コラム：どうなってるの？中国ちゅうごく映画えいが市場いちば - 第だい39回かい

2022年ねん2月がつ7日にち更新こうしん

北米ほくべいと肩かたを並ならべるほどの産業さんぎょう規模きぼとなった中国ちゅうごく映画えいが市場いちば。注目ちゅうもく作さくが公開こうかいされるたび、驚天動地きょうてんどうちの興行こうぎょう収入しゅうにゅうをたたき出だしていますが、皆みなさんはその実態じったいをしっかりと把握はあくしているでしょうか？　中国ちゅうごく最大さいだいのSNS「微ほろ博はく（ウェイボー）」のフォロワー数すう280万まん人にんを有ゆうする映画えいがジャーナリスト・徐じょ昊ひろし辰たつ（じょ・こうしん）さんに、同どう市場いちばの“リアル”を聞きいていきます！

今回こんかいのテーマは、日にち中ちゅう合作がっさく映画えいが「再会さいかいの奈良なら」。河瀬かわせ直美なおみ監督かんとくとジャ・ジャンクー監督かんとくがプロデュースを務つとめ、中国ちゅうごく残留ざんりゅう孤児こじの家族かぞくの絆きずなを描えがいた作品さくひんです。

第だい39回かい：日にち中ちゅう合作がっさく「再会さいかいの奈良なら」ポンフェイ監督かんとく、8カ月かげつの滞在たいざいで知しった“中国ちゅうごく残留ざんりゅう孤児こじ”の実情じつじょう

「再会の奈良」（2月4日より公開中） — 「再会さいかいの奈良なら」（2月がつ4日にちより公開こうかい中ちゅう）

2007年ねん、私わたしが日本にっぽんに来きたばかりの頃ころの話はなしです。ある友人ゆうじんの紹介しょうかいで、数すう名めいの“中国人ちゅうごくじん”のおじさん、おばさんと知しり合あいになりました。話はなしているうちに、彼かれらはこんなことを言いい始はじめたんです。

「実じつは、私わたしたちは日本人にっぽんじんなんです。でも、日本語にほんごは喋しゃべりません」

この言葉ことばを聞きいた時とき、少すこしショックを受うけました。これが、初はじめて“残留ざんりゅう孤児こじ”という言葉ことばを知しった時ときの出来事できごとです。

“残留ざんりゅう孤児こじ”とは、第だい二に次じ世界せかい大戦たいせん末期まっきのソ連それん軍ぐん侵攻しんこう、関東軍かんとうぐん撤退てったいによって日本にっぽんへ帰国きこくすることができず、中国ちゅうごく大陸たいりくに残のこされた日本人にっぽんじんのこと（日本にっぽんの法律ほうりつ等とうでは「中国ちゅうごく在留ざいりゅう邦人ほうじん」とも言いいます）。日本にっぽん国内こくないでは、山崎やまざき豊子とよこさんの「大地だいちの子こ」をはじめ、江戸川えどがわ乱歩らんぽ賞しょう受賞じゅしょう作さく「闇やみに香かおる嘘うそ」（著ちょ：下村しもむら敦史あつし）、金城きんじょう武たけし、山本やまもと未來みらい、椎名しいな桔平きっぺいの共演きょうえんで映画えいが化かもされた「不夜城ふやじょう」（著ちょ：馳はせ星ほし周あまね）など“残留ざんりゅう孤児こじ”を描えがいた小説しょうせつが数多かずおおく生うまれています。

最近さいきんでは、WOWOWドラマ「連続れんぞくドラマW コールドケース3 真実しんじつの扉とびら」（第だい9話わ「故郷こきょう」）でも“残留ざんりゅう孤児こじ”“残留ざんりゅう孤児こじ2世せい”に焦点しょうてんを当あてていました。歴史れきしに翻弄ほんろうされた“残留ざんりゅう孤児こじ”の窮境きゅうきょうだけでなく、「中国人ちゅうごくじんを相手あいてにして、不動産ふどうさん業ぎょうで大だい成功せいこうを収おさめる」という現代げんだい的てき要素ようそも入はいっているという素晴すばらしい構成こうせいでした。

