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Z ゼット 果てなき希望 インタビュー: “Jホラーの先駆者” 鶴田法男監督、満を持して挑んだゾンビ映画を語りつくす - 映画.com

劇場げきじょう公開こうかい 2014ねん7がつ26にち

  • 予告編よこくへん

Z ゼット てなき希望きぼう : インタビュー

2014ねん7がつ23にち更新こうしん
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“Jホラーの先駆せんくしゃ鶴田つるた法男のりお監督かんとくまんもたしていどんだゾンビ映画えいがかたりつくす

Jホラーファンをうならせてきた「ほんとにあったこわはなし」。鶴田つるた法男のりお監督かんとくは、人間にんげん心理しんりいた恐怖きょうふ描写びょうしゃで、“Jホラーの先駆せんくしゃ”としておおくのホラー作家さっか影響えいきょうあたえてきた。心霊しんれい現象げんしょうえがつづけてきた鶴田つるた監督かんとくが、新作しんさくZ ゼット てなき希望きぼう」でいどんだのは、漫画まんが相原あいはらコージ漫画まんが「Z〜ゼット〜」を原作げんさくにしたゾンビホラーだ。ゾンビに抵抗ていこうかんいていたという鶴田つるた監督かんとくに、メガホンをとらせたものとは。名作めいさくへのオマージュをふんだんにんだ新作しんさくかたりつくす。(取材しゅざいぶん写真しゃしん編集へんしゅう

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フレームの片隅かたすみうつ女性じょせい何者なにものかの気配けはいただよくらがり。実態じったいのない恐怖きょうふうつしてきた鶴田つるた監督かんとくは、「じついままでにもゾンビもののオファーをけたことがあるのですが、ことわっていたんです」とかす。“Jホラーの原点げんてん”とばれるビデオばん「ほんとにあったこわはなし」の制作せいさく経緯けいいかえり、「1980年代ねんだいにゾンビや『13にち金曜日きんようび(1980)』といった欧米おうべいのスプラッターが、日本にっぽんはいってきました。作品さくひん面白おもしろいのですが、欧米おうべい文化ぶんか触発しょくはつされて、日本にっぽん怪談かいだんというすぐれたホラーをないがしろにしてしまっていいのかという疑問ぎもんがあって、怪談かいだん現代げんだいてきさい構築こうちくして提供ていきょうすれば、また日本にっぽん文化ぶんかけてくれるのではというおもいからつくったのが発端ほったんでした。そういう意味いみでは、ゾンビものは基本きほんてき否定ひていしていたんです」

しかし今回こんかい、「相原あいはらコージさんの原作げんさくめられているメッセージが素晴すばらしいので、映画えいがしなくてはいけない」というおもいにうごかされた。原作げんさくは、人間にんげんあたまいてもおそかってくるZ(ゾンビ)の死闘しとうえがす。これまでゾンビ映画えいが距離きょりいてきた鶴田つるた監督かんとくは、相原あいはら漫画まんがであぶりだされる「葛藤かっとう(かっとう)」「欲望よくぼう」「希望きぼう」に魅力みりょくかんじたという。

相原あいはらコージさんは、『こんな地獄じごくのような世界せかいでも、いのちまれてくるということが希望きぼうなのかもしれない』と素晴すばらしいことをかたっているんです。作品さくひん登場とうじょうする人間にんげんは、象徴しょうちょうであるゾンビに直面ちょくめんしているにもかかわらず、『せい』と『せい』に執着しゅうちゃくしている。極限きょくげん状態じょうたいのなか正直しょうじきになるひとがいるということを明確めいかくにしているんです」。おんなゾンビのはだかをのぞきする男子だんし中学生ちゅうがくせい婚約こんやくしゃがありながら、次々つぎつぎおとこ誘惑ゆうわくするおんなとなわせの状況じょうきょうのなか、人間にんげんせいがあぶりだされていく。

