VOCALOID(ボーカロイド)とは、ヤマハ株式会社が開発したデスクトップミュージック(DTM)製作を目的とした音声合成技術、及びその応用製品の総称である。
また、ニコニコ動画におけるカテゴリタグ(※注釈)が廃止されるまで、その一つであった。
※「VOCALOID(ボーカロイド)」ならびに「ボカロ」はヤマハ株式会社の登録商標です。
概要
メロディー(音階)と歌詞を専用のエディタに入力し、人間の声を元にした歌声を合成することができる。
VOCALOIDは実際に収録された音声に基づいたデータベースとともに用いられるが、それらはVOCALOID及びVOCALOID2においては基本ソフトとバンドルされる形で、VOCALOID3と4においてはデータベース単体(但し、主として音声データの試用に使えるTiny Editorが付属)で販売されている。VOCALOIDのデータベースについては、国内外の多くの会社からパッケージ、あるいはダウンロード形式で販売されている。
VOCALOIDを用いた作曲者の活躍により、一般的に「ボカロ」という通称で親しまれている。
歴史
2000年…ヤマハで歌声合成に関する研究プロジェクト「Daisyプロジェクト」がスタート(剣持氏も参加)。また、スペインのポンペイ・ファブラ大学と歌声合成の基礎技術の共同研究を開始する。
2003年…2月に「VOCALOID」を発表。このプレスリリースの直前にVOCALOIDという名称が決定する。
2004年…VOCALOID製品の第一弾としてLEON・LOLA発売。クリプトンからはMEIKOが発売。その後1年をかけてVOCALOIDシステムを1.1へバージョンアップ。KAITOはVOCALOID1.1として発売。
2007年…「VOCALOID2」発表。合成エンジンを根本的に作りなおしたため、VOCALOID1とVOCALOID2では歌声ライブラリの互換性が無くなった。また、エディタのユーザーインターフェースも一新された。
2011年…「VOCALOID3」発表。
2014年…「VOCALOID4」発表。
2015年…剣持氏、VOCALOIDプロジェクトを離れる。
2018年…「VOCALOID5」発表。
2022年…「VOCALOID6」発表。
[1] [2]
VOCALOID製品の構成
VOCALOID製品は以下の要素で構成されている。
- スコアエディタ・・・楽譜情報入力のインタフェース。ヤマハが提供。
楽譜情報(音符、歌詞、音楽的表情(ビブラートなど))の取り込みと加工。
- 歌声ライブラリ・・・実際の歌手の歌唱から音源として抽出した以下の2つのデータベース。パッケージ製品として販売する各社で用意。
- 発音データベース・・・実際の歌手の歌唱から音源として抽出したデータ。
- 表情データベース・・・同様にこちらはビブラートなどの音楽的表情のデータ。
- 音声合成エンジン・・・VOCALOIDの心臓部とも言える部分。ヤマハが提供。
1.と2.の入力情報を合成して歌声として出力する。
ヤマハよりライセンスを受けた各社は、実際の歌手(例として初音ミクの場合は藤田咲)の歌唱を基に上記2.の歌声ライブラリを作成し、ヤマハの提供する1.と3.と合わせてパッケージ製品として販売している。もちろん歌声ライブラリは音源だけ用意すればいいという訳ではなく、自然な歌声となるように様々なチューニングが施されている。このため、同じVOCALOID、VOCALOID2を使用する製品でも各社ごとに特徴や癖が生じることとなりそれが製品ごとの個性となって表われている。
VOCALOID Editor for Cubase
「VOCALOID Editor for Cubase」はCubaseユーザ向けにヤマハが開発したプラグイン形式のソフトウェアである。Cubase以外のDAWホストアプリケーションからは呼び出せない。後に、「VOCALOID4 Editor for Cubase」も発売されている。
以下の特徴がある。
VOCALOIDの仕組み
VOCALOIDでは、歌声の合成に「周波数ドメイン歌唱アーティキュレーション接続法」という技術が用いられている。
この技術を大雑把に説明すると、歌手の歌声からビブラートや音の断片といった声の表情となるデータ(上記2.)を集めて「歌唱アーティキュレーション」を生成し、周波数領域に変換した上でデータベース化し、歌詞や音程のデータ(上記1.の入力)に合わせて接続して歌声として出力するものである。
互換性についてはVOCALOIDとVOCALOID2との間に互換性はないが、VOCALOID3はVOCALOID2の上位互換となっており、VOCALOID3においてはインポート機能によりVOCALOID2のデータベースを使用することが可能である。
派生技術・サービス等
- VOCALOID-flex
- 従来のVOCALOIDでは歌唱に比べて苦手であった「喋り」を実現するため、音韻や韻律の細かな編集を可能にした歌声および発話の合成エンジンソフトウェア。音源には、VOCALOID用の既存の歌声ライブラリが利用可能。
消費者向けのサービスとしてインターネット社のサービス「V-Talk」があり、ガチャッポイドの声でしゃべり声を合成することができる(ガチャッポイド購入者は登録日から6ヶ月間無料で使用可能)。また、アプリ開発者に対し、2010年10月から2ヶ月弱、ヤマハが無料で「NetVOCALOID-flex API」を提供しており、VY1の声でしゃべるウェブアプリを一般人が作成することが可能。
コナミのPSP用ゲームソフト「メタルギアソリッド ピースウォーカー」でも利用されている。
- NetVOCALOID