一方いっぽう、中国ちゅうごくでは“残留ざんりゅう孤児こじ”をテーマにしたフィクション作品さくひんは、あまりないんです。「金かね陵りょう十じゅう三さん釵」（チャン・イーモウ監督かんとく／日本にっぽん未み公開こうかい）、「芳よし華はな Youth」（フォン・シャオガン監督かんとく）の原作げんさく者しゃとしても知しられる中国ちゅうごく系けいアメリカ人じん作家さっかゲリン・ヤン（厳いむ歌うた苓）の「小しょう姨多鶴づる」くらいでしょうか。

だからこそ、中国ちゅうごく残留ざんりゅう孤児こじの家族かぞくの絆きずなを描えがいた日にち中ちゅう合作がっさく映画えいが「再会さいかいの奈良なら」の話はなしを聞きいた時ときは興味津々きょうみしんしんでした。河瀬かわせ直美なおみとジャ・ジャンクーがプロデュースを務つとめた同どう作さくは、2005年ねん、中国ちゅうごくに暮くらす陳ひねばあちゃん（ウー・イエンシュー）が、孫娘まごむすめのような存在そんざいのシャオザー（イン・ズー）を頼たよって単身たんしん奈良ならにやって来くるところから始はじまります。

その理由りゆうというのが、1994年ねんに日本にっぽんに帰かえした中国ちゅうごく残留ざんりゅう孤児こじの養女ようじょ・麗華れいかからの連絡れんらくが数すう年ねん前まえから途絶とだえ、それを心配しんぱいしてやって来きたというもの。麗華れいかを捜さがし始はじめた2人ふたりは、一雄かずお（國くに村むら隼はやぶさ）という男性だんせいと知しり合あい、元もと警察官けいさつかんだという一雄かずおは麗華れいか捜さがしの手伝てつだいを申もうし出でるんです。奈良なら・御所ごしょを舞台ぶたいに、不思議ふしぎな縁えんで結むすばれた3人にんが、言葉ことばの壁かべを越こえた旅たびを繰くり広ひろげていきます。

監督かんとくのポンフェイは、長年ながねんツァイ・ミンリャン監督かんとくの現場げんばで助監督じょかんとく・共同きょうどう脚本きゃくほんなどを務つとめ、ホン・サンス作品さくひんにアシスタントプロデューサーとしても参加さんか。2017年ねんに発表はっぴょうした監督かんとく作さく「ライスフラワーの香かおり」は、ベネチア国際こくさい映画えいが祭さいベニス・デイズ部門ぶもんにも出品しゅっぴんされており、中国ちゅうごくでは非常ひじょうに注目ちゅうもくされている人物じんぶつです。

今回こんかいは「再会さいかいの奈良なら」撮影さつえい準備じゅんびのため、奈良ならに半年はんとし以上いじょう滞在たいざいし、取材しゅざい・調査ちょうさを行おこなったポンフェイ監督かんとくにインタビューを行おこないました。“残留ざんりゅう孤児こじ”の現状げんじょう、創作そうさくの背景はいけい、多言たげん語ごが飛とび交かった撮影さつえい現場げんば、日にち中ちゅう合作がっさくの可能かのう性せいについて、お話はなしを伺うかがっています。

――まずは、本ほん作さくの企画きかく経緯けいいを教おしえて頂いただけますか？

企画きかく自体じたいは、奈良なら国際こくさい映画えいが祭さいのプロジェクトですね。2年ねんごとに開催かいさいされる奈良なら国際こくさい映画えいが祭さいでは、受賞じゅしょうした監督かんとくが、河瀬かわせ直美なおみ監督かんとくと一緒いっしょに映画えいがを作つくることができます。前作ぜんさく「ライスフラワーの香かおり」は、同どう映画えいが祭さいで観客かんきゃく賞しょうに選えらばれました。その時点じてんから“残留ざんりゅう孤児こじ”の作品さくひんを作つくりたいと考かんがえるようになったんです。

