お金かね 単語たんご

お金かね（通貨つうか、貨幣かへい）とは、財ざいやサービスとの交換こうかんに使つかわれる物体ぶったい及およびその概念がいねんである。
　

概要がいよう

お金かねとは、人間にんげん社会しゃかいにおいて、必要ひつような財ざい・サービスを手てに入いれるために使つかわれる物体ぶったい及およびその概念がいねんである。また、「価値かちの尺度しゃくど」「交換こうかんの媒介ばいかい」「価値かちの保蔵やすぞう」の機き能のうを持もつ。

お金かねは浪漫ろうまんともいえる。人ひとが生いきていく上うえで重要じゅうような要素ようその一ひとつでもあり、命いのちそのものとする人ひともいる。人間にんげんが一生いっしょうを懸かけて追おい求もとむめていく存在そんざい、それがお金かねなのだ･･･とか、お金かねとは、現在げんざい世界せかいにおいて最もっとも大おおきな派は閥ばつの宗教しゅうきょうおよび、その神様かみさまの名前なまえである･･･という感覚かんかくは、デフレが続つづいて通貨つうか価値かちが高たかまったときに誰だれもが感かんじるだろう。

お金かねとは、目め的まとを叶かのうえるための手段しゅだんに過すぎない。お金かねだけ持もっていてもしょうがない･･･という感覚かんかくは、インフレが続つづいて通貨つうか価値かちが減へっていくときに誰だれもが感かんじるだろう。

お金かねそのものは単たんなる紙かみや金属きんぞくであり、大たいした価値かちは無むい。加くわえて日本にっぽんのお金かねは不換紙幣ふかんしへい、つまりその紙幣しへいが示しめす金額きんがくの金塊きんかいとの交換こうかんが保ほ証あかしされていない。そんなものが、なぜかお金かねとして流通りゅうつうしている。そのことを説明せつめいする学説がくせつは、主あるじに2つ存在そんざいする。

紙幣しへいを利用りようする人々ひとびとが「紙幣しへいは金塊きんかいと同おなじようなものだ」と信しんじ込こんで共同きょうどう幻想げんそうを抱いだくことで、紙幣しへいが流通りゅうつうしている。日本にっぽん円えんが流通りゅうつうしているのは、「日本にっぽん円えんは金塊きんかいと同おなじようなものだ」と人々ひとびとに信認しんにんされているからである。日本銀行にっぽんぎんこうが過剰かじょうに不換紙幣ふかんしへいを発行はっこうすると、紙幣しへいを利用りようする人々ひとびとが紙幣しへいを疑うたがい出だすようになり、共同きょうどう幻想げんそうが破やぶれて、ジンバブエドルのようなパニックに陥おちいり、最悪さいあくの場合ばあいただの紙かみ切きれになってしまう･･･というのは、商品しょうひん貨幣かへい論ろんに基もとづく考かんがえ方かたである。

政府せいふが罰則ばっそく付つきの法律ほうりつを制定せいていして国くに民みんに対たいして不換紙幣ふかんしへいを納税のうぜいするように強要きょうようしているから、皆みなが不換紙幣ふかんしへいに対たいする価値かちを感かんじるようになる。日本にっぽん円えんが流通りゅうつうしているのは、日本にっぽん政府せいふの徴税ちょうぜい権けん力ちからが健在けんざいだからである。不換紙幣ふかんしへいを徴税ちょうぜいする政府せいふの権けん力ちからが内戦ないせんなどによって弱体じゃくたい化かすると、ジンバブエドルのようなパニックに陥おちいり、最悪さいあくの場合ばあいただの紙かみ切きれになってしまう･･･というのは、国定こくてい信用しんよう貨幣かへい論ろんに基もとづく考かんがえ方かたである。


お金かねに関かんしては、通貨つうか、貨幣かへいといった類似るいじの表現ひょうげんがある。一般いっぱん社会しゃかいの中なかではこれらの言葉ことばを同おなじ意味いみの言葉ことばと扱あつかっているが、法律ほうりつや学界がっかいの中なかではこれらの言葉ことばを使つかい分わけている。詳くわしくは、本ほん記事きじの『法律ほうりつや学界がっかいにおける呼よび方かた』の項こう目めを参照さんしょうのこと。
　

日本にっぽんの現金げんきん通貨つうか

お金かねといっても大別たいべつして2種類しゅるいがある。現金げんきん通貨つうかと、預金よきん通貨つうかである。

日本にっぽんでは、日本銀行にっぽんぎんこうが発行はっこうする日本銀行にっぽんぎんこう券けん(紙幣しへい)と、政府せいふが発行はっこうする硬貨こうかを合あわせて現金げんきん通貨つうかと呼よぶ。

