ギャラクシー街道かいどう

見みた目めと性格せいかくというものはやっぱり一致いっちする。

「知しらない分野ぶんやを勉強べんきょうせず、自分じぶんの頭あたまにあるものを出だして」作つくれば、まあ、そういうものが出でてくる。

そういう意味いみで、初はつの「三谷幸喜みたにこうき」が素もとで作つくりたかった映画えいが、ともいえる。北野きたの武たけしでいうと、「あの」あたりの作品さくひんになる。

「ギャラクシー街道かいどう」

はい、オレ、今いままでの三谷幸喜みたにこうき作品さくひん、全部ぜんぶ嫌ぎらい。

三谷幸喜みたにこうき作品さくひんで、そもそも笑わらいの取とれる作品さくひんが、いまだかつてあっただろうか？破はたんせず、ファンタジー化かせず、収束しゅうそくした作品さくひんがあっただろうか。下品げひんな笑わらいなく、終始しゅうし上品じょうひんな世界せかい観かんが繰くり広ひろげられていただろうか。

ノンノンノン。

あの風貌ふうぼうですよ？あのテレビでの立たち振ぶる舞まいですよ？その正体しょうたいは変態へんたい偏屈へんくつおじさん以外いがいあり得えないでしょう。

だから、こういう作品さくひんになって、なにもおかしくない。その意味いみでとても面白おもしろかった。

特とくにひどい意見いけんが、これをＳＦで評価ひょうかとか、ＳＦって意味いみわかっていってるんだろうか。

本ほん作さく、あくまで、香取かとりくんと綾瀬あやせさんの二人ふたりの話はなし。紆余曲折うよきょくせつあったけど、こんないらいら、ぐずぐずした俺おれだけど、これからもよろしくね、というだけの映画えいが。

そう、まさしく、三谷幸喜みたにこうき自身じしんの個人こじん的てきなお話はなし。登場とうじょうする女性じょせいキャラは全員ぜんいん巨乳きょにゅうの装よそおいであることも、見逃みのがせない。
（真偽しんぎともかく、劇げき中ちゅうではみなさん胸むねが大おおきい）

一方いっぽう、宇宙うちゅう人じんの設定せっていや、ウルトラマンネタなどこれこそお花畑はなばたけの頭あたまの方向ほうこうけ。ＴＭＲの人ひとのほったらかし振ぶりなんてワザとでしかないわけで。

舞台劇ぶたいげきなのに、わざと舞台劇ぶたいげき的てきなつながりを切きっている。

そういった外野がいや感かん、テキトー感かん、そしてチャレンジ精神せいしんを、演者えんじゃがことごとく理解りかいしていない、あるいはミスキャスト、そしてやっぱり演出えんしゅつが追おい付ついていない、というのが本ほん作さくのマズいところ。

まったくみなさんと真ま逆ぎゃくだが、「本ほん」はいいと思おもう。

小栗おぐり旬しゅんくんはこういうただダメな男おとこの役やくは全然ぜんぜん似合にあわないし、梶原かじはらさんももっと微妙びみょうに可愛かわいらしさが出でないといけないのに、うざったい役やくで終始しゅうししている。（この役やく、爆笑ばくしょう問題もんだい田中たなかさんとかいいのにね）

段田だんださんの役やくは、狂言回きょうげんまわしの立場たちばなんだけど、それをほったらかして自己じこの思おもい出でに浸ひたるぐらいの、だんだん狂くるって、でもホッコリの非常ひじょうに難むずかしいキャラクターなんだけど、演えんじきれていないよね。これができるのは、ジャック・ニコルソンぐらいだからしょうがない。

遠藤えんどうさんもビジュアルに頼たより過すぎ。大竹おおたけさんの役やく、西田にしださんの役やくは演出えんしゅつがバツ。ＳＦを、と言いうのであれば、この二人ふたりの設定せっていに問題もんだいがあるかもしれない。

つまり、本ほん作さく、オレからすると、本ほんの強度きょうどやチャレンジ精神せいしんに、

「演者えんじゃと演出えんしゅつがついていけていない」

という印象いんしょう。

でもね、個人こじん的てきな映画えいがなんだから、そこに目めくじら立たてるでなく、香取かとり慎吾しんご＝三谷幸喜みたにこうき、としてさっさと切きり替かえればよいのだ。

