【スズキ アルト 3600km試乗しじょう】乗のり心地ごこちに全ぜん振ふりした、軽けいベーシックの新しん境地きょうち［前編ぜんぺん］

スズキの軽けいベーシックカー『アルト』で3600kmあまりツーリングする機会きかいがあったので、インプレッションをお届とどけする。

アルトの第だい1世代せだいが登場とうじょうしたのは1979年ねん。スターティングプライス47万まん円えんという低てい価格かかく、さらに4ナンバーの商用しょうよう車しゃ仕様しようで軽自動車けいじどうしゃ税ぜいも安やすいという徹底的てっていてきなバジェット志向しこうの商品しょうひん性せいでシティコミューター需要じゅようをごっそり掘ほり起おこした。その後ご、5ナンバーの乗用じょうようモデル主体しゅたいにシフトしながら庶民しょみんの足あしとして発展はってんしたが、1993年ねんにスズキがトールワゴン『ワゴンR』を登場とうじょうさせたのを機きに軽けい乗用車じょうようしゃの主流しゅりゅうはトールワゴン、さらに全高ぜんこう1700mm以上いじょうのスーパーハイトワゴンに移うつり、アルトは次第しだいに傍流ぼうりゅうブランドになっていった。

2021年ねんに登場とうじょうした現行げんこうアルトは第だい9世代せだい。アルトの源流げんりゅうであった4ナンバー商用しょうよう車しゃ仕様しようはラインナップされず、初はじめて完全かんぜんな乗用車じょうようしゃ専用せんようモデルとなった。全ぜん高こうを第だい8世代せだいから5cm高たかめて居住きょじゅう空間くうかんを拡大かくだいする一方いっぽう、ターボエンジンを搭載とうさいするホットモデルを廃止はいしして自然しぜん吸気きゅうきのみとするなどグレード構成こうせいも大おおきく見直みなおされた。

パワートレインにはマイルドハイブリッドとそうでないものがあるが、非ひハイブリッドも回生かいせい電力でんりょくを蓄たくわえるリチウムイオン電池でんちパックを標準ひょうじゅん装備そうびするなど低てい燃費ねんぴ志向しこうが強つよい。価格かかくは最さい上位じょういグレード、FWD（前輪ぜんりん駆動くどう）のオプション非ひ装着そうちゃく車しゃで125万まん9500円えんと、お洒落しゃれ系けいモデルの『ラパン』のスタート価格かかくとちょうどクロスオーバーする設定せっていである。

ロードテスト車しゃはその最さい上位じょういグレード「HYBRID X」のFWD。アルトはダイハツ『ミライース』『ミラトコット』などと並ならぶ超ちょうシンプルなモデルだが、HYBRID Xはシリーズ中ちゅう唯一ゆいいつ運転うんてん席せきシートリフターとチルトステアリングの両方りょうほうを装備そうびする。有償ゆうしょうオプションはルーフ2トーンカラー塗装とそう、ディスプレイオーディオ、フロアマット、ETC2.0車載しゃさい器き、ドライブレコーダーなど。

ドライブルートは東京とうきょう～鹿児島かごしま周遊しゅうゆうで、総そう走行そうこう距離きょりは3624.8km。往路おうろは瀬戸内せとうち、復路ふくろは日本海にほんかいルートを走行そうこう。おおまかな道路どうろ種別しゅべつは市街地しがいち2、制限せいげん速度そくど70km/h以下いかの郊外こうがい路ろ6、制限せいげん速度そくど80km/h以上いじょうの郊外こうがい路ろおよび高速こうそく道路どうろ2。加くわえて短みじかい山岳さんがく路ろといったところ。本州ほんしゅう内ないは終始しゅうし1名めい乗車じょうしゃ、九州きゅうしゅう内ないでは1～4名めい乗車じょうしゃ。エアコン常時じょうじAUTO。

レビューの前まえにアルトの長所ちょうしょ、短所たんしょを5つずつ挙あげてみる。

■長所ちょうしょ
1. 市販しはん車しゃトップランナー級きゅうの燃費ねんぴをシンプルな工夫くふうで簡単かんたんに出だせる。
2. 旧型きゅうがたから一変いっぺんしたヌルリと快適かいてきな乗のり心地ごこち。
3. 前ぜん席せき、後こう席せきとも乗降じょうこう性せい、居住きょじゅう性せいに優すぐれる。
4. シンプルすぎて車内しゃない、車外しゃがいとも清掃せいそうがメチャクチャ楽らく。
5. 軽かるいおかげで意外いがいに速はやい。