現金げんきん通貨つうかは中央ちゅうおう銀行ぎんこうや政府せいふが発行はっこうしない限かぎり増殖ぞうしょくしない。民間みんかん人ひとが勝手かってに増殖ぞうしょくさせたら、偽札にせさつ・偽にせ貨を作つくったことになり、刑法けいほうの通貨つうか偽造ぎぞうの罪つみでとっ捕つかまるのである。
　

紙幣しへい

日本にっぽんの紙幣しへいは日本銀行にっぽんぎんこう券けんといい、日本銀行にっぽんぎんこう(日本にっぽんの中央ちゅうおう銀行ぎんこう)が発行はっこうしている。このため、どの紙幣しへいも表面ひょうめんに「日本銀行にっぽんぎんこう」と印字いんじしてある（画像がぞう）。

日本銀行にっぽんぎんこうは、国立こくりつ印刷いんさつ局きょくに発注はっちゅうし、日本銀行にっぽんぎんこう券けんを作つくってもらっている。このため、どの日本銀行にっぽんぎんこう券けんも「国立こくりつ印刷いんさつ局きょく製造せいぞう」と小ちいさく印字いんじしてある。ちなみに日本銀行にっぽんぎんこう券けん1枚まいを製造せいぞうするための費用ひようは17円えんほどである^[1]。

日本銀行にっぽんぎんこう券けんは、日本銀行にっぽんぎんこうの負債ふさいとして計上けいじょうされている(資料しりょう3ページ)。つまり、日本銀行にっぽんぎんこう以外いがいの存在そんざいにとって、日本銀行にっぽんぎんこう券けんは資産しさんとなる。ある人ひとの負債ふさいが、それ以外そとの人ひとの資産しさんになる、という考かんがえ方かたは、簿記ぼきや貸借たいしゃく対照たいしょう表ひょう（バランスシート）の知識ちしきが少すこしでもあると理解りかいできる。

日本銀行にっぽんぎんこう券けんで買かい物ものをするということは、日本銀行にっぽんぎんこうの負債ふさい（日本銀行にっぽんぎんこう以外いがいの全員ぜんいんにとっての資産しさん）を譲渡ゆずりわたして、代かわりに何なにかを得える行為こういである。

ただし、日本銀行にっぽんぎんこう券けんは不ふ換かわ銀行ぎんこう券けんである。日本銀行にっぽんぎんこうは、日本銀行にっぽんぎんこう券けんを差さし出だされたとしても、日本銀行にっぽんぎんこう券けんに書かかれている金額きんがくと同等どうとうの資産しさんを提供ていきょうする義務ぎむを無む期限きげんに停止ていししている。そのため、日本銀行にっぽんぎんこうにとっての日本銀行にっぽんぎんこう券けんは、負債ふさいとしての性質せいしつが極度きょくどに薄うすまった負債ふさいであり、極きわめて形式けいしき的てきな負債ふさいである。

国立こくりつ印刷いんさつ局きょくで紙かみを印刷いんさつしたあと、国立こくりつ印刷いんさつ局きょくから日本銀行にっぽんぎんこうへ輸送ゆそう車くるまで紙かみを運はこび入いれる。日本銀行にっぽんぎんこうは紙かみを倉庫そうこに入いれて厳重げんじゅうに保管ほかんする。この時点じてんではまだ日本銀行にっぽんぎんこうにとって「単たんなる紙かみ」という扱あつかいである。

日本銀行にっぽんぎんこうに口座こうざを開ひらいている市中しちゅう銀行ぎんこう（中央ちゅうおう銀行ぎんこう以外いがいの一般いっぱん的てきな銀行ぎんこう）が、「大型おおがた連休れんきゅうの前まえなので、我わが々を利用りようする客きゃくが大勢おおぜいやってきて預金よきんをおろして日本銀行にっぽんぎんこう券けんを引ひき出だすだろう^[2]。それに対応たいおうするため日本銀行にっぽんぎんこう券けんを入手にゅうしゅしたい。口座こうざの中なかの日銀にちぎん当座とうざ預金よきんを日本銀行にっぽんぎんこう券けんに交換こうかんしたい」と要望ようぼうを出だしたら、日本銀行にっぽんぎんこうは倉庫そうこから紙かみを取とり出だして、紙かみを正式せいしきに「日本銀行にっぽんぎんこう券けん」として発行はっこうして、市し中なか銀行ぎんこうに与あたえる。それと同時どうじに市し中なか銀行ぎんこうが保有ほゆうする日銀にちぎん当座とうざ預金よきんを減へらす。

