父ちちの部屋へやの大だい掃除そうじ ものを捨すてることができない父ちちの姿すがたに、自分じぶんを重かさねてみる By - 吉元よしもと 由美ゆみ 公開こうかい:2021-08-29 更新こうしん:2021-08-29 エッセイ吉元よしもと由美ゆみ Share Post LINE はてな コメント 吉元よしもと由美ゆみの『ひと・もの・こと』 作詞さくし家かでもあり、エッセイストでもある吉元よしもと由美ゆみさんが、日常にちじょうに関かかわる『ひと・もの・こと』を徒然つれづれなるままに連載れんさい。 たまたま出会であった人ひとのちょっとした言動げんどうから親友しんゆうのエピソード、取材しゅざいなどの途中とちゅうで出会であった気きになる物ものから愛用あいよう品ひん、そして日常にちじょう話ばなしから気きになる時事じじニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関かんするトピックを吉元よしもと流りゅうでお届とどけします。 90歳さい、父ちちの覚悟かくご 90歳さいでひとり暮くらしをしている父ちちの部屋へやの大だい掃除そうじをしました。水みず回まわりはプロの業者ぎょうしゃにお任まかせし、いるもの、いらないもの、父ちちがシンプルに暮くらしやすくするための大だい掃除そうじです。 これまでできていたことが、できなくなってくる。それが年としを重かさねることだと、私わたしも時折ときおり実感じっかんします。 もうヒールの高たかい靴くつは履はけないとか、もう絶叫ぜっきょうマシンには乗のれないとか、そんなことも加か齢よわいを感かんじたことでした。 それが90歳さいともなると、さらに実感じっかんすることでしょう。怖こわさを感かんじながら、その怖こわさを諦あきらめていくのだと思おもいます。2年ねん前まえは1日にち1万まん歩ほ歩あるくことを課かしていたのが、7000歩ほになり、今いまでは5000歩ほになりました。 ところが先日せんじつ、散歩さんぽのときに後うしろから車くるまに追突ついとつされるという交通こうつう事故じこに遭あってしまいました。幸さいわい右みぎ膝ひざの打撲だぼく(かなりのものですが)と、左ひだり肘ひじの擦過傷さっかしょうですんだのですが、数すう週間しゅうかんのリハビリをすることになり、しばらく5000歩ほの散歩さんぽはできず。 父ちちは焦あせります。毎日まいにち歩あるかなければ、歩あるけなくなってしまうのではないか。杖つえをつきたくない、自分じぶんの足あしでしっかりと歩あるきたい。 今いまの自分じぶんをキープする。その強つよい気持きもちが、まさに父ちちの生いきる力ちからにつながっているのだと思おもいます。 片付かたづけをし、もう使つかわないだろうと思おもわれる台所だいどころ用品ようひんをどんどん捨すてました。すると、「それは使つかう」「捨すてないでそこに置おいてくれ」「ここにあった〇〇はどうした?」と、古ふるくなっている上うえに、もう使つかわないだろうと思おもうピーラーや泡立あわだて器きなどをとっておけと言いうのです。 特別とくべつに思おもい入いれがあるものではないでしょう。(使つかうかもしれない)ということでもなさそうです。 何なにか、自分じぶんが積つみ重かさねてきたこと、母ははが倒たおれてから8年ねん近ちかく一人ひとりで暮くらしてきた自負じふのようなものを無下むげにされているような……そんな気持きもちからなのかもしれません。 そんな父ちちの姿すがたに、自分じぶんを重かさねてみます。まだ高齢こうれいという年齢ねんれいでないから、思おもいきりものを捨すてることができるのかもしれない。 また、好すきなものを買かい、ものを増ふやすことができるのかもしれない。毎日まいにち歩あるかなくては……と思おもってはいても、それを切実せつじつなものにできない。 体からだの所々ところどころに不調ふちょうが出でてくる。生はえ際ぎわに白髪はくはつが出でてくる。代謝たいしゃが悪わるくなってくる。加か齢よわいによるさまざまな変化へんかを「新あたらしい自分じぶんと出会であう」と捉とらえているのですが、まだまだ悠長ゆうちょうなものです。 