【石子いしこと羽はね男おとこ 第だい9話わ 感想かんそう】放火ほうか容疑ようぎで逮捕たいほされた大庭おおば　しかし、その裏うらには詐欺さぎ事件じけんとの関連かんれんも？

感情かんじょうを持もつことは悪あくなのだろうか。誰だれかのために力ちからを尽つくし、悩なやみ、苦くるしむことは無駄むだなのだろうか？

そして、放火ほうか事件じけんをきっかけに『石子いしこと羽はね男おとこ』の最さい終章しゅうしょうが幕まくを開あける。

トイレの放火ほうか容疑ようぎで逮捕たいほされた大庭おおば

燃もえ盛さかる炎ほのおの前まえに立たちすくみ、そして防犯ぼうはんカメラに映うつった男おとこの姿すがた…。公園こうえんのトイレの放火ほうか容疑ようぎで逮捕たいほされたのは大庭おおば（赤あか楚すわえ衛まもる二に）だった。

羽はね男おとこ（中村なかむら倫りん也）が石子いしこ（有村ありむら架か純じゅん）からの連絡れんらくを受うけ接見せっけんに行いくと、大庭おおばは「自分じぶんがやった」と自供じきょうする。だが理由りゆうを聞きいても何なにも答こたえず、「話はなすことはない」と去さってしまう。

羽はね男おとこからその報告ほうこくを受うけた石子いしこは気きが気きじゃなかった。

直接ちょくせつ言葉ことばを交かわすことができる羽はね男おとこと違ちがい、石子いしこは接見せっけんができないパラリーガルだ。

いつものように石子いしこの口癖くちぐせを茶化ちゃかしたり、冗談じょうだんを交まじえながら元気げんき付つける羽はね男おとこも、予想よそう外がいの自供じきょうに動揺どうようしていた。大庭おおばを信しんじたい気持きもちは皆みな、同おなじだ。

だが、会あえない石子いしこの思おもいを背負せおうという責任せきにんも強つよく感かんじている羽はね男おとこは、何なん度ども会あいに行いくことを約束やくそくする。

そして二に度目どめの接見せっけん。羽はね男おとこは黙秘もくひを続つづける大庭おおばに、石子いしこからの手紙てがみを読よみ上あげる。

石子いしこや羽はね男おとこが見みてきた、大庭おおば蒼生そうせいという人間にんげんの姿すがた。これは私わたしたちも同おなじように見みてきた。

普通ふつうなら回想かいそうが流ながれそうな場面ばめんに、石子いしこと羽はね男おとこが紡つむぐ言葉ことばだけで語かたられた。だが、そんな大庭おおばの姿すがたはすぐ思おもい浮うかんだだろう。

大庭おおばを信しんじたいという気持きもちは、見みている私わたしたちもにもあることを実感じっかんさせてくれるのである。思おもいはみな、同おなじだ。

三さん人にんが過すごしてきた時間じかんに間違まちがいはなかった。大庭おおばは、自分じぶん信しんじてくれる二人ふたりを信しんじ、声こえを上あげる。

大庭おおばの弟おとうと・拓ひらけ（望月もちづき歩あゆみ）は人ひととの関かかわりが苦手にがてであり、日にち中ちゅうは外そとを出歩であるけず、夜よるに散歩さんぽすることが多おおかった。

そして偶然ぐうぜん実家じっかに帰かえった夜よるも、大庭おおばのジャンパーを持もって散歩さんぽに出でかけていたのだが、戻もどってきた時ときはひどく怯おびえ、怪我けがした状態じょうたいだったという。

その後ご、事件じけんを知しった大庭おおばは、弟おとうとを信しんじたいという気持きもちはありつつも、拓つぶせの関与かんよを疑うたがった。

そして取とり調しらべの対応たいおうが難むずかしい拓つぶせに代かわり、犯行はんこうを自白じはくすることで、矛先ほこさきが拓ひらけに向むかないようにしたのだ。

身内みうちの案件あんけんだとしてもフラットな立場たちばを守まもり、拓つぶせの無実むじつを証明しょうめいする証拠しょうこを探さがすことを決きめる羽はね男おとこ。そして外そとで心配しんぱいして待まっていた石子いしこに羽はね男おとこはグーサインを送おくる。

