけう存在そんざい自覚じかくある?』って」
 ああ、たしかにいそうだ。

「ナオクン、ちゃんとかってる? わたしたちプリンセス候補こうほせい本当ほんとう実力じつりょくせるのは――」
伝説でんせつみたいな存在そんざいのプリンセスナイト、つまりぼくくらい……だろ」
「うんっ」

 草野くさのはクスクスとわらいながら、そっとしてきた。
「ほら、って! ナオクンがねらわれないように、みんなで対策たいさくらなきゃ」
 ぼくはそのにぎり、いきおいよくがった。

 いったん教室きょうしつもどったぼくは、カバンを昇降しょうこうこうへといそいだ。草野くさのとそこでうことになっていたからだ。

 手早てばや下駄箱げたばこばす――と、そのうでをぎゅっとつかまれた。
「ふぇ……おにいちゃ、ん」
「へ?」
 そこにははんベソをかいたよう……いや、少女しょうじょがいた。

 へんみこみのおさげに、フリルのついたパステルブルーのワンピース。
「ミ、ミミちゃんか!?」
 アストルムでうときとはまたちがった印象いんしょうに、ぼくはうろたえる。まえに10さいいていたが、どうてもそれ以下いかだったからだ。

「おにい……ちゃ、やっとえたぁ。ふぇええ――」
「ま、って、とりあえずかないで! ほら、ぼくえたんだし!」
「あうぅ……」
「よしよし、いいだな」

 セーフ! ぼくはほっとむねをなでおろした。こんな人目ひとめのあるところでかれたら、かえしのつかないことになる。

「それより、どうしてこんなところに?」
「う? それは、そのぉ……」
 ミミちゃんはすこずかしそうにせ――
「ミミねぇ、おにいちゃんをゆうわくしにきたのーっ!」
 こともあろうか、つかんでいたぼくを、自分じぶんのささやかなむねてた。

「ぶおっ!?」
 あわててめようとするが、ちいさながそれをこばむ。はからずともつたわってくる感触かんしょく。ふるふるとふるえるミミちゃんのつめたさ、それと――

 うん、『ささやか』とったけど、あれは間違まちがいだ。ゼロだ。じゃなくて! とにかくこのをどうにかしないと!

 ぼくいち呼吸こきゅうをおいてう。
「と、と、とりあえずはなしてくれると……」
「おかあさんがってたの! こうするとミミの気持きもちがつたわるんだよって」

 おかあさん! つたえる相手あいてえらぶこともおしえないと! 全力ぜんりょくでつっこみたかったが、状況じょうきょうがそれをゆるしてくれない。

「おにいちゃんもってるでしょ? こんどあたらしいプリンセスバトルがはじまるって」
「それって新規しんきイベントのこと? で、でも内容ないようはまだ……」
「ふみゅ? みそぎちゃんはプリンセスバトルってってた~」
完全かんぜんにネットの情報じょうほうおどらされてるな……」

 というか、ぼく――なにか大事だいじなことをわすれてるような。

「ナオクン……なにしてるの?」
「ああ、草野くさのか……って、うわあああぁああっ!」
 ぼくはミミちゃんのはらってびのき、下駄箱げたばこおもをぶつけた。

 られた! 完全かんぜんられた!
「そのっ、いまのはちがうんだ!」
「もしかして、そのって……」
 いいわけをするぼくに、草野くさの視線しせんいかける。

「そ、そう! このもゲームをやってて、それで――」
「ダメ、おにいちゃん、いまはミミとおはなしの時間じかん!」
 ミミちゃんのせつなげな言葉ことばが、ぼく視線しせん強制きょうせいもどす。

「あのね、ミミはね、おにいちゃんがいればもっとつよくなれるみたい。だからぁ、ミミたちの本当ほんとうのナイトになってほしいの~」
 いったんはなれた距離きょりをジリジリとちぢめつつ、ミミちゃんがう。

