ハロウィン : 映画えいが評論ひょうろん・批評ひひょう

2019年ねん4月がつ2日にち更新こうしん

2019年ねん4月がつ12日にちよりTOHOシネマズ日比谷ひびやほかにてロードショー

すべてが運命うんめいのように宿命しゅくめいの対決たいけつへと突つき進すすむ40年ねんぶりの続編ぞくへん

1978年ねんにわずか約やく30万まんドルで製作せいさくされたジョン・カーペンター監督かんとく作品さくひん「ハロウィン」は、世界中せかいじゅうで大だいヒットを飛とばし、のちの「13日にちの金曜日きんようび」などのスラッシャー映画えいがに多大ただいな影響えいきょうを与あたえた。その人気にんきの源みなもとが不死身ふじみの殺人鬼さつじんきマイケル・マイヤーズ／ブギーマンであることは言いうまでもないが、この白しろいハロウィンマスクを被こうむった怪人かいじんが、都会とかいでも田舎いなかでもない平和へいわな住宅じゅうたく街がいに出没しゅつぼつするという設定せっていも公開こうかい当時とうじは斬新ざんしんだった。マイケルが道みちばたや窓辺まどべにぼーっと立たっているだけで恐おそろしいショットの数々かずかずは観客かんきゃくの脳裏のうりにくっきりと焼やきつき、実際じっさいには存在そんざいしないイリノイ州しゅうハドンフィールドという地名ちめいまでも広ひろく認知にんちされた。

そのマイケルが血ちみどろの大量たいりょう殺戮さつりくを引ひき起おこして以来いらい、“初はじめて”ハドンフィールドに帰かえってくる！　周知しゅうちの通とおり、「ハロウィン」には7本ほんの続編ぞくへんとリメイクが存在そんざいし、マイケルは何なん度どもこの町まちに舞まい戻もどっているのだが、本ほん作さくはそれらをすべてなかったことにして、第だい1作さくの続編ぞくへんとして作つくられたのだ。この方針ほうしんが吉きちと出でた。

続編ぞくへんにありがちな“新あらたな謎なぞ”や“意外いがいな真実しんじつ”といった物語ものがたり上じょうのひねりは一切いっさいない。精神せいしん科か病棟びょうとうからの移送いそう中ちゅうに脱走だっそうしたマイケルは凶行きょうこうを重かさねながらハドンフィールドをめざし、ジェイミー・リー・カーティス扮ふんするローリーはそれを当然とうぜんのように臨戦りんせん態勢たいせいで迎むかえ撃うつ。両者りょうしゃの宿命しゅくめいの対決たいけつへの気運きうんが高たかまるなか、試写ししゃ室しつで身みを固かたくしていた筆者ひっしゃは40年ねん前まえのあの夜よるにスリップしたかのような感覚かんかくに見舞みまわれ、思おもわず「ああ、ここはハドンフィールドだ」と心しんの中なかでつぶやいた。後あとで調しらべたら第だい1作さくとは別べつのロケ地ちで撮とられたというのに、何なんたる映画えいがのマジック！

他たのシリーズ作さくとの整合せいごう性せいなどあれこれ考かんがえる必要ひつようのない本ほん作さくは、デヴィッド・ゴードン・グリーン監督かんとくの的確てきかくな演出えんしゅつと相あいまって、このうえなく純粋じゅんすいなスリルに浸ひたれる。素顔すがおのまま鎖くさりで拘束こうそくされた“危険きけんな患者かんじゃ”として登場とうじょうするマイケルは、逃走とうそう中ちゅうに手てに入いれたマスクを被こうむり、いくつかの凶器きょうきを経へたうえで洋よう包丁ぼうちょうを握にぎり締しめる。そんな恐怖きょうふの化身けしんブギーマンが甦よみがえり、完成かんせい形がたに至いたるプロセスに加くわえ、この殺人鬼さつじんきがどこからともなく住宅じゅうたくに侵入しんにゅうしてくる神出鬼没しんしゅつきぼつぶりを巧妙こうみょうに映像えいぞう化か。さらに今回こんかい総そう指揮しきに回まわったカーペンターの活劇かつげきスピリットを受うけ継つぐかのように、“立たてこもり”シチュエーションでのクライマックスも用意よういされている。もはや、すべてが人智じんちを超こえた運命うんめいのように思おもえてくる40年ねんぶりの続編ぞくへん、これしかないシンプルさを貫つらぬいた堂々どうどうたる出来できばえを讃たたえたい。

（高橋たかはし諭さとし治ち）