チワワは見みていた　ポルノ女優じょゆうと未亡人みぼうじんの秘密ひみつ

個人こじん評価ひょうか:4.0
アメリカの是枝これえだ裕和ひろかず。
物語ものがたりを描えがくのではなく、人間にんげんや家族かぞくをテーマに作品さくひんを作つくる監督かんとく。本ほん作さくもマイノリティな人物じんぶつを描えがき、人間にんげんをテーマとしていると感かんじる。
リアルな人物じんぶつ描写びょうしゃと会話かいわ劇げきで、より身近みぢかに感かんじ登場とうじょう人物じんぶつを感かんじる事ことができる。
お金かねと善意ぜんいの対比たいひから始はじまった老婆ろうばとの関係かんけいと、最後さいごに描写びょうしゃされる老婆ろうばの秘密ひみつ。その秘密ひみつにはまだ私わたしは辿たどり着つけなかったが、とても心しんに残のこる作品さくひん。

評価ひょうかも悪わるくなさそうだし、チワワ好すきだしなんとなく観みてみた作品さくひん。

原題げんだいはstarlet.
チワワの名前なまえでもあり“未来みらいのスターとして宣伝せんでんされる女優じょゆう”の意いもあり。

おばあさんが、チワワの名前なまえを聞きいて「男おとこの子こなのに？」というセリフがあったから、きっとそういう意いを含ふくんでいるんだろうなぁ、と観み終おわって思おもう。

今いまの生活せいかつ（状態じょうたい）に嫌気いやけがさして、自分じぶんの部屋へやを模様替もようがえしようと、ガレージセールで小物こものやらを探さがす主人公しゅじんこうはそこそこ売うれているポルノ女優じょゆう。

たまたまそこで花瓶かびんとして使つかおうと買かったサーモスに何なんと大金たいきんが入はいっていて。

確認かくにんしに行いくが、どうやら持もち主ぬしのおばあさんは全まったく気きづいていないらしい。

気きままにお洋服ようふくを買かったりショッピングもしてみるが、やはり気きが咎とがめるようで、単たんなる親切しんせつを装よそおっておばあさんの手伝てつだいを始はじめる。

最初さいしょは不審ふしんがっていたおばあさんだけれど、ふたりは次第しだいに心しんを通かよわせて、仲なかの良よい“友達ともだち”のような関係かんけいに。

旦那だんなさんを亡なくし独ひとり身みのおばあさん。
同居どうきょしている同おなじくポルノ女優じょゆうの友達ともだちは薬くすり漬づけで、会社かいしゃの規則きそく上じょう彼氏かれしもつくれない孤独こどくな主人公しゅじんこう。

お互たがいにぽっかり空あいている溝みぞを埋うめあっているよう。

ある時とき、おばあさんの夢ゆめであるパリに連つれて行いってあげようとサーモスに入はいっていたお金かねの残のこりを全すべてつかってチケットやらホテルを手配てはい。

ふたりで楽たのしみにしていたパリ旅行りょこう。

その直前ちょくぜんに、主人公しゅじんこうの同居どうきょの女おんながおばあさんに「彼女かのじょはお金かねを盗ぬすんで、その罪悪ざいあく感かんだけで世話せわをしている」と告つげ口ぐち。

おばあさんはショックでパリ行いきを断念だんねんしようとするが…行いくことに。

その空港くうこうに向むかう途中とちゅうで、いつもの旦那だんなさんのお墓はかに寄よるよう主人公しゅじんこうに伝つたえ。
主人公しゅじんこうに花はなを添そえてきてと伝つたえる。
そので初はじめて知しった事実じじつ。
子こどもはいないと言いっていたけれど、旦那だんなさんと一緒いっしょに亡なくなっていたのだ。

その事実じじつがカミングアウトされてエンディング。

チワワのstarletをおばあさんに預あづけている間あいだに何なにがあったのだろうか。
ただの脱走だっそうではなく、おばあさんは何なにか酷ひどく辛つらいこと？嫌いやなこと？があったはずだけれど、それについては触ふれていなかったり…

結局けっきょくおばあさんの家族かぞくはなんで亡なくなってしまったのかも気きになるところ…

観みる人ひとにいろいろと想像そうぞうさせる作品さくひんだった。

主人公しゅじんこうが死別しべつした母親ははおやの眠ねむる場所ばしょを偶然ぐうぜん発見はっけんすることを暗示あんじさせるラストシーンに深ふかい情緒じょうちょ味あじわいを感かんじた。

アイドルとかセクシー女優じょゆうに深ふかい思おもい入いれをもつ人ひとのことを、少すこし理解りかいできたように思おもう。
それは彼女かのじょらの献身けんしん性せいに心しんをうたれるからなのではないか。
見みず知しらずの人間にんげんの好奇こうきや妄想もうそうや性欲せいよくの対象たいしょうとなりながら、嫌いやな表情ひょうじょうひとつ見みせることなく、まるで自分じぶん一いち人にんのためだけに存在そんざいしているかのように振ふる舞まう。
人ひとと心しんがつながりたくても思おもうようにならず、孤独こどくな心しんを癒いやしたり誤魔化ごまかしたりするための方法ほうほうが多様たよう化かした現代げんだいにあって、彼女かのじょたちはまさしく女神めがみなのだ。
ドリー・ヘミングウェイ（あの文豪ぶんごうヘミングウェイの曾孫そうそんらしい！）演えんじるポルノ女優じょゆうは、まさにそのことにかけて、男性だんせいはおろか、人生じんせいをむなしく生いきる老女ろうじょの心しんまで掴つかんでしまう天才てんさい的てきな献身けんしん性せいを見みせる。
ほとんど見返みかえりを求もとめないその姿すがたは、同居どうきょする強欲ごうよくで自己じこ中心ちゅうしん的てきな女優じょゆうによって、いっそう光ひかり輝かがやく。

それにしてもひどい邦題ほうだいだと思おもう。
原題げんだいはstarlet。主人公しゅじんこうが飼かっているチワワの名前なまえである。
そのチワワは、終盤しゅうばん、飼かい主ぬしの心しんが静しずかに波打なみうつ原因げんいんを見みていないのだから。
邦題ほうだいが、作品さくひんのテーマや雰囲気ふんいき、全すべての面めんにおいて嘘うそをついている。