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個人消費「低迷」で景気は「後退局面」…政治判断で消費税10%をスキップできるか?(髙橋 洋一) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)
2014.09.01

個人こじん消費しょうひ低迷ていめい」で景気けいきは「後退こうたい局面きょくめん」…政治せいじ判断はんだん消費しょうひぜい10%をスキップできるか?

先週せんしゅうは〝石破いしばらん〟か、といろめきったが、結局けっきょく大山おおやま鳴動めいどうしてねずみいちひき……どころか、ねずみいちひきなかった。

政治せいじ側近そっきんがいろいろとかたるのは政治せいじ闘争とうそうつねであるが、おどろいたのは、石破いしば幹事かんじちょう本人ほんにんが8がつ25にちのラジオ番組ばんぐみで「首相しゅしょうと100%(かんがえが)一緒いっしょひと答弁とうべんするのが一番いちばんいい。『ちがう』とこたえたら国会こっかいまる」公言こうげんし、しかも幹事かんじちょう続投ぞくとう示唆しさしてしまったことだ。

ここまで本人ほんにんうからには、かなりの覚悟かくごがあったとおもうのだが、どうもその安倍あべ陣営じんえいによる反撃はんげきで、石破いしば本人ほんにんはあっさり撃退げきたいされてしまったようだ。29にちひる安倍あべ首相しゅしょうとの会談かいだん手打てうちだ。朝日新聞あさひしんぶんには、「石破いしば入閣にゅうかく受諾じゅだく、『つぎはあなた』が最後さいご」とまでかれてしまった。

禅譲ぜんじょうをほのめかされてつぶれていったひとはこれまでもおおい。優柔不断ゆうじゅうふだん印象いんしょうにもなってしまった。はたして、石破いしばはどうつぎ戦略せんりゃくるのか。

政局せいきょくこらなかったが、経済けいざいめんでの消費しょうひ増税ぞうぜい影響えいきょうはじわじわといている。〝石破いしばらん〟のあいだの26にち政府せいふ月例げつれい経済けいざい報告ほうこく発表はっぴょうしている。

需要じゅよう反動はんどう」ではなく「消費しょうひ増税ぞうぜいによる需要じゅようげん

基調きちょう判断はんだんわっていない。つまり、消費しょうひ増税ぞうぜい影響えいきょう軽微けいびで、すぐにかえすということだ。ただ、先行さきゆきについて、先月せんげつまでの「海外かいがい景気けいきしたれが、つづくに景気けいき下押したおしするリスクとなっている」という表現ひょうげんが、「需要じゅよう反動はんどう長期ちょうき海外かいがい景気けいきしたれなど、くに景気けいき下押したおしするリスクに留意りゅういする必要ひつようがある」とえられている。

需要じゅよう反動はんどう長期ちょうき」というのは、あまりただしい表現ひょうげんとはえない。消費しょうひ増税ぞうぜいは、増税ぞうぜいまえ需要じゅようをもたらし、増税ぞうぜいはその反動はんどうげんとともに、増税ぞうぜいによる可処分かしょぶん所得しょとく減少げんしょうつうじて需要じゅよう減退げんたいがある。需要じゅようとその反動はんどうげんは、ならしてみれば影響えいきょうはない(消費しょうひ時期じきことなるだけ)が、3%増税ぞうぜいぶん消費しょうひ減少げんしょう効果こうかがある。それを「需要じゅよう反動はんどう長期ちょうき」とってはまずい。「消費しょうひ増税ぞうぜいによる需要じゅようげん」である。

とくに、1989ねん消費しょうひぜい創設そうせつでは同時どうじ物品ぶっぴんぜい廃止はいしがあり、97ねん消費しょうひ増税ぞうぜいでは先行せんこうして所得しょとくぜい減税げんぜいおこなわれている。こうしたてんまえれば、89ねんも97ねん消費しょうひ増税ぞうぜい影響えいきょう相殺そうさいするような仕組しくみがあったが、今回こんかい増税ぞうぜいではネット増税ぞうぜいであり、「消費しょうひ増税ぞうぜいによる需要じゅようげん」がるはずであるので、それを月例げつれい経済けいざい報告ほうこく記述きじゅつしないのはおかしい。

