ヘルドッグス

主演しゅえん・岡田おかだ准じゅん一いち×原田はらだ眞人まさと監督かんとくは、早はやくも「関ヶ原せきがはら」「燃もえよ剣けん」に続つづき3作さく目め。
ただ、個人こじん的てきには、同おなじ時代じだい劇げきである「関ヶ原せきがはら」と「燃もえよ剣けん」の2作品さくひんでさえも評価ひょうかが全まったく異ことなるなど、未いまだ評価ひょうかが安定あんていしていない印象いんしょうはあります。

原田はらだ眞人まさと監督かんとくの現代げんだい劇げきで私わたしが一番いちばん好すきなのは「クライマーズ・ハイ」で、時代じだい劇げきでは「燃もえよ剣けん」ですが、これらの難点なんてんをあえて挙あげると「一部いちぶの音声おんせいがき取きとりづらい」ということがあります。
ただ、「クライマーズ・ハイ」は屋外おくがいなので自然しぜん音おんを使つかったり、時代じだい劇げきでは当時とうじの話はなし方かたを用もちいることでリアル感かんを求もとめた結果けっかだと想定そうていしていました。
ところが本ほん作さくを見みて最初さいしょに驚おどろいたのは、屋外おくがいでもなく、時代じだい劇げきでもないのに、役者やくしゃ陣じんが何なにを言いっているのかき取きとれないシーンが散見さんけんされる、ということでした。
これは、知しらない俳優はいゆう陣じんであれば「何なんでこんな大根だいこん役者やくしゃを使つかったんだろう？」と疑問ぎもんに思おもってしまうのですが、実際じっさいには本ほん作さくの俳優はいゆう陣じんの名演めいえんぶりを知しっているので、この「き取きとりづらさ」は原田はらだ監督かんとくの持もち味あじだったのか、と理解りかいできました。
異様いように早口はやくちで話はなしたりするためか、き取きとりづらさで引ひっかかる人ひとが出でるかと思おもいます。
また、脚本きゃくほんも原田はらだ監督かんとくで、状況じょうきょう説明せつめいが少すくないのか、あるいはき取きとれていないのかで、「今いまは何なにをやっているんだろう？」と展開てんかいについていけなくシーンも散見さんけんされました。

とは言いえ、この2点てんさえ割わり切きりながら見みれば、岡田おかだ准じゅん一いちを筆頭ひっとうに、アクションシーンは演技えんぎも演出えんしゅつも冴さえまくっていたり、「関東かんとう最大さいだいのヤクザに潜入せんにゅうし、組織そしきの若わかきトップが持もつ秘密ひみつファイルを奪取だっしゅする」といったミッションを軸じくに繰くり広ひろげられる人間にんげん模様もようは純粋じゅんすいに面白おもしろいと思おもいます。

ヤクザ組織そしきに潜入せんにゅうする、訳わけあり元もと警察官けいさつかん(岡田おかだ准じゅん一いち)と、制御せいぎょ不能ふのうでサイコパスなヤクザ(坂口さかぐち健太郎けんたろう)との相性あいしょうは「98%」とのこと。その流ながれで組くんだ2人ふたりは「狂犬きょうけん」のごとく様々さまざまなミッションをコンビで駆かけ抜ぬける。
「狂犬きょうけん」と聞きくと、ボスを守まもるためには何なんでもする乱暴らんぼうさが表面ひょうめん的てきに出でてしまうが、本ほん作さくの人間にんげん模様もようは「愛犬あいけん」を超こえた複雑ふくざつな葛藤かっとうが交差こうさし、「誰だれを信しんじて、誰だれを疑うたがえばいいのか」さえわからないところまで発展はってんしていく。
そして「狂犬きょうけん」と表現ひょうげんするほどバイオレンスシーンが多おおく、目めを伏ふせたくなる場面ばめんも出でてくる。そこを乗のり越こえられれば、かなり純粋じゅんすいでミステリー的てきな作品さくひんとなっており、主演しゅえんである岡田おかだ准じゅん一いちの心しんと体からだの強つよさが魅力みりょく的てきに映うつる。
「真実しんじつは絶対ぜったい明あかせない」というブレない姿勢しせいを演えんじる岡田おかだ准じゅん一いちは、全すべてがかっこいい。
誰だれがどれだけ悪わるいのかという点てんについては、はっきりと語かたれない面めんがある。
ただ、白黒しろくろしっかりつけた人間にんげんは誰だれだったのか、個人こじん的てきな愛情あいじょうはどこまで通用つうようするのか、という最もっとも大切たいせつなところは、ミステリー調ちょうの本ほん作さくの最後さいごを見みて、初はじめてわかる。
「98%」という相性あいしょうのゆくえ(絆きずな)がとにかく気きになる作つくりとなっており、また、全体ぜんたい的てきに「人間味にんげんみ」が溢あふれているストーリーから目めが離はなせなかった。