なぜ“残留ざんりゅう孤児こじ”をテーマにしたのか。その点てんについては、以前いぜんから“残留ざんりゅう孤児こじ”に興味きょうみを持もっていましたし、日本にっぽん映画えいがも大好だいすきだったからです。中国ちゅうごくと日本にっぽんの間あいだには“良よい事こと”もありますし、もちろん“悪わるい事こと”もあります。日にち中ちゅう合作がっさくの映画えいがを製作せいさくする場合ばあい、色いろんな題材だいざいの作品さくひんが作つくれますよね？　留学生りゅうがくせいの話はなし、海外かいがいでバイトをした話はなし、文化ぶんかの衝突しょうとつ……たくさんあります。私わたしも留学りゅうがくをしたことがあるので、より外部がいぶ的てきな視点してんを持もっています。ですから、単純たんじゅんな留学生りゅうがくせいの話はなしというだけでは、少々しょうしょう物足ものたりないなと感かんじていたんです。もっと大おおきなテーマを挑戦ちょうせんしたい、大おおきな時代じだいに生いきる人々ひとびとを描えがかなければ――そんなことを考かんがえ“残留ざんりゅう孤児こじ”というテーマに辿たどり着ついたんです。

――“残留ざんりゅう孤児こじ”は、歴史れきしに翻弄ほんろうされた人々ひとびとだと思おもいます。作品さくひんを製作せいさくするにあたり、当事とうじ者しゃへの取材しゅざいは行おこないましたか？

企画きかくが通とおった後のち、すぐ“残留ざんりゅう孤児こじ”についての調査ちょうさを開始かいししました。私わたしの仕事しごとのやり方かたは、簡単かんたんに言いえば「体感たいかん型がた」です。全すべてをきちんとまとめないと、始はじまらないんです。まずは中国ちゅうごくで“残留ざんりゅう孤児こじ”に関かんする資料しりょうや映像えいぞうを集あつめ、ゲリン・ヤンの「小しょう姨多鶴づる」、NHKとCCTVの合作がっさくドラマ「大地だいちの子こ」、シェ・チン監督かんとくの作品さくひん「乳ちち泉いずみ村むらの子こ」などを見みてから、奈良ならへ向むかいました。そこから8カ月かげつ間あいだ、日本にっぽんのスタッフと一緒いっしょに、多おおくの“残留ざんりゅう孤児こじ”に取材しゅざいを行おこないました。ですから、劇げき中ちゅうで描えがかれている物語ものがたりは、ほぼ事実じじつに近ちかい。全すべて私わたしが感かんじとったことを、映画えいがの中なかに入いれているんです。

ただし「陳ひねばあちゃんが日本にっぽんで養女ようじょを探さがす」という点てんはフィクションです。以前いぜん、北京ぺきんにいた時ときに「養母ようぼインタビュー集しゅう」という本ほんを読よんだことがあります。作者さくしゃは、中国ちゅうごくの東北とうほく地方ちほうに行いき、“残留ざんりゅう孤児こじ”の中国人ちゅうごくじん養母ようぼ、養父ようふを取材しゅざいしています。その中なかで「今いま一いち番ばんしたいことは何なにでしょうか？」と作者さくしゃが聞きいたところ、養父ようふと養母ようぼが「日本にっぽんに行いって、息子むすこや娘むすめを探さがしたい。たとえ見みつからなくても、日本にっぽんはどのような国くになのかを見みてみたい」と答こたえていました。実際じっさいに日本にっぽんへ探さがしに行いく人ひとは滅多めったにいません。映画えいがという形かたちで、彼かれらの願望がんぼうを叶かなえてあげたいと思おもったんです。