- サーバ上にVOCALOIDを配置し、歌声合成機能をネットワーク経由でユーザに提供するSaaS型のサービス。
→NetVOCALOID
- VocaListener(通称ぼかりす)
- 産業技術総合研究所が開発している入力された歌声を元に自動的にVOCALOIDのパラメータ設定を行い歌声を出力する技術。
- Netぼかりす
- ヤマハと産業技術総合研究所が共同で開発中の簡易版VocaListenerの機能をネットワーク経由で提供するサービス。
- iVOCALOID
- VOCALOIDのiOSへの移植 → iVOCALOID
- eVOCALOID
- 組み込み用途向けのVOCALOID。データベース容量の削減や、合成処理の変更等が行われている。
→ eVocaloid / ポケット・ミク(eVocaloidが使用された製品)
- ボカロネット(VOCALOID NET)
- VOCALOIDでの楽曲制作を支援するネットサービス。2014年に開始されたサービスだが、既に終了している。→ ボカロネット
- VOCALOID:AI
- AI技術を利用した歌声合成技術。あらかじめ目標となる歌手の歌声を収集して、音色や歌いまわしなどの特徴をディープラーニングにより学習することで、その歌手独特のニュアンスを含んだ歌声を作り出すことを可能にする。また、このVOCALOID:AIの発表に伴い、「VOCALOID」はヤマハの歌声合成技術の総称と位置づけられることになるという。[3]
- VOCALOID Keyboard
- 音源部にボーカロイドエンジンを搭載した電子鍵盤楽器。自分で演奏したメロディーの通りに歌詞を歌わせることができる。ショルダーキーボードの形状をした VKB-100 の1機種が発売されている。[4]
- VOCALOID β-STUDIO
- VOCALOIDの開発と並行して未来の歌声合成の世界を提案・研究を目的とした実験的なプロジェクト。
2024年3月までの期間限定プロジェクトであり、参加者にはプロジェクトの試作品であるVSTi/AU対応DAWプラグイン『VX-β』が提供される。
『VX-β』にはヤマハ提供の専用ボイスバンク7種と、くるくる数字の協力によるボイスバンク『ゲキヤク』『カゼヒキ』が搭載されている。また追加特典として同名VTuberの協力によるボイスバンク『花奏かのんβ』『杏戸ゆげβ』が配布される。
尚、VX-βでは従来型ボイスバンクは使用できずその逆も同じである。
ニコニコ動画との関係
ニコニコ動画では、初音ミクの「Ievan Polkka」(通称ロイツマ)をきっかけに人気が大爆発。各メディアでも取り上げられ、ニコニコ市場だけで2000本以上を売り上げるなど、ニコニコ最大のヒット商品でもある。
VOCALOIDで歌声を合成する製作過程は「調教」と呼ばれる事が多い。ただし、この「調教」という表現には当初から現在に至るまで否定的な見方をするファンが一定数存在し、「調律」「調声」という表現をされる事も少なくない。
VOCALOIDを使用した動画を投稿するユーザーには様々なタイプがあり、曲から歌詞から何まで自作したり、既存曲をカバーしたり、既存曲やVOCALOIDのオリジナル曲をアレンジしたり、歌わせるのではなく喋らせるなど多岐に渡る。
そういった動画の作者は「~P」と呼ばれることも多い。ただし、このP名に関しては、タグロックしない作者や、作品によってP名が異なる作者などいるため、P名を明確に認識していないファンも多い。
ニコニコ動画におけるタグとしては、旧カテゴリタグ「VOCALOID」として、現在では固定された人気のタグとして「音楽・サウンド」のジャンルに属する。
ただし、あくまでVOCALOIDはヤマハの登録商標であり、一般的な歌声合成音声の総称ではないことに留意したい。
VOCALOIDタグの使用にUTAUやCeVIO、NEUTRINO等VOCALOID以外の歌声合成音声を含むかどうかは各所で多くの議論が重ねられたが2022年現在でも明確な指針は無い。代替の呼び方としては、クリプトン製VOCALOIDおよび初音ミクNTでは「バーチャルシンガー」を使用、有志からは「ソフトウェアシンガー」を含め多くの案が出されているが確立されたものではない。
現状では他の歌声合成を用いた動画であってもVOCALOIDタグの使用は制限されてはいないので、どのタグを付けるかはあくまで動画の投稿者に委ねられる。
VOCALOID一覧
※上から発売順
表示が崩れるので広くスペースを取っています。 ご了承下さい。
表記が正規のものでない場合があります。
販売元右にそのVOCALOIDの対応言語の国旗を記述、無国旗は日本語のみ、多言語対応のVOCALOID6ボイスバンクは母国語の国旗を記述。
VOCALOID
VOCALOID2
VOCALOID3
VOCALOID4
VOCALOID5
VOCALOID6
非売品
関連動画
関連イラスト
関連チャンネル
関連コミュニティ
関連項目
一般項目
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一覧項目
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メーカー
関連リンク
脚注
- *「ボーカロイド技術論 歌声合成の基礎とその仕組み」2014 剣持秀紀/藤本健
- *剣持 秀紀の投稿(2015年1月29日)
- *美空ひばりの新曲ライブの実現を支援 あの歌声を当社最新の歌声合成技術『VOCALOID:AI™』で再現 「NHKスペシャル AIでよみがえる美空ひばり(仮)」に技術協力 2019.9.3
- *VOCALOID Keyboard