『FIFA 19』によるeスポーツチーム世界一を決める大会「FIFA eClub World Cup 2019」(eClub W杯)は、ニコラス選手とテックズ選手の「最強コンビ」を擁するKiNG eSportsの優勝で幕を閉じた。しかし、決勝に勝ち残ったもう1つのチームが大会の「サプライズ」と表現されている。フランスリーグ1部に所属するディジョンのeスポーツチームである。
ディジョンは予選ラウンドをグループC2位で突破すると、決勝トーナメント1回戦はマンチェスターシティに快勝。準決勝、アメリカの大手eスポーツチームFaZe ClanにPK戦までもつれながらも勝利。激闘を経て決勝へと進出していた。ノーマークながらの躍進に、会場から聞こえてきた彼らへの呼称が「アンダードッグ」。
直訳は「噛ませ犬」だが、トーナメント大会で驚きの躍進を果たすチームに用いられるフレーズだ。VAMOALは決勝後、ディジョンのムーズラン選手とヘロージア選手に単独インタビューを行った。
(写真:左からディジョンのムーズラン選手とヘロージア選手、KiNG eSportsのテックズ選手とニコラス選手)
--準優勝は素晴らしい成功だと思います。振り返ってみていかがですか
ヘロージア選手:決勝戦を戦うことができて、とても誇らしい気持ちです。誰も僕たちが、決勝まで来るとは予測していなかったと思います。もちろん、(決勝戦で)負けてしまったことは悪い結果です。しかし、客観的に振り返れば、今大会よくやったかなと思います。
--決勝戦の感想。また、「アンダードッグ」と言われたことに関して
ヘロージア選手:もっと攻撃的な試合にしたかったのですが、それはとても難しいことでした。攻撃的なフォーメーションに何度も変更して、相手に対抗する努力をしました。しかし、なんと言ってもニコラス選手とテックズ選手は世界の2大ベストプレイヤーです。その意味で、僕たちだけでなく誰が彼らと戦っても「アンダードッグ」にならざろうえないと思います。
--途中で試合が中断しました。何が起こったのでしょうか
ヘロージア選手:コントローラーが利かなくなってしまいました。なので、システムを再起動する必要になりました。
--追い上げる良い展開で試合が中断してしまいました。こうした状況は、アンフェアだと感じますか
ヘロージア選手:いや、それは全くアンフェアではないです。これはルールですから。何度も起こってきたことです。それに、(敗戦の)結果はロジカルだったと思います。実際、(KiNG eSportsの)彼らは僕らより良くプレーをしましたから。
--今大会を通じて活躍が印象的でした。良い結果が出た秘訣は
ムーズラン選手:僕たちはプロフェッショナルなFIFAプレイヤーですし、常に可能性はあると信じていました。確かに決勝では「アンダードッグ」と呼ばれたかもしれませんが、予選ラウンドでは、僕たちはとりわけ低いレベルに位置しているとは思っていません。決勝戦に負けて、今はとても悔しいですが、この位置に来れたことはとても嬉いです。
--Sky Sportsで決勝戦が放送されました。日本からも視聴している人がいると思います。日本のファンへメッセージをお願いします
ヘロージア選手:日本から視聴してくれた方々、注目していただきどうもありがとうございます。(日本のチーム)Prime NINJAとの対戦は無かったですが、いつか日本のチームと対戦できることを楽しみにしています。これからも、ぜひ応援してください。
(写真:熱戦を繰り広げたディジョンeスポーツチーム。決勝戦は、複数のカメラにより同時中継されていた)
■地方クラブこそ、下剋上に魅力的なeスポーツ
ディジョンのeスポーツチームは両選手とも、自国のフランス人であった。現在、eスポーツチームは実力があれば国籍を問わず所属させる流れがある。優勝のKiNG eSportsの本拠となる国はドイツであることに対し、出場したニコラス選手はアルゼンチン人、テックズ選手はイギリス人だ。
実際のサッカークラブ内に設立されたeスポーツチームでも、多国籍な選手構成は当然となっている。「ビッグクラブ」であれば、なお顕著である。しかし、ディジョンはフランス・ブルゴーニュ地域圏にある人口15万人の地方都市のチームであり、そうしたグローバルなチームキャラクターとは一線を画していた。
ローカルクラブがカップ戦で強豪クラブに下剋上する構図は、実際のサッカーでも魅力のひとつだ。eスポーツ業界はまだ黎明期であるため、実際のサッカーの状況ほどクラブ間に実力差は生まれにくい。トーナメント戦が主であるeスポーツ大会では、アンダードッグが世界一になることも十分にありえる。
(インタビュー・文●VAMOLA eFootball News編集部)