――8カ月かげつ間あいだの大半たいはんを、奈良ならで過すごしていたのでしょうか？

はい。役者やくしゃと会あうために、何なん度どか中国ちゅうごくへ戻もどりましたが、ほとんど奈良ならに住すんでいました。古都こと・奈良ならは、静しずかで、そして美うつくしい。古ふるい町並まちなみを見みて、小津おつ安あん二郎じろう、黒澤くろさわ明あきらの映画えいがを連想れんそうしていました。そうそう、「ドラえもん」も思おもい出だしたんです。私わたしが子こどもだった頃ころは、おそらくあなたと同おなじように、日本にっぽんのアニメに育そだてられました。「ドラえもん」に登場とうじょうする町まちの風景ふうけいは、奈良ならに近ちかい部分ぶぶんがある。まるでタイムスリップをしたような感かんじですよね。

――えぇ、街並まちなみは本当ほんとうに美うつくしいですよね。ただ、その美うつくしさの“裏うら”に住すんでいる“残留ざんりゅう孤児こじ”の方々かたがたが多おおくいます。私わたしも何人なんにんか知しり合あいがいるのですが、彼かれらは日本語にほんごをほぼ喋しゃべりません。そのため、社会しゃかいの中なかになかなか溶とけ込こめない。その距離きょり感かんというものを、本ほん作さくにも感かんじました。“残留ざんりゅう孤児こじ”の方々かたがたをは、どのように探さがされたんでしょうか？

まずプロデューサーの方ほうが、奈良ならの中国ちゅうごく帰国きこく者しゃ支援しえん交流こうりゅうセンターに打診だしんしてくれて、そこである先生せんせいと出会であいました。その方ほうは、毎週まいしゅう末まつ“残留ざんりゅう孤児こじ”を対象たいしょうとした日本語にほんごの授業じゅぎょうなどを行おこなっています。そこからさまざまな“残留ざんりゅう孤児こじ”の方々かたがたと繋つながることができました。大半たいはんの方々かたがたは中国ちゅうごく語ごしか喋しゃべらなかったですね。非常ひじょうに親切しんせつにしてくれて「どこの生うまれですか？」等々とうとう、質問しつもんもいっぱいされました（笑）。「我々われわれはもう年としを取とっているので、勉強べんきょうをしても、（知識ちしきが）頭あたまの中なかに入はいりません。でも、チャンスがあれば、皆みなさん（＝先生せんせい、同おなじ“残留ざんりゅう孤児こじ”の人々ひとびと）に会あいたいですね」と話はなしていました。その場ばでのコミュニケーションは、私わたしにとって非常ひじょうに重要じゅうようでした。そこから、私わたしの中なかの“残留ざんりゅう孤児こじ像ぞう”が少すこしずつ見みえてきて、脚本きゃくほんを書かき始はじめることができたんです。

――“残留ざんりゅう孤児こじ”は、自宅じたくでは衛星えいせい放送ほうそうを利用りようし、中国ちゅうごくのテレビ番組ばんぐみを見みているというシーンもが印象いんしょうに残のこりました。

本当ほんとうにそうなんですよ。しかも、抗日こうにちドラマばかり見みています（笑）。おそらく、日本にっぽんのチャンネルを見みても、何なにもわからないんでしょう。中国ちゅうごくのチャンネルを見みれば、音声おんせいは全部ぜんぶ中国語ちゅうごくご。そのことで（中国ちゅうごくとの）距離きょり感かんが一気いっきに縮ちぢまる。この安心あんしん感かんは、他たの人々ひとびとには、なかなか理解りかいできないと思おもっています。

――距離きょり感かんに関かんしては、冒頭ぼうとうに登場とうじょうする居酒屋いざかやのシーンでも感かんじました。主人公しゅじんこう・シャオザーのセリフとして登場とうじょうする「私わたしは日本人にっぽんじんです」というもの。“残留ざんりゅう孤児こじ”だけでなく、日本にっぽんに住すんでいる外国がいこく人じんも社会しゃかいとの距離きょりを縮ちぢめるため、そのような話はなしを時々ときどきするんです。

