ヘルドッグス : 特集とくしゅう

【極限きょくげんの偏愛へんあいを込こめて】ハマりすぎておかしくなる!!
私わたしたちに「ヘルドッグス」をプレゼンさせてくれ！
Vol.3:「好すきなシーンだらけ！人生じんせい変かえるほどの熱気ねっき」

“危険きけんすぎる”映画えいが「ヘルドッグス」（岡田おかだ准じゅん一いち＆坂口さかぐち健太郎けんたろうが共演きょうえん、原田はらだ眞人まさとが監督かんとく）が、9月16日にちから公開こうかいされる。

本ほん作さくの魅力みりょくにハマりにハマり全力ぜんりょくで推おしていくと決きめた映画えいが.comでは、異例いれいとなる5週しゅう連続れんぞくで特集とくしゅう記事きじを展開てんかい中ちゅう。本ほん作さくを偏愛へんあいして変へんになってしまった人ひとに、週しゅう替かわりで「どこがどう良よかったのか」を激烈げきれつにプレゼンしてもらっている。

第だい3週しゅうとなる今回こんかいは、映画えいが.com編集へんしゅう部ぶの尾崎おざき秋彦あきひこが担当たんとう。普段ふだんは多おおくの人ひとが話題わだいにする注目ちゅうもく作さくを中心ちゅうしんに映画えいが館かんで鑑賞かんしょうする、どこにでもいる“普通ふつうの映画えいがファン”という彼かれが、「ヘルドッグス」のどこにハマったのか？

それは、シーンひとつひとつの“魔力まりょく”だった――。

気きが狂くるうほどの熱ねつ波はだった。油断ゆだんしているとこの映画えいがに噛かみ殺ころされる、と思おもった。

まさか映画えいがを観みているだけの自分じぶんが、画面がめんのなかの狂犬きょうけんたちが命いのちを取とり合あうバトルロワイアルに巻まき込こまれるとは思おもっていなかっただけに、震撼しんかんしながらも「なんて面白おもしろい映画えいがなんだ」と叫さけび出だしたい気分きぶんに陥おちいった。

途方とほうもない魔力まりょくを持もつこの映画えいがの源泉げんせんは、いったい何なになのだろうか？　考かんがえるに、シーンひとつひとつの“普通ふつうじゃなさ”にあるように感かんじた。撮影さつえいの教科書きょうかしょには絶対ぜったいに載のせられないような、掟おきて破やぶりでアウトローなショットの数々かずかず。「あり得えねえ」、僕ぼくの心しんの室岡むろおか（坂口さかぐち健太郎けんたろう）がつぶやいたが、瞳ひとみは画面がめんに釘付くぎづけ、感情かんじょうはビックビクに興奮こうふんしきっていて……。

というわけで、今回こんかいは鑑賞かんしょうからしばらく経たった今いまも脳裏のうりに焼やき付ついて離はなれない“好すきなシーン”をいくつか抜粋ばっすいしてご紹介しょうかいしていく。作品さくひんの熱気ねっきはあなたの映画えいが人生じんせいをガラリと変かえてしまうかもしれない。ちょっとでもピンときたら、何なにがなんでも映画えいが館かんで鑑賞かんしょうすることをおすすめする。

オープニングからエンドロールまで片時かたときも目めを離はなせなかったが、オープニングシーンの衝撃しょうげきは本ほん作さくを語かたるうえで外はずせない。

大切たいせつな人ひとを殺ころされた主人公しゅじんこう（岡田おかだ准じゅん一いち）が、その犯人はんにんの男おとこを静しずかに、しかし激はげしく、そして圧倒的あっとうてきに殺ころすシークエンス。岡田おかだのファーストルックとなるが、もう存在そんざい感かんが尋常じんじょうじゃないのだ。

