ミア(ミシェル・アン )たち医学 いがく 生 せい グループは、卒論 そつろん を書 か くためアルツハイマー型 がた 認知 にんち 症 しょう と診断 しんだん された老女 ろうじょ のデボラ(ジル・ラーソン )とその娘 むすめ を取材 しゅざい することに。彼 かれ らは田舎町 いなかまち の人里 ひとざと 離 はな れた場所 ばしょ にある家 いえ で過 す ごす二人 ふたり のもとへと訪 おとず れ、日々 ひび の姿 すがた をカメラに収 おさ めていく。だが次第 しだい にデボラに異変 いへん が起 お き始 はじ める。とつぜん人 ひと が変 か わったように狂暴 きょうぼう 化 か したり、奇妙 きみょう なことを話 はな すなどの奇行 きこう を繰 く り返 かえ すようになったのだ。それだけなら病気 びょうき の進行 しんこう によるものかと思 おも うが、やがてアルツハイマーでは説明 せつめい のつかないような恐 おそれ るべき現象 げんしょう が発生 はっせい する。果 は たして彼女 かのじょ は本当 ほんとう に認知 にんち 症 しょう なのか。それとも、超 ちょう 常 つね 的 てき な何 なに かに蝕 むしば まれているのか……。
人気 にんき シリーズのフィナーレを飾 かざ る「インシディアス 最終 さいしゅう 章 あきら 」や、デスゲームをカジュアルなノリで描 えが いた「エスケープ・ルーム 」シリーズなど、立 た て続 つづ けにスマッシュヒットを飛 と ばす新鋭 しんえい ホラー監督 かんとく アダム・ロビテル が2014年 ねん に手 て がけたファウンドフッテージ系 けい のホラー映画 えいが である。認知 にんち 症 しょう をホラーに絡 から めた作品 さくひん では、今年 ことし 公開 こうかい された「レリック 遺物 いぶつ 」が記憶 きおく に新 あたら しい。ホラーではないが認知 にんち 症 しょう による記憶 きおく の混濁 こんだく をスリラー風 ふう に描 えが いた「ファーザー 」もアンソニー・ホプキンス の熱演 ねつえん もあり大 おお いに話題 わだい となった。本 ほん 作 さく はそれらの先駆 さきが けとも言 い える作品 さくひん だ。
© 2014 Taking Film Production, LLC. All Rights Reserved. 序盤 じょばん から中盤 ちゅうばん までは、認知 にんち 症 しょう に蝕 むしば まれる女性 じょせい とその周 まわ りの人 ひと たちの姿 すがた が丁寧 ていねい に描 えが かれる。ここは、そのまま医療 いりょう ドキュメンタリーにできそうなクオリティだ。そこから次第 しだい に常軌 じょうき を逸 いっ した出来事 できごと が起 お きていくのだが、病気 びょうき か?それとも……と、すぐにはどっちに転 ころ ぶか分 わ からない作 つく りが恐怖 きょうふ を倍増 ばいぞう させている。日常 にちじょう と非 ひ 日常 にちじょう の織 お り交 ま ぜ具合 ぐあい がとにかく絶妙 ぜつみょう なのだ。そのため、突飛 とっぴ な怪 かい 現象 げんしょう が起 お きても生々 なまなま しさやリアリティが損 そこ なわれることがない。何 なに も起 お きてなくても不穏 ふおん だし、何 なに か起 お きたらちゃんと怖 こわ い。一見 いっけん 当 あ たり前 まえ に思 おも えるが、これが出来 でき ている作品 さくひん は実 じつ は少 すく ない。実在 じつざい の病気 びょうき とホラー要素 ようそ を両立 りょうりつ させた脚本 きゃくほん を完成 かんせい させるまでには2年 ねん もかかったらしいが、それも納得 なっとく の仕上 しあ がりだ。
