ももいろそらを　カラー版ばん

所謂いわゆる見みたことのあるタイプの映画えいがの評価ひょうかを直線ちょくせん上じょうで傑作けっさく、駄作ださくと評ひょうする事ことはたやすい。しかしこの作品さくひんの様ように映画えいがを知しり尽つくしていながらかつて見みた事ことの無ないようなタイプの作品さくひんを作つくり上あげる事ことは至難しなんの業わざである。カラー版ばんもモノクロ版ばんもラストに黒澤くろさわの影響えいきょうが強つよく感かんじられて本当ほんとうに映画えいがをよく分わかっている監督かんとくだな～と思おもう反面はんめん、このシナリオをいったいどうやって書かき上あげる事ことが出来できるのだろうといつも感心かんしんする。また書かき上あげる事ことが出来できたとしてもこれを高校生こうこうせいに近ちかいような俳優はいゆう陣じんに演えんじさせる演出えんしゅつ法ほうは見みた事ことがない。敢あえて言いえば小津おつか森田もりた芳光よしみつか相米そうまい慎二しんじくらいか・・・。それにしても頭抜ずぬけてる。

常つねに露出ろしゅつ過多かたのPOV方式ほうしきのカメラワークも秀逸しゅういつである。女子高じょしこう生せいと言いう得体えたいのしれない生物せいぶつを撮影さつえいするにはこれ以上いじょうない方法ほうほう論ろん。何処どこをとってもこの監督かんとくの作つくる映画えいがは誰だれもマネできない唯一ゆいいつ無二むにの世界せかい。まだ未見みけんの作品さくひんが何なん点てんかあるのでこれからも潰つぶして歩あるくのが楽たのしみで仕方しかたがない。

｢殺ころさない彼かれと死しなない彼女かのじょ｣｢恋こいは光ひかり｣の小林こばやし啓一けいいち監督かんとく、初はつの長編ちょうへん作品さくひん。本当ほんとうはモノクロバージョンが良よかったんだけどねぇ。U-NEXTがカラー版ばんしかないもんですから、仕方しかたなくこっちで。でも、流石さすが小林こばやし監督かんとく。さすがの面白おもしろさでした。

やっぱりこの監督かんとくはキャラ付づけが上手うまい。
全員ぜんいん個性こせい的てきなんだけど、どこか抜ぬけていて、どうしようもない。主人公しゅじんこう含ふくめ、どの登場とうじょう人物じんぶつも人間にんげん臭くさい。しかも面白おもしろいのが、登場とうじょう人物じんぶつ全員ぜんいん、映画えいがが終おわる頃ころには格段かくだんに成長せいちょうを遂とげているということ。ちょっとしたことで人ひとは変かわる、ちょっとした経験けいけんが影響えいきょうを与あたえる。この監督かんとくはいつだって、そのテーマを忘わすれない。だから好すき。

ストーリー、キャラクター共どもにかなり変かわっているんだけど、それが故ゆえにめちゃくちゃ笑わらえるし、シュールでたまらない。何なん度どもみたいシーンなんて沢山たくさんある。適当てきとうな感かんじに見みえて、実じつはしっかり考かんがえ尽つくされている本ほん作さく。伏線ふくせん回収かいしゅうもお見事みごとで、ラストも最高さいこうにいい。

正直しょうじき、小林こばやし監督かんとく作さくの2作品さくひんと比くらべると、ストーリーは弱よわいし、見応みごたえも薄うすいんだけど、らしさ全開ぜんかいでかなり面白おもしろい。いやぁ、本当ほんとうによくできてるこの映画えいが。また新作しんさく、待まってます。ちなみに、恋こいは光ひかりは本年度ほんねんど(2022年ねん)1位いです。

日本にっぽん映画えいがをザ日本にっぽん映画えいがと称しょうして貶けなすことがありますが、ときどきじぶんの見識けんしきが具体ぐたい性せいに欠かけていると思おもうことがあります。
（もちろん素人しろうとが勝手かってなことを言いっているだけなので、どうでもよろしいことですが・・・。）