「みそぎちゃんがってたの。おとこひとはみんなロリ……えっと、ロリポンだって」
 ロリポン? どこかかくがとれたような表現ひょうげんだけど、結局けっきょく犯罪はんざい……ってか、こんな純真じゅんしんに、なにをんでるんだ。

「あ、あのなぁ」
「ナオクン、そうなの!?」
 そこ、いつくな、草野くさの真顔まがおたずねられると、ちょっときずつくから。

「ね、ナオクン……」
「んなわけないって!」

「ふぇ? でもぉ、ミミがゆーわくすれば、おにいちゃん、ぎるどにはいってくれるって」
だれがそんなことを……」
「みそぎちゃんだよ~」
 うん、納得なっとくだ。あのさわがしい小学生しょうがくせいならいかねない。ぼく嘆息たんそくし、それからちらり、と草野くさのる。

 不安ふあんそうなかお。だからこそ、ぼくは「大丈夫だいじょうぶ」とばかりにうなずいてみせ、ミミちゃんを正面しょうめん見据みすえた。
「ミミちゃん、クエストのお手伝てつだいはしてもいいけど、ぼくはギルドにははいらないよ」

「ふぇ?」
 こういうことはあやまごまかさず、本当ほんとう気持きもちをつたえるしかない。
「ミミちゃん、よくいてほしい」
 そのひざをつき、視線しせんたかさをミミちゃんにわせる。

ぼくはね、いまのギルドのみんなとはなれたくない。それはミミちゃんだっておなじだろ? 友達ともだちつくったギルドをはなれたくないだろ?」
「あうぅ……」
ぼくもミミちゃんとおなじなんだ」

「でもでも、ミミはおにいちゃんと一緒いっしょがいい!」
一緒いっしょ冒険ぼうけんするくらい、いつでもできるって」
 その言葉ことばに、ミミちゃんがしょぼんとうつむいた。ぼくはそのあたまをそっとなででてやる。

「それより、もうくらくなるし、はやかえらないとおうちのひと心配しんぱいするぞ」
「そうだね。ほら、おねえちゃんたちとこう」
 草野くさのやわらかなこえった。

「はぅ、う……」
 納得なっとくしたのかからない返事へんじ。ただ、ミミちゃんはちいさくうなずいて、草野くさの制服せいふくそでをつまんだ。子供こども自分じぶんやさしくしてくれるひとかる、とぼく理解りかいしておいた。

 時刻じこくはすっかり下校げこうのピークをむかえていた。生徒せいとたちのたのしげなこえなかぼくつけたのは、校門こうもんほうからあるいてくるおんなたちの姿すがただった。

 一人ひとりじょうれいしじょうれい名門めいもんこうくろ制服せいふくつつみ、りんりんとした表情ひょうじょうで、漆黒しっこくのロングヘアをふうになびかせている。そしてもう一人ひとりは、れい対照たいしょうてきはるさきはるさきひよりだ。しろこん基調きちょうにした制服せいふくにニーソ。活発かっぱつ印象いんしょうのショートヘアで、こちらに気付きづくやいなや、ぶんぶんとってきた。

先輩せんぱい~っ、優衣ゆいちゃ~ん!」
 それにげてかるこたえる。
「よかった~っ、いいところでえて」
 ぴょんぴょんとうれしうれしそうにねるひより。

「で、そのは?」
 おっかなびっくり、草野くさのかくれるミミちゃんに、れいほそめた。
れいちゃんのかんたったみたい」
 ぼく説明せつめいくちにするまえに、草野くさの一言ひとことでまとめる――と、れいはこちらにかおちかづけ、小声こごえった。

あいだちがっても『いい返事へんじ』なんてしてないだろうね?」
たりまえだろ」
 ミミちゃんにこえないよう、ささやかに反論はんろんする。

「それで、実際じっさいなんてわれたんだ?」
「ギルドにはいってくれ……って」
提示ていじされた条件じょうけんは?」
「それは……」
 れい追及ついきゅうに、ぼく言葉ことばまらせると、そのかいべつのところからこぼれた。