市し中なか銀行ぎんこうが「大型おおがた連休れんきゅうが過すぎ、我わが々を利用りようする客きゃくが大勢おおぜいやってきて日本銀行にっぽんぎんこう券けんを預あづけて預金よきんにした^[3]。日本銀行にっぽんぎんこう券けんを過剰かじょうに持もっているので、日本銀行にっぽんぎんこう券けんを預あづけたい。日本銀行にっぽんぎんこう券けんを日銀にちぎん当座とうざ預金よきんに交換こうかんしたい」と要望ようぼうを出だしたら、日本銀行にっぽんぎんこうは日本銀行にっぽんぎんこう券けんを引ひき取とって倉庫そうこに入いれ、日本銀行にっぽんぎんこう券けんを正式せいしきに還かえ収おさむして^[4]、「ただの紙かみ」に戻もどす。それと同時どうじに市し中なか銀行ぎんこうが保有ほゆうする日銀にちぎん当座とうざ預金よきんを増ふやす。

日銀にちぎん当座とうざ預金よきんは日本銀行にっぽんぎんこうが発行はっこうする中央ちゅうおう銀行ぎんこう預金よきんの1つで、日本銀行にっぽんぎんこうの負債ふさいであり、市し中なか銀行ぎんこうにとっての債権さいけんである。日銀にちぎん当座とうざ預金よきんはすぐに日本銀行にっぽんぎんこう券けんに交換こうかんすることができる。「日銀にちぎん当座とうざ預金よきん＝日本銀行にっぽんぎんこう券けん」と考かんがえておけば、だいたい合あってる。

日本銀行にっぽんぎんこうは、何なにか資産しさんを受うけ取とったときに初はじめて日銀にちぎん当座とうざ預金よきんを発行はっこうすることができる。金塊きんかいとの交換こうかんを義務ぎむづけた兌換だかん銀行ぎんこう券けんの時代じだいは、市し中なか銀行ぎんこうから金塊きんかいという資産しさんを受うけ取とったときに日銀にちぎん当座とうざ預金よきんを新規しんき発行はっこうしていた。日本銀行にっぽんぎんこうの貸借たいしゃく対照たいしょう表ひょうの一部いちぶは、金塊きんかい受うけ取とりを境さかいにして次つぎのように変化へんかしていた。

　
金塊きんかいとの交換こうかんを義務ぎむづけられていない不ふ換かわ銀行ぎんこう券けんが流通りゅうつうする現代げんだいにおいては、市し中なか銀行ぎんこうから国債こくさいを受うけ取とったときに日銀にちぎん当座とうざ預金よきんを新規しんき発行はっこうする方法ほうほうを主あるじに採用さいようしている。日本銀行にっぽんぎんこうの貸借たいしゃく対照たいしょう表ひょうの一部いちぶは、国債こくさい受うけ取とりを境さかいにして次つぎのように変化へんかする。

　
国債こくさいは、政府せいふの負債ふさいであり、政府せいふ以外いがいの存在そんざいにとっては資産しさんとなる。日本銀行にっぽんぎんこうの貸借たいしゃく対照たいしょう表ひょうにおける資産しさんの部ぶには、大量たいりょうの国債こくさいが計上けいじょうされている(資料しりょう3ページ)。

明治めいじ時代じだいには、政府せいふが発行はっこうする政府せいふ紙幣しへいが流通りゅうつうしていた時期じきがあった。次第しだいに、日本銀行にっぽんぎんこうが発行はっこうする銀行ぎんこう券けんが通貨つうかの主あるじ役やくとなっていった。最初さいしょは兌換だかん銀行ぎんこう券けんが発行はっこうされ、のちに不ふ換かわ銀行ぎんこう券けんが発行はっこうされるようになり、現代げんだいに至いたっている。

紙幣しへいについては個別こべつ記事きじがある。

2020年ねん現在げんざい流通りゅうつうしている紙幣しへいについては、個別こべつ記事きじがある。1000円えん、2000円えん、5000円えん、10000円えん

↑日本にっぽんで最もっとも有名ゆうめいな三さん人にん

余談よだんだが、日本にっぽんの紙幣しへいには最新さいしん技術ぎじゅつを駆使くしした偽造ぎぞう対策たいさくがテンコ盛ざかりである。中なかには、日本にっぽん企業きぎょうが開発かいはつし、日本にっぽんはもちろん世界せかいの紙幣しへいに導入どうにゅうされているものも。世界せかいに目めを向むけると、オーストラリアのプラスチック紙幣しへい（ポリマー紙幣しへい）など、紙かみによらない紙幣しへいも存在そんざいする。
　

硬貨こうか

日本にっぽんの硬貨こうかは、政府せいふ（財務省ざいむしょう）が発行はっこうしている。このため、どの硬貨こうかも表面ひょうめんに「日本にっぽん国こく」と印字いんじしてある（画像がぞう）。

