明日あしたに向むかって撃げきて！

西部せいぶに新あたらしい風ふうが吹ふこうとしていた19世紀せいき末まつ、あいも変かわらず銀行ぎんこう強盗ごうとうに明あけ暮くれるブッチとサンダンスにやがて訪おとずれる惨みじめな最後さいごを、まるで見透みすかすような淡あわい映像えいぞうと洗練せんれんされた音楽おんがく。終始しゅうし付つき纏まとう悲劇ひげきの予よ感かんが、それらを通とおして次第しだいに観客かんきゃくの心しんを侵食しんしょくしていく。その快かい感かんじったらないのだ。だから、時ときが過すぎても映像えいぞうアートの名品めいひんとして長ながく愛あいされ続つづけるわけだ。特とくに、フッテージを見みながら画面がめんに旋律せんりつを付つけていったというバート・バカラックの狂くるいのないメロディは、映画えいが音楽おんがく史上しじょう最高さいこうの仕上しあがり。もし、それがなかったら、本ほん作さくは青春せいしゅん西部せいぶ劇げきの名な編へんとしてのみ記憶きおくされただろう。まるで、音楽おんがくが映像えいぞうを先導せんどうしているかのような錯覚さっかくに陥おちいらせるアウトローへの鎮魂歌ちんこんか。ジョージ・ロイ・ヒルの名人めいじん芸げい的てきな演出えんしゅつ、ポール・ニューマン&ロバート・レッドフォードの以来いらい長ながく続つづいた友情ゆうじょうの始はじまり、控ひかえめで美うつくしいキャサリン・ロス、等々とうとう、味あじわい方かたは色々いろいろあるけれど、やっぱり音楽おんがくの魅力みりょくこそが本ほん作さくの肝きも。公開こうかい後ご何なん年ねん経たっても、否いや、時ときが経たつほど、そのことを実感じっかんするのだ。

アメリカン・ニュー・シネマを語かたる上じょうでも欠かかすことのできない一いち作さく。今いまはじめてこの作品さくひんに触ふれる世代せだいも、一見いっけん正統せいとう派はの西部せいぶ劇げきのように見みえて実じつはとてつもない新あたらしいことをやってのけている本ほん作さくに驚おどろきを隠かくせないはずだ。

「この物語ものがたりはほぼ実話じつわに基もとづく」という字幕じまくからスタートする本ほん作さくは、冒頭ぼうとうにモノクロ映像えいぞうが続つづき、かと思おもえば眩まばゆいばかりの陽光ようこうで満みたされた、まるで遅おくれてやってきた青春せいしゅんのような映像えいぞうが挟はさみ込こまれたりもする。とりわけ自転車じてんしゃで野原のはらを滑走かっそうするシーンは、バート・バカラックの楽曲がっきょくとのマッチングも含ふくめて、まさに「新しん食しょく感かん」と呼よぶべき境地きょうちだ。

本ほん作さくで欠かかすことのできないのは、やはりラストの暗転あんてん部分ぶぶん。印象いんしょう的てきな静止せいし画がで終おわるこのやり方かたは、レッドフォード主演しゅえん作さく「コンドル」でも踏襲とうしゅうされていて、この時代じだいの名作めいさく群ぐんがいかに「結末けつまつ」ではなく、いかに「一瞬いっしゅん」を切きり取とって提示ていじしようとしたかが分わかる。折おりを見みて何なん度どでも鑑賞かんしょうしたい名作めいさくだ。