「ゆ・う・わ・く」
 草野くさの口元くちもとて、パクパクとぐちだけをうごかす。
「せ、先輩せんぱい誘惑ゆうわくされたの!?」

「しっ、こえおおきいって!」
 あせってひよりのくちさえると、それを草野くさのが「ごめんなさい」とばかりにかたをすくめた。

 くっ――おこるにおこれない仕草しぐさに、ぼくはためいきをつくしかなかった。
「ってことは、ほかにも先輩せんぱいねらひとたちが……」
てきてもおかしくないね」
 ひよりとれいかお見合みあわせる。

「――というか、相談そうだんするなら、せめて場所ばしょえないか?」
 夕暮ゆうぐれの校門こうもんで、他校たこう美少女びしょうじょ内緒ないしょばなし。おまけに草野くさのが、小学生しょうがくせいまでれている。ハッキリいって、全力ぜんりょく目立めだっている。遠巻とおまきにながめている男子だんし生徒せいとから、殺意さついのようなものまでかんじる始末しまつだ。

「でも、そのはどうするの?」
 ひよりがミミちゃんにける。
「そ、そうだった。くらくなるまえいえちかくまでおくってあげないと……」

「そういうことなら、アタシがどうにかしてあげましょうか?」
 唐突とうとつりこむこえかえると、そこには――

「そのわり、アタシとにんきりではな時間じかんつくってもらうわ」
 強気つよきひとみ余裕よゆうみをかべる闖入ちんにゅうしゃちんにゅうしゃがいた。
 佐々木ささきさきこいささきされん名門めいもん桜庭さくらばさくらば学院がくいんげん生徒せいと会長かいちょうだ。

「あーっ! さきこいさんっ!?」
 その姿すがたに、だれよりもはや反応はんのうしたのはひよりだった。
「どうして? なんでここにいるの? あっ、もしかして……新規しんきイベントのために、先輩せんぱいいにきたとか?」

「えっ、その……アタシは――」
先輩せんぱいってたよりになるもんね。その気持きもち、すっごくかる!」
 ひよりがさきこいをとって、ぎゅっとにぎりしめる。

「あの、ひより……アタシ、い、いまはナオと……」
 その視線しせんぼくけられていた――が、再会さいかいよろこぶひよりはおかまいなしにつづける。
「あたしね、あれからもっとつよくなったの! さきこいさんは?」
「えっ? まぁ、それなりにつよくなったけど……じゃなくて!」

 本題ほんだいをきりだしたいのだろう。さきこい深呼吸しんこきゅうをしてった。
「あのね、ひより――アタシはナオに!」
「うん、先輩せんぱいいにきたんだよね? 一緒いっしょたたかってほしいって!」

「へ? そ、それは……まぁ、間違まちがってないけど……」
「あははっ、やっぱりさきこいさんも先輩せんぱいのこと――」
「なっ! な、な……」

 さきこいみみまであかくなった……というか、ちょっとって、よくかんがえてほしい。なんだ、この誤解ごかいされるようなながれは! ここ、学校がっこう夕暮ゆうぐれにまる平和へいわ日常にちじょういちページだぞ? 続々ぞくぞくえる野次馬やじうまやじうままえで、この状況じょうきょうはマズぎる!

 しかし、ぼくせば、それこそあぶらだ。でも、くしかない! ぼく覚悟かくごめて身構みがまえた。そんなときだった。れいひじでつついてきた。

「キミ、なにをほけほうけているんだ? いまのうちだよ」
「え、えっ!?」
「mimiを使つかってフィオに連絡れんらく新規しんきイベントのうわさ本当ほんとうたしかめてきてくれ」

「こ、ここでダイブするのか?」
冒険ぼうけんするわけじゃないし、1~2ふんむでしょ? たおれたりしないよう、からだわたしささえておくから」
「そ、そっか、かった」
 的確てきかく指摘してきぼくうなずく。