「ザ日本にっぽん映画えいが」にいくらかの具体ぐたい性せいを付与ふよするために、ザ日本にっぽん映画えいがの系譜けいふではないひと（監督かんとくや映画えいが）を挙あげます。現代げんだいに限かぎったチョイスです。いま思おもいついた限かぎりなので網羅もうら性せいはありません。（挙あげられてない人ひとがいるはずですが、そもそもすべてが偏見へんけんにみちた個人こじんの見解けんかいに過すぎません。）

中村なかむら義洋よしひろ、中島なかじま哲也てつや、李り相しょう日び、是枝これえだ裕和ひろかず、原田はらだ眞人まさと、鈴木すずき雅之まさゆき ・・・。演出えんしゅつができる監督かんとくは、ザ日本にっぽん映画えいがではありません。また、テレビドラマを主軸しゅじくにしていて、さほど映画えいが監督かんとくとしての知名度ちめいどのない演出えんしゅつ家か──真夏まなつの方程式ほうていしき・祈いのりの幕まくが下おりる時とき・罪つみの声こえ・グッドモーニングショー等々とうとうの監督かんとくも、ザ日本にっぽん映画えいがの系譜けいふではないと思おもいます。（グッドモーニングショーの世評せひょう低ひくいですが、個人こじん的てきには高こう評価ひょうかです）
さいきんの傾向けいこうとして、テレビ畑はたけの演出えんしゅつ家かの映画えいがが、さらりとザ日本にっぽん映画えいがを凌駕りょうがすることが多おおい気きがします。日本にっぽん映画えいががアート側がわから輩出はいしゅつされず、西谷にしたに弘ひろし福澤ふくさわ克雄かつお土井どい裕泰ひろやす君くん塚づか良一りょういちのようにテレビや技術ぎじゅつ畑はたけから出でる人ひとたちで構成こうせいされていたら、日本にっぽん映画えいがの混迷こんめいはなかったはずです。ひとつの結論けつろんとして、映画えいがをアートだと捉とらえている人ひとはアウトだと思おもいます。
北野きたの武たけし、庵あん野の秀明ひであき、岩井いわい俊二しゅんじは別枠べつわくで、濱口はまぐち竜介りゅうすけも日本にっぽん映画えいがにいなかった人ひとです。
氷菓ひょうかという映画えいががあって、わたし（も）山崎やまざき賢人けんじんは好すきじゃないのですが、世評せひょうに反はんして、わたしには氷菓ひょうかの実写じっしゃ版ばんがすごくいい映画えいがでした。で、アニメ版ばんも見みましたが氷菓ひょうかの実写じっしゃ版ばんは、やっぱりいい映画えいがでした。ので安里あさと麻里まり監督かんとくを個人こじん的てきに買かっています。

逆ぎゃくにどんな映画えいががザ日本にっぽん映画えいがかと言いうと三島有紀子園子温河瀬直美瀬々敬久たかひさ塩田しおだ明彦あきひこ蜷川にながわ実花みか熊ぐま切きり和かず嘉よしみ高橋たかはし伴ばん明あきら荒井あらい晴彦はるひこ石井いしい岳たけし龍りゅう奥田おくだ瑛あきら二行定勲石井隆大森立嗣廣木隆一SABU・・・などなど。（行こう定てい勲くんの円卓えんたく、熊くま斬き切せつな和かず嘉よしみの海うみ炭すみ市しはいずれもよかったです。ぜんぶ見みているわけではないので、なかにはいいのがあるかもしれません）21世紀せいきの女おんなの子こ系けいは言いうに及およばす。山中やまなか瑶子ようこはフルスロットルでザ日本にっぽん映画えいがです。深田ふかた晃司こうじもふつうの不条理ふじょうりでザ日本にっぽん映画えいがです。黒沢くろさわ清きよしはザ日本にっぽん映画えいがではありませんが（個人こじん的てきに）力量りきりょうがまったくわかりません。

