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モーリタニアン 黒塗りの記録 特集: 評価・あらすじ・キャスト おすすめサスペンス…衝撃と混沌の実話 もしもあなたが、まったく身に覚えのない罪で拘束されたら… - 映画.com

劇場げきじょう公開こうかい 2021ねん10がつ29にち PROMOTION

  • 予告編よこくへん

モーリタニアン くろりの記録きろく : 特集とくしゅう

2021ねん10がつ25にち更新こうしん

ぜん人類じんるいいますぐるべき“衝撃しょうげき混沌こんとん実話じつわ”を映画えいが
あきらかになるアメリカのやみいかりがこみげる渾身こんしんさく

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わたしたちはいま不条理ふじょうり世界せかいきている。しかしほんさく登場とうじょう人物じんぶつ運命うんめいは、およそ想像そうぞうぜっするほどの艱難辛苦かんなんしんくである。

もしもあなたが、まったくおぼえのないつみ拘束こうそくされ、国家こっかがやっきになって自分じぶん死刑しけいにしようとしているとったら……。10月29にちから公開こうかいされる映画えいが「モーリタニアン くろりの記録きろく」は、そうした現実げんじつにさらされたモーリタニアじん青年せいねんと、かれけようと行動こうどうする弁護士べんごしえがいた、衝撃しょうげきの“実話じつわ映画えいが”である。

この特集とくしゅうでは、ほんさく魅力みりょくを「物語ものがたり」「キャスト(ゴールデングローブしょう助演じょえん女優じょゆうしょう受賞じゅしょう)」「価値かちかんくつがえされる衝撃しょうげき映画えいが体験たいけん(レビュー)」の3つにわけて詳述しょうじゅつしていく。


予告編よこくへん】あれから20ねん―― あばかれたアメリカのやみ

いまるべき重要じゅうよういちさく】こんな事件じけんがあったとは…
ある青年せいねんがテロ首謀しゅぼうしゃ1人ひとりとされ拘禁こうきん米国べいこくうったえる

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●あらすじ

モハメドゥ・ウルド・スラヒがしるし、政府せいふ検閲けんえつによるくろりだらけで出版しゅっぱんされたことで話題わだいんだ「グアンタナモ・ダイアリー」を題材だいざい映画えいが。2005ねん弁護士べんごしのナンシー・ホランダー(ジョディ・フォスター)はアフリカのモーリタニア出身しゅっしん、モハメドゥ・スラヒ(タハール・ラヒム)の弁護べんごける。

モハメドゥは9・11の首謀しゅぼうしゃ1人ひとりとして拘束こうそくされ、キューバのグアンタナモ収容しゅうようしょ地獄じごくのような投獄とうごく生活せいかつなんねんおくっていたが、おどろいたことに裁判さいばんいちひらかれていない。ナンシーは「不当ふとう拘禁こうきん」だとしてアメリカ合衆国あめりかがっしゅうこくうったえることになる。

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どきおなじくして、テロへの“正義せいぎ鉄槌てっつい”をのぞ政府せいふからべいぐんに、モハメドゥを死刑しけい判決はんけつしょせとのいのちくだり、法律ほうりつでもあるスチュアート中佐ちゅうさ(ベネディクト・カンバーバッチ)が起訴きそ担当たんとうする。真相しんそうあきらかにしてたたかうべく、りょうサイドから綿密めんみつ調査ちょうさ開始かいしされるが……。

モハメドゥからとど手紙てがみによる“証言しょうげん”の予測よそく不能ふのう展開てんかいまれていくナンシー。しかし再三さいさん開示かいじ請求せいきゅうでようやく政府せいふからとどいた機密きみつ書類しょるいには、百戦錬磨ひゃくせんれんま彼女かのじょさえ愕然がくぜんとする供述きょうじゅつしるされていた。

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いまきるすべての人類じんるいり、しんきざむべき重大じゅうだいいちさく

