国際こくさい労働ろうどう基準きじゅんは、国際こくさい労働ろうどう機関きかんが制定せいていした条約じょうやく・勧告かんこくの総称そうしょうである。国際こくさい労働ろうどう機関きかんでは人類じんるいの平和へいわと継続けいぞく的てきな発展はってんのために人道的じんどうてきな労働ろうどう基準きじゅんの決定けっていとその基準きじゅんを国際こくさい的てきに守まもること（すなわち国際こくさい労働ろうどう基準きじゅん）が必要ひつようであるとしている。その根拠こんきょとして二ふたつ挙あげられている。

/> -まず、労働ろうどう基準きじゅんを定さだめる理由りゆうとしては、不正ふせい・劣悪れつあくな労働ろうどう条件じょうけんが社会しゃかい不安ふあんや貧困ひんこんを引ひき起おこす原因げんいんとなり、多おおくの人民じんみんに困難こんなんや苦くるしみを与あたえるばかりでなく、結果けっかとして紛争ふんそうや戦争せんそうの原因げんいんとなり世界せかいの平和へいわを脅おびやかすこととなるからである。

/> -また、国家こっか単位たんいでなく国際こくさい的てきに決定けっていする理由りゆうとして「いずれかの国くにが人道的じんどうてきな労働ろうどう条件じょうけんを採用さいようしないことは、自国じこくにおける労働ろうどう条件じょうけんの改善かいぜんを希望きぼうする他ほかの国くにの障害しょうがいとなるから」（ILO憲章けんしょうより引用いんよう）である。 <br /> -障害しょうがいとなる根拠こんきょとしては労働ろうどう条件じょうけんを守まもらないことで不当ふとうに製品せいひんの金額きんがくが安やすくなる（ソーシャルダンピング）などが挙あげられる。

日本にっぽんは常任じょうにん理事りじ国こくでありながら下記かき条約じょうやくのほとんどを批准ひじゅんしておらず、現在げんざい有効ゆうこうな条約じょうやく183のうち48条約じょうやくしか批准ひじゅんしていない。
下記かき条約じょうやくのうち批准ひじゅんしているものは最低さいてい賃金ちんぎん決定けってい制度せいど(第だい26号ごう・第だい131号ごう)のみであり、労働ろうどう時間じかん・休暇きゅうかに関かんしてはひとつも批准ひじゅんしていない。
具体ぐたい的てきな労働ろうどう条件じょうけんとしては以下いかのようになっている。

労働ろうどう時間じかん(第だい1号ごう・第だい30号ごう・第だい47号ごう）

労働ろうどう時間じかんは一いち日にちあたり8時間じかん以内いない、かつ一いち週しゅうあたり48時間じかん以内いないとされている。
適用てきようされない者ものとしては「監督かんとくの立場たちばにある者もの」や「秘密ひみつの事務じむに従事じゅうじしている者もの」などである。
また、特定とくてい条件じょうけんのもとでは特定とくてい日びに8時じ間あいだを越こえたり、特定とくてい週しゅうに48時じ間あいだを越こえたりすることは許ゆるされるが、この場合ばあいでも3週間しゅうかんの労働ろうどう時間じかんの平均へいきんが1日にち8時じ間あいだ・1週しゅう48時じ間あいだを超こえてはいけない。業種ぎょうしゅにより多少たしょうの違ちがいがあるが、工業こうぎょう・商業しょうぎょう・事業じぎょう所しょなど通常つうじょうの労働ろうどう者しゃに対たいして同どう程度ていどの労働ろうどう時間じかんとなっている。

休暇きゅうか(第だい14号ごう・第だい18号ごう・第だい132号ごう）

週休しゅうきゅうは週しゅうに一いち日にち以上いじょう。
有給ゆうきゅう休暇きゅうかは1年ねん勤務きんむにつき3労働ろうどう週しゅう（5日にち制せいなら15日にち、6日にち制せいなら18日にち）以上いじょうとなっている。
また、休暇きゅうかは原則げんそくとして継続けいぞくしたものでなければならないが、事情じじょうにより分割ぶんかつを認みとめることもできる。
ただし、その場合ばあいでも分割ぶんかつされた一部いちぶは連続れんぞく2労働ろうどう週しゅうを下回したまわってはならない。また、「休暇きゅうか権けんの放棄ほうき等とうは国内こくない事情じじょうにおいて適当てきとうである場合ばあいは禁止きんしまたは無効むこうとすること」となっている（フランスでは休暇きゅうか権けんの放棄ほうきは禁止きんしされている）。

賃金ちんぎん(第だい26号ごう(日本にっぽんも批准ひじゅん)・第だい95号ごう・第だい131号ごう(日本にっぽんも批准ひじゅん))

すべての賃金ちんぎん労働ろうどう者しゃに対たいして最低さいてい賃金ちんぎんを定さだめ、かつ随時ずいじ調整ちょうせいできる制度せいどが必要ひつようである。
最低さいてい賃金ちんぎんとしては、労働ろうどう者しゃが家族かぞくを養やしなえる一般いっぱん的てき賃金ちんぎんや生活せいかつ費ひや社会しゃかい的てき集団しゅうだんの生活せいかつ水準すいじゅんを考慮こうりょしたものでなければならず、また、経済けいざい的てきな要素ようそ（生産せいさん性せいや雇用こようの維持いじ・発展はってん性せいなど企業きぎょう側がわから見みた要素ようそ)も考慮こうりょしなければならない。
最低さいてい賃金ちんぎん制度せいどの設置せっち、運用うんよう及および修正しゅうせいに関かんしては、関係かんけいある代表だいひょう的てきな労使ろうし団体だんたいと十分じゅうぶん協議きょうぎする必要ひつようがある。