ザ日本にっぽん映画えいがの見分みわけ方かたは簡単かんたんで、日活にっかつロマンポルノを思おもわせるとザ日本にっぽん映画えいが認定にんていです。ふしぎなことですが日活にっかつロマンポルノを知しらない世代せだいでも日活にっかつロマンポルノをしてしまう──のがザ日本にっぽん映画えいがの系譜けいふです（例れい：21世紀せいきの女おんなの子こ）
（ザ日本にっぽん映画えいがにたいして昭和しょうわ感かん（時代遅じだいおくれの印象いんしょう）と同時どうじによくおぼえるのが「それは映画えいがでやることじゃない」の気配けはい──です。松本まつもと人志ひとしの映画えいがを、わりと面白おもしろく見みました。だけど、なんていうか「それは映画えいがでやることじゃない」わけです。奇抜きばつなアイデアではあっても「それは映画えいがでやることじゃない」の印象いんしょうは、はやいスピードで陳腐ちんぷ化かするものだと思おもいます。
若わかい人ひとが撮影さつえいのシステムを知しらずに脚光きゃっこうを浴あびた結果けっか、強靱きょうじんなザ日本にっぽん映画えいがの作家さっかになっていく──そんな悪循環あくじゅんかんがザ日本にっぽん映画えいが界かいにはあるような気きがしています。21世紀せいきの女おんなの子こなんて、もてはやすのも罪深つみぶかいと思おもいます。）

ところで、さいきん「あ、これザ日本にっぽん映画えいがじゃないぞ」の体験たいけんは濱口はまぐち竜介りゅうすけ監督かんとくでしたが、そのまえはももいろそらをの小林こばやし啓一けいいち監督かんとくでした。注視ちゅうししてきましたが、その後ごももいろそらをの感動かんどうは得えられませんでしたが、ザ日本にっぽん映画えいがの監督かんとくではありません。

この（オリジナル白黒しろくろ版ばんの）DVDを持もっていてなんども見みています。
カラー版ばんが公開こうかいされたことを知しりませんでした。ようするにわたしはこの映画えいがを見みていません。が、カラー版ばん告知こくち動画どうがの、極彩色ごくさいしょくの池田いけだ愛あいを見みて衝撃しょうげきを受うけ、その勢いきおいでレビューを書かいてしまいました。メディア化かおねがいします。

わたしはかつて、ももいろそらをのオリジナル白黒しろくろ版ばんのレビューにこう書かきました。

『いったい何なん度ど、池田いけだ愛あいをググったかわかりません。この女優じょゆうの愛あいすべき下手へたさは、まるで街頭がいとうでニューヨークヘラルドトリビューン！を繰くり返かえし叫さけぶジーンセバーグのようにフレッシュな映画えいが的てき魅力みりょくがありました。やっぱりサンダンスは信頼しんらいできます。』

かわいい映画えいがです。かわいいとは容姿ようしの形容けいようとしてのかわいいではなく、こじんまりとして、しっかり世界せかい観かんがあって、独自どくじ性せいがある──というような意味合いみあいです。池田いけだ愛あいの下手へたが気きにならないどころか、むしろ愛着あいちゃくがわきます。佐藤さとう役やく高山たかやま翼つばさのめんどくさそうな気配けはいもいいです。映画えいがに、映画えいが的てきアイデアがあります。新聞しんぶん記事きじを採点さいてんするJK→財布さいふをひろう→佐藤さとうにつながる→新聞しんぶんづくりをさせられる→ゲイがばれる→なんか死しんじまう→カラースモークしこむ。すべて小ちいさなできごとですが、オリジナリティがあります。じゃー自首じしゅしてきますわとかあいかわらずばかかとかロバートパティンソンに噛かまれたいわとか──セリフも楽たのしいです。

ザ日本にっぽん映画えいがの見分みわけ方かたは簡単かんたんで、日活にっかつロマンポルノを思おもわせる──と書かきましたが、もうひとつ顕著けんちょなのは、承認しょうにん欲求よっきゅうです。映画えいがが「おれの描えがく世界せかいすげえだろ」の印象いんしょうを持もっています。賞しょうほしさに身みもだえしている気配けはいやオレオレ感かんがあります。（とりわけ園えんやSABU）そんな外国がいこく映画えいがを見みたことありますか？ザ日本にっぽん映画えいがだけがもっている特徴とくちょうです。