■短所たんしょ
1. 居住きょじゅう区くにスペースを食くわれて荷に室しつが狭せまい。
2. 室内しつないの収納しゅうのうスペースが不足ふそく気味ぎみ。
3. 後こう席せきの背せもたれが分割ぶんかつ可か倒たおせ式しきでなく、2名めいor4名めい乗車じょうしゃの二者択一にしゃたくいつになる。
4. 各部かくぶのタッチはもちろん質素しっそ。
5. ADAS（運転うんてん支援しえんシステム）の類るいは用意よういされない。
◆本物ほんものの「アフォーダブル」を名乗なのる資格しかく
オンライン発表はっぴょう会かいで鈴木すずき俊宏としひろ・スズキ社長しゃちょうが開発かいはつ意図いとを「下駄げたを極きわめる」という言葉ことばで表現ひょうげんした第だい9世代せだいアルト。実際じっさいにドライブしてみた印象いんしょうを一言ひとことで表現ひょうげんすると「これぞ本物ほんもののアフォーダブル（お手頃てごろ）」。

現代げんだいにおいてこれ以下いかは新車しんしゃの顧客こきゃくではないという最低さいてい価格かかく帯たいの商品しょうひんだが、そのバリューの高たかさはテストドライブ前まえの予想よそうをはるかに超こえるものがあった。コストを限界げんかいまで絞しぼりながらも設計せっけいは実じつに良心りょうしん的てきで、乗のり降おりしやすく、車内しゃないは明あかるく開放かいほう的てき。乗のり心地ごこちは大変たいへん気持きもちよいもので、車内しゃないは思おもいのほか静しずかか。近距離きんきょり用途ようとのクルマでありながら疲労ひろう感かんは小ちいさく、長距離ちょうきょり移動いどうもバッチリだ。そして燃費ねんぴは飛とびきりに優すぐれる。

アフォーダブルという言葉ことばに明確めいかくな定義ていぎがないため、最近さいきんではコストパフォーマンスが高たかいことをアフォーダブルと安易あんいにい換いかえるケースが多々たた見受みうけられる。これは自動車じどうしゃ業界ぎょうかいに限かぎった話はなしではなく、アパレルの世界せかいではアフォーダブル・ラグジュアリーなどというわけのわからない用語ようごまで生うみ出だされる始末しまつだ。

が、アフォーダブルを名乗なのるにはやはり価格かかくの安やすさが絶対ぜったい条件じょうけんとなると思おもう。高価こうかなストロングハイブリッドカーやBEV（バッテリー式しき電気でんき自動車じどうしゃ）に手てが出でないという人ひとを含ふくめ、誰だれもがこのクルマに乗のることによって低ていCO2、省しょう資源しげんを実践じっせんすることができ、誰だれもが気持きもちの良よい移動いどうを楽たのしむことができる。こういうモデルこそアフォーダブルを名乗なのる資格しかくがあるというものだろう。

アルトのある暮くらしは東京とうきょう～鹿児島かごしまの往復おうふくを含ふくめて2週間しゅうかんほどだったが、このバジェット価格かかくでこれだけの利便りべん性せいを提供ていきょうしてくれるのに何なんの不満ふまんがあろうかという気分きぶんだった。ロングランにおいては「頑張がんばってくれてありがとう」とクルマに言いいたくなるような乗のり心地ごこちの良よさが有あり難がたく感かんじられたし、鹿児島かごしまエリアでは乗降じょうこう性せいの良よさやキャビンの開放かいほう感かんの高たかさがモノを言いって、市街地しがいち走行そうこうから3～4名めい乗車じょうしゃでのプチ遠乗とおのりまで、何なんでも楽たのしくこなすことができた。もちろん高価こうかなクルマが持もつようなハイテク機能きのうはほとんどないし、性能せいのうも燃費ねんぴ以外いがいは劣おとる。そこをユーザーがカバーするのもまたアルトの楽たのしみのひとつに思おもえた。

日本にっぽんの貧困ひんこん化か、衰退すいたい化かといった話はなしをよく耳みみにするが、そうは言いってもまだまだ豊ゆたかであるため、アルトのようなバジェットカーは価格かかくが安やすいにもかかわらず傍流ぼうりゅうに甘あまんじている。が、クルマの価格かかくがどんどん高騰こうとうしていることを考かんがえると、こういうクルマの有難味ありがたみがふたたびクローズアップされる時代じだいが来くる可能かのう性せいは十分じゅうぶんにある。

