フィリピンのマニラ首都圏と近郊都市を結ぶ南北通勤鉄道事業で、北側に位置するブラカン州のバラグタス駅の構造物が完成した。同事業で駅舎が完成するのは初めて。三井住友建設が事業費約50億円で請け負った。日本政府の円借款などで進む大型インフラ整備事業には日系企業が複数参画しており、日本型の公共交通網による利便性の向上が期待される。
三井住友建設が受注した南北通勤鉄道の駅舎の構造物が完成した=18日、ブラカン州(NNA撮影)
運輸省が18日、報道陣にバラグタス駅を公開した。バウティスタ運輸相は視察後の記者会見で「南北通勤鉄道事業で三井住友建設の受注区間が最も進んでいる。事業全体では現時点で約40%が完成した」と話した。
バウティスタ氏は、全35駅が2026年始めまでに完成する予定だが、部分開通は想定していた26年末から28年3月ごろにずれ込むとの見解を示した。用地取得や配電のトラブルが発生しているという。
バラグタス駅の工事は約94%が完了している。ほかの区間でも駅舎建設は進んでいるが、構造物が完成した唯一の駅舎になる。今後は日立製作所のグループ会社日立レールが通信システムや改札機を含む機器を納入し、25年3月までに完成する見通し。
三井住友建設は19年に南北通勤鉄道事業の契約パッケージ「CP―02」を約540億円で請け負った。対象区間は約14キロメートルで、バラグタス駅を含むブラカン州の3駅舎と既に完成している高架橋の建設が含まれる。
運輸省は18日に首都圏バレンズエラ市の車両基地も公開した。用地問題により建設が白紙に戻った2駅では土地の引き渡しが完了し、再入札の準備を進めている。当初これらの駅を受注していて、現在は同区間の4駅や車両基地の建設を担う大成建設の関係者は「本来請け負う計画だったので、条件が合えば応札する」と話した。
南北通勤鉄道の全長は147キロで、北側のタルラック州の新都市「ニュー・クラーク・シティー(NCC)」から首都圏を抜けて南側のラグナ州カランバまでを接続する。北側を中心に工事が進んでいる。
総事業費は約8,740億ペソ(約2兆3,600億円)に上り、国際協力機構(JICA)とアジア開発銀行(ADB)が融資している。全線開通は29年になる見込み。輸送能力は1日当たり80万人で、始発駅から終点までの移動時間は現在の半分の2時間未満に縮まる。
日本政府の円借款事業ではほかに、首都圏を南北に縦断する国内初の地下鉄事業も進んでいる。自家用車やバスによる移動が主流で通勤時間帯の交通渋滞が慢性化している。
フィリピン政府は首都圏と周辺州の大量旅客輸送システムを強化して市民の移動ハードルを下げることを目指している。日系企業による鉄道インフラの導入により、通勤などで移動手段が増えて生活水準が改善されることが期待される。
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