衝撃しょうげきてき事実じじつふくまれ、いまきる人々ひとびと問題もんだい提起ていきするような、重厚じゅうこうかつ良質りょうしつ映画えいがである。「ペンタゴン・ペーパーズ 最高さいこう機密きみつ文書ぶんしょ」や「スポットライト 世紀せいきのスクープ」などをこの映画えいがファンには、まさにうってつけのいちさくだ。

ほんさくとくくのは、この出来事できごとが“実話じつわ”であるというてん。アメリカ政府せいふがモーリタニアじん青年せいねん強引ごういん拘禁こうきんし、人道的じんどうてき拷問ごうもんしていたことは事実じじつだし、メインの登場とうじょう人物じんぶつ全員ぜんいん実在じつざいしている。アメリカとしては隠蔽いんぺいしておきたい“不都合ふつごう事実じじつ”を、映画えいがという芸術げいじゅつ姿すがた白日はくじつしたさらしてみせたのだ。製作せいさくこくがイギリスだからこそできた芸当げいとうだろう(公文書こうぶんしょ平気へいき偽造ぎぞうしたり、紛失ふんしつしたりする極東きょくとう島国しまぐにではおよそ不可能ふかのうか)。

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さらに9・11から20ねん節目ふしめであり、べいぐんがアフガニスタンを事実じじつじょう見捨みすてた”この2021ねんあきほんさく日本にっぽん公開こうかいされるというてんも、なかなかに運命うんめいてきだ。日本にっぽんでは出入国しゅつにゅうこく在留ざいりゅう管理庁かんりちょう入管にゅうかん)におけるひどすぎる実態じったいがまたも問題もんだい物語ものがたりいま世界せかいとシンクロするてんおおく、国家こっか国民こくみんたいする慈悲じひふか守護しゅごしゃではなく“巨大きょだい怪物かいぶつ”であることを、あらためて認識にんしきできる“いまるべき映画えいが”だ。


【キャラクターが素晴すばらしいから、物語ものがたりがさらにかがやく】
アカデミーしょう常連じょうれんちょう一流いちりゅうキャストじん全身全霊ぜんしんぜんれいいど

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ほん項目こうもくでは、主要しゅよう登場とうじょう人物じんぶつと、えんじたキャストなどに言及げんきゅうしていく。


●ジョディ・フォスター(ナンシー・ホランダーやく)/国家こっかやみいど弁護士べんごし熱演ねつえん、GGしょうかがや

じょうながされずつねにクールだが、しんしん人間味にんげんみにあふれた人権じんけん弁護士べんごしナンシー。えんじたのは、「告発こくはつ行方ゆくえ」「ひつじたちの沈黙ちんもく」で2のアカデミーしょう主演しゅえん女優じょゆうしょうかがやき、演技えんぎりょく存在そんざいかん両面りょうめんたか評価ひょうかされてきただい女優じょゆうジョディ・フォスター。今回こんかい彼女かのじょせたのは、百戦錬磨ひゃくせんれんま経験けいけんから発露はつろされる“かっこよさ”だ。

グアンタナモ収容しゅうようしょあしれたナンシーは、ニヤけめん看守かんしゅから「ヒジャブの着用ちゃくようをすすめる。囚人しゅうじんからツバをきかけられたケースもある」とおどされるも、これを不敵ふてきわらって無視むしする。

片方かたがたまゆげ、アゴをかるくクイッとげながら舌鋒ぜっぽうするどむその姿すがたは、彼女かのじょ桁外けたはずれな能力のうりょくなによりも雄弁ゆうべん表現ひょうげんしている。フォスターはほんさく熱演ねつえんにより、だい78かいゴールデングローブしょう最優秀さいゆうしゅう助演じょえん女優じょゆうしょう受賞じゅしょうした。

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●タハール・ラヒム(モハメドゥ・ウルド・スラヒやく)/拘禁こうきんされる青年せいねんかいえんじ そこれない存在そんざいかんしめす“MVP”