クルマの価格かかくが上あがることへの対応たいおう策さくとしてやたらと喧伝けんでんされているもののひとつにカーシェアがあるが、家いえの近ちかくに拠点きょてんがあるとは限かぎらない、使つかいたいときに必かならず空あきがある保証ほしょうがないなど、カーシェアは決けっして万能ばんのうではない。クルマで24時じ間あいだ、自分じぶんが望のぞむ時ときに望のぞむところへ行いける、移動いどうの自由じゆうを担保たんぽする道具どうぐとしてみるならば、1台だいを占有せんゆうできる自己じこ所有しょゆうのほうが断然だんぜんいいに決きまっている。クルマがないこととアルトがあることの違ちがいは、アルトがあることとロールスロイスがあることの差さより1兆ちょう倍ばい大おおきいというのが筆者ひっしゃ個人こじんの考かんがえ。先行さきゆき不透明ふとうめいなこのご時世じせい、アルトのようなクルマがいついつまでも存在そんざいし続つづけてほしいものだと心底しんそこ思おもった次第しだいだった。

◆乗のり心地ごこちに全ぜん振ふりした、軽けいベーシックの新しん境地きょうち
要素ようそ別べつに詳くわしくみていこう。まずは走はしりや乗のり心地ごこちを決定けっていづけるシャシーから。プラットフォームは大幅おおはば軽量けいりょう化かを果はたした第だい8世代せだいのキャリーオーバーだが、シャシーチューニングのポリシーは180度ど転換てんかんと言いってもいいほどに変かわった。

旧型きゅうがたはノーマル系けいのグレードでもサスペンションのロール剛性ごうせいが高たかく、ワインディングロードではステアリングを切きると超ちょう軽量けいりょう車体しゃたいが横よこっ飛とびするかのように反応はんのうする痛快つうかいさがあった。第だい9世代せだいはそれとは真ま逆ぎゃくでサスペンションは超ちょうソフト。車くるま重じゅうは依然いぜんとして軽かるいがハンドリングはダルで、操縦そうじゅう性せいを積極せっきょく的てきに楽たのしめるような要素ようそは雲散霧消うんさんむしょうしたが、そのかわりに第だい8世代せだいの弱点じゃくてんであった乗のり心地ごこちは劇的げきてきに改善かいぜん。綺麗きれいな道みちから荒あれた道みちまでぬるりとした気持きもちの良よい乗のり心地ごこちと良好りょうこうな直進ちょくしん感かんが維持いじされるようになった。

どちらを好このましく思おもうかは人ひとによるだろうが、筆者ひっしゃは乗のり心地ごこちに全ぜん振ふりした第だい9世代せだいこそ軽けいベーシックの新しん境地きょうちであるように思おもった。たしかに第だい8世代せだいは楽たのしかったが、レスポンシブなハンドリングは瞬間しゅんかん芸げいのようなもの。車くるま重じゅう700kg強きょうという軽量けいりょうボディでここまでゆるりとした乗のり心地ごこちを実現じつげんしたことはそれ自体じたいが感動かんどうポイントだった。

柔やわらかいサスペンションと一いち口くちに言いってもテイストはさまざま。第だい9世代せだいアルトのそれは、言いうなれば弱よわいダンピングが着実ちゃくじつに効きいているという乗のり味あじである。たとえば荒あれた国道こくどうなどで深ふかめのアンジュレーション（路面ろめんのうねり）を踏ふんだり片かた輪わが轍わだちを踏ふんだりしたとしよう。サスペンションが柔やわらかいため車体しゃたいの揺ゆら動どうは大おおきめに出でる。普通ふつうならそれがボヨンボヨンとした動うごきにつながったりするのだが、アルトは車体しゃたいの軽かるさが寄与きよしているのか、ショックアブゾーバーの減衰げんすい力りょくが高たかいわけでもないのにその収おさまりが早はやい。無理むりに揺ゆれを止とめようとしているわけではないので揺ゆれのスピードも遅おそい。結果けっか、体からだへのGのかかりが穏おだやかで、大変たいへんナチュラルに感かんじられた。