財務省ざいむしょうは、造幣局ぞうへいきょくに硬貨こうかを製造せいぞうさせて、できあがった硬貨こうかを製造せいぞう原価げんかに近ちかい金額きんがくで買かい取とる。財務省ざいむしょうが製造せいぞう済ずみ硬貨こうかを日本銀行にっぽんぎんこうに交付こうふして、その引ひき換かえに政府せいふ預金よきんを受うけ取とる。これが、硬貨こうかの発行はっこうの流ながれである（通貨つうか法ほう第だい4条じょう第だい1項こう～第だい4項こう、UFJ総合そうごう研究所けんきゅうじょ2003年ねん5月がつ12日にち調査ちょうさレポート2ページ）。

政府せいふ預金よきんは日本銀行にっぽんぎんこうが発行はっこうする中央ちゅうおう銀行ぎんこう預金よきんの1つで、日本銀行にっぽんぎんこうの負債ふさいであり、政府せいふにとっての債権さいけんである。政府せいふ預金よきんはすぐに日本銀行にっぽんぎんこう券けんに交換こうかんすることができる。

交付こうふした分ぶんだけ得えた政府せいふ預金よきんは、税ぜい外がい収入しゅうにゅうとして政府せいふの一般いっぱん会計かいけいに入はいる。毎まい年度ねんどの予算よさんの、歳入さいにゅうという項こう目めの、「その他た収入しゅうにゅう」に入はいる（平成へいせい31年度ねんど予算よさん）。

硬貨こうかの額面がくめん金額きんがくと製造せいぞう原価げんかをまとめた表ひょうは以下いかの通とおり（このサイトを資料しりょうとした）。

　
昭和しょうわ61年ねんには、昭和しょうわ天皇てんのう御ご在位ざいい60年ねん記念きねん10万まん円えん金貨きんかを発行はっこうした。このときの製造せいぞう原価げんかは約やく4万まん円えんなので、通貨つうか発行はっこう益えきは6万まん円えんとなった。このように、政府せいふが高額こうがくな硬貨こうかを発行はっこうすると、その分ぶんだけ政府せいふの税ぜい外がい収入しゅうにゅうが増ふえて、政府せいふの通貨つうか発行はっこう益えき（シニョリッジ）となる。

硬貨こうかは、政府せいふが発行はっこうするもので、発行はっこうした分ぶんだけ得えられた政府せいふ預金よきんが税ぜい外がい収入しゅうにゅうとなり政府せいふの資産しさんとなる。このため、政府せいふ紙幣しへいとよく似にた存在そんざいである。

2020年ねん現在げんざい流通りゅうつうしている硬貨こうかについては、個別こべつ記事きじがある。1円えん、5円えん、10円えん、50円えん、100円えん、500円えん
　

日本にっぽんの預金よきん通貨つうか

現代げんだい社会しゃかいにおいて上記じょうきのような現金げんきん通貨つうか（日本銀行にっぽんぎんこう券けん、硬貨こうか）は、もはや「お金かね」の一部いちぶでしかなくなっているのが現実げんじつである。現在げんざいのお金かねの大だい部分ぶぶんは預金よきん通貨つうかと呼よばれるものが占しめている。

預金よきん通貨つうかは、銀行ぎんこう預金よきんのことである（本ほん項こう目めでは預貯金よちょきん取扱とりあつかい金融きんゆう機関きかんをすべて「銀行ぎんこう」と呼よぶことにする）。
 

銀行ぎんこう預金よきんは預金よきん者しゃの資産しさんであり、銀行ぎんこうの負債ふさい

銀行ぎんこう預金よきんは、預金よきん者しゃにとって現金げんきん通貨つうかを要よう求もとむできる債権さいけんであり、資産しさんである。それと同時どうじに、銀行ぎんこうにとって現金げんきん通貨つうかを支払しはらうべき債務さいむであり、負債ふさいである。

銀行ぎんこう預金よきんのなかでも普通ふつう預金よきんと当座とうざ預金よきんは、預金よきん者しゃが「銀行ぎんこう預金よきんを現金げんきん通貨つうかに換かえてくれ」と要よう求もとむしたときに銀行ぎんこうが即座そくざに支払しはらいに応おうじる種類しゅるいの預金よきんである。普通ふつう預金よきんや当座とうざ預金よきんは銀行ぎんこうにとっての負債ふさいで、預金よきん者しゃが要よう求もとむした日ひが支払しはらい期日きじつとなる種類しゅるいの厳きびしい負債ふさいである。こういう負債ふさいを「一覧いちらん払はらいの負債ふさい」とか「要よう求もとむ払はらいの負債ふさい」という。

銀行ぎんこうというのは金融きんゆう庁ちょうに厳きびしく監督かんとくされている存在そんざいであり、常つねに財務ざいむ状況じょうきょうが健全けんぜんとなるように指ゆび導しるべされている。そのため銀行ぎんこうに対たいする人々ひとびとの信用しんようは極きわめて高たかく、「銀行ぎんこう預金よきんを持もっていれば、確実かくじつに現金げんきん通貨つうかに交換こうかんできる」と誰だれもが信用しんようしている。銀行ぎんこうが発行はっこうする銀行ぎんこう預金よきんという負債ふさいは、負債ふさいとしての格かくがとても高たかく、現金げんきん通貨つうかと同等どうとうの扱あつかいを受うけている。