この作品さくひんでは、アイデンティティについて描えがきたいと思おもっていたんです。シャオザーは、居酒屋いざかやのシーンで「私わたしは日本人にっぽんじんです」と言いいますが、その後ごのシーンでは「私わたしは日にち中ちゅうハーフ」と話はなしています。ラストでは“残留ざんりゅう孤児こじ”の家いえで「私わたしは中国人ちゅうごくじん」と言いっている。この変化へんかこそ、アイデンティティに関かんする問題もんだいなんです。つまり、自分じぶん自身じしんも「自分じぶんが何者なにものかわからない」。取材しゅざいの際さい、“残留ざんりゅう孤児こじ”は日本にっぽんの社会しゃかいに馴染なじめないと聞ききました。また“残留ざんりゅう孤児こじ”だけでなく、日本人にっぽんじんでさえ、社会しゃかいに溶とけ込こむのが難むずかしいと感かんじることがあるのではないでしょうか。

――シャオザーを演えんじたイン・ズーさん、日本語にほんごの発音はつおんが非常ひじょうに素晴すばらしいですよね。失礼しつれいない方いかたかもしれませんが「外国がいこく人じんが日本語にほんごを喋しゃべっている」というような感かんじがあるんです。これもアイデンティティと少すこし関かかわっていますね。イン・ズーさんは、以前いぜんから日本語にほんごを勉強べんきょうされていたのでしょうか？

いいえ。本ほん作さくの撮影さつえい前まえに、日本語にほんごを勉強べんきょうしたことはありません。彼女かのじょはイギリス留学りゅうがくをしたことがあり、どちらかといえば欧米おうべい文化ぶんかに興味きょうみを持もっています。私わたしが日本にっぽんで映画えいがを撮とりたいという意向いこうを示しめしたので、イン・ズーさんも日本にっぽんについて色々いろいろ勉強べんきょうをし始はじめました。最初さいしょは「少すこし喋しゃべれれば大丈夫だいじょうぶだ」と伝つたえましたが、イン・ズーさんは「自分じぶんが話はなす言葉ことばに関かんしては、日本人にっぽんじんでもわかるレベルにしたい」と言いっていましたね。

とはいえ、ゼロからの勉強べんきょうだったので、撮影さつえいはかなり大変たいへんそうでした。必死ひっしにセリフを覚おぼえて、ちゃんと発音はつおんをしてくれましたが、日本人にっぽんじんスタッフが喋しゃべった言葉ことばはわからないので苦労くろうしたようです。結果けっか的てきに、イン・ズーさんには感謝かんしゃしかありません。すごく良よい感かんじになりました。

昔むかし「大地だいちの子こ」を見みた時ときのことを思おもい出だしました。日本人にっぽんじん役者やくしゃの中国ちゅうごく語ごの発音はつおんは難解なんかい過すぎる、確たしか字幕じまくを見みないといけないレベルだったんですよね（笑）。

――言葉ことばは、本ほん作さくにおける非常ひじょうに重要じゅうようなポイントだと感かんじました。例たとえば、精肉せいにく店てんでのシーン…あそこは、本当ほんとうに最高さいこうですね！　監督かんとくご自身じしんも出演しゅつえんされていました。公園こうえんのシーンでは、椅子いすに座すわった一雄かずお（國くに村むら）と陳ひねばあちゃん（ウー・イエンシュー）の会話かいわが非常ひじょうに印象深いんしょうぶかく、言葉ことばの壁かべを超こえています。永瀬ながせ正敏まさとしさんの役やくもそうですね。感情かんじょうは、言葉ことばではなくても通つうじる。これこそ、合作がっさくの理想りそう形がただと思おもいました

人ひとと人ひとがコミュニケーションをはかる時とき、国くにや種族しゅぞくのことを考かんがえずに済すむのであれば、感情かんじょうは必かならず通つうじる。私わたしは、そのことをずっと信しんじて続つづけています。今回こんかいの撮影さつえい現場げんばも同様どうようでした。撮影さつえいチームでは、我々われわれにしかわからない“言葉ことば”を発明はつめいしました。クランクイン当日とうじつ、撮影さつえいが上手うまくいかなかったからです。