労働ろうどう者しゃの定義ていぎ

労働ろうどう者しゃ

労働ろうどう基準きじゅん法ほう第だい9条じょうでは「職業しょくぎょうの種類しゅるいを問とわず、事業じぎょう又または事務所じむしょに使用しようされる者もので、賃金ちんぎんを支払しはらわれる者しゃ」と定義ていぎされる。
労働ろうどう契約けいやく法ほう第だい2条じょうでは「使用しよう者しゃに使用しようされて労働ろうどうし、賃金ちんぎんを支払しはらわれる者しゃ」と定義ていぎされる。
労働ろうどう組合くみあい法ほう第だい3条じょうでは「職業しょくぎょうの種類しゅるいを問とわず、賃金ちんぎん、給料きゅうりょうその他たこれに準じゅんずる収入しゅうにゅうによって生活せいかつする者もの」と定義ていぎされる。
職業しょくぎょう能力のうりょく開発かいはつ促進そくしん法ほう第だい2条じょうでは「事業じぎょう主ぬしに雇用こようされる者しゃ（船員せんいん職業しょくぎょう安定あんてい法ほう（昭和しょうわ二に十じゅう三さん年ねん法律ほうりつ第だい百ひゃく三さん十じゅう号ごう）第だい六ろく条じょう第だい一いち項こうに規定きていする船員せんいんを除のぞく。
第だい九きゅう十じゅう五ご条じょう第だい二に項こうにおいて「雇用こよう労働ろうどう者しゃ」という。）及および求職きゅうしょく者しゃ（同どう法ほう第だい六ろく条じょう第だい一いち項こうに規定きていする船員せんいんとなろうとする者ものを除のぞく。以下いか同おなじ。）をいう。」と定義ていぎされる。
法律ほうりつにより労働ろうどう者しゃの定義ていぎは異ことなっている。例たとえば、労働ろうどう基準きじゅん法ほうでは、失業しつぎょう者しゃや求職きゅうしょく者しゃは労働ろうどう者しゃに含ふくまれないが、労働ろうどう組合くみあい法ほうおよび職業しょくぎょう能力のうりょく開発かいはつ促進そくしん法ほうでは失業しつぎょう者しゃも含ふくまれる。
この理由りゆうは、労働ろうどう基準きじゅん法ほうが使用しよう者しゃと労働ろうどう者しゃの間あいだでの労働ろうどう基準きじゅんを規定きていした法ほうの観点かんてんによるからである。

勤労きんろう者しゃ

勤労きんろう者しゃ財産ざいさん形成けいせい促進そくしん法ほう第だい2条じょうにおいて「職業しょくぎょうの種類しゅるいを問とわず、事業じぎょう主ぬしに雇用こようされる者しゃ」と定義ていぎされる。
労働ろうどう者しゃ、船員せんいんその他たこれらの者ものと同等どうとうの関係かんけいにある国家こっか公務員こうむいん、地方ちほう公務員こうむいんは勤労きんろう者しゃである。
自営じえい業主ぎょうしゅや家内かない労働ろうどう者しゃ、労働ろうどう基準きじゅん法ほう等とうで労働ろうどう者しゃとして取とり扱あつかわれない者ものは、概おおむね、勤労きんろう者しゃではない。

未み組織そしき労働ろうどう者しゃ

労働ろうどう組合くみあいに参加さんかしていない労働ろうどう者しゃ。

労働ろうどう者しゃの権利けんり

国際こくさい労働ろうどう機関きかんでは、労働ろうどう者しゃの基本きほん的てき権利けんりに関かんする原則げんそくとして次つぎのものを挙あげ、加盟かめい国こくに(個々ここの条約じょうやくの批准ひじゅん・未み批准ひじゅんに関かかわりなく)推進すいしんかつ実現じつげんする義務ぎむを課かしている。
(a)結社けっしゃの自由じゆう及および団体だんたい交渉こうしょう権けんの効果こうか的てきな承認しょうにん
(b)あらゆる形態けいたいの強制きょうせい労働ろうどうの禁止きんし
(c)児童じどう労働ろうどうの実効じっこう的てきな廃止はいし
(d)雇用こよう及および職業しょくぎょうにおける差別さべつの排除はいじょ

労働ろうどう関係かんけいの機関きかん

国際こくさい労働ろうどう機関きかん（ILO）
厚生こうせい労働省ろうどうしょう

　┗都道府県とどうふけん労働ろうどう局きょく

　　┣労働ろうどう基準きじゅん監督かんとく署しょ

　　┣公共こうきょう職業しょくぎょう安定あんてい所しょ(ハローワーク)

　　┗雇用こよう・環境かんきょう均等きんとう部ぶ(室しつ)

労政ろうせい事務所じむしょ（各かく都道府県とどうふけんにより名称めいしょうは異ことなる）
労働ろうどう委員いいん会かい
中央ちゅうおう労働ろうどう委員いいん会かい
都道府県とどうふけん労働ろうどう委員いいん会かい
独立どくりつ行政ぎょうせい法人ほうじん労働ろうどう政策せいさく研究けんきゅう・研修けんしゅう機構きこう
国際こくさい労働ろうどう機関きかんでは、労働ろうどう者しゃの基本きほん的てき権利けんりに関かんする原則げんそくとして次つぎのものを挙あげ、加盟かめい国こくに(個々ここの条約じょうやくの批准ひじゅん・未み批准ひじゅんに関かかわりなく)推進すいしんかつ実現じつげんする義務ぎむを課かしている。