安堵あんどする石子いしこから感かんじられたのは、信頼しんらいする羽はね男おとこと大庭おおば、二人ふたりへの特別とくべつな愛あいだった。

石子いしこと羽はね男おとこは大庭おおばの実家じっかを訪おとずれ、拓つぶせに話はなしを聞ききに行いくが、ひたすら『蒼あお』を墨すみで書かき続つづけるだけで口くちを閉とざし、真相しんそうはわからず。

二人ふたりにも人ひとと関かかわることを避さけてきた拓たくがやったとは思おもえなかったが、現場げんばにいたであろう拓つぶせの話はなし無なしに事実じじつに迫せまることはできない。

大庭おおばの思おもいを受うけ止とめた今いま、石子いしこは道みちの開あけない状況じょうきょうにまた追おい詰つめられそうになっていた。

しかしそんな時とき、支ささえになるのはたった一人ひとりの相棒あいぼうだ。

羽はね男おとこは、石子いしこに手てが震ふるえる原因げんいんを語かたり出だす。父ちち・泰たい助すけ（イッセいっせー尾形おがた）から言いわれ続つづけた、「心しんの揺ゆれを他人たにんに見みせるな」という言葉ことば。逃にげ場ばのない法廷ほうていではそれがプレッシャーとなった。

しかしそれとは真ま逆ぎゃくに、どんな状況じょうきょうにおいても解決かいけつの糸口いとぐちを見みつけることを諦あきらめず、依頼いらい者しゃに寄より添そう石子いしこや綿めん郎ろうと出会であった。

久ひさしぶりに手てが震ふるえた時とき、羽はね男おとこが感かんじたのは、そんな石子いしこの存在そんざいの大おおきさだった。

羽はね男おとこは石子いしこのその心しんこそが、拓つぶせを動うごかすと信しんじたいのだ。

石子いしこは自分じぶんが誰だれかに傘かさを差さし出だした影かげで、自分じぶんが濡ぬれていることに気きづかない。むしろ厭いとわない性格せいかくだ。

そんな石子いしこに傘かさを差さし出だしてきたのは、羽はね男おとこなのである。その目めに涙なみだを溜ためた石子いしこを見みて、後うしろの窓まどからお茶ちゃを手渡てわたす。

石子いしこはそれからも拓ひらけの閉とざされた扉とびらが開ひらくまで諦あきらめず、会あい続つづけるのだった。

不動産ふどうさん投資とうしの詐欺さぎ事件じけんとの関連かんれんが浮上ふじょう

そんな中なか、焼死体しょうしたいの身元みもとが会社かいしゃ員いん・日向ひゅうが理一郎りいちろう（平田ひらた広明ひろあき）と判明はんめいし、ガソリンの成分せいぶんが検出けんしゅつされたと報道ほうどうされる。早速さっそく二に人にんは、被害ひがい者しゃの妻つま・綾あや（山本やまもと未來みらい）に話はなしを聞きくことに。

その中なかで夫おっとの理一郎りいちろうはあの日ひ、不動産ふどうさん仲介ちゅうかい業者ぎょうしゃのグリーンエステートの『大庭おおば社長しゃちょう』に会あいに行いったと話はなしていたことが判明はんめいする。

何なにも知しらない二人ふたりは驚愕きょうがくするが、登記とうき簿ぼにははっきりそう書かかれていた。

大庭おおばに事情じじょうを聞きくと、転職てんしょく先さきのナカマルの社長しゃちょう・刀根とね（坪倉つぼくら由幸よしゆき）から期待きたいを寄よせられ、喜よろこんで名義めいぎを貸かしてしまったのだという。

大庭おおばが自分じぶんの手てで掴つかんだ再さい出発しゅっぱつの芽めを利用りようされてしまった。

一方いっぽう事務所じむしょは、石子いしこが綿めん郎ろう（さだまさし）の案件あんけんである不動産ふどうさん投資とうしの詐欺さぎ事件じけんの手口てぐちが、今回こんかいの詐欺さぎと同様どうようであることに気きづく。