本ほん作さく、そういう意味いみで最もっとも素晴すばらしい演技えんぎをしたのは、香取かとり慎吾しんご。

追記ついき

地球人ちきゅうじんに最もっとも近ちかい、山本やまもとくんや石丸いしまるさんのエピソードは、普通ふつうに面白おもしろい。山本やまもとくんのほうは、メイクがしょぼいけど、ああ、この手てで堀ほり北きたさんを、て想像そうぞうさせてくれるし、あのあたり嫌きらってるの、掘ほ北きたさんファンじゃねえの？

石丸いしまるさんのほうも、おねえちゃんとの絡がらみが面白おもしろい。

期待きたいしてたのは、

「ザイアクカン？」

最高さいこうである。ここが一番いちばんおもろかった。

追記ついき２

女性じょせい蔑視べっし、差別さべつではなく、自己じこ批判ひはん、自己じこ嘲笑ちょうしょうの表現ひょうげんの結果けっかでしょう。

それこそ「素もとのおっさん」

三谷幸喜みたにこうきさんの映画えいがは、「ラヂオの時間じかん」以来いらい、必かならず観みています。あのときの胸むねの高鳴たかなり、手てに汗あせ握にぎり、それが心しんの中なかでガッツポーズ！に至いたる瞬間しゅんかんが忘わすれられず…。けれども、さすがに本ほん作さくは…。認みとめたくないのですが、こういう気持きもちを「がっかり」というのだな、とじわじわと感かんじています。
「登場とうじょう人物じんぶつ、全員ぜんいん宇宙うちゅう人じん」がキャッチコピーですが、実際じっさいはメインキャストのほとんどは地球人ちきゅうじん。（まあ、地球人ちきゅうじんもある意味いみ「宇宙うちゅう人じん」ではありますが。）いわゆる宇宙うちゅう人じんたちは、どことなく変かわり者しゃ・ゲテモノという設定せってい。グロテスクな習性しゅうせいを、「笑わらい」に結むすびつけようとしている感かんじが気きになりました。
何なにより、登場とうじょう人物じんぶつ一いち人にん一人ひとりのキャラクターがいずれもスカスカで、誰だれ一人ひとりと共感きょうかんしがたいところが辛つらいです。実じつはいい人じん、とか実じつはこんな面めんもある、とか、次第しだいに成長せいちょうが…という要素ようそもほとんどなく、物語ものがたりの展開てんかいに伴ともなう変化へんか（ひねり）がありません。唯一ゆいいつ、綾瀬あやせはるかは気立きだてが良よく可愛かわいらしいですが、あんまり賢かしこくないタイプの可愛かわいらしさ…なのがイタイです。しかも、彼女かのじょの夫おっとで主役しゅやくの香取かとり慎吾しんごが一貫いっかんしていけ好すかない性格せいかくで、なせ彼女かのじょがぞっこん？というモヤモヤが残のこりました。
また、バラバラだった人々ひとびとがだんだん絡からみ合あい、化学かがく反応はんのうを起おこす！というのが群像ぐんぞう劇げき・三谷みたに作品さくひんの面白おもしろみだと思おもうのですが、そのようなうねり・高たかまりも感かんじられませんでした。確たしかに、とある「共同きょうどう作業さぎょう」がクライマックスに用意よういされていますが、唐突とうとつな感かんじがして、傍観ぼうかん者しゃから一いち歩ほ踏ふみ出だせず…。様々さまざまに張はられていた伏線ふくせんが終盤しゅうばんで鮮あざやかに回収かいしゅうされていく過程かていも、おお！というよりは、あ、なるほど…という納得なっとく止どまりで…。もったいないというか、「こんなはずでは」という気持きもちが残のこりました。
とかく長ながめの三谷みたに作品さくひんですが、今回こんかいはことさらに110分ふんが長ながく、間延まのびした印象いんしょうが拭ぬぐえませんでした。せめて、90分ふんくらいだったらよかったかもしれません。
…とはいえ、新作しんさくが生うまれたら、いそいそと観かんに行いくと思おもいます。三谷みたに作品さくひんは、やっぱり魅力みりょく的てき。次回じかいに期待きたいします。