 たしかにゲームのナビゲートキャラであるフィオなら、イベントの詳細しょうさいっていたっておかしくはない。すぐさまカバンにしまっていたmimiをし、みみ装着そうちゃくする。駆動くどうおんとともに、電源でんげん自動的じどうてきにONにわった。

「ダイブ、アストルム――」
 音声おんせい認識にんしきで、ログインを開始かいし現実げんじつ視界しかいは、アストルムのそれへとけていった。えてきた場所ばしょは、クラッシックな邸宅ていたく――ぼくたちのギルドハウスだった。

「フィオ――フィオ、いるか?」
 ともかく大声おおごえさけんでみるが、反応はんのうがない。普段ふだんなら、すぐにでもんでくるはずだ。
「おいっ! フィオッ!」
「は~いはい」

 しばらくこえをあげていると、はなたれたまどそとから、のんきそうなこえこえてきた。
「な~に? そんなにあわてて」
 いつもとおりの純白じゅんぱくのドレス姿すがた飛来ひらいしたのひらサイズの妖精ようせいは、ためいきともまどえんこしをかけた。

「ほら、れい新規しんきイベントの発表はっぴょうのことだ。きたいことがある」
「う~ん、いまちょっといそがしいんだけどな」
「はぁ!? こっちだって大変たいへんなんだよ!」
 まったく、ゲームないのキャラクターがいそがしいってどんな状況じょうきょうだ。

「できればイベントの詳細しょうさいを――」
「ごめんね、またのちにしてくれる? ひとたせてるから」
 フィオがおかしなこと口走くちばしった。

だれかとってたのか?」
「うん、協力きょうりょくしてほしいってわれてて……あ、もうもどらなきゃ!」
「ちょっ……」
 めるひまもなかった。フィオはあっというってしまい、ギルドハウスにはぼくだけがのこされた。

うそうそだろ……」
 しまもない、とはこういうことをうんだろう。やむなくログアウト処理しょりおこない、ぼく現実げんじつへともどってきた。

「どうだった?」
 うなれるぼくに、れいう。
からない、いそがしいからって」

「じゃあ、詳細しょうさいも……」
「さっぱりだ」
 と、いうか――

れい、これ……どうなってるんだ?」
 ぼくがちょっとはなしているすきに、周囲しゅうい状況じょうきょう一変いっぺんしていた。こちらをたままかたまっているひよりとさきこい。ミミちゃんはなみだでなにかをうったえている。
からだささえていたら、くっついてる、とおもわれたらしい」
 れい淡々たんたんった。

「えっと……」
 だれに、というわけではなく、おそおそくちにすると――
「おにいちゃ~ん、おにいちゃんはミミと一緒いっしょがいいんだよね」
 ぼく左足ひだりあし幼女ようじょびつき、ぎゅっとしがみついた。

「そうはいかないわ、アタシにはアンタが必要ひつようなの」
 さきこいやわらかなちからで、左手ひだりてにぎる。
「もう、みんな仲良なかよくしないとダメだよ! ほら、先輩せんぱいからもってあげて!」
 今度こんどはひよりだ。ぼく右腕うわんをその両手りょうてかかんだ。

 は? ちょ、ちょっとって!
 ぼく周囲しゅういだけが、みょう甘酸あまずっぱい空間くうかんになっているがする。
「あ、あのさ――」
 あわてて言葉ことばはっしようとするが、その瞬間しゅんかん草野くさの不安ふあんそうな視線しせんぼくしんからみとられた。

 ど、どうしたらいい? あまりのきゅう展開てんかいあたまがついてこない――というか、どうにもできない。
 だれかにたすけてもらいたい! だれか……というか、原因げんいんであるれいに!

「はぁ……」
 ためいきをこぼされた。完全かんぜんにゲームオーバーだった。斜陽しゃようまる校門こうもんまえで、ぼくはさらしものになったのだ。しかもだ。あいだわるいことに、きゅう展開てんかいはそのタイミングをねらったかのようにおとずれた。

 キイイイィィイイイイーーーーン!