そして羽はね男おとこは、防犯ぼうはんカメラ映像えいぞうから、理一郎りいちろうがトラックからガソリンを抜ぬき取とっている姿すがたを見みつけ出だす。

綾あやにそのことを問とうと、とある手紙てがみを読よみ出だす。夫おっとから妻つまへの、最期さいごの手紙てがみだ。

理一郎りいちろうは保険ほけん金きんをもらうため、自みずからガソリンを被こうむり、大庭おおばの前まえで自殺じさつするということが綴つづられていた。そして死しぬ直前ちょくぜん、最愛さいあいの人ひとに遺のこす言葉ことばは、「これからは笑わらって生いきて」。

しかしその遺書いしょだけでは自殺じさつとは断定だんていできず、目撃もくげき証言しょうげんが必要ひつようになった。全すべてを託たくされたのは、拓つぶせだ。

弟おとうとのためにしたことが結局けっきょく責任せきにんを負おわせることになり、大庭おおばは自分じぶんを責せめた。

その様子ようすに羽はね男おとこは、反省はんせいすべき点てんは意識いしきさせつつも、大庭おおばの潰つぶれそうな心しんをそっと戻もどす言葉ことばをかける。

期待きたいされて嬉うれしい気持きもちは間違まちがいではない。弟おとうとを思おもう気持きもちに嘘うそはない。

そして拓たくは兄あにが罪つみを被こうむっていることを知しり、証言しょうげんするため一いち人にん、歩あるき出だした。

人ひとと関かかわることを避さけてきた拓たくが、今度こんどは自分じぶんが兄あにのためにと勇気ゆうきを出だせたのは、単たんに石子いしこの寄より添そいがあったからだ。

拓たくは手てに力ちからをいれ、その指ゆびを開ひらく。心しんを開ひらき、何なにかを訴うったえるそのサインを石子いしこは見逃みのがさなかった。

石子いしこは何なん度ども拓ひらけの元もとに通かよい続つづけた。彼かれが大切たいせつにする書道しょどうや『蒼あお』に寄より添そい、生うまれたのは『大庭おおば蒼生そうせい』を大切たいせつに思おもう二人ふたりの心しんの繋つながり。

拓たくはその日ひの状況じょうきょうを話はなし出だす。自みずからガソリンを被こうむった理一郎りいちろう。そしてライターの火ひが燃もえ移うつるその先さきに「もう一人ひとり、いた」と明あかす。

最愛さいあいの妻つまのために、弟おとうとのためを思おもった結果けっか、拗こじれてしまったこの事件じけんは、まだ終おわっていなかった。

そのライターを持もつ投資とうし家かの御子みこ神しん慶けい（田中たなか哲司てつし）が現場げんばにいたもう一人ひとりなのか。御子みこ神しんと会あう綿めん郎ろうの姿すがたの真相しんそうとは…。

感情かんじょうは何なにのためにあるのか

『心しんの揺ゆれ』は悪あくなのだろうか。誰だれかのために力ちからを尽つくし、悩なやみ苦くるしむことは無駄むだなのだろうか。

確たしかに感情かんじょう論ろんだけでは上手うまく生いきられないし、御子みこ神しんは「感情かんじょうこそ判断はんだんを見み誤あやまらせるもの」だと言いう。

人ひとは感情かんじょうに揺ゆさぶられ、過あやまちを繰くり返かえし、信しんじる心しんが利用りようされていくのが現実げんじつだ。

しかし、その苦くるしみの連鎖れんさを止とめるのも感情かんじょうだ。

第だい９話わに特とくに大切たいせつにされていたのが『感情かんじょう』だった。人ひとは感情かんじょうの伝つたえ方かたを自然しぜんに身みにつけていく。

言葉ことばにしたり、行動こうどうで示しめしたり。そして今こん話はなしでは、石子いしこと理一郎りいちろうは手紙てがみで伝つたえ、拓たくは兄あにへの思おもいを一文字ひともじで伝つたえた。

そして不ふ起訴きそ処分しょぶんとなり出所しゅっしょした大庭おおばと石子いしこの感動かんどうの再会さいかいを、してやったり顔かおで邪魔じゃまする羽はね男おとこに、皆みなで笑わらう。そして強つよく抱だきしめた大庭おおばの表情ひょうじょうが語かたるのは、何なによりの二人ふたりへの信頼しんらいだ。

感情かんじょうは何なにのためにあるのか。９話わを見み終おえ、そう考かんがえた時とき、ふと、最愛さいあいのだれかのため。という答こたえが浮うかぶのである。

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[文ぶん・構成こうせい／grape編集へんしゅう部ぶ]