「広告ブロッカー」とは、インターネットを利用する際に広告が表示されなくするためのものである。「広告ブロック」とも。
また「アドブロッカー(ad blocker)」「アドブロック(ad block)」「アドブロッキング(ad blocking)」などと呼ばれることもある。この「アド」(ad)は広告を意味する英語「アドバタイジング(advertising)」や「アドバタイズメント(advertisement)」の略称である。
広告に限らず、ユーザーが指定したコンテンツを自由にブロックすることができるものが多い。そのため「コンテンツブロッカー(content blocker)」と呼ばれることもある。
概要
インターネットをウェブブラウザで閲覧する際、あるいはスマートフォン/タブレット用アプリを利用する際など、何らかの広告が表示されることは多い。
しかしこれらの広告を見せられることには、程度の差こそあれ「本来見たいものを隠してしまう」「目障りである」「(音声が伴う場合)耳障りである」「ウェブサイトの表示に時間がかかることがある」「(スキップできない動画広告などの場合)時間の無駄になる」「インターネット通信量を無駄に食う」などのデメリットもつきまとう。
そういった広告のデメリットから解放されるために、広告を表示させなくするためのものが広告ブロッカーである。ウェブブラウザの拡張機能(アドオン)やスマートフォン/タブレット向けアプリとして提供されていることが多いが、ルーターなどのインターネット接続機器に接続して使用するハードウェアタイプのものもある。
「フィルター」と呼ばれる条件リストのようなものを参照し、それに合致する広告などへのアクセスをキャンセルしたり、ブラウザに表示しないようにするという仕組みである。この「フィルター」自体は、広告ブロッカーの提供者とは別の団体や個人が制作・配布しているものを利用していることが多い。また、自己流のフィルターを作って追加していくこともできる。
広告ブロッカーを導入するメリットは、上記で挙げたような広告のデメリットの裏返し。すなわち、ウェブサイトから無駄なものが消えてスッキリした見た目となり、表示も早くなり、無駄に待たされたり不要な動画や音声を見せられることが無くなり、通信量も節約できる。
また、広告ブロッカーには「広告以外にも、ユーザーが指定したコンテンツをブロックする」機能を有するものが多い。このコンテンツブロック機能を使いこなせば、さらに上記のような効果は高くなる。
ただし、広告ブロッカーが使用者に不都合をもたらす場合もある。例えば、広告ブロッカーに対して敵対的なウェブサイトの中には、広告ブロッカーを検知すると閲覧を阻害してくるものもある。また、広告ブロッカーが広告と誤判定して必要なコンテンツまでブロックしてしまうこともある。そのため、広告ブロッカーを使う場合には「正常にウェブサイトが表示されない場合は、広告ブロッカーを切ってみる必要がある」という解決策を念頭においておかなければならない。
代表的な広告ブロッカー
以下の3つはいずれもウェブブラウザ拡張機能、およびスマートフォン/タブレット向けアプリである。
なお、これら3つは「2019年5月現在、ChromeやFirefox向けとして代表的なもの」であり、他のブラウザやスマートフォン/タブレット向けアプリにおいては事情が異なる。
また、これら3つの他にも「Ghostery」や「uMatrix」など広告ブロック機能を持つ評判のよい拡張機能は複数ある。
Adblock Plus(アドブロック プラス)
有力な広告ブロッカーの中では最も古くから存在しているもののひとつで、非常に有名であり使用者数も大変多い。また対応するブラウザやモバイル端末も多い。2019年5月現在、Chromeでは1000万人以上、Firefoxでも約1012万人ものユーザーがいる。広告フィルターの記述方式など、このソフト(およびオリジナルのAdblock)の仕様が広告ブロッカーのデファクトスタンダードとなっている部分も大きい。
00年代初めに開発されていた、人気の広告ブロック拡張機能「Adblock」(後述する「AdBlock」とは別のソフトであることに注意)の派生バージョンとして2005年に初めて公開された。その後「Adblock」の開発・更新は放棄されたため、この「Adblock Plus」がその地位を引き継いだかたちとなった。