揺ゆれ幅はばは大おおきいが揺ゆれのスピードは遅おそいというこの乗のり味あじは自動車じどうしゃ工学こうがくが今いまほど進化しんかしていなかった1980年代ねんだいの欧州おうしゅう小型車こがたしゃ、それもスポーツタイプでない一般いっぱんグレードのクルマに似にている。過去かこの運転うんてん経験けいけんに照てらして乗のり味あじが似にていた例れいを挙あげると、筆者ひっしゃが初はじめて海外かいがい旅行りょこうに行いった時ときにレンタカーで乗のったシトロエン『AX』、第だい2世代せだいフォルクスワーゲン『ポロ』など。50代だい以上いじょうの人ひとにとっては一種いっしゅのノスタルジーを覚おぼえる乗のり味あじかもしれない。自動車じどうしゃ工学こうがくが成熟せいじゅくの域いきに達たっしつつある今日きょうの技術ぎじゅつを用もちい、コストの限界げんかいを突つき詰つめながら丁寧ていねいにセッティングを行おこなうとこういうテイストになるのかと、興味深きょうみぶかく思おもわれたりもした。

◆柔やわらかいサスと軽量けいりょうボディが活いきる、中ちゅう速そく域いきのクルーズ
そんな第だい9世代せだいがとりわけ得意とくいとしていたのは中ちゅう速そく域いきのクルーズ。ちょうど地方ちほうで町まちと町まちの間あいだを流ながれの良よい地方ちほう道どうやバイパスを通とおって移動いどうするようなシーンである。舗装ほそうの老朽ろうきゅう化かで路面ろめんがかなり荒あれているような箇所かしょでの振動しんどう吸収きゅうしゅうはなかなかのもので、引ひっかかり感かんの少すくないサスペンションの動うごきは本当ほんとうに好感こうかんが持もてた。アルトはサスペンションストロークが小ちいさいので、バンピングが大おおきくなるとその上下動じょうげどう幅はばを使つかい切きり気味ぎみになるのだが、底そこ付つきの衝撃しょうげきを吸収きゅうしゅうするバンプストップラバーの硬度こうどが適切てきせつなのか、ドシンと衝撃しょうげきを食くらうような感かんじではなかった。このへんの作つくり込こみも大変たいへん上手うまいと思おもわせるものがあった。

柔やわらかいサスペンションの副次的ふくじてき効果こうかとしては、ボディシェルにかかるストレスが小ちいさいということがあった。サスペンションのバネ定数ていすうが高たかいとコーナリングGや前後ぜんご左右さゆうの揺ゆれが車体しゃたい側がわに急激きゅうげきにかかるのでボディをそれに耐たえられるよう強化きょうかしないと乗のり味あじが悪わるくなる。アルトはベーシックカーであるにもかかわらず超ちょうハイテンシル鋼板こうはんを多用たようするなどかなり頑張がんばった作つくりになっているが、それでも超ちょう軽量けいりょうを保たもったままの高こう剛性ごうせい化かには限界げんかいがある。サスペンションがやわやわでGのかかりが穏おだやかなアルトは、ボディ強度きょうどに過度かどに依存いぞんすることなくガタつき、ビリつきを抑制よくせいすることに成功せいこうしていた。

柔やわらかいサスペンションのネガティブな部分ぶぶんは操縦そうじゅう安定あんてい性せいに集中しゅうちゅうしていた。減衰げんすい力りょくが低ひくいながらも揺ゆら動どうをしっかり止とめていたショックアブゾーバーも、コーナリングの荷重かじゅうの変化へんかのような大おおきな力ちからになると止とめる力ちからの弱よわさがモロに出でてくる。コーナリング姿勢しせいの安定あんてい性せいは正直しょうじき低ひくく、軽量けいりょう車体しゃたいであるにもかかわらず山岳さんがく路ろを小気味こきみよく走はしれるという感覚かんかくはなかった。そこはクルーズフィールの良よさとトレードオフになったと前向まえむきに考かんがえて、山道さんどうはのんびり走はしるが吉きちであろう。なお、タイヤは155/65R14サイズと車くるま重じゅうに対たいして十分じゅうぶんな能力のうりょくがあるので、絶対ぜったい性能せいのうに過度かどの不安ふあんを抱いだく必要ひつようはない。

