フランクおじさん

肉親にくしんでも無理むりなことは無理むり。親おやだろうが兄弟きょうだい/姉妹しまいだろうが、けっきょく、じぶんとはぜんぜん違ちがう人間にんげんだから、それを認みとめなきゃいけない。

悲劇ひげきなのは、親おやとじぶんがぜんぜん違ちがう人間にんげんだ──ということを知しるのが大人おとなになってから──ということ、だと思おもう。

こどもの頃ころや思春期ししゅんきや青年せいねん期きは、（親おやが）じぶんのことを解わかってくれる存在そんざいだと信しんじているゆえに、悲かなしい思おもいをしてしまう──そういうことが往往おうおうにしてある。

それは、LGBTだけのもんだいだけじゃない。

親おやとじぶんがぜんぜん相容あいいれないなら、まっとうなことなのに、解わかってくれないなら、どこかで決別けつべつしなきゃいけない。それは異常いじょうなことじゃなく、ふつうのことだ。ちがう人間にんげんなんだから、一定いっていの確かく率りつで誰だれにでも起おこりうることだ。

じぶんも親おやが好すきじゃない。ただ大人おとなになると俺おれが親おやを好すきであろうと、好すきではなかろうと、そんなことはどうでもいいことだとさとる。ちがう人間にんげんなのに曲まがりなりにも育そだててもらったんだから、かれらに合あわせて対応たいおうしてやればいい。親おやも悪わるかったところはあるし、俺おれも悪わるかったところはある。蒸むし返かえしたり、議論ぎろんしても仕方しかたがない。親おやも変かわらないし、俺おれも変かわらない。社会しゃかいで他人たにんとうまくやっていくのと同様どうように、仲良なかよくやっていけばいい。

ところがゲイとなるとカトリック的てきにも罪深つみぶかいこととされ、それが染しみついた世代せだいに、解わかってもらおうってのは無理むり。親おやでも無理むりなことは無理むりってのはそういうこと。

けっきょく、この話はなしはそのおやじが死しんだことで、恐おそろしく辛つらい遺言ゆいごんが、結果けっか的てきに幸福こうふくなカミングアウトに繋つながってくるという話はなし。

結果けっか論ろんだけれど、おやじはフランク伯父おじが絶対ぜったいにする予定よていのなかったカミングアウトをしてくれた必要ひつよう悪あくだった──ことになる。

おやじが死しんでつくづく良よかった。死しんで家族かぞくに家族かぞくらしい和わをもたらしてくれた。そんな解釈かいしゃくでいいし、じっさいそうなのだ。

人間にんげんは全ぜん方向ほうこうから好すかれるのは無理むり。
じぶんも、かんぜんに嫌きらわれてしまったやつがいる。かんぜんに嫌きらっているやつもいる。
死しぬまでそのままだろう。それでいい。

とはいえ青年せいねんのときの辛つらい経験けいけんはぬぐい去さることができない。──もっといい時代じだいだったら・・・そんなフランク伯父おじの願ねがいを託たくされるのが姪めいのベス。

映画えいがはそのベス（ソフィアリリス）視点してんで語かたられ、とてもさわやかに着地ちゃくちする。ほんとにさわやかにまとまる。よかった。

利発りはつで感性かんせいが豊ゆたかな少女しょうじょとミステリアスな叔父おじさん、2人ふたりのはみ出だし者しゃはあっさりと自分じぶんの世界せかいを手てに入いれる。
とても気持きもちの良よい話はなしだった。

色いろめき立たつ都会とかいの空気くうきにも流ながされずにでも楽たのしんでいる少女しょうじょ。どこにいたって一いち歩ほ引ひいて冷静れいせいなその瞳ひとみに、叔父おじさんの閉とざされた心しんが溶とけ出だす。

年齢ねんれいも性別せいべつも関係かんけいなく共鳴きょうめいし合あう２人ふたり、黙だまって側がわにいるだけで良よいってこういう事ことなのかも。

叔父おじさんのパートナーウォーリーにもいろいろとストーリーがありそうで気きになった。

Amazonオリジナル作品さくひんに、こんなに泣なかされるなんて。感情かんじょうを激はげしく揺ゆさぶられました。よく出来できた作品さくひんだと思おもいます。

家族かぞくもパートナーも損得そんとくが行動こうどう原理げんりな人間にんげん関係かんけいに疲つかれた人ひとにとっては、御伽おとぎ噺ばなしな、羨うらやましい人ひとの繋つながり。