チームには、通訳つうやくが3人にんいました。彼かれらはとても頑張がんばってくれました。ただ、簡単かんたんな言葉ことばでさえ翻訳ほんやくをしないといけないので、非常ひじょうに効率こうりつが悪わるかった。初日しょにちの撮影さつえいが終おわった後のち、私わたしは日本人にっぽんじんの助監督じょかんとくと簡単かんたんな英語えいごで話はなしをしました。撮影さつえいの効率こうりつについては、同どう意見いけんでしたね。そこで次つぎの日ひから、言葉ことばではなく合図あいずでコミュニケーションすることが決きまったんです。本当ほんとうにさまざま合図あいずを発明はつめいしました。その後ごの撮影さつえいは、とてもスムーズでした。撮影さつえい開始かいしから1週間しゅうかん経たった頃ころ、81歳さいのウー・イエンシューさんも、その合図あいずを全部ぜんぶ把握はあくしていました。

――質問しつもんにお答こたえいただき、ありがとうございました。では、最後さいごに好すきな日本にっぽん映画えいが、日本人にっぽんじん監督かんとくを教おしえてください。また、これから作品さくひんをご覧らんにになる日本にっぽんの観客かんきゃくにメッセージをいただけますか？

最もっとも好すきなのは北野きたの武たけしさんですね。最近さいきん、新作しんさくが完成かんせいしたとお聞ききました。非常ひじょうに楽たのしみです。北野きたのさんには、いつか私わたしの作品さくひんにも出演しゅつえんしてほしいと思おもっています。作品さくひんであれな、石井いしい克人かつと監督かんとく作さく「茶ちゃの味あじ」は大好だいすきですね。

「再会さいかいの奈良なら」は“残留ざんりゅう孤児こじ”を描えがく作品さくひんですが、決けっして重おもい作品さくひんではありません。ユーモアの要素ようそもたくさんありますので、ぜひ日本にっぽんの皆みなさんにも楽たのしんでいただければと思おもいます。日本にっぽんと中国ちゅうごくに関かんしては、今後こんご定期ていき的てきに交流こうりゅうをすることができれば、一番いちばん幸しあわせなことだなと思おもいます。

筆者ひっしゃ紹介しょうかい

徐じょ昊ひろし辰たつ（じょ・こうしん）。1988年ねん中国ちゅうごく・上海しゃんはい生うまれ。07年ねん来日らいにち、立命館大学りつめいかんだいがく卒業そつぎょう。08年ねんより中国ちゅうごくの映画えいが専門せんもん誌し「看み電でん影かげ」「電でん影かげ世界せかい」、ポータルサイト「SINA」「SOHA」で日本にっぽん映画えいがの批評ひひょうと産業さんぎょう分析ぶんせき、16年ねんには北京ぺきん電でん影かげ学院がくいんに論文ろんぶん「ゼロ年代ねんだいの日本にっぽん映画えいが～平穏へいおんな変革へんかく」を発表はっぴょう。11年ねん以降いこう、東京とうきょう国際こくさい映画えいが祭さいなどで是枝これえだ裕和ひろかず、黒沢くろさわ清きよし、役所広司やくしょこうじ、川村かわむら元気げんきなどの日本にっぽんの映画えいが人じんを取材しゅざい。中国ちゅうごく最大さいだいのSNS「微ほろ博はく（ウェイボー）」のフォロワー数すうは280万まん人にん。日本にっぽん映画えいがプロフェッショナル大賞たいしょう選考せんこう委員いいん、微ほろ博はく公認こうにん・映画えいがライター＆年間ねんかん大賞たいしょう選考せんこう委員いいん、WEB番組ばんぐみ「活弁かつべんシネマ倶楽部くらぶ」の企画きかく・プロデューサーを務つとめる。

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