ハワーズ・エンド

1910年ねんに発行はっこうされた文芸ぶんげい小説しょうせつの映画えいが化か。原作げんさくは読よんだことがないのだが、今日きょうも見みられるような相続そうぞく騒動そうどうを中心ちゅうしんに、当時とうじの英国えいこく社会しゃかいの階級かいきゅう毎ごとの人々ひとびとの気風きふうや暮くらし向むきの違ちがい、ロマン主義しゅぎの影響えいきょう、男性だんせいの勝手かって、女性じょせいの地位ちいや姉妹しまいの生いき方かたの違ちがい、生家せいかへの愛着あいちゃくなど様々さまざまなことが描えがかれていて考かんがえるところの多おおい話はなし。さらに、実力じつりょくのある俳優はいゆう陣じん、美うつくしい衣装いしょうとセットで、映像えいぞうとしても見応みごたえがあった。

私わたしとしては…労働ろうどう者しゃ階級かいきゅうのレン君くんが不憫ふびんだった。同おなじ生粋きっすいのロマンチストでも、ヘレンのように生うまれが上流じょうりゅう(中流ちゅうりゅう貴族きぞく？)であれば、生いきていけたであろうに。実業じつぎょう富裕ふゆう層そうのウイルコックス家かの長男ちょうなんの暴力ぼうりょくが隠蔽いんぺいされずにちゃんと裁さばかれたのにはホッとしたが、それでも親おやからの財産ざいさんがあり、名前なまえ、居所きょしょを変かえればちゃんとやっていけることが示しめされていて、レン君くんがヘレンに言いった台詞せりふ「君達きみたちと違ちがって僕達ぼくたちは一いち度ど(社会しゃかいの)レールを外はずれたら二度にどと戻もどれない」の台詞せりふが効きいてくるTT。でも、その長男ちょうなんの嫁よめに「可愛かわいらしい子こ」と言いわしめた彼かれの子供こどもが、ゆくゆくはこの美うつくしい家屋かおく敷じきを継つぐ結末けつまつに、作者さくしゃと制作せいさく陣じんの人道的じんどうてき配慮はいりょを感かんじた。

また、全すべてを丸まるく収おさめる要ようとなる存在そんざいがヘレンの姉あねマーガレット=女性じょせいであることをしっかりと描えがいているのは当時とうじとしては画期的かっきてきだったかも。彼女かのじょは旧ふるい女性じょせいの生いき方かたにも新あたらしい女性じょせいの生いき方かたにも理解りかいがあり、一方いっぽうで情じょうに溺おぼれることはなく聡明そうめいかつ寛容かんようで、時代じだいの繋つなぎ手しゅとして完璧かんぺきな女性じょせいに思おもえた。

登場とうじょう人物じんぶつたちが生いき生いきとしていて、それぞれの
信条しんじょうでの行動こうどうは揺ゆるがなく
多少たしょうの設定せっていが変かわればどこの世界せかいにも起おきそうなようにも思おもえる。

ハワーズ・エンドという邸宅ていたくをめぐって
階級かいきゅうの異ことなる二に家族かぞくが
妙みょうな縁えんに振ふり回まわされつつ理解りかいし合あえるのか、
そんな主題しゅだい。

気持きもちとしては好すきと思おもっても結婚けっこんとなれば
価値かち観かんの違ちがいというものはより如実にょじつになる。
そこをわかってくれる人ひとに家いえを受うけ継ついでほしいと
いう気持きもちはわからいでもない。

しかし前述ぜんじゅつしたように価値かち観かんの違ちがい、だけではなく
イギリスなのでそこには純然じゅんぜんたる階級かいきゅうの違ちがいも
存在そんざいしている。

実業じつぎょう一家いっかは階級かいきゅう的てきにはそれほど高たかくはなく、
実利じつりばかりで教養きょうようも足たりてないという
認識にんしきがあるのだろうと思おもう。
知的ちてき階級かいきゅうのマーガレットたちはむしろ
そういったことでの差別さべつはいけないことだと
理想りそう主義しゅぎとして教育きょういくされている。からこその
貧乏びんぼう青年せいねんとも恋こいに落おちる。

行動こうどうの基盤きばんがそこにあるんだろうというのは
頭あたまではわかるのだけれど
そんな階級かいきゅう世界せかいをよくわかっていないので、
イギリスやヨーロッパの人ひとたちがこの作品さくひんを観みて、
肌はだ感覚かんかくで「わかる」ところが
おそらく自分じぶんには理解りかいできてないのではないだろうか。

身分みぶん違ちがいの恋こいやタイトルにもなっている名家めいかの別邸べっていハワーズ・エンドの所有しょゆう者しゃを巡めぐるゴタゴタに
次第しだいと明あきらかになる運命うんめい的てきな繋つながりが組くみ合あわさって物語ものがたりが進すすんでいくんだけど、
盛もり上あがりに欠かけるし、その割わりには時間じかんが長ながいしで、私わたしには合あわなかった。

原作げんさくの小説しょうせつは名作めいさくとされているようだから、たぶん本ほんとして物語ものがたりに触ふれたら、
情景じょうけい描写びょうしゃとか文章ぶんしょうの綴つづられ方かたで惹ひかれるような作品さくひんなのかなと感かんじた。

人気にんき小説しょうせつを映画えいが化かしたけど、うまく映像えいぞう化かできなかったという印象いんしょうです。

中産ちゅうさん階級かいきゅうの三さん姉妹しまい弟おとうとの長女ちょうじょ（エマ・トンプソン）が主人公しゅじんこう、次女じじょ（ヘレナ・ボナム＝カーター）が恋愛れんあい沙汰ざたを起おこした上流じょうりゅう階級かいきゅうの母親ははおや（ヴァネッサ・レッドグレーヴ）と長女ちょうじょが仲良なかよくなる。
母親ははおやは病死びょうし、別荘べっそうハワーズ・エンドを長女ちょうじょに譲ゆずる、と遺言ゆいごんを残のこすが、遺族いぞくはこれを無視むししてしまう。
しばらくして素直すなおな長女ちょうじょはこの父親ちちおやと結婚けっこんすることに。
イギリスのことが理解りかいできるドラマ。