原作げんさくが『どんなにきびしい状況じょうきょうであっても、人間にんげんせいけてまれる。まれてきたからにはいていくんだ。けっして希望きぼううしなってはいけない』というメッセージをはっしているので、映画えいがにもみたいとおもいました。ぼく自身じしん、これまでの作品さくひん家族かぞくのきずなや友情ゆうじょうはずしたくないとおもってきました。家族かぞくのきずなが希薄きはくになっているいま日本にっぽん経済けいざいてきには裕福ゆうふくでも問題もんだいかかえていることをえがいてきたつもりです。今回こんかい相原あいはらコージさんがげた原作げんさくに、自分じぶんえがいてきたものをのせることで、いままでにない力強ちからづよいメッセージをつたえられる作品さくひんになったのではないかとおもいます」

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鶴田つるた監督かんとくは、閉鎖へいさされた病院びょういん舞台ぶたいに、ゾンビがもたらす絶望ぜつぼうかたちにした。「ゾンビは明確めいかく恐怖きょうふなので、たいじする人間にんげん明確めいかくえがかないと、バランスがわるくなってしまう。ですから、残酷ざんこく描写びょうしゃもありますし、人間にんげん欲望よくぼうがむきしになるところもえがかざるをなかったんです。ぼくにとっておおきな挑戦ちょうせんでした」。ゾンビ映画えいがへの抵抗ていこうはんするように、画面がめんにはゾンビの造詣ぞうけい演出えんしゅつといった鶴田つるた監督かんとくのこだわりがあふれている。

ぼくはゾンビ映画えいが否定ひていしている一方いっぽうで、ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』は非常ひじょうおもれがつよいんです。(病院びょういん設定せっていしたのは)ゾンビ映画えいが限定げんていした空間くうかんほうがつくりやすいということと、ロメロ作品さくひんたいするオマージュがありました。ロメロのソンビ映画えいががやろうとしたことをぼくもやってみようとおもったということが、脚本きゃくほん執筆しっぴつ最初さいしょのイメージでしたね」

すべては、ロメロによるゾンビ映画えいが金字塔きんじとうゾンビ」3さくからつながっていた。「ゾンビ」は、高校生こうこうせいだった鶴田つるた監督かんとく記憶きおくきついた。

「ショッキングでしたし、いままでにないものをたという新鮮しんせん感動かんどうがありました。でも、人間にんげんドラマの部分ぶぶんは、社会しゃかい縮図しゅくずがきちんとえがかれていたのです。『死霊しりょうのえじき』はさらに進化しんかし、非常ひじょう密度みつど人間にんげん描写びょうしゃ人間にんげんドラマがつくられていて。ロメロ作品さくひん映像えいぞうてきにもすぐれていますが、根幹こんかん人間にんげん描写びょうしゃがしっかりしているんです。ロメロ作品さくひん地位ちいるがないのはそこであって、やるんだったらそこを目指めざさないといけないとおもいました」。「ただしいゾンビ映画えいがをつくる」という信念しんねんかかげた鶴田つるた監督かんとくのもと、特殊とくしゅメイクの中田なかたあきらてる助監督じょかんとくにゾンビ映画えいが葬儀そうぎじん アンダーテイカー」の監督かんとくかわまつ尚良ひさよし鶴田つるた監督かんとく長年ながねん右腕うわん土岐とき洋介ようすけらが結集けっしゅうし、ゾンビにいのちんでいった。

ゾンビとそうまみえる3にん女子高じょしこうせいやくには、新進しんしん気鋭きえいのアクション女優じょゆう川本かわもとまゆ木嶋きじまのりこ田中たなか美晴よしはるというフレッシュなキャストを起用きよう川本かわもとえんじる主人公しゅじんこう戸田とだは、薙刀なぎなたでゾンビにりつけるだけでなく、かわジャンにアイパッチという映画えいがオリジナルの個性こせいてきなビジュアルが強烈きょうれつだ。