普通ふつうの企業きぎょうが手形てがたや電子でんし記録きろく債権さいけんを発行はっこうしても、その手形てがたや電子でんし記録きろく債権さいけんを預金よきん通貨つうかとして通用つうようさせるのは難むずかしい。普通ふつうの企業きぎょうは金融きんゆう庁ちょうに厳きびしく監督かんとくされているわけではなく、財務ざいむ状況じょうきょうが健全けんぜんとなるように指ゆび導しるべされているわけではない。そのため普通ふつうの企業きぎょうが発行はっこうした手形てがたや電子でんし記録きろく債権さいけんに対たいして多おおくの人ひとが「この手形てがた・電子でんし記録きろく債権さいけんを持もっていても、確実かくじつに現金げんきん通貨つうかに交換こうかんできるわけではない」と一いち抹の不安ふあんを感かんじるようになる。普通ふつうの企業きぎょうが発行はっこうする手形てがた・電子でんし記録きろく債権さいけんは、銀行ぎんこう預金よきんに比ひべて負債ふさいとしての格かくが低ひくい。
　

信用しんよう創造そうぞうによって増加ぞうかし、返済へんさいによって減少げんしょうする

銀行ぎんこう預金よきんは、銀行ぎんこうの手てによって勝手かってに増殖ぞうしょくさせることができる。増殖ぞうしょくさせてもお巡まわりさんにしょっ引ひかれることがない。銀行ぎんこうの貸出かしだしによって、貸かし出だした分ぶんだけ銀行ぎんこう預金よきんが増ふえていく。これを信用しんよう創造そうぞう（預金よきん創造そうぞう）という。

銀行ぎんこうが融資ゆうしをすると、その瞬まどか間あいだ、世よの中なかの銀行ぎんこう預金よきんの総量そうりょうが一気いっきに増ふえる。そして、銀行ぎんこうから融資ゆうしを受うけた人ひとが返済へんさいするたびに、世よの中なかの銀行ぎんこう預金よきんの総量そうりょうが少すこしずつ減へっていく。このように、銀行ぎんこう預金よきんの総量そうりょうは貸かし出だしによって増ふえて、返済へんさいによって減へり、経済けいざいの調子ちょうしに伴ともなってダイナミックに変動へんどうする。好このみ景けい気きになると貸かし出だしが増ふえて銀行ぎんこう預金よきんの総量そうりょうが増ふえ、不ふ景けい気きになると貸かし出だしが減へって銀行ぎんこう預金よきんの総量そうりょうが減へる。
　

マネタリーベースとマネーストック

経済けいざい論議ろんぎでは、マネタリーベース（ベースマネー、ハイパワードマネー）とかマネーストック（マネーサプライ）といった用語ようごが出でてくる。

マネタリーベースは、中央ちゅうおう銀行ぎんこうが民間みんかんに向むけて発行はっこうしたお金かねの総量そうりょうである。人々ひとびとの間あいだで流通りゅうつうする現金げんきん通貨つうかと、日銀にちぎん当座とうざ預金よきん（市し中なか銀行ぎんこうが現金げんきん通貨つうかを日銀にちぎんに預あづけたときに発生はっせいする預金よきん）を合計ごうけいした数値すうちである。

マネーストックは、金融きんゆう部門ぶもんから離はなれて経済けいざい全体ぜんたいに供給きょうきゅうされたお金かねの総量そうりょうである。マネーストックの多おおくを占しめるのが、預金よきん通貨つうかである。


だから、マネタリーベース＝現金げんきん通貨つうか、マネーストック＝預金よきん通貨つうか、と考かんがえておけば、だいたい合あってる。
　

キャッシュレス

21世紀せいきの世界せかい各かく国くにではキャッシュレスの普及ふきゅうが進すすんでいる。

キャッシュレスは現金げんきん通貨つうかに代かわる支払しはらい方法ほうほうの総称そうしょうである。電子でんしネットワークを構築こうちくする必要ひつようが無むい手形てがた・小切手こぎってと、電子でんしネットワークを構築こうちくする必要ひつようがある電子でんし決済けっさい（クレジットカード、デビットカード、電子でんしマネーなど）の2種類しゅるいが考かんがえられるが、キャッシュレスと言いえば後者こうしゃの電子でんし決済けっさいのみを指ゆびすことが多おおい。