脚本 きゃくほん だけでなく、デボラ役 やく のジル・ラーソン による演技 えんぎ も素晴 すば らしい。ファウンドフッテージ系 けい の作品 さくひん では、いかに嘘 うそ くさくない演技 えんぎ をするかが重要 じゅうよう だ。下手 へた に劇映画 げきえいが 的 てき な大仰 おおぎょう な演技 えんぎ をすると一気 いっき に観客 かんきゃく がしらけてしまうし、かといって棒読 ぼうよ みも違 ちが う。普通 ふつう の映画 えいが とは別 べつ ベクトルで高度 こうど な技術 ぎじゅつ が求 もと められる。だが、彼女 かのじょ は観客 かんきゃく に違和感 いわかん を抱 いだ かせず、取材 しゅざい 映像 えいぞう という体裁 ていさい の中 なか で、認知 にんち 症 しょう orデビル状態 じょうたい の老女 ろうじょ という無茶苦茶 むちゃくちゃ なキャラクターを自然 しぜん に演 えん じ切 き っているのだ。彼女 かのじょ のおかげで、こちらもスムーズにカメラの向 む こうの展開 てんかい に没入 ぼつにゅう することができる。謎 なぞ の行動 こうどう を起 お こす背景 はいけい が徐々 じょじょ に明 あき らかになるにつれ、また新 あら たな一 いち 面 めん が見 み えてくる複雑 ふくざつ なキャラクター像 ぞう を完璧 かんぺき に成立 せいりつ させている。個人 こじん 的 てき には、ジルにアカデミー賞 しょう をあげたいくらいだ。これ、「ファーザー 」のアンソニー・ホプキンス に匹敵 ひってき する熱演 ねつえん だと思 おも いますよ。
© 2014 Taking Film Production, LLC. All Rights Reserved. 肝心 かんじん の主観 しゅかん 映像 えいぞう を活 い かした恐怖 きょうふ 描写 びょうしゃ についても触 ふ れておきたい。これもかなり冴 さ えている。ジェームズ・ワン &リー・ワネル という偉大 いだい 過 す ぎるホラー神 かみ たちからバトンを引継 ひきつ ぎ、見事 みごと にインシディアスの物語 ものがたり をゴールに導 みちび いたアダム・ロビテル の才能 さいのう は、本 ほん 作 さく で既 すで に十分 じゅうぶん に発揮 はっき されている。見 み どころは多 おお いが、やはりハイライトは終盤 しゅうばん の、舞台 ぶたい が洞窟 どうくつ に移 うつ ったところで出 で てくるあのビジュアルだろう。手持 ても ちで揺 ゆ れるカメラが少 すこ しずつ移動 いどう していくと、遠 とお くに異形 いぎょう の影 かげ が映 うつ る。それにズームアップすると、とんでもないものが姿 すがた を現 あらわ す!! ここの映像 えいぞう は本当 ほんとう に禍々 まがまが しい。さりげない映 うつ し方 かた も相 あい まって、本当 ほんとう に見 み てはいけないものが目 め の前 まえ にある感覚 かんかく が味 あじ わえる。この場面 ばめん だけやたら有名 ゆうめい なので、本編 ほんぺん は未見 みけん だけどここだけ見 み たことあるという方 ほう も多 おお いはず。通 とお して観 み るとまた違 ちが う味 あじ わいがあるので、是非 ぜひ この機会 きかい に全 すべ て目 め に焼 や き付 つ けてほしい。
© 2014 Taking Film Production, LLC. All Rights Reserved. アダム・ロビテル 監督 かんとく は、本 ほん 作 さく を認知 にんち 症 しょう への恐 おそ れがきっかけで作 つく り上 あ げたと語 かた っている。認知 にんち 症 しょう と正面 しょうめん から向 む き合 あ い、それをホラーの形 かたち に昇華 しょうか した恐 おそ ろしくも悲 かな しい物語 ものがたり は、有象無象 うぞうむぞう のファウンドフッテージホラーとは一線 いっせん を画 かく すものとなっている。一見 いっけん の価値 かち がある逸品 いっぴん だ。