脂あぶらぎった髪かみは木きくずにまみれ、顔かおにはいつ剃すったかも知しれぬ無精ぶしょうひげ。腕うでに背せにタトゥーが刻きざまれ（腕うでには殺ころした人数にんずうも掘ほられている）、タンクトップやカーゴパンツには泥どろなのか血ちなのか、汚よごれがびっちりこびりついている。

ひと目めで「この男おとこは日常にちじょうが地獄じごくなのだ」とわかる風貌ふうぼう。修羅しゅらから戻もどってこられないことを雄弁ゆうべんに物語ものがたる眼光がんこう――。これまでもさまざまな役やくどころを演えんじてきた岡田おかだだが、彼かれ史上しじょう最もっとも獰猛どうもうでダーティーな姿すがたに震ふるえた。

かつて「セせーラらー服ふくと機関きかん銃じゅう」で、主演しゅえん・薬師丸やくしまるひろ子こが「制服せいふく姿すがたでブリッジしており、顔かおがスカーフで隠かくれる」という、アイドルらしからぬ衝撃しょうげき的てきな初はつ登場とうじょうシーンをかましたが、なぜかそのことを強つよく思おもい出だしながら岡田おかだを観みていた。今いま作さく「ヘルドッグス」の冒頭ぼうとうシーンは、最高さいこうという言葉ことばでは片付かたづかない“無上むじょうの138分ふん”の幕開まくあけに相応ふさわしい。

復讐ふくしゅうの鬼おにだった主人公しゅじんこうをとらえ、関東かんとう最大さいだいのヤクザ組織そしきをぶっ壊こわすための潜入せんにゅう捜査そうさ官かんへと仕立したてて上あげたのが、警視庁けいしちょうの裏うら捜査そうさエース・阿内おうちだ。演えんじたのは俳優はいゆう・酒向さこう芳かおる。原田はらだ監督かんとく作さく「検察けんさつ側がわの罪人ざいにん」でストーリーの中心ちゅうしんとなる犯人はんにん役やくに扮ふんし、映画えいがファンの心しんにポッカリと影かげを落おとした“怪かい優ゆう”である。

「検察けんさつ側がわの罪人ざいにん」を観みて以来いらい、ほかの作品さくひんで酒向さこうが出演しゅつえんしていると彼かればかりを目めで追おうようになっていたが、今いま作さく「ヘルドッグス」でもとても良よかった。ほとんど妖怪ようかい（褒ほめてます）なのだ。街頭がいとうの光ひかりの届とどかぬ闇やみからぬっと出でてくるみたいな、例たとえば威厳いげんに満みちた“ぬらりひょん”みたいな……。

セリフ回せりふまわしも不気味ぶきみで、しゃがれ声ごえで息継いきつぎなしにしゃべる、しゃべる、しゃべる！　反論はんろんを許ゆるさぬ捲まくし立たてに、有無うむをいわさぬ言外げんがいのすごみも相あいまって、「これは従したがわざるを得えない」と奇妙きみょうかつ巨大きょだいな力ちからが岡田おかだ演えんじる兼けん高だかに振ふり下おろされていく。もしも自分じぶんがこの男おとこの部下ぶかだったら、と想像そうぞうした2秒びょう後ごには、僕ぼくの胃いは蜂はちの巣すになっていた。

岡田おかだ准じゅん一いちや坂口さかぐち健太郎けんたろうらに目めが行いきがちだが、この男おとこに注目ちゅうもくしてこそ「ヘルドッグス」。酒向さこうの出演しゅつえんシーン全部ぜんぶ良よい。そう断言だんげんできるくらい、個人こじん的てきにどハマりさせていただいた。

本ほん作さくの最さい凶きょう最悪さいあくのボス・十朱とあけに扮ふんしたMIYAVIにも、やはり強烈きょうれつなシーンが待まっていた。もしかしたら、本ほん作さくのなかで最もっとも好すきな場面ばめんかもしれない。

