リチャード三さん世せい（1996）

劇場げきじょう公開こうかい日び：1997年ねん2月がつ15日にち

解説かいせつ

シェイクスピア初期しょきの傑作けっさく史劇しげき『リチャード三さん世せい』（主おもな翻訳ほんやくは福田ふくだ恆ひさし存そん訳やくの新潮しんちょう文庫ぶんこなど）を、舞台ぶたいをファシズムの嵐あらしが吹ふき荒あれる30年代ねんだいヨーロッパに設定せっていして映画えいが化かした政治せいじ陰謀いんぼう劇げき。イアン・マッケレン主演しゅえん、リチャード・エア演出えんしゅつで世界せかい各地かくちで上演じょうえんされて高たかい評価ひょうかを受うけた舞台ぶたいを基もとに、マッケレン自みずからが映画えいが化かを企画きかく。「私わたしに近ちかい6人にんの他人たにん」「恋こいの闇やみ　愛あいの光ひかり」などの名めいバイプレーヤーとして活躍かつやくするマッケレンは、舞台ぶたいでは現代げんだい英国えいこく演劇えんげきを代表だいひょうする名優めいゆうのひとり。監督かんとくは『ワイドアイド・アンド・レッグレス』（特殊とくしゅ上映じょうえいのみ）のリチャード・ロンクレインで、正式せいしきな日本にっぽん公開こうかい作さくはこれが初はじめて。製作せいさくはスティーヴン・ベイリーとリサ・カッツェラス・パレ。製作せいさく総そう指揮しきはエアとマッケレン、エレン・ダイナーマン・リトル、ジョー・サイモン、マリア・アポティアコスの共同きょうどう。脚本きゃくほんはマッケレンとロンクレインの共同きょうどう。撮影さつえいは「ケロッグ博士はかせ」のピーター・ビジウ。音楽おんがくは「死しの接吻せっぷん」のトレヴァー・ジョーンズで、エンディングにはアル・ジョルスンの『Top of the World』など、30年代ねんだいの流行りゅうこう曲きょくが随所ずいしょに散ちりばめられている。美術びじゅつは『ワイドアイド・アンド・レッグレス』のトニー・バロウ。衣裳いしょうは「マリリンとアインシュタイン」「アリア」のシューナ・ハーウッド。編集へんしゅうはポール・グリーン、録音ろくおんはデイヴィッド・スティーヴンソン。共演きょうえんは「アメリカン・プレジデント」のアネット・ベニング、「恋こいの闇やみ　愛あいの光ひかり」のロバート・ダウニー・ジュニア、「ブロードウェイと銃弾じゅうだん」のジム・ブロードベント、「ミッション：インポッシブル」のクリスティン・スコット＝トーマス、「秘密ひみつの花園はなぞの」のマギー・スミス、「英国えいこく万歳ばんざい！」のナイジェル・ホーソン、テレビ・シリーズ「シャーロック・ホームズの冒険ぼうけん」のワトソン役やくで日本にっぽんでもお馴染なじみの「永遠えいえんの愛あいに生いきて」のエドワード・ハードウィックほか実力じつりょく派はが顔かおを揃そろえた。96年ねんベルリン映画えいが祭さい監督かんとく賞しょう（ロンクレイン）を受賞じゅしょう。

1996年ねん製作せいさく／109分ふん／イギリス
原題げんだいまたは英えい題だい：Richard III
配給はいきゅう：オンリー・ハーツ配給はいきゅう（レントラック・ジャパン＝オンリーハーツ提供ていきょう）
劇場げきじょう公開こうかい日び：1997年ねん2月がつ15日にち