父ちちがデイサービスを受うけるにあたり、何なにかあった場合ばあいの延命えんめいについて質問しつもんがありました。きっぱりと、晴はれやかに、こう答こたえたそうです。 「延命えんめいの必要ひつようはありません。そうなったら1週間しゅうかんくらいで死しにますから」 ※記事きじ中ちゅうの写真しゃしんはすべてイメージ 作詞さくし家か・吉元よしもと由美ゆみの連載れんさい『ひと・もの・こと』バックナンバー [文ぶん・構成こうせい/吉元よしもと由美ゆみ] 吉元よしもと由美ゆみ 作詞さくし家か、作家さっか。作詞さくし家か生活せいかつ30年ねんで1000曲きょくの詞しを書かく。これまでに杏里あんり、田原たはら俊彦としひこ、松田まつだ聖子せいこ、中山なかやま美穂みほ、山本やまもと達彦たつひこ、石丸いしまる幹みき二に、加山かやま雄三ゆうぞうなど多おおくのアーティストの作品さくひんを手掛てがける。平原ひらはら綾香あやかの『Jupiter』はミリオンヒットとなる。現在げんざいは「魂たましいが喜よろこぶように生いきよう」をテーマに、「吉元よしもと由美ゆみのLIFE ARTIST ACADEMY」プロジェクトを発信はっしん。 ⇒ 吉元よしもと由美ゆみオフィシャルサイト ⇒ 吉元よしもと由美ゆみFacebookページ ⇒ 単行本たんこうぼん「大人おとなの結婚けっこん」 森口もりぐち博子ひろこ、タクシーに乗のって行いき先さきを告つげたら運転うんてん手しゅが…?タクシー運転うんてん手しゅの対応たいおうに反響はんきょうが上あがりました。タクシーに乗車じょうしゃして、目的もくてき地ちを告つげると…? 「違和感いわかんない!」「美うつくしい」 森高もりたか千里せんりが奇跡きせきの『4ショット』写真しゃしんを公開こうかい!2024年ねん10月がつ26日にち、歌手かしゅの森高もりたか千里せんりさんがInstagramを更新こうしん。音楽おんがく番組ばんぐみ『うたコン』(NHK)に出演しゅつえんした際さいの、オフショットを公開こうかいしました。 Share Post LINE はてな コメント
たまたま出会 った人 のちょっとした言動 から親友 のエピソード、取材 などの途中 で出会 った気 になる物 から愛用 品 、そして日常 話 から気 になる時事 ニュースなど…さまざまな『ひと・もの・こと』に関 するトピックを吉元 流 でお届 けします。
90歳 、父 の覚悟
90歳 でひとり暮 らしをしている父 の部屋 の大 掃除 をしました。水 回 りはプロの業者 にお任 せし、いるもの、いらないもの、父 がシンプルに暮 らしやすくするための大 掃除 です。
これまでできていたことが、できなくなってくる。それが年 を重 ねることだと、私 も時折 実感 します。
もうヒールの高 い靴 は履 けないとか、もう絶叫 マシンには乗 れないとか、そんなことも加 齢 を感 じたことでした。
それが90歳 ともなると、さらに実感 することでしょう。怖 さを感 じながら、その怖 さを諦 めていくのだと思 います。2年 前 は1日 1万 歩 歩 くことを課 していたのが、7000歩 になり、今 では5000歩 になりました。
ところが先日 、散歩 のときに後 ろから車 に追突 されるという交通 事故 に遭 ってしまいました。幸 い右 膝 の打撲 (かなりのものですが)と、左 肘 の擦過傷 ですんだのですが、数 週間 のリハビリをすることになり、しばらく5000歩 の散歩 はできず。
そんな父 の姿 に、自分 を重 ねてみます。まだ高齢 という年齢 でないから、思 いきりものを捨 てることができるのかもしれない。
また、好 きなものを買 い、ものを増 やすことができるのかもしれない。毎日 歩 かなくては……と思 ってはいても、それを切実 なものにできない。
「延命 の必要 はありません。そうなったら1週間 くらいで死 にますから」
※記事 中 の写真 はすべてイメージ
[文 ・構成 /吉元 由美 ]
⇒
⇒
⇒