理由りゆうらされず悪名あくめいたかきグアンタナモ収容しゅうようしょ連行れんこうされ、3年間ねんかん毎日まいにち、1にちあたり18あいだにおよび尋問じんもんされつづけたモハメドゥ。「ショーシャンクのそらに」の主人公しゅじんこうもびっくりの地獄じごくであろうとも、かれまえのスマートでチャーミングな魅力みりょくうしなわなかった。独学どくがく英語えいごおぼえ、テレビで仕入しいれたジョークをばし、一部いちぶ看守かんしゅからはしたしみをめて「モー」とばれた。

普通ふつう映画えいがなら「このおとこ無実むじつであり、アメリカ政府せいふ強引ごういんにスケープゴートを用意よういした」というすじになるだろう。しかしほんさくはそうはいかない。ラヒムがえんじたモハメドゥの異様いようなチャーミングさは、観客かんきゃく判断はんだん基準きじゅんを「好感こうかんてる」「それがぎゃくあやしい」「本当ほんとう無実むじつなのだろう……しかし?」とかきみだす。物語ものがたりには終始しゅうし絶妙ぜつみょう緊張きんちょうかんがみなぎっていくのだ。

えんじたのは、「預言よげんしゃ」でセザールしょうかがやいた実力じつりょくタハール・ラヒム。ほんさく深遠しんえんなる魅力みりょく付与ふよしているのは、まぎれもなくこのおとこである。MVPとってつかえない存在そんざいかんを、なにとしても目撃もくげきしてほしい。なおだい78かいゴールデングローブしょうでは、最優秀さいゆうしゅう主演しゅえん男優だんゆうしょうにノミネートされていた。

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●ベネディクト・カンバーバッチ(スチュアート中佐ちゅうさやく)/製作せいさく専念せんねんするはずが…ある理由りゆう出演しゅつえん決意けつい実直じっちょく名演めいえん

軍人ぐんじんでもあり法律ほうりつであるスチュアート中佐ちゅうさは、社交しゃこうてき道徳どうとくてき人格じんかくしゃだ。親友しんゆうが9・11で犠牲ぎせいになっており、首謀しゅぼうしゃらにつよいかりをっていたが、今回こんかい任務にんむにあたり資料しりょう整理せいりするなかで“違和感いわかん”にがつく。正義せいぎとはなにか。政府せいふおこないの是非ぜひは。そして自身じしんがすべきことはなになのか……やがてかれいばらみちすすむことになる。

えんじるは「イミテーション・ゲーム エニグマと天才てんさいすう学者がくしゃ秘密ひみつ」でアカデミーしょう&ゴールデングローブしょうにノミネートされ、名実めいじつともに英国えいこく俳優はいゆう頂点ちょうてんおどたベネディクト・カンバーバッチ。当初とうしょ自身じしん製作せいさく会社かいしゃひきいてプロデュースに専念せんねんする予定よていだったが、脚本きゃくほんのあまりの素晴すばらしさにわり、スチュアート中佐ちゅうさやく出演しゅつえんもすることに。たましいさぶられたからこそ発露はつろした実直じっちょく名演めいえんは、ものたましいをもさぶるだろう。

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監督かんとくは「ラストキング・オブ・スコットランド」のケビン・マクドナルド

物語ものがたりおさえたトーンですすむため、お世辞せじにもド派手はでとはえない。しかしそれがいのだ。弁護士べんごし法律ほうりつたちによる理知的りちてきかつ論理ろんりてきなセリフの応酬おうしゅうつづいたかとおもいきや、突如とつじょとしてうたがうような不条理ふじょうりがぶっこまれる。コントラストがいたストーリーと演出えんしゅつに、一流いちりゅうのキャストじん演技えんぎくわわることで、もの感情かんじょういきおいよくあふしていく。

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メガホンをとったのは、「ラストキング・オブ・スコットランド」のケビン・マクドナルド監督かんとくどうさくでウガンダのカリスマてき独裁どくさいしゃ次第しだい狂気きょうきじみていく様子ようすえがいた名手めいしゅが、今度こんどたましい粉々こなごなになろうとも“ただしいこと”をなそうとする人々ひとびと物語ものがたりつむしている。