 不意ふい頭上ずじょうからりそそぐハウリングおん。そのだれもが反射はんしゃてきちすくむ。
「なっ……なんだ!?」
 どうにかみみ両手りょうてさえつつ、見上みあげると――

「みっともないあらそいはそこまでになさい!」
 夕空ゆうぞらかぶヘリのスピーカーから、たのしげなこえがこだました。最悪さいあく予感よかんぼく背筋せすじつめたいものがはしる。しかし、どうすることもできない。

 迷惑めいわくなんてなんのその、ヘリは絶賛ぜっさん部活ぶかつちゅう校庭こうていへと着陸ちゃくりくした。そして、バァンとはなたれたとびらから――
皆様みなさま、ごきげんよう。藤堂とうどう秋乃あきのとうどうあきのですわ」
 あらわれたのは、場違ばちがい……というか、豪奢ごうしゃごうしゃなドレスの淑女しゅくじょだった。

 うん、どうして金持かねもちというのは、こう派手はで登場とうじょうしたがるんだろう。
「あ、秋乃あきのさん……どうしてここに?」
「すずめさんにきましたの。ただあいだもなく、うっかりくちすべらせてくれましたわ。あなたきのメイドだけあって、く・わ・し・く」

「あ、あのったら――」
「まったく、こんなに面白おもしろいことをわたしきでするなんて、さきこいさんもひとわるいですわ。わたしたちはお友達ともだちでしょう?」

秋乃あきのさんがくると、さわぎがおおきくなるからです」
 ぼそり、さきこいつぶやいた。と、そのとなり苦笑にがわらいをかべるぼくに、秋乃あきのさんがビシィとゆびした。

「こんなあらそいをこしてしまうなんて、本当ほんとうつみ殿方とのがたですのね、あなたは」
「えっ? あ、そういって……」
 曖昧あいまいあいまい返事へんじしかできない。しかし、秋乃あきのさんにとっては十分じゅうぶんだったらしく、彼女かのじょ満足まんぞくそうに両手りょうてひろげた。

「では、わたし相応そうおう舞台ぶたい用意よういしてげましょう」
「アストルムで勝負しょうぶ……とか?」
「いえ、当然とうぜんリアルのほうですわ。リアルの決着けっちゃくは、リアルでつけるべきですもの。偶然ぐうぜんにも明日あした休日きゅうじつですから」

 そしてすこかんがえるように口元くちもとて、つづける。
「そうね、勝利しょうりした方々かたがたには……ナオさんとのにんきりの時間じかんをプレゼント、というのでどうかしら?」
ぼく意思いしは……」
意思いし? これほどに魅力みりょくてき面々めんめんごせることが不服ふふくですの?」

魅力みりょくてき……って――」
 そうわれても、ぼくにとっては日常にちじょうだ。とはいえ、これだけの野次馬やじうまからの後押あとおし(という罵声ばせいばせい)をけてしまっては、うなずくしかない。
承認しょうにんいただきましたわ! みなさん、これは絶好ぜっこうのチャンスでしてよ」

 完全かんぜんられるかたちだった。とはいえ、この提案ていあんには収拾しゅうしゅうさせるだけの魅力みりょくがあったらしく、ミミちゃんは携帯けいたい通話つうわをはじめ、さきこい秋乃あきのさんと内緒ないしょばなしをしはじめた。作戦さくせん会議かいぎ、というやつだ。

 当然とうぜんぼくたちもこの時間じかん無駄むだにするわけにはいかない。
れい、どうおもう?」
「こうなった以上いじょう、やるしかないね」

「でも、てばいいんでしょ!」
 力強ちからづようひより。そのりょうはきゅっとにぎりしめられている。
「う~ん、そんなに簡単かんたんにいくかな……」

 ぎゃく草野くさの表情ひょうじょうくもらせていた。
大丈夫だいじょうぶだってっ! ギルド同士どうし勝負しょうぶなら、あたしたちが有利ゆうりだもん!」
「だが、問題もんだい主催しゅさいしゃだ。一筋縄ひとすじなわではいかないだろうな」
 れい真剣しんけんかおをしていた。しかし、どうやら覚悟かくごめたらしく、つようなずいてった。
「ともかく十分じゅうぶんをつけてのぞむとしよう」