キャッシュレスの長所ちょうしょと短所たんしょについては当該とうがい記事きじが詳くわしい。特筆とくひつすべき長所ちょうしょというと、ビッグデータを集あつめることができてビッグデータを解析かいせきしてビジネスに大おおいに役立やくだてることができる点てんである。特筆とくひつすべき短所たんしょというと、災害さいがいに非常ひじょうに弱よわく、災害さいがい大だい国くに日本にっぽんでの徹とおる底そこ的てきな普及ふきゅうが難むずかしい点てんである。
　

国債こくさい

国債こくさいとは、政府せいふが発行はっこうする債券さいけんであり、「券面けんめんに記載きさいされた期日きじつに券面けんめんに記載きさいされた通貨つうかを券面けんめんに記載きさいされた金額きんがくだけ支払しはらう」と政府せいふが約束やくそくして負債ふさい証あかし明あかり書しょとして発行はっこうする証あかし券けんである。

2021年ねん現在げんざいの日本にっぽん国こく政府せいふが発行はっこうしている国債こくさいは、その全すべてが自じ国くに通貨つうか建だて国債こくさいであり、「日本にっぽん政府せいふが日本にっぽん円えんを支払しはらう義務ぎむ」を記しるした債券さいけんである。
　

通貨つうかの材料ざいりょうとなる

日本にっぽん国こく債さいが満期まんきになる前まえに、日銀にちぎんが新規しんきに「日本銀行にっぽんぎんこう券けんといつでも交換こうかんできる中央ちゅうおう銀行ぎんこう預金よきん（日銀にちぎん当座とうざ預金よきん）」を発行はっこうして、国債こくさいの保有ほゆう者しゃから買かい取とることができる（買かいオペレーション）^[5]。日銀にちぎんの貸借たいしゃく対照たいしょう表ひょう（バランスシート）の資産しさんの部ぶに国債こくさいが入はいり、その代償だいしょうとして、日銀にちぎんの貸借たいしゃく対照たいしょう表ひょうの負債ふさいの部ぶで日銀にちぎん当座とうざ預金よきんが増ふえる。

このため、「国債こくさいは通貨つうかの材料ざいりょうになる」「日本にっぽん国こく債さいは日銀にちぎん当座とうざ預金よきんの材料ざいりょうとなる」「日本にっぽん国こく債さいは日本にっぽん円えんの材料ざいりょうとなる」といった風ふうにおぼえておいてよい。

日銀にちぎんが保有ほゆうしている国債こくさいについて、政府せいふは元本がんぽんや利子りしの支払しはらいを考かんがえなくてよい。なぜなら、日銀にちぎんは政府せいふの経済けいざい政策せいさくの基本きほん方針ほうしんに整合せいごう的てきな金融きんゆう政策せいさくを実行じっこうする存在そんざいで、平ひらたたく言いってしまえば政府せいふをひたすら助たすける存在そんざいだからである（日銀にちぎん法ほう第だい4条じょう）。
　

無む利子りし・返済へんさい期限きげん無む期限きげんの永久えいきゅう国債こくさい

ちなみに政府せいふは、その気きになれば「無む利子りし・返済へんさい期限きげん無む期限きげんの永久えいきゅう国債こくさい」というものを発行はっこうすることができる。もちろん、そんなものを買かう市し中なか銀行ぎんこうはいない。国会こっかいの議決ぎけつを受うけた上うえで、日銀にちぎんが引ひき受うけるしかない（中央ちゅうおう銀行ぎんこうの国債こくさい直接ちょくせつ引ひき受うけ）。そうなったら政府せいふは日本銀行にっぽんぎんこう券けんをまるごとタダで手てにしたようなものである。

「無む利子りし・返済へんさい期限きげん無む期限きげんの永久えいきゅう国債こくさい」というのは、紙幣しへいと非常ひじょうによく似にている。紙幣しへいというのは日本銀行にっぽんぎんこうにとって負債ふさいだが、利子りしは付つかないし、元本がんぽんの返還へんかん義務ぎむはない。
　

法律ほうりつや学界がっかいにおける呼よび方かた

日本にっぽん国こく内うちで販売はんばいされている辞書じしょにおいて、「お金かね（金銭きんせん）」と「通貨つうか」と「貨幣かへい」は同一どういつの意味いみを持もつ言葉ことばだと説明せつめいされていることが多おおい（辞書じしょ例れい1、辞書じしょ例れい2、辞書じしょ例れい3）。

ところが、法律ほうりつや学界がっかいでは、それらの言葉ことばを区別くべつするようにしている。
　

通貨つうか法ほうや日銀にちぎん法ほうや刑法けいほう

通貨つうかとは貨幣かへいと日本銀行にっぽんぎんこう券けんの2つによって構成こうせいされていると定さだめられている（通貨つうか法ほう第だい2条じょう第だい3項こう）。