バイパスより速はやい高速こうそく道路どうろの場合ばあい、クルーズフィールは速度そくどレンジ次第しだいとなる。新東名しんとうな120km/h区間くかんを一番いちばん速はやい流ながれに乗のって走はしらせてみたときはさすがに少々しょうしょうクルマに無理むりをさせているという感かんがあったが、新東名しんとうなに比くらべて空そら力りょく特性とくせいの影響えいきょうが小ちいさくなる山陽さんよう道どうや九州きゅうしゅう道どうの100km/h区間くかんになると結構けっこう良好りょうこう。アンジュレーション通過つうか時じに少々しょうしょう大おおきくバウンシングしても針路しんろの乱みだれが小ちいさく、バイパスクルーズと同様どうように直進ちょくしん性せいの良よさが運転うんてんを楽らくなものにした。もっとも快適かいてき性せいは80km/h前後ぜんごまで落おとしたほうが断然だんぜん高たかく、のんびり走はしれる山陰さんいん道どうや南みなみ九州きゅうしゅう道どうのような道路どうろへの適合てきごう性せいが最もっとも高たかいように思おもえた。

タウンライドは速度そくどが低ひくく、クルマの性能せいのう差さが出でにくいのだが、ハーシュネス（突つき上あげ感かん、ザラザラ感かん）カットがそこそこ上手うまくできているため、鹿児島かごしま市電しでんの軌条きじょうなどきつめの段差だんさを乗のり越こえる時ときも大おおきなストレスを感かんじずにすむだけの快適かいてき性せいは確保かくほされていた。

もう一いち点てん、市街地しがいちで良よかったのは小回こまわり性能せいのう。最小さいしょう回転かいてん半径はんけいは旧型きゅうがたより20cmプラスの4.4mと少々しょうしょう悪化あっかしたが、ライバル比較ひかくでは依然いぜんとしてトップランナー級きゅうである。アルトはボンネットの左右さゆうにヘッドランプに続つづくよう尾根おねが盛もり上あがっているようなデザインを持もっているためボンネット先端せんたんの位置いちをことのほか把握はあくしやすく、その小回こまわり性せいをリアルフィールドで目めいっぱい使つかえるというのも美点びてんだった。

◆先進せんしん装備そうび、テレマティクスは弱点じゃくてんか
アルトはADAS（先進せんしん運転うんてん支援しえんシステム）をオプションでも装着そうちゃくすることができず、この点てんは最もっとも弱よわいところのひとつ。前車ぜんしゃ追従ついしょうクルーズコントロールやステアリング介入かいにゅう型がたの車線しゃせん維持いじアシストがないため、ロングツーリング中ちゅうも加減かげん速そく、ステアリング保持ほじを100％ドライバーが自力じりきでやる必要ひつようがある。

筆者ひっしゃはそんなものが存在そんざいしなかった時代じだいが長ながかった世代せだいなので、それなら100％自力じりきで運転うんてんすればいいだろうという程度ていどにしか思おもわないが、ADASがあるのが半なかば当あたり前まえという若年じゃくねん層そうには不安ふあん材料ざいりょうとなるかもしれない。なお衝突しょうとつ軽減けいげんブレーキはステレオカメラタイプのものが装備そうびされている。夜間やかんに歩行ほこう者しゃを検出けんしゅつ可能かのうだが、自転車じてんしゃには未み対応たいおう。事故じこ時じの緊急きんきゅう通報つうほうシステムは装備そうびされていない。

テレマティクスについては今日きょう流行はやりのコネクティビティモジュールは非ひ搭載とうさい。ロードテスト車しゃはカーナビも未み装備そうびで、代かわりにApple CarPlay、AndroidAutoに対応たいおうしたディスプレイオーディオが装備そうびされていた。筆者ひっしゃは実じつはディスプレイオーディオで十分じゅうぶんと考かんがえるクチで、価格かかくを抑おさえるという観点かんてんでこの仕様しようにむしろ好感こうかんを抱だいた。

GoogleMapはルートガイダンスの精度せいどがカーナビ専用せんよう機きに劣おとるという声こえが多おおく、事実じじつその通とおりだと思おもう。が、日本にっぽんでもヨーロッパでもアメリカでも紙かみの地図ちずを頼たよりにドライブする時代じだいが長ながかった身みとしては、地図ちず上じょうのどこに自分じぶんがいるかがGPSでわかるというだけで上等じょうとうすぎる。ガイダンスが間違まちがっていたとしても、リアルワールドの状況じょうきょうに合あわせてそこだけ自分じぶんの判断はんだんで運転うんてんすれば何なんの問題もんだいもない。カーナビ専用せんよう機きも一応いちおう用意よういされているので、完全かんぜんなフールプルーフでなければイヤだというユーザーはそれを装備そうびすればいいだろう。

後編こうへんではパワートレイン、居住きょじゅう性せい、ユーティリティなどについて触ふれようと思おもう。