陰謀いんぼうのセオリー

解説かいせつ

タクシー運転うんてん手しゅと司法省しほうしょうの女性じょせい弁護士べんごしが、偶然ぐうぜんに巨大きょだいな陰謀いんぼうに触ふれてしまったことから危難きなんに巻まき込こまれていく姿すがたを描えがいたサスペンスもの。コンスピラシー・セオリーと呼よばれる巷間こうかんに流布るふする陰謀いんぼうをモチーフに、虚実きょじつの皮膜ひまくを縫ぬう迷宮めいきゅう的てきな感覚かんかくに誘さそうプロットが秀逸しゅういつ。監督かんとくは「暗殺あんさつ者しゃ」のリチャード・ドナーで、脚本きゃくほんも同どう作さくを手掛てがけたブライアン・ヘルゲランドのオリジナル。製作せいさくは、ドナーと「暗殺あんさつ者しゃ」「エクゼクティブ　デシジョン」のジョエル・シルヴァーの共同きょうどう、製作せいさく総そう指揮しきは「暗殺あんさつ者しゃ」のジム・ヴァン・ウィック。撮影さつえいは「ザ・ロック」のジョン・シュワルツマン、音楽おんがくは「チェンバー　凍こおった絆きずな」のカーター・バーウェル、美術びじゅつは「硝子がらすの塔とう」のポール・シルバート、編集へんしゅうは「エクゼクティブ　デシジョン」のフランク・Ｊ・ユリオステとケヴィン・スティッフ。主演しゅえんは「身代金みのしろきん」のメル・ギブソンと「ベスト・フレンズ・ウェディング」「世界中せかいじゅうがアイ・ラヴ・ユー」のジュリア・ロバーツ。共演きょうえんは「ファースト・コンタクト　STAR　TREK」のパトリック・スチュワート、「イレイザー」のキルク・コザートほか。

1997年ねん製作せいさく／135分ふん／アメリカ
原題げんだいまたは英えい題だい：Conspiracy Theory
配給はいきゅう：ワーナー・ブラザース映画えいが
劇場げきじょう公開こうかい日び：1997年ねん11月1日にち

ストーリー

ジェリー・フレッチャー（メル・ギブソン）はNYの流ながしのタクシー・ドライバー。彼かれは今日きょうも憑つかれたように客きゃくに喋しゃべりまくり、この世界せかいがいかに陰謀いんぼうに満みちているかを警告けいこくする。バーコードに国家こっか機密きみつが隠かくされていること。NASAが開発かいはつした地震じしん兵器へいきのこと。大統領だいとうりょう暗殺あんさつ者しゃたちの名前なまえに隠かくされた暗号あんごうのこと……。彼かれの記憶きおくは失うしなわれ、断片だんぺんしか残のこっていない。ただ一ひとつ、彼かれが忘わすれなかったのは、司法省しほうしょうの弁護士べんごしアリス・サットン（ジュリア・ロバーツ）を守まもるために自分じぶんがいるという確信かくしんだった。連邦れんぽう裁判所さいばんしょ判事はんじだった彼女かのじょの父親ちちおやは、数すう年ねん前まえに何者なにものかに殺ころされた。一人ひとりの男おとこが逮捕たいほされたが、彼女かのじょにはどうしてもその男おとこが犯人はんにんとは思おもえなかった。ジェリーはアリスのオフィスにたびたび訪おとずれては、お得意とくいの陰謀いんぼう説せつを開陳かいちんするが、彼女かのじょはたわごとだと思おもいながらもなぜか彼かれに冷つめたくできない。ある日ひ、ジェリーが血ちだらけで現あらわれ、正体しょうたい不明ふめいの男おとこたちに拉致らちされて拷問ごうもんを受うけたと言いう。彼かれは命いのちからがら逃にげる時ときに、首謀しゅぼう者しゃ格かくの男おとこの鼻はなを噛かみ切きったと話はなしたが、アリスにはそれは妄想もうそうとしか思おもえなかった。逮捕たいほされ、病院びょういんに収容しゅうようされたジェリーの身元みもとを引ひき取とりに、CIAの精神せいしん科か医いと自称じしょうするジョナス博士はかせ（パトリック・スチュワート）がやって来きた。彼かれはなんと鼻はなにケガをしており、ここに及およんで初はじめて不審ふしんを覚おぼえたアリスは、ジェリーを逃にがしてやる。彼女かのじょもようやく、背後はいごに何なにかの陰謀いんぼうが存在そんざいしているらしいと察知さっち。FBIのラウリー捜査そうさ官かん（キルク・カザート）もジェリーを追おい始はじめた。ジェリーのアパートに2人ふたりでたどり着ついた時とき、敵てきの襲撃しゅうげきを受うけ、彼かれはアリスを守まもって逃にげ延のびることに成功せいこう。アリスは、狙ねらわれる理由りゆうは彼かれの発行はっこうしているニュースレター『陰謀いんぼうの理論りろん』にあるのではないかと考かんがえ、購読こうどく者しゃを当あたる。驚おどろくべきことに、購読こうどく者しゃたちは24時間じかん以内いないに次々つぎつぎと死亡しぼうしていた。2人ふたりは絶たえずCIAに監かん視しされながら、次第しだいに事件じけんの真相しんそうに迫せまっていく。実じつはジェリーはかつて、政府せいふの影かげに存在そんざいする謎なぞの組織そしきによって人間にんげんを暗殺あんさつ者しゃに仕立したてる洗脳せんのう計画けいかくの被験者ひけんしゃであった。しかも、その計画けいかくの立案りつあん者しゃこそ、あのジョナスだった。アリスの父親ちちおやの暗殺あんさつを命めいじられたジェリーは、少女しょうじょ時代じだいの彼女かのじょの姿すがたを見みた途端とたんに殺ころせなくなり、暗殺あんさつに失敗しっぱいしていた。その後ご、組織そしきの追求ついきゅうの逃のがれた彼かれは、一切いっさいの記憶きおくをなくしていたのだ。やがてジェリーは組織そしきに拉致らち監禁かんきんされた。彼かれの口癖くちぐせ「ジェロニモ!」から、監禁かんきん場所ばしょがJERO精神せいしん病院びょういん隔離かくり病棟びょうとうであることを突つき止とめたアリスは、彼かれの救出きゅうしゅつに向むかう。薬くすり漬づけにされていたジェリーだったが、アリスのピンチに暗殺あんさつ者しゃとしての記憶きおくを甦よみがえらせ、一味いちみと戦たたかう。最初さいしょからジョナスたちの組織そしきの動うごきを追おっていたラウリーらFBIも駆かけつけた。ジョナスは死しぬが、銃撃じゅうげきを受うけたジェリーも命いのちを落おとした。墓前ぼぜんで悲かなしみに暮くれるアリス。だが、愛馬あいばの背中せなかに彼かれのタクシー・ドライバーのバッジが置おいてあるのを見みつけ、彼かれが生いきていることを確信かくしんする。彼女かのじょの思おもったとおり、例れいの組織そしきと戦たたかうためにFBIによって死しんだとされたジェリーは生いきていた。彼女かのじょとはしばらく会あえないが、ようやく本来ほんらいの自分じぶんを取とり戻もどした彼かれの顔かおは晴はれやかだった。