ストーリー

30年代ねんだい。英国えいこく。ランカスター家かとヨーク家かの王座おうざをめぐる内乱ないらんは、ヨーク家かの末弟ばっていグロスター公こうリチャード（イアン・マッケレン）がランカスター王家おうけの司令しれい部ぶに乱入らんにゅう、王おうと皇太子こうたいしを射殺しゃさつし、ヨーク家かのエドワード四よん世せい（ジョン・ウッド）が即位そくいする。戦勝せんしょう記念きねんの舞踏ぶとう界かいで、リチャードは「我われらの不興ふきょうの冬ふゆは終おわり……」とヨーク家かの勝利しょうりを祝いわう。だがその直後ちょくご、彼かれは宮殿きゅうでんの便所べんじょで、不具ふぐの身みに生うまれて平和へいわの時代じだいには役立やくだたずの自分じぶんを呪まじない、王座おうざの奪取だっしゅを誓ちかうのだった。リチャードはまず王おうが次兄じけいクラレンス（ナイジェル・ホーソン）を逮捕たいほするように仕向しむけ、それは王妃おうひエリザベス（アネット・ベニング）とその弟おとうとリヴァース伯はく（ロバート・ダウニー・ジュニア）の讒言ざんげんによるものだとの噂うわさを流ながす。続つづいて彼かれは自みずからが手てにかけた先さきの皇太子こうたいしの妃ひアン（カトリン・スコット＝トーマス）を甘言かんげんで弄ろうし、まんまと妻つまにし、また刺客しかくジェイムズ・ティレル（エイドリアン・ダンバー）をクラレンス殺害さつがいに差さし向むける。王妃おうひ一族いちぞくと王おうの挺てい臣しんたちの和解わかいの席せきで、リチャードはクラレンスの死しを報告ほうこく、エドワード王おうはショックで倒たおれ、まもなく崩御ほうぎょする。リチャードとバッキンガム侯こう（ジム・ブロードベント）は刺客しかくを放はなってリヴァースを暗殺あんさつ、唯一ゆいいつの王おう弟おとうとリチャードが幼おさない皇太子こうたいし（マーク・ウィリアムソン）の摂政せっしょうとなる。リチャード一派いっぱは皇太子こうたいし擁護ようご派はのヘイスティングス卿きょう（ジム・カーター）を謀略ぼうりゃくで失脚しっきゃくさせ、皇太子こうたいしは私生児しせいじだとの噂うわさを流ながし、自みずからを国王こくおうに擁立ようりつするよう世論せろん工作こうさくする。かくしてロンドン市長しちょうらがリチャードに即位そくいを請願せいがんするが、リチャードは一いち芝居しばいを打うって即位そくいを頑に拒否きょひ、バッキンガムの説得せっとくに折おれるふりを演えんじて王位おういを手てにした。誠実せいじつなスタンリー卿きょう（エドワード・ハードウィック）は表向おもてむきはリチャード王おうの臣下しんかとしての責務せきむを守まもりながら、甥おいでランカスター家かの血ちを引ひくヘンリー・リッチモンド（ドミニク・ウェスト）をフランスに亡命ぼうめいさせ、反はんリチャード勢力せいりょくを準備じゅんびさせる。リチャード三さん世せいの栄華えいがも長ながくは続つづかない。腹はら臣しんバッキンガムは領土りょうどと財宝ざいほうを与あたえるというリチャードの約束やくそくがまったくの嘘うそだったと知しる。王妃おうひアンは夫おっとの本性ほんしょうを知しって絶望ぜつぼうし、自みずからを呪のろって麻薬まやく中毒ちゅうどくになり、やがて夫おっとの刺客しかくの手てにかかる。リチャードはティレルに、ロンドン塔とうに幽閉ゆうへいされた先さきの皇太子こうたいしとその弟おとうとを殺ころさせる。ヨーク家かの三さん兄弟きょうだいの母ははヨーク侯こう夫人ふじん（マギー・スミス）は悪あく虐しいたげな息子むすこに天罰てんばつを祈いのりつつフランスへ去さる。リッチモンドがフランスの援助えんじょを受うけ、軍団ぐんだんをイギリスに上陸じょうりくさせた。バッキンガムはリッチモンド軍ぐんに合流ごうりゅうするが、リチャードの軍ぐんに敗やぶれ、処刑しょけいされた。リチャードはエリザベスに、エドワード王おうの長女ちょうじょエリザベス（ケイト・スティーヴンソン＝ペイン）との結婚けっこんを要求ようきゅうする。エリザベス母子ぼしはすぐにリッチモンド側がわに逃にげた。スタンリー卿きょうも息子むすこジョージを人質ひとじちに取とられながらもリッチモンドに付つき、最後さいごの決戦けっせんが始はじまる。自信満々じしんまんまんのリチャード軍ぐんだったが、突然とつぜんの空襲くうしゅうを受うけ壊滅かいめつ。リチャードはジープに乗のって指揮しきを取とろうとするが、そのジープが立たち往生おうじょう。「馬うまをくれ、代かわりに俺おれの王国おうこくをやる」と怒鳴どなるや、彼かれは避難ひなんを勧すすめたティレルを射殺しゃさつした。廃屋はいおくとなった司令しれい部ぶでリチャードとリッチモンドの決闘けっとうが始はじまる。屋上おくじょうに追おい詰つめられたリチャードは、不敵ふてきな笑わらいを残のこし、炎ほのおの燃もえさかる地面じめんへと転落てんらくしていく。