貨幣かへいとは、1円えん玉だまから500円えん玉たままでの硬貨こうかのことを指ゆびす（通貨つうか法ほう第だい5条じょう）。

日本銀行にっぽんぎんこう券けんは、1000円えん札さつと2000円えん札さつと5000円えん札さつと10000円えん札さつのことをいう。

通貨つうか法ほうでも、日銀にちぎん法ほう第だい46条じょうでも、日本銀行にっぽんぎんこう券けんのことを「紙幣しへい」と呼よばないようにしている。

また、刑法けいほう第だい2編へん第だい16章しょう（通貨つうか偽造ぎぞうの罪つみ）の第だい148条じょうから第だい153条じょうで、紙幣しへいと銀行ぎんこう券けんと貨幣かへいをしっかり区別くべつしている。

法律ほうりつの世界せかいでは、紙幣しへいというのは政府せいふ紙幣しへいのことを指ゆびす。明治めいじ時代じだいの日本にっぽん政府せいふは政府せいふ紙幣しへいを発行はっこうしていて、銀行ぎんこうが発行はっこうする銀行ぎんこう券けんと明確めいかくに区別くべつしていた。その頃ころの名残なごりが現代げんだいも続つづいている。


ちょっとややこしいので表ひょうにすると以下いかのようになる。

学界がっかい

学者がくしゃたちによって作つくられる界隈かいわいにおいても、法律ほうりつ用語ようごと同おなじ傾向けいこうがある。

学界がっかいにおいて、貨幣かへいというのは金属きんぞくで鋳造ちゅうぞうされた硬貨こうかのことを意味いみすることが多おおい。学者がくしゃが「貨幣かへい史し」と銘打めいうって書かき上あげた本ほんを読よんでみると硬貨こうかの歴史れきしのことばかり書かかれていて紙幣しへいの歴史れきしが書かかれていないことが多おおい。やはり「貨幣かへい＝硬貨こうか（金属きんぞく製せいの鋳い貨）」と扱あつかうのが、学界がっかいにおいて優勢ゆうせいと言いえる。
　

簿記ぼきで出でてくる用語ようご　フローとストック

簿記ぼきの世界せかいでは、フローやストックといった用語ようごが出でてくる。いずれも、お金かねの単位たんいを使つかって計算けいさんされる。

フローは、ある期間きかんでの財務ざいむ状況じょうきょうを構成こうせいする要因よういんのことをいう。支出ししゅつ・収入しゅうにゅう、消費しょうひ・生産せいさんなどがフローとされる。フローを示しめす財務諸表ざいむしょひょうの代表だいひょう例れいは、損益そんえき計算けいさん書しょである。

ストックは、ある時点じてんでの財務ざいむ状況じょうきょうを構成こうせいする要因よういんのことをいう。資産しさんと債務さいむがストックとされる。ストックを示しめす財務諸表ざいむしょひょうの代表だいひょう例れいは、貸借たいしゃく対照たいしょう表ひょう（バランスシート）である。
　

インフレーションとデフレーション

お金かねの価値かちが下さがって物価ぶっかが上昇じょうしょうしていくことをインフレーションという。

お金かねの価値かちが高たかまって物価ぶっかが下落げらくしていくことをデフレーションという。
　

お金かねの意義いぎ

この項こう目めは商品しょうひん貨幣かへい論ろんに基もとづいた記述きじゅつが展開てんかいされています

　
お金かねが存在そんざいしないとどうなるだろうか？想像そうぞうしてもらいたい。

もし、あなたがお金かねが無むい世界せかいで生いきていこうとすると、生活せいかつに必要ひつようなもの（家いえ、食料しょくりょう、服ふく、日にち用品ようひんなどなど）を自分じぶんで作つくらなければならない。毎日まいにち毎日まいにち、膨大ぼうだいな時間じかんをそうした生活せいかつ必需ひつじゅ品ひんの製造せいぞうと維持いじに費ついやさなければならなくなる。しかし、それでも手てに入はいらないものもある。例たとえば、海うみや川かわから遠とおく離はなれた地域ちいきに住すむ人ひとは、どうしても魚さかなが手てに入はいらない。逆ぎゃくに、川かわや海うみの傍はたに住すむ人ひとは山菜さんさいなどは手てに入はいらない。そこで、両者りょうしゃの間あいだでまず原始げんし的てきな物々交換ぶつぶつこうかんが行おこなわれた。しかし、もし山やまの人ひとが魚さかなではなく塩しおを欲ほしがっていたらどうなるか？魚さかなを持もって行いった人ひとは山菜さんさいを手てに入いれられず、魚さかなもその間あいだに腐くさってしまう。