更なる詳細は「Adblock Plus」の記事を参照。
uBlock Origin(ユーブロック オリジン)
Adblock Plusと比べ、CPUやメモリの使用率を抑えていて軽快であるという。こちらも使用者は非常に多い。2019年5月現在、Chromeでは1000万人以上、Firefoxでも約479万人に及ぶ。
2014年にリリースされた当初は「μBlock」という名称だったが「μ」の部分の読み方が分かりにくいんじゃいという声を受けて「uBlock」と言う名称となった。さらに2015年、オリジナルの開発者が「uBlock」の管理権限を他の開発者たちに譲渡しようとしたところ、ある一名のみが大きな権限を握り、かつ寄付を募り始めるという出来事が発生。オリジナルの開発者はこれに不信感を抱き「uBlock」とは別の拡張機能「uBlock Origin」を開発し始めた。そしてユーザーらの多くは「uBlock Origin」を選択した。「uBlock」の方も更新や配布は続けられてはいるのだが、「uBlock Origin」の数十分の一のユーザー数しか得ていない。
AdBlock(アドブロック)
「Adblock Plus」の元になった「Adblock」と名前が似ているので混同しやすい。こちらの「AdBlock」は名前のBが大文字になっている。
「Adblock Plus」にインスパイアされたChrome向けの広告ブロッカーとして、2009年にリリースされた。そのころ「Adblock Plus」にはChrome版が存在していなかったため歓迎され、Chromeにおいてかなりのユーザー(2019年5月現在のChromeウェブストアの表示では、少なくとも1000万人超)を獲得した。ただしその後「Adblock Plus」や「uBlock」のChrome版も出たため、当初の独占的な状態は揺るがされている。
後に「AdBlock」のFirefox版を出したがこちらでもユーザーを集め、2019年5月現在でユーザー数は約133万人と、「Adblock Plus」「uBlock Origin」に次ぐシェア3番手といったところにつけている。
ちなみにこの「AdBlock」の他にも、全く同じ「AdBlock」という名称の別の拡張機能が沢山あり(Chromeでの例1、Chromeでの例2、iOSでの例)、しかもいずれもそれなりのユーザー数を得ている。大変紛らわしいが、「adblock」と言う単語が単純すぎて本記事冒頭でも記したように一般名詞としても使用されていること、また先行する「Adblock」や「Adblock Plus」で既に使用されていることなどから、名称を独占できないのかもしれない。
niconicoでの設定例
niconicoの各サービス、ニコニコ動画やニコニコ静画でも広告や、人によっては不要と感じるであろう部分はたくさんある。ここでは、niconicoでそういった部分を取り除くための具体的な各種設定の一例を紹介する。
ただし、これらの設定は主にPCサイト用であり、スマートフォンサイト用のものではない。また、これらの設定例は2019年5月6日時点で動作するものにしかすぎない。広告ブロックの設定対象はniconico側が設定しているコンテンツの設定名称やコンテンツの並び順に基づいているため、niconico側がこれらの設定を変更すればここに記載されている設定例も意味をなさなくなる。さらに、多数の利用者によって練られたベストの設定というわけではなく、あくまで一利用者が使用している設定の例示である。
「どれだけの効果が出るのか」についての一例だが、例えば2019年5月6日にとあるネット環境にて、ニコニコ大百科のトップページを表示する際に表示終了までにかかった時間を計測したところ「広告ブロッカーオフでは平均9.202秒」「広告ブロッカーオンでは平均3.261秒」だった[1]。実感できる程度の差が出ることがわかる。ただし、このかかった時間のうち後半の部分は「今週の扉絵」の画像など文章以外の部分であったため、「文章が読めるようになるまでの時間」というわけではない。