兼けん高だかと室岡むろおかが、十朱とあけの個室こしつ（一般いっぱん企業きぎょうなら社長しゃちょう室しつにあたる場所ばしょ）へ入はいるシークエンス。十朱とあけは穏おだやかかつ神秘しんぴ的てきな口くちぶりでしゃべっているが、突然とつぜん、バー・カウンターに置おかれた高価こうかそうなボトル目めがけハイキックを繰くり出だすのだ。

え、ハイキック？　本当ほんとうに、なんの前触まえぶれもなく、唐突とうとつにハイキック。爆裂ばくれつするボトル。その模様もようがスローモーションで映うつし出だされ、刹那せつな、僕ぼくの脳のう内ないには「急きゅうに!?」「なんで？」と混乱こんらんが駆かけ巡めぐる。マジでなんでハイキックしたの？　しかしそんな疑問ぎもんも、MIYAVIのピンと伸のびた脚あしとシルエットの美うつくしさを観みてどうでもよくなっていく。美うつくしいからそれでよし。でもマジでなんでハイキックしたの？

そして予告よこくなしの美よし・暴力ぼうりょく的てきシーンの直後ちょくご、もっと素晴すばらしい瞬間しゅんかん（と僕ぼくは思おもう）が待まっている。個室こしつから退出たいしゅつした兼けん高だかが、ちらりと部屋へやのなかに目めを向むける……と、ここから先さきはぜひご自身じしんの目めで確たしかめてほしい。特とくに派手はでな何なにかが起おきているわけではないが、十朱とあけの意外いがいな行動こうどうが強つよく、強つよく印象いんしょうに残のこるはずだ。

ややネタバレになるため詳細しょうさいには書かけないが、ほかに好すきなシーンをいくつか簡単かんたんに記載きさいしておこう。ひとつでも気きになるものがあったら、今いますぐ鑑賞かんしょうチケットを手配てはいしてくれ。

・坂口さかぐち健太郎けんたろうの部屋へやには…ピカピカ光ひかる神輿しんよが置おいてある。なんで？

・MIYAVI独自どくじの護衛ごえい試験しけん…まるで死刑しけい、あまりに唐突とうとつな選別せんべつ方法ほうほう

・岡田おかだ准じゅん一いち＆坂口さかぐち健太郎けんたろう vs 最さい恐おそれ女殺おんなごろし屋や…ヒリヒリ感かんがたまらねえ

・排泄はいせつ物ぶつを出だすときの音おとをモノマネして…絶体絶命ぜったいぜつめいの状況じょうきょうでやることじゃねえ

・それどんなあだ名な？　太ふとっちょヤクザ“お歯黒はぐろ”の遅おそすぎる足あし

・極道ごくどうの葬式そうしき…お坊ぼうさん、そうやって運はこぶんだ

もちろん、この記事きじで挙あげたのは全体ぜんたいのほんの一部いちぶ。全編ぜんぺん通つうじてバトルアクションも素晴すばらしいし、坂口さかぐち健太郎けんたろう演えんじる室岡むろおかも狂くるっていて極きわまっていたし、着物きものでリーゼントの女性じょせいがなんの説明せつめいもなくヤクザたちに溶とけ込こんでいるのも最高さいこうだし、さらに尾上おがみ右近うこん扮ふんする“謎なぞの男おとこ”の本当ほんとうに謎なぞの存在そんざい感かんも印象いんしょうに残のこるなどなど、良よかったところだけで三さん日にち三さん晩ばんは話はなせると思おもう。

以上いじょう、映画えいが.com編集へんしゅう部ぶ・尾崎おざきが偏愛へんあいする「ヘルドッグス」の好すきなシーンを紹介しょうかいさせてもらった。噛かみ殺ころされかねないほどのこの映画えいが、ぜひ観みてほしい。目めがバッキバキの室岡むろおかが「早はやく観かんに行いかねえとすごいことになるぞオイ」と脅おどしているのを想像そうぞうして、逸はぐれる気持きもちを抑おさえつつ、お近ちかくの映画えいが館かんへいざ行いってみよう。