かわいい映画えいがは承認しょうにん欲求よっきゅうが払拭ふっしょくされていることが前提ぜんてい条件じょうけんです。ももいろそらをや、たとえばフランシスハに、だれかに褒ほめられたがっている気配けはいがありますか？かわいい映画えいがは、何なにも望のぞんでいないフォルムを備そなえています。カンヌどころかサンダンスも──いや、出品しゅっぴんしなくてもいいですよ──の無欲むよくが「かわいい」の根拠こんきょです。

この映画えいがとフランシスハにはなんの関係かんけいもありませんが「かわいい小品しょうひん」なのでわたしのなかでは似にています。フランシスハは単たん館かんからじわじわ拡ひろがった映画えいがなので、おそらくひっそり公開こうかいされる──立たち位置いちも似にていると思おもいます。が、個人こじん的てきにこういった小品しょうひんこそグランドシネマサンシャインとか最大さいだい級きゅうの箱はこで見みたいものです。ノアバームバックがカラー化かを承諾しょうだくしてももいろそらをとフランシスハのカラー版ばんの二本立にほんだてをやったら、最高さいこうだと思おもいます。

繰くり返かえしますがわたしはこの映画えいがを見みていません。が、カラー版ばんの告知こくち動画どうがで色いろつきの池田いけだ愛あいを見みて、衝撃しょうげきを受うけ、レビューを書かいてしましました。すいません。

2021年ねん映画えいが館かん鑑賞かんしょう66作品さくひん目め
7月がつ18日にち(日)にちフォーラム仙台せんだい

モノクロ版ばん未み鑑賞かんしょう
オリジナルは2011年ねんの作品さくひん
だからスマホではなくガラケー

女子高じょしこう生せい3人にんと男子だんし高だか生せい1人にんを中心ちゅうしんとしたコメディー映画えいが

出演しゅつえん者しゃは『ぼんとリンちゃん』にも出でていた桃もも月がつ庵あん白酒しろざけしか知しらない

主演しゅえん池田いけだ愛あい演えんじる川島かわしまいづみ
声こえが大おおきい
暴言ぼうげん癖へき
立憲りっけんの某ぼう国会こっかい議員ぎいんのように新聞しんぶんの記事きじを読よんで採点さいてんをするのが趣味しゅみ
発言はつげん内容ないようは日刊にっかんゲンダイやリテラ以上いじょうに猛烈もうれつに臭くさい
不機嫌ふきげんな時ときの顔かおが面白おもしろい

30万まん入はいった財布さいふを警察けいさつに届とどけず知人ちじんの印刷いんさつ屋やに20万まん貸かしてしまういけない女子高じょしこう生せいいづみ
なんやかんやで女おんな友達ともだち2人ふたりと財布さいふの持もち主ぬしと一緒いっしょにポジティブな新聞しんぶんを作つくる羽目はめに
その新聞しんぶんのおかげで印刷いんさつ屋やは借金しゃっきん返済へんさいするというなかなかな展開てんかい

インディーズだろうか
石井いしい裕也ゆうや監督かんとくの初期しょきの作品さくひんにちょっと似にた感かんじがする
だが石井いしい作品さくひんと比くらべテンポが悪わるく眠ねむくなる人ひとがいてもおかしくない

なぜ今いまどき（といっても今いまから10年ねん前まえの作品さくひんだが）モノクロで製作せいさくしたのか理解りかいに苦くるしむ
初はじめからカラーで良よかったのではないか
時代じだい劇げきならともかく現代げんだい劇げきでモノクロ撮影さつえいするなんて監督かんとくのマスターベーションとしか思おもえない

ボーリング場じょうで膝枕ひざまくらするシーン
エッチなバイトで稼かせごうとしたが経営けいえい側がわが門前払もんぜんばらいで掌てのひら返がえし女おんな友達ともだちに謝罪しゃざいするシーン
わりと好すき