「「「おーっ!」」」

 ぼくたちはそれぞれに高々たかだかこぶしげた。
「ああ、そうだ……ナオ」
「ん?」

今夜こんやはアストルムにインしないで。キミが不用意ふようい行動こうどうをとれば、さわぎはもっとおおきくなるかもしれないから」
 うん、しっかりくぎくぎすのをわすれないれいだった。

⇒『プリンセスコネクト! ~プリンセスナイト争奪そうだつせん~』だい2

キャラクター紹介しょうかい

坂井さかい直人なおと主人公しゅじんこう
 ひょんなことから『アストルム』に無理むりやりログインさせられた高校生こうこうせい少女しょうじょたちの能力のうりょく増大ぞうだいさせる“プリンセスナイト”の素質そしつつ。

はるさきひより草野くさの優衣ゆい
『プリンセスコネクト!』 『プリンセスコネクト!』
直人ただびとはじめてパーティをんだおんなで、ギルドメンバーの1人ひとり。いつも元気げんきはつらつで、どんな状況じょうきょうでもこまっているひとたすけるやさしいしんぬし直人ただびとおなじギルドのメンバーであり、中学ちゅうがく時代じだいからの同級生どうきゅうせいやさしくてひかえめな性格せいかくで、学校がっこうでは優等生ゆうとうせいとしてしたわれている。
じょうれいあかねミミ
『プリンセスコネクト!』 『プリンセスコネクト!』
つね冷静れいせい沈着ちんちゃくなギルドメンバーの1人ひとり礼儀れいぎ規則きそく厳格げんかくだったり、頑固がんこいちめんつ。ひととのいに不慣ふなれなで、男性だんせいたいしては潔癖けっぺきなところも。▲ふわふわした口調くちょう特徴とくちょうてきな、小学生しょうがくせいおんな。すぐ迷子まいごになったり、いとはぐれたりする。直人ただびとにとってはとしはなれたいもうとのような存在そんざい
佐々木ささきさきこい藤堂とうどう秋乃あきの
『プリンセスコネクト!』 『プリンセスコネクト!』
現在げんざいだい豪邸ごうていらすお嬢様じょうさまだが、おさないころにまずしい生活せいかつおくっていたため、おかねにはシビア。正義せいぎかんつよがったことがきらい。世界中せかいじゅうにグループ会社かいしゃ藤堂とうどう令嬢れいじょう。プライドがたかさと庶民しょみん感覚かんかくのなさから、突拍子とっぴょうしのない言動げんどう周囲しゅういおどろかせることがおおい。
フィオ
『プリンセスコネクト!』
▲“アストルム”の世界せかいでプレイヤーをサポートする妖精ようせい。ナビゲーターのわりに自由じゆう奔放ほんぽう

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太田おおた僚 プロフィール

 人気にんき恋愛れんあいシミュレーションゲームなどを手掛てがける作家さっか/シナリオライター。2014ねんにTVアニメされたPCゲーム『うしなわれた未来みらいもとめて』をはじめ、すうおおくのゲームでシナリオとディレクションを担当たんとう。ライトノベルの著作ちょさくおこなっている。

経歴けいれき作品さくひん
PCゲーム『うしなわれた未来みらいもとめて』(シナリオ)
TVアニメ『うしなわれた未来みらいもとめて』(シナリオ監修かんしゅう
小説しょうせつわかれる理由りゆうべなさい!』(著作ちょさく
小説しょうせつ断界だんがいしつ喚士』(著作ちょさく) ……多数たすう

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