ウリケ・シェーデ氏Photo by Kazumoto Ohono

3月がつに『シン・日本にっぽんの経営けいえい 悲観ひかんバイアスを排はいす』（日経にっけいBP）を出版しゅっぱんしたウリケ・シェーデ氏しは、（1）日本にっぽん経済けいざいに「失うしなわれた時代じだい」などなく、産業さんぎょう構造こうぞうまたは企業きぎょう経営けいえいと戦略せんりゃくが大おおきく変かわるシステム転換期てんかんきだったに過すぎない、（2）日本にっぽんが何なにかにつけて「遅おそい」と批判ひはんされることは、決けっして「停滞ていたい」ではなく、「安定あんていと引ひき換かえに日本にっぽんが支払しはらっている代償だいしょう」である、などと独自どくじの分析ぶんせきを展開てんかいする。日本にっぽんでは自虐じぎゃく的てきな悲観ひかん論ろんが渦巻うずまく中なか、日本にっぽん企業きぎょうに対たいして斬新ざんしんな見方みかたを提供ていきょうする気鋭きえいの経営けいえい学者がくしゃは何なにを語かたるのか。（国際こくさいジャーナリスト　大野おおの和かず基もと）

日本にっぽん企業きぎょうの「舞まいの海うみ戦略せんりゃく」とは？

――あなたは著作ちょさくの中なかで、「日本にっぽん企業きぎょうが強つよい理由りゆうは、ジャパン・インサイドにある。グローバルに技術ぎじゅつの最前線さいぜんせんで競争きょうそうし、飛躍ひやく的てきイノベーションへ進すすむ行動こうどう変革へんかくを、《技わざのデパート》＝《舞まいの海うみ戦略せんりゃく》と呼よぶことにした」と書かいています。「舞まいの海うみ戦略せんりゃく」とは非常ひじょうに斬新ざんしんでユニークだと思おもいました。なぜこのネーミングと内容ないようを思おもい付ついたのですか？

　舞まいの海うみが現役げんえき力士りきしとして活躍かつやくしていた当時とうじ、私わたしは彼かれの大だいファンでした。舞まいの海うみは身長しんちょうが少すこし低ひくく、新しん弟子でし検査けんさ合格ごうかく基準きじゅんに足たりなかったからシリコーンを頭あたまに埋うめて一時いちじ的てきに身長しんちょうを高たかくしたことは、有名ゆうめいな話はなしですよね。

　私わたしが前まえ著ちょ『再興さいこう THE KAISHA 日本にっぽんのビジネス・リインベンション』（日経にっけいBP）を執筆しっぴつしていた時とき、優すぐれた日本にっぽん企業きぎょうの戦略せんりゃくを「舞まいの海うみ戦略せんりゃく」と呼よぼうと思おもい付つきました。舞まいの海うみは、体からだは小ちいさくても戦略せんりゃく（技わざ）を練ねることで白星しろぼしを挙あげるタイプ。頭脳ずのうを使つかって戦たたかい、多おおくの試合しあいで新あたらしい技わざを披露ひろうして「技わざのデパート」と評ひょうされていました。その姿すがたが、日本にっぽん企業きぎょうが技術ぎじゅつフロンティアで競争きょうそうすることと重かさなったのです。

――「舞まいの海うみ戦略せんりゃく」に長たけている日本にっぽん企業きぎょうというのを幾いくつか教おしえてください。

　2007年ねんに米べいアップルのiPhoneが発売はつばいされたことで、アップルに部品ぶひんを提供ていきょうする日本にっぽん企業きぎょうに注目ちゅうもくするようになりました。ヒロセ電機ひろせでんき、ユニオンツール、コーセルなどですが、日本にっぽんでも知名度ちめいどはあまり高たかくないでしょう。有名ゆうめいどころではキーエンスやファナックなどで、この2社しゃは非常ひじょうに高たかい収益しゅうえき性せいでも知しられています。ただ、私わたしがとりわけ注目ちゅうもくしている企業きぎょうは比較的ひかくてき、知名度ちめいどが低ひくい企業きぎょうです。

――あなたは「日本にっぽんに対たいする見方みかたを変かえる必要ひつようがある」と一貫いっかんして主張しゅちょうされていますが、どういうことですか。