【スズキ スペーシアカスタム 新型しんがた試乗しじょう】軽けいハイトワゴンでは一いち歩ほ抜ぬきんでた存在そんざいになった…諸星もろぼし陽一よういち

「ジャパンモビリティショー2023」で多おおくの観客かんきゃくから脚光きゃっこうを浴あびたスズキの新型しんがた軽自動車けいじどうしゃ『スペーシア』。そのなかでもパワフルなエンジンを搭載とうさいする「スペーシアカスタム XSターボ」に試乗しじょうした。

スペーシアはもともと『パレット』というネーミングで2008年ねんに発売はつばいされたモデルがルーツだ。パレットの登場とうじょうにはダイハツ『タント』の存在そんざいを無視むしすることはできない。タントの対抗たいこう馬ばとしてパレットを登場とうじょうさせたが、タント人気にんきを追撃ついげきすることは難むずかしかった。

2013年ねんにパレットはスペーシアと車くるま名めいを変更へんこうしてデビュー、ふたたびタント追撃ついげきにかかることとなった。パレットという車くるま名めいは親したしみやすさはあったのだが、広ひろさを連想れんそうさせるには至いたらなかったということでの車くるま名めい変更へんこうであったという。2023年ねんのジャパンモビリティショーにコンセプトカーとして登場とうじょうしたスペーシアは、11月に正式せいしきに市場いちば導入どうにゅう。スペーシアの名なになって3代目だいめとなるモデルである。

◆群ぐんを抜ぬいてしっかり感かんが漂ただよっている
クルマに乗のり込こみインパネのATセレクターを引ひき下さげDレンジを選えらぶ。最近さいきんのクルマはわかりにくいATセレクターを採用さいようするモデルが多おおいが、スペーシアのセレクターは単純たんじゅん明快めいかいにして確実かくじつ。セレクトレバーの位置いちが視界しかいに入はいるだけでなく、左手ひだりてを添そえたときに直感ちょっかん的てきにどのレンジを選えらんでいるか分わかりやすい。これだけでも誤作動ごさどうは減へらせるはずだ。

アクセルを踏ふみ込こむと軽自動車けいじどうしゃとは思おもえない力強ちからづよい加速かそくを得えられる。なによりも軽自動車けいじどうしゃにありがちなクルマ全体ぜんたいから放はなたれる薄うすっぺらさがないのである。こうした傾向けいこうは軽自動車けいじどうしゃのフルモデルチェンジごとに感かんじるのだが、今回こんかいのスペーシアは群ぐんを抜ぬいてしっかり感かんが漂ただよっている。

そのままアクセルを踏ふみ込こんでいくと、トルクに厚あつみを感かんじながらの加速かそくを味あじわえる。さすがにアクセルをべた踏ふみして回転かいてん数すうが上あがると、660ccのエンジンは頑張がんばっている感かんを出だすが、アクセルの踏ふみ方かたをゆったりとそして床ゆかまで踏ふまないようにすればエンジンは余裕よゆうを感かんじさせてくれる。

今回こんかい、チャンスがあり箱根はこね新道しんどうを上のぼった。箱根はこね新道しんどうの上のぼりはかなりきつい勾配こうばいで、軽自動車けいじどうしゃにはきついセクションだがそれをものともしないのには驚おどろきさえ感かんじた。軽自動車けいじどうしゃに乗のってこれで十じゅう分ふんという感覚かんかくはよくあることだが、スペーシアカスタムの場合ばあいはこれで十じゅう二に分ふんであった。

高速こうそく道路どうろでは120km/h巡航じゅんこうもまったく問題もんだいはない。ACCの精度せいども高たかく、快適かいてきに高速こうそく移動いどうできる。フロントシートもしっかりとしていて、100km程度ていどの距離きょりであれば何なんの苦痛くつうもないだろう。ただし、それ以上いじょうの距離きょりとなるとシートの性能せいのうも影響えいきょうしてくることは多少たしょうなりとも予想よそうされる。

ハンドリングもしっかりとしていた。ステアリングの切きり始はじめからしっかりとクルマが向むきを変かえていき、適度てきどなロールを発生はっせいしながらコーナリングをこなす。全ぜん高こうが1785mmもあるのだから重心じゅうしんは高たかいはずだが、ロール時じの不安ふあん感かんもない。タイヤサイズが168/55R15とちょっとハイトが低ひくめのこともあり、段差だんさ乗のり越こえ時じの突つき上あげ感かんを感かんじることもあったが、実用じつよう上じょうは支障ししょうがないだろう。

◆使つかい勝手がっては「さすが」の一言ひとこと
使つかい勝手がっての面めんではさすがの一言ひとことだ。とくにリヤシートはよく工夫くふうされている。左右さゆうが独立どくりつしてスライド＆フォールディングするのはもちろん、クッションの前ぜん端はしを前まえに伸のばしてオットマンモードとしたり、前ぜん端はしを折おり返かえして荷物にもつの転落てんらくを防止ぼうしするようにするなどクルマが使つかわれるシチュエーションをしっかり考かんがえた作つくり込こみが行おこなわれている。直接ちょくせつのライバルとなるホンダの『N-BOX』のようにリヤシートクッションのチップアップはできないのが唯一ゆいいつ残念ざんねんな点てんだが、それ以外いがいで不満ふまんはない。

今回こんかいのフルモデルチェンジでADAS（自動じどうブレーキなどの先進せんしん運転うんてん支援しえんシステム）も進化しんか。従来じゅうらいのステレオカメラから単眼たんがんカメラ＆ミリ波はレーダーがセンサーとなった。短距離たんきょり部分ぶぶんはソナーが対応たいおうする。高速こうそく道路どうろでの追従ついしょう走行そうこうでの安定あんてい性せいも向上こうじょうしているが、それ以上いじょうに衝突しょうとつ軽減けいげんブレーキの性能せいのうも向上こうじょうしているとのことで、より安心あんしんしてクルマをドライブできる。

今いまのところ、軽けいハイトワゴンでは一いち歩ほ抜ぬきんでた印象いんしょうがあり、今後こんごのライバルはスペーシアをベンチマークに追従ついしょうすることとなるだろう。

■5つ星ほし評価ひょうか
パッケージング：★★★★★
インテリア／居住きょじゅう性せい：★★★★★
パワーソース：★★★★★
フットワーク：★★★★★
オススメ度ど：★★★★★

諸星もろぼし陽一よういち｜モータージャーナリスト
自動車じどうしゃ雑誌ざっしの編集へんしゅう部員ぶいんを経へて、23歳さいでフリーランスのジャーナリストとなる。20歳さい代だい後半こうはんからは、富士ふじフレッシュマンレースなどに7年間ねんかん参戦さんせん。サーキットでは写真しゃしん撮影さつえいも行おこなう、フォトジャーナリストとして活動かつどう中ちゅう。趣味しゅみは料理りょうり。