なお「多くの広告ブロッカーで、既存のフィルターを利用するだけで非表示となるもの」は不要と思われるため記載していない。例えば2019年5月現在、ニコニコ大百科で「この記事の掲示板に最近描かれたお絵カキコ」より上に表示される「オススメ記事」欄は、多くの広告ブロッカーで利用可能となっているフィルター「EasyPrivacy」によってブロックすることができる。
ニコニコ動画
HTML5版プレイヤーのニコニコニュース表示欄を除去
動画視聴ページ HTML5版の動画表示枠の上にある、ニコニコニュース表示欄をブロックする。
Flash版プレイヤーのニコニコニュース表示欄を除去
動画視聴ページ Flash版の動画表示枠の上にある、ニコニコニュース表示欄をブロックする。
ニコニコアンケートへの参加を促す通知を表示させない
動画視聴ページなどの下部にせりあがってくる、ニコニコアンケートへの参加を促す通知をブロックする。
ニコニコ大百科
「おすすめ動画」「おすすめ静画」「おすすめニュース」除去
「掲示板にレスする」ボタンの下のバナー広告のさらに下にある、「おすすめ動画」「おすすめ静画」「おすすめニュース」をブロックする。
ニコニ広告
広告ブロッカーを作動させていると、「ニコニ広告のページが崩れる、表示されなくなる」「ニコニ広告の福引が表示されなくなる」といった現象が起きる場合がある[2]。そのため、以下の記述をフィルターではなくホワイトリストに載せる必要がある。
問題点
インターネット上の広告は、確かに利用者にとっては上記のようなデメリットが多い、できれば避けたいものである。
しかしインターネット上の広告というものは別に嫌がらせとして無意味に表示されているわけではない。表示させることでウェブサイトの運営者やアプリの開発者が金銭的報酬を得ているのだ。
特に無料のウェブサイトやアプリにおいては、「利用者が無料でそれらを利用できる理由」となっていることもあるだろう。「利用者にお金を払ってもらう代わりに、利用者には広告を見てもらい、その代わり広告代理業者からお金をもらう」というビジネスモデルというわけである。
広告ブロッカーはこの仕組みを阻害していることは間違いない。「広告を見る」という代価を支払わずにサービスを利用する者は、一種のフリーライダー(「ただ乗り」をする人)と言えなくもない。そのような利用者が増えすぎれば、上記のようなビジネスモデルは破綻してしまう。
このような観点から、広告ブロッカーを使用することについて倫理的問題点があると主張する人々も居る。ただし広く支持を集めているとは言い難いようだ。
ウェブメディア企業やウェブ広告を手掛ける企業、あるいは閲覧者が広告を見た時間や回数によって収益が左右されるYouTuberなどにとっては、広告ブロッカーは直接的に利益を削ってくる嫌な存在である。
一部の企業運営ウェブサイトなどでは、閲覧者が広告ブロッカーを使用しているとそれを感知して「我々は広告収入に依拠してサービスを提供しています。どうかこのサイトでは広告ブロッカーをオフにしていただけませんか」といったような「お願い」を表示する例もある。さらに強気な例では「広告ブロッカーの利用を検知しました。そんな人にはこのサイトは利用させませんよ」といった表示を出してサイトの利用を断ってくる場合もある。
広告企業やメディア企業が広告ブロッカーの提供企業に対して訴訟を検討する例もある。しかし広告ブロッカーは各利用者がそう望んで個別に利用を始めている以上、訴訟で勝てる見込みは少ないと言われる。実際、ドイツでは複数のメディア企業が広告ブロッカーの提供会社を訴えたが、いずれも敗訴しているようだ。
関連項目
脚注
- *広告ブロッカーには下記のような様々な追加設定を導入済。Firefoxのネットワークモニター機能を使用し、"load"イベント発生までの時間を記録。オフとオンで10回ずつ計測。
- *【12/17更新】ニコニ広告のページが崩れる、表示されない、福引が表示されないでお困りの方へ|ニコニコインフォ
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ページ番号: 5562626
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リビジョン番号: 3262525
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