そこで、物々交換ぶつぶつこうかんをよりスムーズに行おこなうためにお金かねという概念がいねんが生うまれた。まず、製品せいひんに金額きんがくを決きめたり（価値かちの尺度しゃくど）、お金かねを持もっていれば商品しょうひんと交換こうかんしてもらえるという暗黙あんもくの了解りょうかいが作つくられた（交換こうかんの媒介ばいかい）。また、食料しょくりょう品しななどはいずれ傷いたんでしまうので、お金かね（金属きんぞくとか紙かみとか）に交換こうかんしておくことで保存ほぞんできる（価値かちの保蔵やすぞう）。　お金かねがあるおかげで、我わが々は重おもい商品しょうひんを運はこばずに、軽かるくてかさばらないお金かね（現在げんざいではより「軽かるい」クレジットカードや電子でんしマネー）を持もち運はこぶことで、他人たにんの作つくったものを容易よういに手てに入いれられる。お金かねとは、価値かちのあるモノを繋つなぐ潤滑じゅんかつ油あぶらのような存在そんざいなのである。

お金かねが誕生たんじょうしたことで、分業ぶんぎょうがより容易よういになったことも忘わすれてはならない。分業ぶんぎょうが進すすんだことで、個人こじんはより多おおくの自由じゆう時間じかんを手てにした。これは、「鍛冶屋かじやは食欲しょくよくを満みたす為ために、自分じぶんでパンを焼やく必要ひつようが無むい。」という言葉ことばで端はし的てきに表あらわせるだろう。

なお、よくお金かねがあるから貧富ひんぷの格差かくさができるのだ、と言いわれるが、これは貨幣かへいという概念がいねんができる以前いぜんに「物ものの貯蔵ちょぞう・貯蓄ちょちく技術ぎじゅつ」が生うまれた時点じてんですでに格差かくさは発生はっせいしているので論ろんじる意味いみはない。

具体ぐたい的てきな説明せつめいは、物々交換ぶつぶつこうかん、商品しょうひん貨幣かへい論ろん、信用しんよう貨幣かへい論ろんも参照さんしょう。

関連かんれん動画どうが

関連かんれんリンク

Wikipedia記事きじ

• お金かね
• 通貨つうか
• 貨幣かへい
• 現金げんきん
  • 日本銀行にっぽんぎんこう券けん
  • 紙幣しへい
  • 硬貨こうか
• 預金よきん通貨つうか

関連かんれん項目こうもく

大だい百科ひゃっかに記事きじのある金額きんがくの一覧いちらん

脚注きゃくちゅう

1. *2011年ねん度どにおいて日本銀行にっぽんぎんこう券けんの製造せいぞう原価げんかは1枚まい17円えん程度ていどだった。日本銀行にっぽんぎんこう（筑摩書房ちくましょぼう）翁おう邦雄くにお 100ページ
2. *休日きゅうじつ前まえになったり、競馬けいばの大だいレースの前まえになったり、宝たからくじの発売はつばいが始はじまったり、選挙せんきょの前まえになったりすると、ATMから日本銀行にっぽんぎんこう券けんを引ひき出だす人ひとが増ふえるという。真しん説せつ 経済けいざい・金融きんゆうの仕組しくみ（日本にっぽん評論ひょうろん社しゃ）横山よこやま昭雄あきお 64ページ、162ページ
3. *休日きゅうじつを終おえた直後ちょくごの週しゅう初はつは、ATMに日本銀行にっぽんぎんこう券けんを預あづけ入いれるデパート・商店しょうてんが増ふえるという。真しん説せつ 経済けいざい・金融きんゆうの仕組しくみ（日本にっぽん評論ひょうろん社しゃ）横山よこやま昭雄あきお 64ページ、日本銀行にっぽんぎんこう金融きんゆう研究所けんきゅうじょ『日本銀行にっぽんぎんこうの機能きのうと業務ぎょうむ』第だい3章しょう53ページ
4. *日本銀行にっぽんぎんこうは日本銀行にっぽんぎんこう券けんを回収かいしゅうすることを「銀行ぎんこう券けんの還かえ収おさむ」と表現ひょうげんしている。日本銀行にっぽんぎんこう金融きんゆう研究所けんきゅうじょ『日本銀行にっぽんぎんこうの機能きのうと業務ぎょうむ』第だい3章しょう51ページ
5. *国債こくさいの保有ほゆう者しゃが日銀にちぎんに口座こうざを開ひらいているのなら、国債こくさいの保有ほゆう者しゃに日銀にちぎん当座とうざ預金よきんを与あたえる。国債こくさいの保有ほゆう者しゃが日銀にちぎんに口座こうざを開ひらいておらず市し中なか銀行ぎんこうに口座こうざを開ひらいているのなら、国債こくさいの保有ほゆう者しゃが利用りようする市し中なか銀行ぎんこうに日銀にちぎん当座とうざ預金よきんを送金そうきんしつつ「国債こくさいの保有ほゆう者しゃが持もつ銀行ぎんこう預金よきんを増ふやしてあげてください」と依頼いらいする。