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原作げんさくんだとき、名作めいさくいにせないとかんじてだれにもわなかったのですが(笑)、『ゴジラ(1954)』とおなじメッセージをった映画えいがになるとおもったんです。その『ゴジラ』の芹沢せりざわ博士はかせがアイパッチをしているんですよね。もうひとつ、大好だいすきな映画えいがニューヨーク1997』にてくるスネーク・プリスキンというキャラクターもアイパッチをしていて、芹沢せりざわ博士はかせとプリスキンがあたまなかでカチッとつながったんですね。(戸田とだも)アイパッチをすることで、特徴とくちょうがついて印象いんしょうのこるのではないかとかんがえたんです」

戸田とだたすけられる女子高じょしこうなまふたりも曲者くせものだ。田中たなかいどんだ映画えいがオタク少女しょうじょめぐみは、いのち危険きけんにさらされながら、ビデオカメラをまわし、映画えいがあいかたつづける。そんなめぐみに、鶴田つるた監督かんとく姿すがたかさなる。「相原あいはらコージさんの漫画まんがにあるユーモアをわすれちゃいけないとおもって、ぼくなりのユーモラスなものをもうとしたときに、こういう状況じょうきょうになってもぼくはビデオカメラをまわして、映画えいがはなしをしていそうだなとおもったんです。かなり自分じぶん投影とうえいされていますね(笑)」

鶴田つるた監督かんとくとなって、めぐみ記録きろくしたビデオカメラの映像えいぞうは、「POV のろわれたフィルム」で挑戦ちょうせんしたPOV手法しゅほうすすめるかたちで、アクセントになっている。「スマホが浸透しんとうして、プロだからこそれた映像えいぞう簡単かんたんれるようになってしまった。そういうものをどんどんんでいかないといけないんじゃないかという気持きもちがあって、『POV のろわれたフィルム』をったのですが、あの作品さくひんって主観しゅかん映像えいぞうはい映画えいがてき醍醐味だいごみかんじました。今回こんかいはもういちすすめて、POVショットと客観きゃっかんてきショットを混合こんごうさせて、つたえたいことをうったえていくという方法ほうほうをやりたいとおもったんです」と時代じだいんだ映像えいぞうづくりをおこなった。

98ねんの「リング」のだいヒットで、世界せかいてきこったJホラーブーム。鶴田つるた監督かんとくは、しん境地きょうちいどんだゾンビ映画えいがで、Jホラーかいにどのような風穴かざあなけようとしているのか。

ぼくがはじめたことは、『人間にんげん画面がめんはし見切みきれさせることで幽霊ゆうれいせる』という技巧ぎこうだったんです。でも、技巧ぎこうというものは真似まねはじめるとエピゴーネン(模倣もほう)がまれ、新鮮味しんせんみうしなわれてしまう。ロメロのゾンビ映画えいがは、当時とうじ先端せんたん技術ぎじゅつだった特殊とくしゅメイクによって、残酷ざんこくなものがリアルにえがかれたからヒットしたのであって、いまでは特殊とくしゅメイクがりにはならない。おなじように、Jホラーのかみらしたおんな幽霊ゆうれいえるということでさえ記号きごうしていて、そういう意味いみではJホラーも下火したびになってしまっているところがあります。でも、ぼくはもともと怪談かいだん現代げんだいにアレンジすることで、日本人にっぽんじん繊細せんさい恐怖きょうふ感覚かんかくさい発見はっけんできるのではないかという気持きもちがあったので、える表現ひょうげんではないふかいメッセージをめたホラーをつくれば、Jホラーはいろいろなかたち発展はってんして定着ていちゃくしていくとおもうんです。今回こんかいはじめてゾンビ映画えいがをつくりましたが、ちょうまわしでなににもてこないようなカットなど、長年ながねんJホラーをやってきたからできた演出えんしゅつをしたつもりです。Jホラーとゾンビを融合ゆうごうさせることで、あたらしい価値かちかんまれ、あたらしいものを提供ていきょうできるとおもうんです。『Z ゼット』がJホラーブームのあたらしい局面きょくめん提示ていじできればいいなとねがっています」

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