26にち月例げつれい経済けいざい報告ほうこくのち、29にち重要じゅうよう統計とうけいつづいで発表はっぴょうされている。総務そうむしょうによる7がつ家計調査かけいちょうさ国交こっこうしょうによる7がつ新設しんせつ住宅じゅうたく着工ちゃっこうけいさんしょうによる7がつ鉱工業こうこうぎょう生産せいさんだ。それぞれ、7がつ消費しょうひ住宅じゅうたく投資とうし生産せいさん在庫ざいこ状況じょうきょうるためには必須ひっす統計とうけいだ。

7がつ重要じゅうようなのは、7-9がつのGDPで消費しょうひ税率ぜいりつ10%へのさい増税ぞうぜい今年ことしの12月にめるからだ。消費しょうひぜい増税ぞうぜいをスキップしようとすれば、政治せいじてきには、あらたな凍結とうけつ法案ほうあん国会こっかい成立せいりつさせる必要ひつようがあり、増税ぞうぜい根拠こんきょになっている自民じみん民主みんしゅ公明こうめいの3とう合意ごういをひっくりかえすことだから、かなりきびしい。

政治せいじのプロかられば、これは不可能ふかのうちかはなしだ。しかし、7-9がつのGDPがとんでもなくわる数字すうじなら、その不可能ふかのうもひっくりかえるかもしれないというのも、また政治せいじだ。

そこで7がつ経済けいざい指標しひょう注目ちゅうもくすべきだが、新聞しんぶんはまともな分析ぶんせきができないのか、ちょっとおかしな記事きじすくなくない。たとえば、29にち日経新聞にっけいしんぶんは「鉱工業こうこうぎょう生産せいさん0.2%上昇じょうしょう 消費しょうひ支出ししゅつは5.9%げん」とほうじている。

役所やくしょ公表こうひょうぶん数字すうじをそのままってくるから、へん見出みだしになっている。鉱工業こうこうぎょう生産せいさん0.2%上昇じょうしょうというのは前月ぜんげつ数字すうじで、消費しょうひ支出ししゅつが5.9%げんというのは前年ぜんねん同月どうげつ数字すうじで、両者りょうしゃちがうベースのものなので、一緒いっしょ掲載けいさいするのはまずい。

筆者ひっしゃもかつて役所やくしょ勤務きんむ統計とうけい発表はっぴょう仕事しごとをしたことがあるが、発表はっぴょうされた統計とうけい記事きじくのは、わか記者きしゃばかりだった。統計とうけい勉強べんきょうしたことがなく、データをエクセルで加工かこうできず、役所やくしょ発表はっぴょうぶんをそのまま記事きじにしていた。

いまでも、その傾向けいこうわらないのだろう。けいさんしょう鉱工業こうこうぎょう生産せいさん発表はっぴょうぶんでは前月ぜんげつ+0.2%の数字すうじがあり、総務そうむしょう家計調査かけいちょうさ発表はっぴょうぶんでは、前年ぜんねん同月どうげつ▲5.9%と前月ぜんげつ▲0.2%の数字すうじがある。役所やくしょ発表はっぴょうぶんをそのままうつすにしても、鉱工業こうこうぎょう生産せいさん前月ぜんげつ+0.2%、家計調査かけいちょうさ前年ぜんねん同月どうげつ▲5.9%をならべる神経しんけい筆者ひっしゃには理解りかいできない。せめて、鉱工業こうこうぎょう生産せいさん前月ぜんげつ+0.2%、家計調査かけいちょうさでも前月ぜんげつ▲0.2%だろう。

この記事きじいた記者きしゃ数字すうじおおきさしかわからず、その意味いみはまったくわかっていないのだろう。そうした記者きしゃはいつまでたっても、まともな分析ぶんせきはできない。

いまでは、各省かくしょうのサイトからデータのエクセルファイルをダウンロードでき、役所やくしょ発表はっぴょうぶんになくとも、はっきりえば役所やくしょ発表はっぴょうぶんなどなくても、統計とうけいかんする記事きじける。そのほうが役所やくしょ誘導ゆうどうらずに、まともな記事きじけるはずだ。しかし現実げんじつは、新聞しんぶん記者きしゃ勉強べんきょう不足ふそくから役所やくしょいなりの記事きじおおい。

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