編集へんしゅうレビュー】この映画えいが自体じたいが“世界せかいてきスクープ”
いかり、愕然がくぜんとし、価値かちかんをひっくりかえされる稀有けう良作りょうさく

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最後さいごに、映画えいが.com社員しゃいん(40だい男性だんせい)が鑑賞かんしょうしたレビューを掲載けいさいし、この特集とくしゅうめくくろう。ハリウッド映画えいがそだち、アメリカにあこがれにも気持きもちをいていたどう社員しゃいんが「価値かちかんをひっくりかえされた」と衝撃しょうげきかたっている。


これまで、仕事しごとするうえで「実話じつわ」×「衝撃しょうげき」を文句もんくにした映画えいがかぞえられないほどてきましたが、これほどの衝撃しょうげきけた作品さくひんはじめてでした。ほんさくは“1ほん丸々まるまるがスクープ記事きじ”のようであり、最初さいしょから最後さいごまで「アメリカ、マジ……?」と絶句ぜっくするシーンばかりでした。

まず事実じじつとして、モハメドゥが「テロの首謀しゅぼうしゃ1人ひとりである」という確固かっこたる証拠しょうこはひとつもありません。しかし「テロの首謀しゅぼうしゃ1人ひとりではない」という証拠しょうこもない。アメリカ政府せいふはプロファイリングから浮上ふじょうしたモハメドゥをとりあえずしょっき、外界がいかいから隔絶かくぜつされたグアンタナモ収容しゅうようしょにぶちみます。人知ひとしれず拷問ごうもんし、自白じはくすためです。

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ところが1にちあたり18あいだにわたりしぼげても、モハメドゥは核心かくしんをついた発言はつげんをしない。アテがはずれた政府せいふはとにかくかれ長期間ちょうきかん拘禁こうきんし、ねむらせずべさせず、寸前すんぜんまでいためつけることで、うそでもなにでもいいから「わたしがテロの首謀しゅぼうしゃです」とわせようとするのです。

なぜアメリカ政府せいふはそこまでするのか? これがほんさく最大さいだいなぞにして、最大さいだいのテーマとなっていきます。人間にんげんはもともと、自分じぶんしんじたいものをしんきるかよわ生物せいぶつです。かよわ人間にんげんあつまった“国家こっか”という不完全ふかんぜん巨大きょだい怪物かいぶつが、個人こじんを(ほんさく場合ばあいはモハメドゥを)「あくである」とめつけ、手段しゅだんえらばずさばこうとしたとき、個人こじんはなすすべもない。

かくもほんさくは、アメリカ政府せいふ暴力ぼうりょく装置そうちとしての恐怖きょうふつまびらかにしてみせ、わたしのアメリカ文化ぶんかへのあわあこがれを見事みごと爆破ばくはしていきました。まるで一流いちりゅうのジャーナリストがいのちをかけて政府せいふ陰謀いんぼうあばいたスクープのように、この物語ものがたりはセンセーショナルにわたししんうごかし、これまでの価値かちかん転覆てんぷくさせたのです。

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結末けつまつ目撃もくげきし、衝撃しょうげきけ、ややあっていかりがこみげてきました。と同時どうじに、――ネタバレをけるためにやや抽象ちゅうしょうてき表現ひょうげんになりますが――知的ちてき好奇心こうきしんたされ、しんがふいにあたたかくなる瞬間しゅんかんもあり、とてもゆたかな満足まんぞくかんからだそこからいてくるから不思議ふしぎです。

価値かちかんくつがえされる、しかもあこがれがいかりにわるような経験けいけんは、人生じんせいでもそうそうない。それほどのちからちた「モーリタニアン くろりの記録きろく」を目撃もくげきし、わたしおな気持きもちをぜひともあじわっていただきたいです。(映画えいが.com社員しゃいんK)

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