観光客がうらやましい。ソウル中心部のホテルに泊まり、王宮を巡って歴史を感じ、タワーに上っては市街地の壮観な眺めを堪能する。おなかが鳴れば肉や海の幸を韓国焼酎でぎゅっと流し込み、初秋の空に酔いしれる。
一方、現地で暮らせば異国情緒は薄れて感じてしまう。窓から見える王宮は景観の1つに過ぎず、韓国焼酎も健康意識から絶って久しい。日常の生活がこちらにある限り、旅行で来た時のような高ぶる気持ちはよみがえりそうもない。
そこに訪れた日本の地元4人組。気心知れた同級生と一緒にいれば、ノスタルジーに浸れるせいか昔の自分に戻してくれる。定番の観光コースから屋台にカラオケ、シメでコンビニの即席麺。気が付けば、友人よりも楽しむ自分が……。
ソウルを非日常の世界に引き込む郷愁の力。深酒も「旅先」の思い出として深く刻まれた。(公)